ヒドロキノンとは
図1. ヒドロキノンの基本情報
ヒドロキノンとは、二価フェノールの1つです。
ヒドロキノンは別名、p‐ジヒドロキシベンゼン、ハイドロキノン、キノールとも呼ばれます。CAS登録番号は123-31-9です。ヒドロキノンは、ベンゾキノンを亜硫酸で還元することによって生成できます。
また現在、ヒドロキノンの多くはベンゼンとプロピレンを用いたジイソプロピルベンゼン法によって製造されています。ヒドロキノンは副作用として、アレルギー性の接触性皮膚炎を起こす場合もあります。
ヒドロキノンの使用用途
ヒドロキノンは、写真現像薬や染料・医薬などの中間原料、ゴムなどの酸化防止剤、電子材料の原料等として、幅広く用いられています。また、ヒドロキノンは、各種分析試薬として、リン・ヒ素・ケイ酸などの定量にも用いられています。
ヒドロキノンは、重合防止剤としても使用可能です。極微量のヒドロキノンを、アクリロニトリル・アクリル酸エステル・スチレン等のモノマーに添加すると、重合抑制に極めて優れた効果が見られます。
それ以外にもヒドロキノンは、化粧品分野でも使用されています。例えば、毛髪着色剤や皮膚ブリーチ剤、酸化防止剤、香料等の用途です。また、ヒドロキノンは、クリームや軟膏として使用される場合もありますが、発癌性の疑いがあるため、2%以上の高濃度の配合は制限されています。
ヒドロキノンの性質
常圧におけるヒドロキノンの融点は172℃、沸点は287℃、密度は1.3g/cm3です。水、エタノール、エーテルによく溶けます。ただし、冷温のベンゼンには溶けにくいです。
ヒドロキノンは還元性が強く、アルカリ性銀塩溶液やフェーリング溶液を還元できます。さらに、空気中で徐々に酸化されると着色します。
ヒドロキノンは無色または白色の結晶です。化学式はC6H6O2、モル質量は110.11g/mol、示性式はC6H4(OH)2で表されます。
ヒドロキノンのその他情報
1. ヒドロキノンの合成法
フェノールの酸化によって、ヒドロキノンは製造されています。過酸化水素を酸化剤として、触媒のベータゼオライト (H-BEA) と助触媒のジエチルケトンを使用することで、フェノールを酸化可能です。この反応ではヒドロキノンだけでなく、カテコール (英: catechol) も生じますが、アルカリ土類金属によりH-BEAをイオン交換することで選択性が改善します。
過硫酸カリウムを使ったエルブス過硫酸酸化 (英: Elbs persulfate oxidation) も、フェノールからヒドロキノンを作るための手法です。
2. ヒドロキノンの酸化
図2. ヒドロキノンの酸化
ヒドロキノンは還元力が強いため、容易に酸化してp-ベンゾキノンが生じます。そもそもヒドロキノンという名称は、p-ベンゾキノンの還元で得られたため付けられました。
p-ベンゾキノンは1,4-ベンゾキノンとも呼ばれ、炭素のみで構成された6員環1つから構成されるキノンです。分子式はC6H4O2で表されます。
3. ヒドロキノンの位置異性体
図3. ヒドロキノンの位置異性体
ヒドロキノンには、ヒドロキシ基の位置異性体として、カテコールやレゾルシノール (英: resorcinol) が存在します。カテコールはベンゼン環上のオルト位に、ヒドロキシ基を2つ持つ有機化合物です。ピロカテコール (英: pyrocatechol) とも呼ばれ、ポリフェノールに含まれる構造としても知られています。
レゾルシノールは1,3-ジヒドロキシベンゼンとも呼ばれ、ベンゼン環のメタ位にヒドロキシ基を2つ持っています。タイヤの強化材として知られるタイヤコードの接着剤の原料です。そのほか、木材用接着剤原料、樹脂用紫外線吸収剤原料、樹脂用難燃剤原料などにも使用されます。