ブラスト加工

ブラスト加工とは

ブラスト加工

ブラスト加工とは、金属などの表面処理法の1つです。

圧縮空気などによって、研磨材 (適当な大きさ・形の粒子) を製品や材料の表面に衝突させ、サビ、塗膜、スケールなどを除去して表面を滑らかにしたり、均一で微細な凸凹面を形成したりします。

ブラスト加工は研磨材の種類や投射法を変えることで、金属をはじめ、樹脂類やガラスなどの多くの素材に使用可能です。他の表面処理法では難しい複雑な形状の製品、材料でも加工できます。ただし、表面に微細な凹凸ができるため、鏡面仕上げには適していません。

ブラスト加工の使用用途

ブラスト加工は、金属表面のサビやスケールの除去、金属や樹脂などに施された塗装の剥離、バリ取りなど、余分な部分を削ってきれいにするクリーニング処理に用いられます。

使用される研磨材は、数種類あります。衝突させる強さも調節可能で、多種多様な素材に対して加工が施せます。それに加えて、加工対象の形状にとらわれないため、応用範囲が広いです。

そのほか、金属材料の強度を上げるためのピーニングや製品の表面に梨地面等を施し、意匠性を高める際にもブラスト加工が利用されます。

ブラスト加工の原理

ブラスト加工は、3つの働きに分けられます。

1. 削る

削る部位や削り量によって、複数の加工方法があります。削り量によって、切削、粗し、研削、研磨に分けられます。短時間で削る量が多い加工ほど、硬くて鋭角形状の研磨材が選ばれる場合が多いです。

2. 除去

製品表面に付いた不要なごみ、油脂、汚れ、塗装、バリ、酸化被膜などを取り除きます。製品を傷つけないように除去する必要があり、柔らかいナイロンや銅などの研磨材を用いる場合が多いです。

3. 改質

研磨材の衝突エネルギーで表面の性質だけを変えます。表面を削らないために、よく球状の研磨材が用いられます。

ブラスト加工の種類

ブラスト加工は研磨材の種類や工法などで、代表的な3種類に分類可能です。

1. サンドブラスト

サンドブラストはエアー式ブラストに分類され、研磨材を含んだ圧縮空気を加工対象物に吹き付けることで研磨材を衝突させ、表面を加工します。

砂吹きとも呼ばれ、これまでは研磨材として特殊な砂 (珪砂) がよく使われていました。しかし健康被害の危険性があるため、現在は珪砂以外の研磨材が使われています。その一方で、サンドブラストはとくに研磨材を選ばず、金属系、樹脂系、植物系などの研磨材が用いられています。

多種多様な研磨材が使えるため、応用範囲も広いです。例えば、タンク、工場設備、船舶などのサビ取りや塗装剥離に用いられたり、舗装路面の汚れ落としなど、広い面積を処理する場合にも利用されています。

2. ショットブラスト

ショットブラストは機械式ブラストに分類され、羽根車 (インペラ) を高速回転させ、遠心力を利用して研磨材を加工対象物に向けて投射、衝突させます。ショットブラストで使用される研磨材はある程度限定され、主にショットと呼ばれる鋼球が使われます。

エアー式のブラスト加工に比べ、多くの研磨材を投射できるので加工時間を短縮可能です。ただし、投射力は弱いため、アンカーパターン (表面粗さ) が浅くなります。

3. グリットブラスト

研磨材の投射方法はショットブラストと同じですが、研磨材の形状が異なります。グリットブラストでは先鋭な稜角のある粒を使用します。

グリットブラストはショットブラストより研磨力が高く、またショットブラストでは対応できない形状の加工物に対しても利用可能です。ただしサンドブラストやショットブラストよりもコストがかかります。

ブラスト加工の選び方

ブラスト加工では材質などに応じて、装置や材料の適切な選択が重要です。選択を間違えると、不規則な凹凸などができる可能性があります。

また、加工する順番を誤ると、変形やソリが起こる場合もあります。打ちつけた際に表面に残留物として残ることもあるため、注意が必要です。

エッジング加工

エッジング加工とは

エッジング加工とは、金属に腐食液を吹き付けることで被加工材である金属板を部分的に溶解させ、さまざまなパターンに加工する技術です。極めて薄い金属板や小さい金属板に対し、複雑なパターンを高精度で加工することができるという特徴があります。

加工することのできる金属の種類も多く、半導体などの電子部品や医療機器などの部品製造に幅広く用いられています。

短時間かつ低コストで行うことができますが、大量生産には適していないという特徴があります。

エッジング加工の使用用途

エッジング加工は、プレス加工では扱えない細かなパターンや薄い被加工材に対して、非常に高精度な加工をすることができます。そのため、インテリアなどの意匠品や電子機器、自動車、衣料品など精度が必要とされる製品の製作に用いられることが多いです。

エッジング加工は、金属の腐食を利用する加工で、扱うことのできる材質にはステンレスや、鉄などの他にもモリブデンチタンなども扱うことができます。それぞれの金属で適した使用用途があります。

エッジング加工の原理

まず、CADを用いて作りたい形に添った原板を作成します。原板は、2枚作製し、被加工材は、2枚の原板の間に挟まれます。原板の寸法にズレがあると加工後の品質に大きな影響を与えるため、原板の作成には精度が要求されます。

被加工材となる金属板にはフォトレジストを貼り付けます。この加工のことをラミネートと呼びます。フォトレジストとは感光性を持つ物質で、後の工程で「被加工材にパターンを写し取る」「被加工材をエッジングから保護する」などの役割があります。フォトレジストを貼り付ける前に被加工材を脱脂洗浄することで、フォトレジストとの密着度を高めることができます。

フォトレジストを貼り付けた金属板を原板で挟み込みUVを照射すると、原板で遮光されていない部分のフォトレジストが感光し、原板のパターンが被加工材に写し取られます。

被加工材の表面に現れたパターンに沿って、エッジングにより除去したい部分のフォトレジストを剥がします。そこにエッジング液を吹き付けることで、フォトレジストを剥がした部分のみを溶解させることができます。

最後に被加工材全体のフォトレジストを除去して終了です。

ワイヤー加工

ワイヤー加工とはワイヤー加工

ワイヤー加工とは極細のワイヤーに電流を流して放電させることで被加工材である金属を加熱し、融解させる加工です。ワイヤーカット加工と呼ばれることがほとんどです。プレス加工で発生するバリが発生せず、0.01mm単位の高精度な加工を施すことができます。

あらゆる種類の金属に対応でき、被加工材の形状にこだわらず加工することができるというメリットがあります。一方で、加工に時間がかかる、導電性を持たない材質は加工することができないなどのデメリットもあります。

ワイヤー加工の使用用途

ワイヤーカット加工は、7000℃近くの高温で加工することができるため、耐熱合金や高硬度の金属など、加工が難しい材質も加工することができます。また、被加工材の大きさや形状によらず加工することができるため、複雑な形状のパーツの加工にも用いられます。

ワイヤーカット加工は、極細のワイヤーを使い、被加工材に触れることなく加工することができるため、被加工材に負担を与えることなくバリのない高精度な加工をすることができます。

これらの利点をもつワイヤーカット加工は、板状のパーツやリング状のパーツ、パイプ、金具などあらゆる金属パーツの加工に用いられます。

大量生産には適していないため、特殊な部品に対して特注で高精度な加工を施す場合などに多く用いられます。

ワイヤー加工の原理

ワイヤーカット加工は、電流を流した金属ワイヤーの熱によって被加工材となる金属を溶かします。ワイヤーは、導電性の高い真鍮(しんちゅう)が用いられる場合が多く、半径が0.05mm~0.3mmの非常に細いワイヤーが用いられます。

ワイヤーは、被加工材に直接触れることなく、被加工材とワイヤーの距離は、数十μmという非常に短い距離に保たれます。そのため、ワイヤーカット加工では0.4mm程度の幅で高精度な加工を行うことができます。

ワイヤーは、7000℃近くまで加熱されます。これは地球上で最も融点が高いとされている金属の融点である約4000℃を大きく上回るため、ワイヤーカット加工は、あらゆる金属に対応することができるといえます。

ワイヤーカット加工は、純水で満たされた水槽の中で行われます。これは熱によって被加工材が膨張したり変形したりするのを防ぐためです。水槽には冷却装置が取り付けられており、水槽内の水温は一定に保たれます。

被加工部を完全に水槽に沈めて行う方法の他に、被加工部に純水を吹きつける噴流式のワイヤーカット加工も存在します。

樹脂加工

樹脂加工とは樹脂加工

樹脂は、非常に加工性とコストパフォーマンスに優れているため幅広く利用されています。樹脂最大の特徴は、自由に形を変えることができる点です。3Dプリンターなどがその例です。

樹脂にはポリエチレンやポリ塩化ビニル、フェノール樹脂など、さまざまな種類があり、それぞれ硬度や耐久性などに特徴があります。

樹脂の加工法には金型や金口を用いた成型加工や砥石で樹脂を削ることで成型する切削加工などがあります。

樹脂にはさまざまな種類がありますが、基本的な性質によって熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂に大別されます。2種類のうちどちらに分類されるかによって用途や適した加工方法が異なります。

樹脂加工の使用用途

樹脂には熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の2種類があり、それぞれの使用用途は異なります。

熱可塑性樹脂は、加熱することで柔らかくなって任意の形に成型することができます。温度が下がると再び硬くなるため、さまざまな形に加工された熱可塑性樹脂は、プラスチックと呼ばれ、日常のさまざまな場面で見ることができます。梱包資材などに使われているポリエチレンや自動車に用いられているポリスチレン、水道管や文房具に用いられているポリ塩化ビニルなどがあります。

熱硬化性樹脂は、加熱することで固まるため、レジンアクセサリーの作成やネイルに使われています。また、塗料などにも含まれている場合があります。

樹脂加工の種類

  • 加工方法
    樹脂の加工には成型加工と切削加工の2種類があります。

    成型加工とは柔らかくした樹脂を型にはめ込んで形を作る加工です。シリンダーを使って樹脂を金型に流し込む射出成型やシリンダーの中で練った樹脂をさまざまな形の口金で押し出す押出成形、加熱した樹脂を金型に押し付ける真空成型があります。

    切削加工は、樹脂を砥石で削ることで成型する方法です。金属などと異なり、樹脂は、摩擦による熱で変形してしまうため注意が必要です。熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂に対しては切削加工を行うことができます。熱による変形を考慮して設計することで射出加工などの金型を用いた成型加工よりも精度の高い成型が可能です。熱による影響は、扱うプラスチックや加工条件によって異なるため、狙い通りの形に成型するには技術や経験が必要です。

  • 樹脂の種類
    加工されて用いられている樹脂は、大きく分けて2種類あります。加熱することで柔らかくなる性質を持つ熱可塑性樹脂と加熱することで硬くなる性質を持つ熱硬化性樹脂です。

一般的に使われている樹脂の多くは、熱可塑性樹脂に分類されます。ポリエチレンやポリプロピレンなどが熱可塑性樹脂に分類され、フェノール樹脂やエポキシ樹脂が熱硬化性樹脂に分類されます。

銅加工

監修:ハタメタルワークス株式会社

銅加工とは

銅加工

銅加工とは、銅を素材として様々な製品を製造するためのプロセスや技術です。

銅は優れた導電性を持っており、電気信号や電力を効率的に伝えることができます。この特性は電子部品や電子回路などの製造に不可欠です。熱伝導性も高いため、冷却装置や熱交換器などの用途でも使用されます。

また、鍛造や圧延、切削などの加工プロセスで容易に形状変更が可能です。機械的に加工しやすいため、精密な部品や工業製品を作製するのに適しています。酸化や腐食に対して比較的耐性があり、長期間にわたって安定した性能を維持することも可能です。

ただし、銅の切削や研削時に粉塵が発生する可能性があります。粉塵は皮膚に刺激を与えたり、吸引すると呼吸器系に害を及ぼす可能性があるため、適切な防護措置を取ることが重要です。高温のプロセスを行う場合には、熱に対する保護措置や適切な保護具を使用する必要もあります。

銅加工の使用用途

銅加工は様々な用途で利用されており、優れた物理的特性から幅広い産業分野で重要な役割を果たしています。以下は、主要な使用用途です。

1. 建設業

銅の外観と耐食性から、屋外の建築材料として使用されることがあります。屋根材などの外部要素に銅板やシートが使用され、風雨にさらされても耐久性を保つ点が特徴です。トタン材や鋼板を使用した屋根が一般的ですが、古い建築物では銅が使用される例もあります。

2. 冷却装置

銅の優れた熱伝導性は、冷却装置の製造に理想的です。特に高性能な冷却装置では銅フィンや銅チューブが熱を効率的に放熱するのに使用されます。このため、PCのCPU冷却ファンや高性能なグラフィックスカードの冷却システムに銅が使用されることが多いです。また、銅熱交換器は空調機や車両のラジエーターなど、さまざまな用途で使用されます。銅の優れた熱伝導性によって、効率的な熱交換が可能です。

3. 船舶部品

銅合金は海水に対しても耐食性があり、船舶の船体や海洋機器など、海洋環境での使用に適しています。銅合金は錆びにくく、塩分や湿度の高い環境にも耐えることが可能です。

4. 塗装

銅は他の金属の防錆コーティングとしても使用されます。特に鉄や鋼の部品に銅めっきを施すことで、耐食性を向上させることがあります。

銅加工の原理

銅加工に共通する原理は、銅の物理的性質を活用して所望の形状や寸法を作り出すことです。銅は加熱されることで柔らかくなり、加工が容易になります。加熱は銅を形状変更するプロセスで非常に重要であり、鍛造や押し出しなどの様々な加工方法で使用されます。

銅を所望の形状に加工するために、プレスやローラーなどの力が銅に適用されることが多いです。これらの力は銅の形状を変更し、圧縮するために使用されます。力をかけることで所望の形状に伸ばされたり、圧縮されたりします。

加工後の銅は冷却されることが多いです。冷却は銅を固化し、所望の形状が保持されるのを助けます。特に鍛造などの高温加工プロセスの後、冷却が行われます。

これらの原理に従って銅は加工され、様々な部品や製品が作成される仕組みです。具体的な加工方法や工程は、銅の形状や加工する必要のある部品の要求事項に合わせて調整されます。

銅加工の種類

銅加工の種類は多く、銅の形状や製品特性に応じて異なる方法が選択されます。以下は銅加工の種類一例です。

1. 鍛造

鍛造は銅を高温で加熱し、それをハンマーやプレスなどの工具で打つことによって形状を変更する方法です。高温で銅が柔らかくなるため、力を加えることで形状を変えることができます。冷却後、鍛造された部品は所望の形状と強度となります。鍛造は大型部品や銅合金の製造に使用されることが多いです。工業用バルブや造船などに適しています。

2. 圧延

圧延は銅板や銅シートを圧延ローラーに通過させて所望の厚みに加工する方法です。銅材料は圧延ローラーの間に挟まれ、圧縮されて平らな形状となります。建築材料や板金製品の製造に適しており、屋根材や金属シートなどが圧延によって製造されます。

3. 切削加工

切削加工は切削工具を使用して銅の材料を削り取り、所望の形状を製作する方法です。切削工具は旋盤やフライス盤などが使用され、精密な寸法や形状が得ることが可能です。精密な部品の製造に適しています。

4. 溶接

溶接は銅の部品や材料を熱して溶かし、それを一体化させる方法です。銅が溶けた後に接合部が冷却され、部品が一体化します。工業製品や電子機器などに広く使用されます。

本記事は銅加工を行うハタメタルワークス株式会社様に監修を頂きました。

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面取り加工

面取り加工とは

面取り加工

面取り加工 (英: chamfering) とは、成形した素材の鋭利な部分を落とす加工のことです。

剪断加工や打ち抜き加工では、金属板材の加工端部にバリが発生しているため、鋭利な形状をしています。また、切削加工で90°以下の鋭角な形状を加工した場合も、角部ははさみや包丁のように鋭利な形状をしています。面取りは、機械加工後に工作材の角を落とすことです。

具体的には、鋭利な角を丸面や角面へ加工します。ほかにも角部にやすり掛けをして、バリや角を少し除去するだけの面取り加工も広く用いられています。

面取り加工の使用用途

面取り加工が行われる主な目的は、以下の3つです。

1. けが防止

機械加工による鋭利な角部や発生したバリに触れると、けがをします。部品を組み立てる作業者や製品を使用するユーザーが安全に触れるように、面取り加工が施されています。

面取りの形状や程度は、製品の用途に合わせて設計可能です。顔に近づく部品などは、手で触れる部品と比較して、面取りの丸みが大きく設定されています。幼児用玩具などの高い安全性が求められる製品では、可能な限り大きな丸みの面取りが施されています。

2. 組立性向上

部品同士の組付性を向上させるために、面取りを行う場合があります。位置決めピンのようなはめあい部品を組み立てる際に、穴と棒の端部に面取り加工を施すことで、挿入時のガイドとなるため、組立性が向上します。

3. 他部品との接触による不具合防止

部品にバリが残っていたり、角が鋭利な状態では他部品との接触時に傷つける恐れがあります。傷ついた部品は形状や表面の精度が劣化しているため、予期しないトラブルを起こす可能性があります。

面取り加工の原理

金属材料の面取り加工には、フライス加工、旋削加工、ドリル加工、手作業などの方法があります。

1. フライス加工

フライス盤を使用して、C面取りカッタやR面取りカッタによって面取りが可能です。C面取りカッタは刃先が斜めで、R面取りカッタは刃先に凹んだ丸みを有します。素材をテーブルに固定して、工具をエッジに沿って動かして、直線上の面取りを行います。

2. 旋削加工

円柱状の素材の端面、溝の縁、穴の周囲などを、旋盤を用いて面取りします。旋盤加工とも呼ばれます。C面取りでは斜め45°の片刃バイトで加工し、R面取りでは倣い加工や総型バイトで加工可能です。

3. ドリル加工

主に穴周辺の面取りには、開き角が90°の面取りカッタが用いられます。R型のあるセンタードリルを使ったドリル加工も可能です。穴径より径が大きいドリルを用いて、先端で面取りをします。

4. 手作業

手持ちの電動工具を使用すれば、面取り加工を手作業でも可能ですが、精度は低くなります。精度が必要ない場合に、面取りツールやヤスリを代表とする手工具のほか、ハンドグラインダーやベルトサンダーのような電動工具やエアツールなどで行います。

面取り加工の種類

面取り加工を分類すると、3種類あります。それぞれの目的や図面への指示方法を紹介します。

1. C面取り

角を45°に削り取る加工方法です。けがの防止や組立性の向上など、幅広い目的で用いられています。図面への指示方法はC1のような記載をします。

Cの隣の数字は角部から切り落とすまでの距離です。指示無き角部にC1のように記載し、角部全体へC面取りを指示します。

2. R面取り

角をR形状に丸める加工のことです。R加工やラウンド加工とも呼ばれます。角部を丸めるため、けが防止に効果的な加工方法です。図面への指示方法はR1のように記載します。

Rの隣の数字は円形状の半径です。指示無き角部はR1のような記載をして、角部全体へR面取りを指示可能です。

3. 糸面取り

バリ取りとも呼ばれています。目では見えない程度に角部を削る加工のことです。やすり掛けのような加工のため、手軽で安価です。

簡易な面取り方法のため、けが防止目的ではR面取りより劣っています。図面への指示方法は、JIS規格で規定されておらず、指示無き角部は一般的に糸面取りと記載します。 

製缶加工

製缶加工とは

製缶加工

製缶加工とは金属加工の一種で、金属板や鋼管などを曲げたり組み合わせたりすることでさまざまな形状の立体的な製品を作り出す加工です。

製缶加工と同じ金属板の加工には板金加工がありますが、板金加工は、厚さ7mm以下の金属板を使って小さなものや耐久性の必要ないものなどを作ります。一方で製缶加工では厚さ7mmを超える重厚な金属板を使って、大きくて強度に優れた製品を製造するという特徴があります。

製缶加工では大きさや耐久性に優れた製品を製造することができますが、製造コストがかかるという特徴もあります。

製缶加工の使用用途

製缶加工で作られる製品には日常的に目に触れるものから、企業や工場の設備に含まれる巨大なものまであります。

日常的に目に触れる缶には飲料用の缶やツナ缶などの保存用の缶、また殺虫剤や制汗剤な、さまざまな場面で使用される缶があります。

また、製缶加工では金属板だけでなく鋼管や形管なども扱うことができます。これらの材料を用いて業務用に用いられるボンベ缶や水槽などの貯蔵設備、ダクトなどの大きくて強度が必要な製品が作られます。

製缶加工の種類

製缶加工には切断、曲げ加工、溶接など様々な工程があります。以下でそれぞれの特徴について説明します。

  • 曲げ加工
    曲げ加工は、金属板などをカーブやV字など様々な形状に曲げる工程です。ダイと呼ばれる受け型のうえに金属をのせて行います。
  • 切断
    製缶に必要な金属を決められた大きさに切断する工程です。製缶加工で用いられる金属の切断方法にはガスやレーザー、電気など、さまざまな方法があります。扱う材料によって切断方法を選択する必要があります。
  • 溶接
    切断、曲げ加工の済んだパーツ同士を接合するには溶接を行う必要があります。溶接ではパーツの末端を加熱することで部分的に溶かし、別のパーツを接合します。外部から溶接するための金属(溶接材)を加える場合もあります。
  • 表面処理
    できあがった製品の表面にめっきや塗装などの加工を施すことを表面処理と呼びます。表面加工をすることで耐食性や耐水性、耐熱性など、さまざまな機能を付加することができます。製品の用途に応じた表面処理を施すことで製品を長く安全に使うことができます。

ステンレスパイプ加工

ステンレスパイプ加工とは

ステンレスパイプ加工

ステンレスパイプ加工とは、耐食性や耐熱性に優れたステンレスのパイプの加工のことです。

加工されたステンレスパイプは、厨房器具や医療器具、建築材料など、あらゆる場面で使用されています。具体的には、曲げ加工や末端加工、側面加工などです。

ステンレスパイプを用途に合わせた形に曲げて使うほか、末端加工や側面加工を施した複数のステンレスパイプを溶接して使用する場合などがあります。ステンレスパイプには円筒形をした丸パイプだけでなく、角柱状の角パイプもあります。

ステンレスパイプ加工の使用用途

ステンレスパイプは耐食性や耐熱性に優れており、見た目も美しいです。例えば、鉄にクロムを含ませた合金鋼であるステンレス鋼は、給湯器のパイプにも使用されます。給湯器の構造や配置などによって、パイプを曲げ加工で蛇行させたものやコイル状に巻き付けたものなどが使われています。

また、ステンレスパイプは、景観を損なわない美しさを持っているため、建築材料としても重宝されており、表面が美しく整えられたパイプは車止めなどにも使用可能です。

ステンレスパイプ加工の原理

ステンレスパイプの加工は、切断、曲げ、穴あけ、溶接に分類可能です。

1. 切断

ステンレスパイプのサイズや形状の変化や変更が必要な際に行います。旋盤加工は精密寸法で加工できます。レーザー加工はバリが出にくいです。丸鋸加工は低コストです。

2. 曲げ

ステンレスパイプに角度を付けて、折り曲げます。数多くの曲げ形状があります。

3. 穴あけ

ステンレスパイプの穴を開ける加工です。フライス盤加工では複雑な形の穴を開けられます。ボール盤加工は工程が少なく、作業工数を抑えられます。レーザー加工は高精度で仕上がりが良いです。

4. 溶接

ステンレスパイプ同士を接合します。主にタングステンや不活性ガスを使用します。

ステンレスパイプ加工の種類

ステンレスパイプの主な加工には、曲げ加工、末端加工、側面加工があります。

1. 曲げ加工

曲げ加工はベンダーなどを使って、ステンレスパイプを曲げる加工です。180度だけでなく、90度や360度曲げる加工などが存在し、曲げる半径も用途によって異なります。

ロールベンダーを使った曲げ加工や金型を利用したパイプベンダーを使った曲げ加工のほか、ステンレスパイプを高温で加工する熱間曲げなどがあります。

2. 末端加工

末端加工はステンレスパイプの末端を各種形状に加工して、別のパーツと接合するための加工です。パイプの末端付近にリング状の突起を作るビードやパイプの末端を押し上げてラッパ状に広げる拡管加工など、多種多様な種類があります。

3. 側面加工

側面加工はステンレスパイプの側面に穴を開けて、穴の形状を整えることで、別のパーツを接合するための加工です。主に末端加工されたステンレスパイプを接合します。

プレス機やボール盤を用いて穴を開けるピアス加工や、パイプの側面に開いた穴の周囲を立ち上げるバーリングなどがあります。

ステンレスパイプ加工のその他情報

曲げ加工の種類

曲げ加工によって、さまざまな形状のステンレスパイプを製造可能です。

1. L字曲げ
「L」の字のように曲げる加工です。幅広く使用される曲げ方です。

2. への字曲げ
「へ」の字のように90°より緩やかな角度に曲げます。一般的には10°〜85°の間に加工します。

3. レ型曲げ
「レ」の形のように直角より狭い角度に曲げます。「V」の字にも似ているため、「V字曲げ」と呼ばれる場合もあります。

4. U型曲げ
「U」のような形に180°曲げる方法です。曲げ始めの両側から少しずつ曲げて、徐々に中央部を曲げます。

5. コ型曲げ
「コ」の形のように2ヶ所を曲げます。一般的にはL型加工を片方ずつ行い、「コ」の字を作ります。

6. Z型曲げ
「Z」の形のように曲げる加工です。斜めではなく垂直の場合にも、Z型曲げと呼ばれます。

鉄板加工

鉄板加工とは

鉄板加工

鉄板加工とは、鉄製の板である鉄板に施す加工のことです。

鉄板は加工しやすく非常に耐久性に優れているため、古くから人々の生活に活用されてきました。

鉄板の加工法には曲げ加工、溶接、切断、穴あけ加工、表面加工などがあります。これらの方法を駆使して加工された鉄板は、建設現場や造船所から家庭まで、幅広く用いられています。加工方法や鉄板に施す表面加工によって種類が異なり、加工のしやすさや耐食性などにそれぞれ特徴があります。

鉄板加工の使用用途

鉄板加工は個人的な利用から法人、職人による利用まで幅広く用いられています。個人では極厚鉄板を用いたバーベキュー板やクレープ鉄板などの調理器具のために、鉄板加工を使用可能です。さらにDIYでのスロープの作成や天板の滑り止め加工など、身近な場所だけでも多種多様な目的があります。

また鉄板は強度に優れているため機械部品、ダクト、架台、自動車、家電機器、容器、産業機械などの製造にも使用可能です。鉄鋼から鉄板を作る際の加工方法や表面処理の種類によって多種多様な鉄板が存在し、それぞれ特性があります。

鉄板加工の原理

鉄板加工の具体例には板金加工、プレス加工、曲げ加工、穴開け加工などがあります。

1. 板金加工

汎用金型やプレスブレーキを用いて、直線的に曲げる加工方法です。機械の筐体などの少量多品種生産に適しています。

2. プレス加工

専用の金型やプレス機で曲げ、穴開け、打ち抜きなどの加工を行います。曲線的に曲げられ、家電製品や自動車部品などの大量生産に適しています。

3. 曲げ加工

熱やローラーを使って加工し、鉄板を重ねて曲げて接合できます。ベンディングローラーによる曲げ加工では、径が大きい筒を製造可能です。

4. 穴開け加工

鉄板に穴を開ける加工です。ほかの鉄板加工の一環として行います。ボルト穴を作る際に、ドリルで穴開けを行う場合もあります。

鉄板加工の種類

鉄板加工で用いられる主な鉄板の種類を紹介します。

1. SPCC

SPCCは低い温度下でインゴットを加工して作られた、最も一般的な鉄板です。「ミガキ材」とも呼ばれます。SPCCは表面がきれいですが錆びやすいため、めっきなどの表面処理が必要です。

2. SPHC、SPHC-P

SPHCとは、高温にしたインゴットに圧力をかけて作られる熱間圧延鋼板のことです。SPHCの表面にある酸化被膜を除去したものをSPHC-Pと呼びます。SPHCとSPHC-Pは共に低価格で加工しやすいです。SPHCが黒い酸化被膜で覆われているのに対し、SPHC-Pは酸化被膜を持たないため、SPHCよりも加工しやすいです。しかし、めっきなどの表面加工を施す必要があります。

3. SECC

SECCは鉄板に亜鉛メッキを施したもので、最も一般的な表面処理済みの鉄板です。加工しやすいだけでなく錆びにくく、表面の加工が剝がれにくいです。

4. 縞鋼板

縞鋼板は鉄板の表面に滑り止め加工を施したもので、屋外に設置された階段など、あらゆる場所で使用されます。「縞板 」や「チェッカープレート」とも呼ばれます。

鉄板加工の選び方

鉄板の値段を決定する要素には加工する母材と加工の方法が挙げられます。鉄板の大きさや種類で値段は違うため、鉄板加工では設計の段階で予算に合わせて、適切な材質の選定が重要です。

また鉄板の加工方法でも価格は変わります。精度が高くて複雑な加工はコストがかかり、安く抑えるためには加工の方法や手順の設計も重要です。

さらに製品のロット数も価格に影響します。小ロット生産では切削加工などが一般的です。切削加工は生産性が劣るものの、少ない初期投資で可能な加工方法です。それに対して大ロット生産ではプレス加工などが選択されます。プレス加工は初期投資が多い一方で生産性に優れています。

タップ穴加工

タップ穴加工とはタップ穴加工

タップ穴加工とは、金属のねじ切り加工の一つで、あらかじめドリルで加工された下穴に対して、めねじを成形する加工の事です。タップ加工には、切削式と転造式の2種類の加工方法があります。さらに切削式で用いられる工具にはハンドタップ、ポイントタップ、スパイラルタップの3種類があり、それぞれ特徴が異なります。

一般的には、ボール盤やマシニングセンターにタッピング工具を設置して、加工を行う事が多いですが、タップハンドルを用いて手作業でねじ切り加工を行う場合もあります。

タップ穴加工の使用用途

車や家電、パソコン、スマートフォンといった日常生活で目にするあらゆる製品に、タップ穴加工は施されています。
多くの製品は複数の部品から構成されています。部品同士を固定する方法として、接着のほかにねじを用いた固定が広く用いられています。

ねじ(おねじ)には、らせん状の山形状の加工が施されています。らせん状の溝形状が施されたタップ穴に、ねじをねじ込む事で、部品同士を固定する事ができます。
旋削やフライスでもめねじを成型することができますが、タップ穴加工が最も安価な加工方法として広く用いられています。

タップ穴加工の種類

タップ穴加工は、用途に応じてそれぞれ適した工具があります。

  • ハンドタップ
    手動でタップ穴加工するための工具です。
    ハンドタップは、量産向けではなく、試作などで加工数が少ない場合に用いられます。通り穴も止まり穴どちらでもタップ穴を加工できるのが特徴です。
  • ポイントタップ
    量産品の製造でのタップ穴加工に用いられる工具の一つです。
    タップ穴の溝を削ったときに発生する切り粉が、下に落ちる構造をしています。このため、ポイントタップは通り穴用のタップとして用いられています。
  • スパイラルタップ
    ポイントタップと同じく、量産品の製造でのタップ穴加工に用いられる工具の一つです。
    タップ穴の溝を削ったときに発生する切り粉が、上に上がってくる構造をしています。このため、スパイラルタップは止まり穴用のタップとして用いられています。
  • 溝なしタップ(転造式)
    切削ではなく、下穴を押し広げることによってめねじを形成します。
    切削ではないため、切り粉は発生しません。
    硬い材質に対しての加工は不向きで、アルミなどの柔らかい材質に対して用いられます。