グリコール酸とは
図1. グリコール酸の基本情報
グリコール酸とは、α-ヒドロキシ酸の1種で、砂糖作物などに多く含まれている天然由来成分です。
別名、ヒドロキシ酢酸 (英: hydroxyacetic acid) とも呼ばれます。クロロ酢酸を炭酸バリウムで加水分解することによって生成可能です。また、酸化すると、グリオキシル酸やしゅう酸が生成されます。
日本の法律では、3.6%以上の濃度のグリコール酸は劇物に指定されています。
グリコール酸の使用用途
グリコール酸は、角質剥離作用を持つことから、美容の分野でピーリング剤として使用される他、パーマネント・ウェーブ用還元剤としても利用されています。また、有機合成の原料や剥離剤、除菌剤、生分解性樹脂原料、皮革産業における染色・なめし剤、pHの調節剤としても広く利用可能です。
コンクリート・モルタル・各種金属など、様々な表面を洗浄するための各種洗浄剤としても使われています。ポリグリコール酸などは生分解性が高いため、医療分野において、縫合糸の材料として利用されています。
グリコール酸の性質
グリコール酸は、吸湿性のある無色の結晶です。水・エタノール・エーテルに溶けやすいです。皮膚や粘膜などにやや刺激性があります。
100℃に熱すると、グリコール酸無水物を得ることが可能です。さらに、200℃以上に熱すると、グリコリドやポリグリコリドが生成されます。
また、摂取すると、毒性があるシュウ酸に代謝されます。そのため、以前は化粧品などに高濃度のグリコール酸が含まれていましたが、現在では配合できなくなりました。
グリコール酸の構造
グリコール酸はヒドロキシ基を有するカルボン酸です。IUPAC名では、2-ヒドロキシエタン酸 (英: 2-Hydroxyethanoic acid) と呼ばれます。
化学式はC2H4O3、モル質量は76.05g/molです。密度は1.27g/cm3、融点は75℃です。
グリコール酸のその他情報
1. 天然におけるグリコール酸
グリコール酸は砂糖作物に含まれています。具体的には、サトウキビ、パイナップル、テンサイ、カンタロープなどに存在しており、未成熟のブドウでも見られます。
2. グリコール酸の応用
図2. ポリグリコール酸の基本情報
有機合成においてグリコール酸は、エステル化や酸化還元反応などの中間体に使用されています。それ以外にも高分子化学において、生体適合性を有する共重合体のモノマーとして利用可能です。
例えば、縮合重合によって、ポリグリコール酸 (英: Polyglycolic acid) が生成します。ポリグリコール酸はポリグリコライド (英: Polyglycolide) とも呼ばれ、生分解性熱可塑プラスチックです。最も単純な構造の鎖状脂肪族ポリエステルでもあります。
ポリグリコール酸のガラス転移点は35〜40℃であり、融点は220〜230℃です。60℃以上で結晶化するため、透明さを失います。平均分子量が大きいと多くの有機溶媒に溶けなくなります。その一方で低分子であるオリゴマーは、DMSOのような有機溶媒に可溶です。
3. グリコール酸の関連化合物
図3. ヒドロキシ酸の具体例
グリコール酸は、α-ヒドロキシ酸の1種です。ヒドロキシ酸とは、ヒドロキシ基を有するカルボン酸の総称で、ヒドロキシカルボン酸、アルコール酸、オキシ酸とも呼ばれます。
α-ヒドロキシ酸以外にも、β-ヒドロキシ酸、γ-ヒドロキシ酸、δ-ヒドロキシ酸などがあります。とくにα-ヒドロキシ酸は、脱水反応によって二量化環化することで、ラクチドを生成しやすいです。
ヒドロキシ酸はカルボン酸の近くにヒドロキシ基があるため、誘起効果によって一般的なカルボン酸よりも酸性が強いです。ヒドロキシ酸類は、クエン酸回路を代表として、広く生体内に分布しています。そして各種デヒドロゲナーゼの働きで、対応するケト酸から合成されています。