金属板加工

金属板加工とは

金属板加工

 

金属板加工とはアルミ板や鉄板、銅板などの金属板に穴や溝をあけたり金属板を曲げたりするなどの様々な加工を施すことです。日常生活のあらゆる場所で加工された金属板が用いられています。

加工する金属板の材質によって特性が異なるため、それぞれの金属に適した使用場面や加工方法が存在します。金属板加工は、工事現場や家具、機械工場などでは欠かせない工程となっています。

また、DIYで金属板加工をする場合には自分で行う以外にも、金属加工を代行してくれる業者などに依頼するという方法があります。

金属板加工の使用用途

金属板加工は、様々な場面で使用されています。工業的には機械部品や機器ボックス、産業用装置カバー、コンテナなどの製造に使われています。

日常生活に密着した金属板加工として代表的なのは表札です。表札に使う金属の材質や表面加工の種類、着色、文字の加工方法などを選ぶことで、さまざまな雰囲気や形状の表札を作ることができるオーダーメイド表札は、多くの人々に人気があります。また、照明のシェードや机の天板など家具のDIYにも金属板加工が用いられることがあります。

金属板加工の種類

  • 金属の種類
    金属板加工で主に扱われる金属の特徴を紹介します。

    「アルミ」
    アルミニウムは、他の金属と比べて極めて軽量で、柔らかく加工しやすいという特徴があります。また、熱伝導性や耐食性に優れていますが、強度が弱いため、マンガン、ケイ素などさまざまな金属との合金として用いることで耐久性と扱いやすさを兼ね備えた材質を作り出すことができます。

    「ステンレス」
    ステンレスは、表面に不導体被膜を帯びているため、酸化や腐食に強いという特徴があります。また、ステンレスは耐熱性や強度にも優れているため、ステンレス板は、建築素材や輸送機器など耐久性が必要な場面で幅広く使用されています。

    「銅」
    銅は、熱伝導性や展性に優れており加工がしやすく、また耐食性にも優れています。銅板を加工した製品にはフライパンなどの台所用品や硬貨、自動車部品などがあります。

    「鉄」
    鉄は、耐久性と加工のしやすさに優れており、現在最も多く使われている金属と言っても過言ではありません。鉄板は、鉄鍋や家電などの日常生活で使われるものや建築、造船などあらゆる場面で使用されています。

  • 加工方法の種類
    金属板加工の主な加工方法をご紹介します。

    曲げ加工
    金属板加工で頻繁に行われるのが金属板を曲げる曲げ加工です。曲げ加工には箱曲げや3角曲げ、4角曲げなどさまざまな形状に曲げる加工があります。

    「溶接」
    金属板の接着部分を局所的に溶かし、別の部品を取り付ける加工です。曲げ加工よりも幅広い形状の製品を作ることができます。

    「カラーリング」
    金属板の表面に電解加工などの表面加工を施し、表面の色を調整したり鏡面仕上げにしたりすることができます。

鉄加工

鉄加工とは

鉄加工

鉄加工とは、文字通り鉄を加工することです。鉄は、地球の重さの3分の1を占めるほど大量に存在しているため、他の金属と比べて価格が非常に安いです。また、強度が高いという特徴を持っています。

そのため鉄は、昔から世界中のあらゆるところで利用されてきました。今では、金属製品の90%が鉄を材料にしていると言われるほどです。

また、ステンレスなどの合金の材料として使われることも多いです。鉄がこれほど広く利用されるのも、加工性がよく、さまざまな加工が可能であることが大きな要因の一つだと言えます。

鉄加工の使用用途

鉄を部品や製品として利用するのに欠かすことができないのが、加工です。

例えば、溶融した材料を型に流し込んで固める鋳造や、工具を用いた切断・切削によって、製品の成形を行います。また、焼き入れ、焼き戻しといった熱処理を行うことで、金属の結晶構造を変化させ、硬さを増したり性質を変化させたりすることもあります。

そして、鉄はとても便利な材料ですが、錆びやすいという欠点があるため、加工後にコーティングを行うことも多いです。

鉄加工の種類

鉄の加工には、以下のようにさまざまな種類があります。

  • 切断加工
    シャーリングマシンを用いて、鉄を切断することです。製品の精度やその先の加工に影響を与える重要な工程なので、バリや反りを抑えて正しく切り出す必要があります。
  • 曲げ加工
    ベンダー機を利用して、型に合わせて変形させることです。ダイの上に曲げる対象物を置き、その上からパンチでプレスすることで変形させます。シンプルですが、歪みや反りが生じやすく、製品の品質に大きな影響を与える重要な加工と言えます。
  • 溶接
    高熱や圧力によって、金属同士を接合させることです。溶接棒を用いて母材との間にアークを起こす被覆アーク溶接、電気抵抗による熱を利用するスポット溶接、金属ロウを溶かして固めるガス溶接など、さまざまな種類があります。特に容器状の製品などでは、溶接の強度や精度が重要になってきます。
  • 切削加工
    工具を用いて、金属を削ったり穴を開けたりすることです。対象を固定して機械を回転させるフライス加工と、対象を回転させる旋削加工があります。どちらの場合も、抵抗、温度、速さなど、機械と対象物の相性を十分に考慮する必要があります。 

レーザー微細加工

レーザー微細加工とは

レーザー微細加工とは、レーザーを微小な面積に集中的に照射することで被加工材に穴や溝を掘る加工です。金型を使用する加工に比べてバリが発生せず、高精度でなめらかな加工をすることができます。特に微小な領域に細かい加工を施す場合に用いられます。

使用するレーザーの波長には様々な長さのものがあり、それぞれに適した用途があります。超短波パルスレーザーが最も一般的に用いられています。また、穴や溝を掘る以外にもマーキング加工や溶接加工など様々な加工方法があります。

レーザー微細加工の使用用途

レーザー微細加工は、バリやドロスが少なく、なめらかな仕上がりに加工することができます。また、加工する部分に照準を合わせて加工できるため熱による変形が少ないです。レーザー微細加工は、材質に接触することなく精密な加工を行うことができ、多様な材質にも対応しているという特徴があります。

具体的には様々な加工方法にレーザー微細加工が用いられていますが、代表的なものは穴や溝を掘る加工です。これらの加工は、回路基板やフィルムへの穴あけ、半導体の製造などに用いられています。

レーザー微細加工の種類

  • 使用するレーザーの波長
    レーザー微細加工には使用するレーザーの波長によって近紫外線レーザー、遠紫外線レーザー、超短波パルスレーザーの3種類があります。

    近紫外線レーザー微細加工は、355nm~532nmの波長の電磁波を用いたレーザー加工で、マイクロ加工や微細穴加工、薄膜表層加工などに用いられます。

    遠紫外線レーザー微細加工は、157nm~308nmの短い波長の電磁波を用いたレーザー加工で、微細穴加工や大面積加工、リングラフィーなどに用いられます。

    超短波パルスレーザー微細加工は、1000nm前後の長い波長の電磁波を用いたレーザー加工で、透明体内部加工や3D光導波路加工、高機能非熱加工などに用いられます。使用する電磁波の波長によってナノ秒レーザー、ピコ秒レーザー、フェムト秒レーザーなどの名で呼ばれます。

  • 加工方法
    レーザー微細加工を使った加工方法には様々なものがあります。以下にその実例をご紹介します。

    マイクロプレート加工は、アクリルやABSなどをレーザーによって微細加工する技術で、理系研究分野で多く用いられています。

    マーキング加工は、材料に熱によるダメージを与えることなく微細加工を行うことができます。樹脂やセラミックに加え、や金などの加工が難しい材質にも対応しています。

    穴あけ加工は、バリのない精密な穴を数十μメートル規模であけることができます。微細な穴を集中的にあけることも可能です。

リーマー加工

リーマー加工とは

リーマー加工

リーマー加工とは、あらかじめドリルで加工された下穴の内面を、加工精度の高い形状や寸法、仕上げ面にする加工の事です。 通常は、マシニングセンタやボール板、フライス盤を用いて加工が行われますが、タップハンドルを用いた、手作業による加工も行う事できます。

また、加工方法によって、用いる工具が異なります。手作業による加工の場合はハンドリーマ、工作機械を用いる場合は、マシンリーマやブローチリーマを用いて加工します。 テーパ形状の穴の場合は、専用のテーパリーマを用いて加工リーマー加工を行います。

リーマー加工の使用用途

リーマー加工は、自動車部品や航空機部品、電子部品、金型といった、あらゆる分野のモノづくりの現場で用いられている加工方法の一つです。

リーマー加工は高い寸法精度の穴をあける事ができる加工です。そのため、位置決めピンのような勘合性の求められる穴や、軸受け穴の加工に用いられています。

他にも、ロッカーアームやコモンレール、ジェットエンジン油圧系統部品、モーターといった精密な加工が要求される部品の加工に、広く用いられています。

リーマー加工の原理

リーマー加工では切削とバニシングが連続して行われます。

食い付き部では切削が行われ、食い付き部の終端が下穴の中に到達すると、終端部に続く外周の切れ刃ではバニシングが行われるようになります。 バニシングとは、リーマ工具の滑らかな面を下穴の内面に押し当てながら挿入する事で、加工物表面に塑性変形と加工硬化を発生させ、滑らかな仕上げ面を得る加工方法です。

リーマー加工では、加工物の表面が擦れながら移動するため、加工時の潤滑が穴の仕上がりに大きく影響します。 潤滑が不十分な場合は、摩擦により穴の面粗さが悪化し、摩擦熱による溶着を引き起こして、加工精度の悪化を招きます。 そのため、深穴や、止まり穴のリーマー加工を行う場合は、クーラントスルー方式での給油方式を用いて、加工部への給油が途切れないようにするといった注意が必要です。

加工時の切削油は、不水溶性(油性)切削油もしくは、水溶性切 削油の場合はエマルジョンタイプが広く用いられています。 また、溶着物の工具への付着は、表面粗さ悪化の原因となり必要な加工精度を出せなくなるため、除去する必要があります。

アルミ板加工

アルミ板加工とは

アルミ板加工

アルミ板加工とは、アルミ板を加工するために曲げ加工プレス加工切削加工を施す加工方法です。

アルミ板は低コストで軽く、加工性や電気伝導性、熱伝導性に優れているなどの特徴を兼ね備えているため、さまざまな分野で幅広く利用されています。しかし、柔らかいため強度が低いという欠点があり、他の金属との合金として利用されることが多いです。

マグネシウムやなど強度のある金属との合金で作られたアルミ板は、アルミの持つ特性に強度が合わさった非常に優れた素材として乗り物やスポーツ用品、調理器具などに使用されています。また、日用品にも多く使用されているため、最も身近な加工方法と言っても過言ではありません。

アルミ板加工の使用用途

アルミ板加工は日用品からスポーツ用品や乗り物の加工まで、さまざまな使用用途があります。

アルミ板は、100円ショップやホームセンターなどで安く手軽に購入することができるため、非常に身近なものです。また。非常に軽くて柔らかく、簡単に加工できます。

そのため、看板やドッグタグだけでなく指輪やキーホルダーなどもアルミ板を使ってDIYをすることができます。アルミ板の軽さを活かし、飛行機などの乗り物や宇宙服、軽量素材が必要なシーンでも利用されることが多いです。

アルミと他の金属で作られたアルミ合金板は、耐食性や強度にも優れているため、電化製品や建設材料など、使用用途はより幅広くなります。

アルミ板加工の原理

アルミ板加工はアルミ板に曲げ加工、プレス加工、切削加工などの加工を施します。それぞれの加工の特徴は、以下のとおりです。

1. 曲げ加工

曲げ加工は、アルミ板を垂直に曲げたりカーブを描いて湾曲させたりする加工方法です。ロール曲げや板折り曲げ、ベンダー曲げなどの方法があります。

金型を用いることなく加工ができるため、初期費用が抑えられるメリットがあります。

曲げ加工は、素早く簡単に加工できますが、アルミ板がもとの形状に戻ろうとする「スプリングバック」を起こす可能性があるので注意が必要です。

2. プレス加工

プレス加工は、金型をアルミ板に押し付ける加工法です。プレス加工にはせん断加工絞り加工などがあります。金型を用いて簡単に同じ形の製品を量産できるため、単純な形状のパーツを作る場合などに用いられます。

プレス加工は製品の量産に向いていますが、製造ラインを整備するためにコストがかかることが欠点です。

3. 切削加工

切削加工は、アルミ板を切ったり削ったりする加工のことで、加工剤を回転させる旋削加工と刃物を回転させる転削加工があります。手間がかかるため大量生産には向きませんが、精度の高い製品を作成することが可能です。

アルミ板加工のその他情報

アルミ版の種類

アルミ板には、アルミの割合や他の金属の割合に応じて様々な種類のものがあります。具体的には、1000番台、2000番台、5000番台、6000番台などです。

1. 1000番台のアルミ板
1000番台には、90%以上がアルミからできている高純度のアルミ板や純アルミのアルミ板などが含まれています。アルミの純度が高い1000番台のアルミ板は、柔らかくて加工しやすい一方、強度が低いという特徴があります。

2. 2000番台のアルミ板
2000番台のアルミ板は、アルミ、銅、マグネシウムの合金であるジュラルミンと呼ばれる素材の金属板です。2000番台のアルミ板は、強度が高い一方で錆びやすいという特徴があります。

3. 5000番台のアルミ板
5000番台のアルミ板は、アルミとマグネシウムの合金でできています。加工がしやすいうえに強度や耐食性にも優れており、汎用性が高いアルミ板のひとつです。

4. 6000番台のアルミ板
6000番台のアルミ板は、アルミ、マグネシウム、シリコンの合金でできています。強度と耐食性に優れているため、さまざまな場面で使用されています。

ネジ加工

ネジ加工とは

ネジ加工

ネジ加工とは、ネジの特徴であるネジ山を形成する工程のことです。

ネジは大別すると、おネジとめネジが存在します。おネジとは、一般的な棒状のネジのことで、対になるめネジは、棒状の内部にネジ山を加工したものです。組み合わせは、ボルトとナットの関係と同様に、おネジとめネジの間で決まります。

おネジの加工には、切削を用いた旋盤やネジ切り盤などの手法があり、また、転造加工という塑性加工による方法も有名です。一方、めネジの加工は「タップ加工」と呼ばれ、これもおネジと同様に、切削方式と塑性加工方式が存在します。

機械部品や建築材料など、日々の生活のあらゆる場面で使用されるネジが作られています。ネジ加工の技術を理解することは、生活を支える基礎技術への理解を深めることにつながるでしょう。

ネジ加工の使用用途

ネジ加工は機械部品の製作に不可欠な工程で、その形状は三角ネジ、角ネジ、台形ネジと多岐にわたります。しかし、三角ネジが一般的に機械部品として最も多く利用されることで有名です。

ネジの規格には多くのものが存在しますが、メートル並目ネジが最も広く用いられます。外径とピッチ (隣り合うネジ山の間隔) により特徴づけられ、例えば外径が5mmのメートルネジは「M5」と表されます。ネジ加工の手法は、製造量によって変わり、少数製造の場合、おネジはダイスとダイスハンドル、めネジはタップとタップハンドルという専用の工具を使用可能です。

工具は、ネジ山を規格に合わせて精密に加工します。大量製造の際には、旋盤やネジ切り盤などの切削加工機械や転造加工の塑性加工が主に用いられます。

ネジ加工の原理

ネジ加工の基本的な原理は、材料に対して回転と進行動作を同時に行いながら、特定の形状 (ネジ山) を作り出すことです。

ネジ加工は大きく分けて2つの方法があります。

1. 切削による方法

金属材料を削り取りながらネジ山を作り出すものです。切削工具 (例えばダイスやタップ) は材料の表面に対して相対的に動き、その間にネジ山を作り出します。

2. 塑性加工による方法

金属材料を変形させてネジ山を作り出すものです。形状が既に決められた金型を用いて、材料をプレスすることでネジ山を形成することが可能です。塑性加工の方法は、大量のネジを一度に製造するのに適しています。

おネジとめネジの両方がこの加工方法で製造されますが、それぞれ異なる工具が用いられ、おネジを作る際は、ダイスという工具を使用し、一方、めネジを作る時はタップという工具が使用されます。

ネジ加工の種類

塑性加工や切削加工により、ネジ山は製造されます。

1. 塑性加工

塑性加工とは、切削くずを出さない加工です。ネジ山を作る加工を転造と言います。その転造の方式には、平らな工具を使う平ダイス転造、丸い2つ工具の間でネジを転造する丸ダイス転造、中心ダイスと外周ダイスの内側で転造加工するセグメントダイス転造などがあります。

金型費用と金型の設計・作成の時間および金型のセッティングに時間がかかることが、転造の短所です。また、鍛造金型によりネジ山を加工する場合もあります。転造加工に比べ、ネジの精度は劣りますが、鍛造後に切削加工を組み合わせて使用します。

2. 切削加工

切削加工は、1台の旋盤で多種類のネジを作ることができますが、大量生産には向きません。おねじを作る時は金属の外側を削るねじ切りバイトを用いた外径ねじ切り旋削で、めねじを作る時は金属の内側を削るネジ切りバイトを用いた内径ねじ切り旋削で行います。

最近は、全ての切削加工を全自動で実施するNC旋盤が主流です。ネジ切り盤は、ねじ切り加工に特化した機械で、橋などの大型建物に埋め込まれる建築用のアンカーボルトや配管の固定用ボルトなどに使用されます。

切削くずが大量に出ること、刃物を使用するのでコストがかかり、刃替え時間も必要となることが短所です。

ローレット加工

ローレット加工とは

ローレット加工

ローレット加工とは、金属の表面にローレット工具を押し付けて細かい凸凹をつける加工のことです。

ローレットはフランス語の「小さくて回るもの」を意味するルレットが起源の言葉です。ローレットはギザギザの形を意味し、英語圏ではナーリング加工 (英: Knurling) とも呼ばれています。形状は平目・あや目・斜目・四角目に仕上げます。

ローレット加工の主な目的は、滑り止めや抜け止めのためです。主に「自動車」「航空機」「医療器具」などの業界で利用可能です。加工方法には、素材の表面を削り取る切削加工と素材を転がしつつ圧力をかけて変形させる転造加工があります。

ローレット加工の使用用途

ローレット加工によって棒・ネジ頭部・ハンドルなどの円筒状のものに、滑り止めや抜け止めとして表面に凹凸を付けます。真鍮・鉄・ステンレス・アルミなどの金属の表面に平目・アヤ目などの形状を施していきます。

  • 切削タイプのローレット加工
    インサートナットつまみネジなどの加工に利用可能です。
  • 転造タイプのローレット加工
    熱圧入用のインサートナットやインサートカラーなどの加工に使用可能です。

ローレット加工された製品は、自動車、航空機、家電、OA機器、携帯電話など機械部品から日用品まで多くの場面で使われています。

ローレット加工の原理

ローレット加工には、切削加工と転造加工の2通りの加工方法があります。

1. 切削加工タイプ

切削加工タイプは、材料にローレット駒を押し付けて削り取ることで模様を付ける加工方法です。削る際に切屑が生じます。機械に過度な負担がかからないため転造加工タイプよりも高品質な加工が可能です。材料が変形せず、材料の直径が加工前よりも小さくなります。

2. 転造加工タイプ

ローレット駒が回転する間に材料に圧力を加えることで、塑性変形させて模様を付ける加工方法です。切屑は生じず、材料の増加によって材料の直径が加工前よりも増加します。

ローレット加工の種類

ローレット加工の目的は、回り止めや滑り止めです。ローレット加工では主に2種類の模様が得られます。

1. 平目模様

真っ直ぐな線状の目ができます。円周上や円周方向に対して垂直な縦溝を掘り、円周方向の回り止めや滑り止めの効果を発揮します。

2. あや目模様

ひし形の目ができます。円周上に掘られたひし形の溝は、円周方向や軸方向の両方への回り止めや滑り止めとして機能します。

ローレット加工の選び方

ローレット加工にはメリットとデメリットがあります。

1. 切削加工タイプ

ワークの盛り上がりが生じず、細物、長物、薄肉の加工に向いています。そのため中空材や細長い材料の加工が可能です。切りくずを出す削り方であり、抵抗が抑制されて機械や材料に与える負荷を最小限に抑えられます。連続して削り加工をでき、長尺ワークに適しています。金属以外の樹脂なども加工可能です。

その一方で、工具が干渉するため段差のある材料では範囲が制限されます。材料の中間部分からの加工もできません。金属を削って切りくずを出すため、材料の直径が加工前よりも小さくなります。量産時に工具摩耗により切れが低下し、品質維持のために工具の交換などの管理が重要です。

2. 転造加工タイプ

被削材が段差を持つ場合でも段差際まで加工ができ、加工後の直径を大きくできます。押しつけて圧力を加えるため、時間を短縮して加工可能です。部品が少なく工具が安いため、コストを抑えられます。

ただし抵抗が大きいため機械に負荷がかかり、工作物の盛り上がりが塑性変形によって大きくなります。工具の幅分の加工のみで加工できる材質も制限され、長尺ワークの加工などには向いていません。

ローレット加工の構造

ローレット加工に適した素材の具体例としてアルミ、銅、チタン、真鍮、樹脂、鋳鉄、SS材、SSM材などが挙げられます。切削加工は多くの素材に対応可能です。ただし難削材であるチタンの加工は難しいです。それに対して転造加工では鋳鉄やチタンなどの硬い材料の加工は難しく、もろい樹脂のような素材も加工できません。

チタン加工

チタン加工とは

チタン加工とは、その特性を最大限に引き出すための一連の過程のことです。

チタンは軽量でありながら耐久性があり、加えて耐食性や耐熱性、低熱伝導率を持ち、さらには生体適合性が高いという優れた特性を多く有しています。しかし、特性は同時に、チタンを加工する際の難易度を高めています。

それでも、チタンはその性能をいかせる多くの産業で広く用いられており、精密機器業界や自動車業界では、その耐久性と軽量性が評価され、アクセサリーやスポーツ用品では、生体適合性と美しさが重宝されている理由です。

さらに、宇宙関連の分野では、チタンの耐熱性や耐食性が必須となっています。チタン加工は難易度は高いものの、その結果得られる製品の質と多様性を考えると非常に価値のある技術です。

チタン加工の使用用途

チタン加工の使用用途は幅広く、精密機器業界、自動車業界、日用品、スポーツ用品、宇宙・航空関係などに用いられます。

1. 精密機器業界

精密機器業界では、医療機器や半導体製造装置、電子機器、腕時計などにチタンが用いられています。耐食性や生体適合性を生かした用途が多く、その高精度な機能が求められます。

2. 自動車業界

マフラーやスプリング、エンジンバルブ、ホイールナットなどの部品にチタン加工が用いられています。パーツには強度と軽量性が求められ、チタンの特性が適しています。

3. 日用品

日用品の分野でもチタンの利用が広がっています。アクセサリーや眼鏡フレーム、はさみ、包丁、水筒など、日常生活を彩る多くのアイテムにチタンが用いられています。

4. スポーツ用品

ゴルフクラブやシャフト、コッフェル、ピッケルなどにチタン加工品が見られます。チタンの耐久性と軽さは、競技のパフォーマンスを高めることに寄与しています。

5. 宇宙・航空関係

ロケット部品やジェットエンジン部品、ケーシング、圧縮機、スタブシャフトなど、宇宙の最先端技術でもチタンの利用が見られます。宇宙・航空関係の分野では、チタンの耐熱性や耐食性が重要な役割を果たしています。

チタン加工の原理

チタン加工の原理について考察する際、まずチタンの物理的特性を理解することが必要です。チタンは軽量でありながら、高い強度、優れた耐食性と耐熱性、低熱伝導性を持っており、また生体適合性も高いため、医療分野での使用にも適しています。

チタンの特性は、チタンが加工に挑む際の難しさと利点を双方提供します。チタンは「難削材」とも称され、加工が難しいことでも有名です。熱を効率的に伝導しないため、加工する際に高熱が発生しやすいことが理由として挙げられます。工具の寿命を短くし、加工速度を落とす要因になります。

それでも、チタン加工の利点は大きく、その特性は多くの産業分野で価値を見いだされており、切削、曲げ、溶接などの方法で加工されるチタンは、精密機器、自動車部品、アクセサリー、スポーツ用品、宇宙関係の製品等、広範な用途で使われています。

チタン加工の種類

チタン加工には主に切削加工、曲げ加工、溶接加工、3Dプリント加工、熱処理があります。

1. 切削加工

チタンは難削材と言われるだけあり、その硬さから切削加工は難易度が高いです。しかし、専用の工具や適切な冷却方法を使えば、精密な切削が可能になります。機械部品や医療機器など、精度が求められる製品に多く利用されています。

2. 曲げ加工

チタンの高い強度と良好な延性により、曲げ加工も可能です。自動車のパーツや建築材料など、複雑な形状を必要とする分野でよく利用されています。

3. 溶接加工

チタンは独特の溶接特性を持っています。適切な溶接方法と環境を用いることで、非常に強く、耐久性のある溶接継ぎ手を作ることが可能です。航空宇宙や建築分野でよく見られます。

4. 3Dプリント加工

チタンは3Dプリント、特に選択的レーザー溶融(SLM)などの技術にも適しています。複雑な形状や内部構造を持つ製品を生産することが可能です。医療や航空宇宙分野で特に注目されています。

5. 熱処理

チタンは熱処理により、さらなる強度や硬度を得ることが可能です。そのため、特に要求性能が高い分野でよく利用されています。

テーパ加工

テーパ加工とは

テーパ加工

テーパ加工とは、製造業における重要な工程の1つで、特定の材料を円錐状、あるいは先細りに成形する技術のことです。

部品の形状に一定の傾斜を付けるために用いられ、さまざまな製品に影響を与えます。特に、ピンや軸を支えるベアリング、ヒートシンク、フランジなど、我々の日常生活の中で見かける様々な部品の製造に必須です。

部品はその特異な形状から一定の力学的特性を得ており、製品全体の性能を向上させています。テーパ加工の技術は、主に旋盤によって実行されます。旋盤では、材料を回転させながら、固定された工具を斜めに当てて旋削することで、材料に一定の傾斜を与えます。

刃物台を傾ける方法と材料自体を傾ける方法の2つがあり、どちらを選択するかは製造する部品の特性によります。

テーパ加工の使用用途

テーパ加工は、材料を円錐形状に仕上げ、製品の特定の性能を最大化する際に使用されています。特に、旋盤を用いて精密な部品を作製する際に、テーパ加工が活躍します。

具体的な使用例は、雌雄のテーパ部品の製造です。シャフトや滑車部品などの軸回転部品において特に重要です。雌雄をテーパ嵌合させることにより、軸ブレや音、振動を大幅に軽減することが可能となり、製品の寿命を延ばすと同時に性能も向上させます。

さらに、液体や気体の流れを制御するバルブでもテーパ加工は重要な役割を果たします。バルブでは高い密着性が求められるため、テーパ加工によって精度を上げることが可能です。

テーパ加工の原理

テーパ加工の原理の本質は、「先細りの形状を作り出す」ことです。ここでの「先細り」とは、一端から他端へ向かって徐々に小さくなる形状を指します。この特異な形状は、物理学の原理を応用したもので、製品の特性を最適化します。

テーパ加工は、旋盤という機械を使用することで成り立つ加工方法です。旋盤上に材料を取り付け、高速で回転させ、次に固定された工具を斜めに当て、材料を削ります。

工具の進行方向と旋盤の回転軸との角度が、テーパ加工における「先細り」の角度を決定します。つまり、この角度を制御することで、製品のテーパ形状を精密に作り出すことが可能です。

テーパ加工の種類

テーパ加工は一見すると単純な技術のように見えますが、実際には多様な種類が存在します。主に外径テーパ加工、内径テーパ加工、端面テーパ加工、複合テーパ加工、変則テーパ加工、エキセントリックテーパ加工の6種類が挙げられます。

1. 外径テーパ加工

最も一般的なテーパ加工の形式であり、部品の外側を先細りに加工します。旋盤の刃物台を傾けるか、工具自体を傾けて実行します。主に軸部品やベアリングなどに使用されます。

2. 内径テーパ加工

部品の内側を先細りにする加工方法です。ボーリングバイトなどを使用し、内部にテーパを形成します。特にパイプや筒状部品の加工に適しています。

3. 端面テーパ加工

部品の端面を傾斜させるために用いられます。端面テーパ加工は、独特の見た目を持つ部品を作り出すのに役立ち、また、一部の締結部品などにも適用されます。

4. 複合テーパ加工

外径テーパ加工と内径テーパ加工を組み合わせた形状を作り出します。部品は内部と外部の両方でテーパ形状を持つことになり、特殊な用途に対応可能です。

5. 変則テーパ加工

規則的なテーパ形状を持たない部品の製造に用いられます。変則テーパ加工は、特別な工具や機械を必要とし、独自の製品を作り出します。

6. エキセントリックテーパ加工

通常のテーパ加工とは異なり、こちらは軸心がずれた状態で行う加工方法です。具体的には、旋盤に取り付けられた材料の中心をずらし、それを基準にしてテーパを作り出します。製品に対して、特定の部分にだけテーパを形成することが可能になります。

ステンレス加工

ステンレス加工とは

ステンレス加工

ステンレス加工とは、素材としてのステンレスを特定の形状や機能に合わせて加工することです。

ステンレスの特性として、耐食性や耐熱性が挙げられます。その特性を活かし、例えばキッチンツールや医療器具、産業用設備等に用いられています。

加工は難易度が高いとされてきました。理由として、ステンレスの高硬度が要因となり、加工には特殊な技能や経験が求められることが挙げられます。

しかし、近年では加工技術の進歩により、その困難性はある程度緩和されてきています。製品の目的に合わせたステンレスの選定、また最新の加工機械の導入により、より精度が高く、効率的にステンレス加工が行えるようになってきました。

ステンレス加工の使用用途

ステンレス加工の使用用途はキッチン用具、家電、インフラ、医療分野など多岐にわたります。耐久性と美観が評価され、日常生活から専門分野まで幅広い領域で利用されています。

まず、日常生活の中で頻繁に接する領域は、キッチン用具です。調理器具、カトラリー、食器は、ステンレス加工された製品の一例です。ステンレスの耐食性と耐熱性が重宝され、日々の料理や食事の場において活躍します。

さらに、ステンレスは家電製品にも頻繁に使用され、冷蔵庫や洗濯機、エアコンなどの外装や部品には、その耐久性と美観、維持管理の容易さが求められ、ステンレス加工が活用されています。また、建築やインフラの領域でもステンレス加工は欠かせません。

建物の外装や屋根材、橋や道路のガードレール、エレベーターの内装など、耐久性と美観、メンテナンスの容易さを兼ね備えた素材としてステンレスが用いられます。そして、特筆すべきは医療分野での利用です。手術器具や診療用機器、病院の内装等、衛生的な環境を維持するための道具としてステンレス製品が利用されています。

ステンレス加工の原理

ステンレス加工は、ステンレスの固有の特性や耐食性、耐熱性、そして硬度を利用しながら、所望の形状や大きさに加工しています。加工手法としては、主に切削、曲げ、溶接などです。

切削はステンレスの硬度を考慮し特殊な切削工具を用いて形状を整え、曲げは加熱または力を利用してステンレスを曲げ、所望の形状に加工し、溶接は、ステンレスの高い溶点を利用して部品を接合します。

さらに、ステンレスの優れた特性は、その加工後も維持することが可能です。つまり、形状を変えたり、部品を組み合わせたりしても、ステンレスはその耐食性や耐熱性を保ち続けられます。

そして、最新の機械加工技術の進化により、より複雑な形状や精密な加工も可能となってきています。コンピュータ数値制御 (CNC) マシンのような高度な装置を使用すれば、デジタル設計に基づいてステンレスを正確に加工することが可能です。

ステンレス加工のその他情報

ステンレス加工に使用される機械

ステンレス加工に使用される機械には主に旋盤、ミリングマシン、プレス機、溶接機、CNCマシンがあります。

1. 旋盤
旋盤は、ステンレスを高速で回転させながら切削することで、円形または円筒形の製品を作り出します。高度な精度が要求される部品の製造に特に有用です。

2. ミリングマシン
ミリングマシンは、旋盤とは逆に工具が回転し、ステンレスの表面を削り取ることで形状を作り出します。平面や溝、歯車など、さまざまな形状の部品作りに使われます。

3. プレス機
プレス機は、高い力を用いてステンレスを曲げたり、打ち抜いたりします。製品の大量生産に適しています。

4. 溶接機
ステンレスの部品同士を溶接で結合する際に用いられます。TIG溶接やMIG溶接といった方法があり、適切な溶接法は対象のステンレスの種類や目的によります。

5. CNCマシン
コンピュータ数値制御 (CNC) マシンは、コンピュータプログラムに従って高精度の加工を行います。切削、ミリング、旋盤加工など、多様な加工を1つのマシンで行うことが可能です。