スカトール

スカトールとは

スカトールの基本情報

図1. スカトールの基本情報

スカトールとは、化学式がC9H9Nと表され、複素環式芳香族化合物の1種です。

複素環式芳香族化合物とは、芳香環の中に2種類の異なる元素を含んだ化合物のことです。スカトールはニレ科やクスノキ科の木の幹、ビートの根、排泄物、コールタール中などに存在します。

人体では腸内細菌によるトリプトファン (英: Tryptophan) の代謝によって生じ、インドール (英: Indole) とともに糞臭 (ふんしゅう) の原因になっています。

スカトールの使用用途

低濃度のスカトールは、化粧品調合香料に利用可能です。スカトールは人が嫌う強烈な悪臭ですが、濃度が低いと花のような香りを感じます。

香水の3大フラワー匂いの1つであるジャスミンにもスカトールは含まれており、その香りの中にもかすかに糞尿を感じさせる香りを含んでいます。ただし、多くの人は「甘く柔らかな香り」に感じ、糞尿のような悪臭を感じません。

多くの香水の香料や定着剤のほか、タバコの香料や添加物としても、スカトールを使用可能です。

スカトールの性質

スカトールは毒性がある白色結晶です。時間が経過すると、茶色くなります。融点は95°C、沸点は265°Cです。

水に溶けにくく、アルコール、ベンゼン、エーテルには溶けます。フェリシアン化カリウムや硫酸中で、紫色を呈します。

なお、スカトールはインドール環の3位にメチル基を持っているため、3-メチルインドールとも呼ばれます。インドール環とはピロール環とベンゼン環が縮合した構造のことです。

スカトールのモル質量は131.17g/molで、示性式はC8H6NCH3と表されます。

スカトールのその他情報

1. スカトールの合成法

フィッシャーのインドール合成 (英: Fischer indole synthesis) によって、スカトールを合成可能です。フィッシャーのインドール合成とは、酸触媒を用いてフェニルヒドラゾンを熱すると、インドールが得られる化学反応のことです。

エミール・フィッシャー (英: Hermann Emil Fischer) によって開発されました。酸触媒として、硫酸や塩酸のほか、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体 (BF3・OEt2) や塩化亜鉛のようなルイス酸も使用されます。

フィッシャーのインドール合成の変法として、O-ビニル-N-フェニルヒドロキシルアミンから合成する手法やO-フェニルオキシムからベンゾフランを得る手法も知られています。

ヤップ・クリンゲマン反応 (英: Japp-Klingemann reaction) を用いて、ジアゾニウム化合物から中間体であるフェニルヒドラゾンの誘導体を合成可能です。

2. スカトール合成のメカニズム

スカトールの合成

図2. スカトールの合成

フィッシャーのインドール合成ではまず、酸触媒がフェニルヒドラゾンの持つイミノ基の窒素原子に結合します。そしてイミノ基のα位のプロトンが放出されて、フェニルヒドラゾンがエナミン型になります。スカトールの合成で使用するアルデヒドやケトンは、プロピオンアルデヒド (英: propionaldehyde) です。

次に[3,3]-シグマトロピー転位 (英: [3,3]-sigmatropic rearrangement) によって、窒素-窒素結合が開裂し、エナミン部分の炭素原子とベンゼン環上の炭素原子が結合します。イミノ基にベンゼン環上の窒素原子が求核攻撃して、ジアザヘミアセタールを生成し、酸触媒によってアンモニアが脱離すると、インドール環が得られます。

3. スカトールの関連化合物

スカトールの関連化合物

図3. スカトールの関連化合物

メチル基を有するインドール誘導体には、スカトール以外にも、1-メチルインドール、2-メチルインドール、4-メチルインドール、5-メチルインドール、6-メチルインドール、7-メチルインドールがあります。2-メチルインドールはメチルケトール (英: methylketol) とも呼ばれます。

サルコシン

サルコシンとは

サルコシン (英: Sarcosine) とは、天然のアミノ酸の1種です。

IUPAC名は2- (メチルアミノ) 酢酸 (英: 2- (Methylamino) acetic acid) 、別名として、N-メチルグリシン (英: N-Methylglycine) やメチルグリシン (英: Methylglycine) 、サルコシン酸 (英: Sarcosinic acid) とも呼ばれます。略号はSarです。

サルコシンの使用用途

1. 界面活性剤の原料

サルコシンは、練り歯磨き粉や生分解性界面活性剤の原料として、幅広く使用されてきました。例えば、窒素上にラウリン酸が付加したラウロイルサルコシンのナトリウム塩は、皮膚への刺激性が低く、硬水を用いた場合も洗浄力に優れ、泡立ちの良い界面活性剤です。

これらの優れた洗浄効果から、シャンプーを始めとし、ボディーソープや洗顔料、歯磨き粉などによく用いられます。

2. 医療分野

最近の研究では、前立腺がんのバイオマーカーとなる可能性が高いことや、うつ病や統合失調症などの精神疾患に効果があるとの結果も示されています。また、サルコシンの重合体 (ポリマー) であるポリサルコシンは、DDS (ドラッグデリバリーシステム) 製剤として利用する研究も進められています。

サルコシンの性質

化学式はC3H7NO2で表され、分子量は89.09です。CAS番号は107-97-1で登録されています。サルコシンは208°Cで分解し、常温で白色結晶性粉末の固体です。無臭で甘味を持ち、潮解性があります。水に溶け、エタノールにはあまり溶けません。

酸性・アルカリ性の程度を表すpHは7.4 (5.6 μg/mL溶解時) です。中性条件下では、カルボアニオンとアンモニウムイオンが生成し、双性イオンとして存在します。

サルコシンは筋肉やその他の体組織に含まれる天然アミノ酸です。食品では、卵黄、マメ科植物、ハムなどに含まれます。N-メチルグリシン (NMG) とも呼ばれ、コリンが代謝される際に形成され、その後サルコシンデヒドロゲナーゼという酵素によりグリシンに分解されます。

サルコシンのその他情報

1. サルコシンの製造法

サルコシンは、ストレッカーアミノ酸合成 (英: Strecker amino acid synthesis) により工業的に生産できます。ストレッカーアミノ酸合成とは、アルデヒドとアンモニア、シアン化水素からアミノ酸を合成する方法です。

アルデヒドとアンモニアが最初に反応しイミンを形成し、イミンに対するシアン化物イオンの求核攻撃でアミノニトリルが生成します。続く加水分解により、目的のアミノ酸を合成することが可能です。最終段階の加水分解は、通常、塩酸を加える後処理によって進行します。

また、クロロアミノ酢酸とメチルアミンの求核置換反応によっても合成可能です。

2. 取り扱い及び保管上の注意

取り扱い時の対策
強酸化剤は、サルコシンの混触禁止物質です。取り扱いおよび保管の際は、接触を避けてください。取り扱う際は、長袖の保護衣と保護手袋、保護メガネを必ず着用し、ドラフトチャンバ内で使用してください。

火災の場合
燃焼すると分解して、一酸化炭素 (CO) 、二酸化炭素 (CO2) 、窒素酸化物 (NOx) などの有毒なガスを生成することがあります。火災発生時は、二酸化炭素 (CO2) や粉末消火剤、水噴霧、泡、消火砂を用いて消火してください。使用が禁じられた消火剤は特にはありません。

保管する場合
ガラス製の容器に密閉し、直射日光の当たらない、換気がよく涼しい場所に保管してください。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0119-0767JGHEJP.pdf
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Sarcosine

アグマチン

アグマチンとは

アグマチン (英: Agmatine) とは、分子式C5H14N4で表される有機化合物であり、アルギニンの脱炭酸化生成物です。

CAS登録番号は306-60-5であり、IUPAC命名法による名称はN-(4-アミノブチル)グアニジンです。その他の別名には、(4-アミノブチル)グアニジン、1-(4-アミノブチル)グアニジン、2-(4-アミノブチル)グアニジンなどがあります。

生体内においては、ポリアミン生合成の中間体であり、神経伝達物質であると推測されています。脳で生産され、シナプス小胞に蓄えられる物質です。

アグマチンの使用用途

アグマチンは、天然では魚や酒に比較的多く含まれる物質です。特に、清酒の醸造に用いられているニホンコウジカビ (黄麹) はアルギニンを基質としてアグマチンを産生するとされています。なお、アグマチンの生体内の作用としては、主に下記のようなものがあります。

  • 筋力増大作用
    筋力増大に欠かせないNO (一酸化窒素) の原料です。
  • うつ病や不安の解消
    NRF2という物質を増加させる作用があります。このNRF2を増加させることで、脳細胞をコルチゾールというストレスホルモンから防いで、うつ病を防ぐことが可能です。
  • 筋肉の成長促進
    アグマチンは、黄形形成ホルモン (LH) を増やす作用がある物質です。このLHレベルが上がることで、テストステロンレベルが上がります。テストステロンレベルが上がることで、筋肉の成長、筋肥大をもたらします。
  • 食欲の増進作用
    アドレナリン受容体との刺激によって発生する神経ペプチドYの活性を増加させ、食欲を促進します。この他に、痛みを軽減する効果もあります。

上記の作用からアグマチンは、うつ病、神経痛、神経変性疾患、記憶・学習障害、薬物依存、および肥満・糖尿病など、さまざまな病態の治療・改善に有効であることが、多数の前臨床研究で示されている物質です。

上記疾病の諸症状を改善・緩和するうえで有望な治療薬、あるいは機能性食品素材として注目されており、欧米を中心に、アグマチン硫酸塩を主成分とするサプリメントが多数販売されています。

アグマチンの性質

アグマチンの基本情報

図1. アグマチンの基本情報

アグマチンは、分子量130.195、融点102℃、沸点281℃であり、常温では固体です。密度は1.02g/mLであり、水に溶けやすい性質を示します。塩基解離定数pKbは0.52です。

アグマチンの種類

アグマチンは、主に硫酸アグマチンなどの塩の形で販売されている物質です。こうしたアグマチン塩は、主には研究開発用試薬製品や、工業用有機化合物として販売されています。また、創薬研究のリード探索におけるスクリーニングライブラリー化合物などとして提供される場合もあります。

1. 研究開発

アグマチンの塩類 (1)

図2. アグマチンの塩類

研究開発用試薬製品としては、アグマチン硫酸塩やアグマチン二塩酸塩などが販売されています。100mg、250mg、1g、5g、10g、25g、50g、100gなどの種類があり、実験室で取り扱いやすい小容量での提供が中心です。比較的高価な試薬製品と言えます。

また、硫酸アグマチンは生理・薬理活性化合物として、スクリーニングライブラリーで提供されている場合があります。これは、アグマチンが神経伝達物質系、イオンチャネル、一酸化窒素合成など、複数の分子標的に対して調節作用を発揮する物質であるためです。

2. 工業用有機化合物

アグマチン硫酸塩は、工業用薬品としても販売されています。工業用では通常1kgや25kgなど、比較的大きな容量で提供される物質です。ファインケミカル、医薬品中間体としての用途が想定されています。

アグマチンのその他情報

アグマチン硫酸塩 (硫酸アグマチン)

アグマチンの硫酸塩 (1)

図3. アグマチンの硫酸塩

アグマチン硫酸塩は、分子量228.27、融点は234-238 ℃であり、常温での外観は白色粉末です。通常の保管環境においては安定であるとされますが、強酸化剤との混触は避けるべきとされます。CAS登録番号は2482-00-0です。

参考文献
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907037440940502

ブテン

ブテンとは

ブテンの構造

図1. ブテンの構造

ブテンとは、分子式がC4H8で表される、1個の二重結合を有する不飽和炭化水素です。

1-ブテン、2-ブテン、イソブテンの3種類の異性体があります。2-ブテンにはシス-2-ブテンとトランス-2-ブテンの2種類が存在します。いずれもオレフィンガス特有の臭いのある無色の気体で、分子量は56.10g/molです。

ブテンはナフサ分解プロセスのC4留分、または石油の接触分解の副産ガスC4留分などに存在し、蒸留などで分離できます。1-ブテンと2-ブテンは、液化石油ガスとして混合したまま利用されることが多いです。

ブテンの使用用途

ブテンの異性体の主な用途は下記の通りです。

  • 1-ブテン
    反応性に富んだ二重結合があり、石油化学工業では重要な原料です。液化石油ガスとして燃料に使用するほか、第二ブチルアルコール、ブタジエンなどの製造原料になるブチルアルコール、エチルメチルケトン、ペンタノールなどの合成原料です。
  • 2-ブテン
    工業的には、1-ブテンと分離せず、n-ブテン混合物として用いられています。
  • イソブテン
    イソオクタンや重合ガソリンの製造原料のほか、合成ゴムやハロゲン化アルキルの製造原料に用いられています。

ブテンの性質

1-ブテンの融点は-185.3°Cで、沸点は-6.3°Cであり、発火点は384°Cです。エタノール、ベンゼン、ジエチルエーテルに溶解します。

シス-2-ブテンの融点は-138.9°Cで、沸点は3.7°Cであり、トランス-2-ブテンの融点は-105.5°Cで、沸点は0.9°Cです。沸点が非常に近いため、蒸留による異性体の分離は難しいですが、似た反応性を示すため、分離する必要がない場合も多いです。一般的に2-ブテンは、シス体が70%とトランス体が30%の混合物として市販されています。

イソブテンの融点は−140.3°Cで、沸点は-6.9°Cです。

ブテンの構造

1-ブテンは直鎖状のα-アルケンです。示性式はCH3CH2CH=CH2で、密度は0.62g/cm3です。

2-ブテンは幾何異性体を有する最も単純なアルケンで、示性式はCH3CH=CHCH3と表されます。3.7°Cでのシス-2-ブテンの密度は0.641g/cm3であり、0.9°Cでのトランス-2-ブテンの密度は0.626g/cm3です。シス-2-ブテンはシス-β-ブチレン、トランス-2-ブテンはトランス-β-ブチレンとも呼ばれます。

イソブテンはエチレンの片方の炭素原子に、2個のメチル基が結合した構造を持っています。示性式はCH2=C(CH3)2で、密度は0.5879g/cm3です。

ブテンのその他情報

1. ブテンの合成法

ブテンの合成

図2. ブテンの合成

原油C4留分の分離によって、1-ブテンと2-ブテンの混合物が得られます。エチレンの二量化では、末端アルケンのみ生成します。蒸留により高純度で精製可能です。

イソブテンは石油精製ストリームで硫酸と反応させると単離できます。通常、触媒を用いたイソブタンの脱水素化で製造可能です。アセトン、セルロース、キシロースなどからも製造できます。ネオヘキセンを合成する際に、ジイソブチレンのエテノリシス (英: ethenolysis) の副産物としてもイソブテンが生じます。

2. ブテンの反応

ブテンの反応

図3. ブテンの反応

1-ブテンは重合しやすく、ポリブテンが生成します。リニアポリエチレンなどの製造原料で、ポリプロピレン樹脂、メチルエチルケトン、エポキシブタンなどの前駆体に使用可能です。

2-ブテンからブタジエンを製造可能です。水和反応で2-ブタノールになり、酸化してメチルエチルケトンが生じます。

イソブテンはメタクロレインの原料です。イソブテンにメタノールやエタノールが付加すると、メチルtert-ブチルエーテルやエチルtert-ブチルエーテルが得られます。商業的にtert-ブチルアミンも、ゼオライト触媒を使ったイソブチレンのアミノ化で製造されています。イソブテンが重合するとポリイソブチレンが生成し、イソブテンのアルキル化によってイソオクタンを合成可能です。フェノールや4-メトキシフェノールとのフリーデル・クラフツ反応で、イソブテンからジブチルヒドロキシトルエンやブチルヒドロキシアニソールが得られます。

ピコリン

ピコリンとは

ピコリンとは、化学式がC6H7Nで、メチルピリジンの慣用名のことです。

分子量は93.13g/molです。骨油中にも含まれるほか、コールタール中の塩基性成分としても知られています。ピコリンには異性体が存在し、2-ピコリン、3-ピコリン、4-ピコリンの3種類です。

2-ピコリンは2-メチルピリジン、o-ピコリン、α-ピコリンと呼ばれています。3-ピコリンは3-メチルピリジン、m-ピコリン、β-ピコリンという名称もあり、4-ピコリンは4-メチルピリジン、p-ピコリン、γ-ピコリンとも呼ばれます。

ピコリンの使用用途

2-ピコリンはポリマー、医薬品、染料の原料として使用されます。ブタジエンスチレン、2-ピコリンの共重合により得られたポリマーは、タイヤコードの接着剤に利用可能です。また、3-ピコリンは、ニコチン酸アミドや殺虫剤の製造原料に用いられています。さらに、4-ピコリンは、イソニコチン酸の合成原料に使用可能です。

そして、いずれのピコリンも、溶剤、消毒剤、加硫促進剤の原料などに用いられています。

ピコリンの性質

ピコリンの構造

図1. ピコリンの構造

いずれのピコリンの異性体も、水、エタノール、エーテルに可溶です。還元すると対応するピペコリンになり、酸化すれば対応するピリジンカルボン酸が得られます。金属塩やハロゲン化水素と、付加化合物を作ります。

これら3種類のピコリンの異性体は、ピリジンに似た匂いを持つ無色の液体です。弱い塩基性を示します。2-ピコリンの密度は0.943g/mLであり、融点は−70°C、沸点は128°Cです。3-ピコリの密度は0.957g/mLで、融点は-19°C、沸点は144°Cです。3-ピコリンはほかの異性体と比べると、メチル基の反応性は大きくありません。4-ピコリンの密度は0.957g/mLであり、融点は2.4°C、沸点は145°Cです。

なお、ピコリンはピリジンの水素原子1個をメチル基で置換した化合物です。メチル基の位置によって、3種類の異性体が存在します。

ピコリンのその他情報

1. ピコリンの合成法

ピコリンの合成

図2. ピコリンの合成

2-ピコリンはピリジン類の中で、初めて純粋な状態で単離された化合物です。1846年にトーマス・アンダーソン (英: Thomas Anderson)によって、コールタールから単離されました。主に現在では、アセトアルデヒドとアンモニアの縮合によって合成されています。アセチレンとニトリルの環化反応でも合成可能です。

3-ピコリンは、工業的にアンモニアとアクロレインの反応で生成します。ただしこの反応は非選択的です。有効な合成法は、プロピオンアルデヒド、アクロレイン、アンモニアを出発原料に用いた方法です。チチバビンのピリジン合成 (英: Chichibabin pyridine synthesis) で、副生成物として3-ピコリンが生じます。

工業的に4-ピコリンは、酸化物触媒を用いてアンモニアとアセトアルデヒドから得られます。

2. ピコリンの反応

ピコリンの反応

図3. ピコリンの反応

2-ピコリンは2-ビニルピリジンの前駆体です。ホルムアルデヒド水溶液により2-ピコリンを処理し、脱水反応が起こると、2-ビニルピリジンが得られます。また、2-ピコリンは硝化抑制剤のニトラピリンの前駆体でもあります。さらに、過マンガン酸カリウムによる酸化で、ピコリン酸を生成可能です。

3-ピコリンのアンモ酸化 (英: ammoxidation) で、3-シアノピリジンが得られます。3-シアノピリジンから、3,5,6-トリクロロ-2-ピリジノールを経由して、農薬の原料でもあるクロルピリホスを合成可能です。

4-ピコリンは医薬品などの有用な化合物の前駆体として利用されています。具体的には、4-ピコリンのアンモ酸化によって、4-シアノピリジンを生成可能です。4-シアノピリジンは結核治療薬のイソニアジドなどの有用な化合物に変換できます。

ナフタリン

ナフタリンとは

ナフタリンとは、炭素と水素からなる芳香族炭化水素の一種です。

化学式 はC10H8です。芳香族炭化水素のひとつで、コールタールを精製して製造されます。白色または無色の光沢のある単斜晶系のうろこ状結晶です。

ナフタリンは芳香族炭化水素の代表的なものの1つであり、フタル酸エステルやアニリン、酸化ナフタリンなどの合成原料としても使用されます。色々な合成染料に必要な原料で、合成樹脂の原料としても使用されています。また、化学薬品、合成樹脂製造の原料として大量に使用されています。

ナフタリンの使用用途

ナフタリンは主に防虫剤、染料、医薬品、農薬、潤滑剤などの原料として使用されます。石油や石炭の乾留から得られる副産物であり、これらの産業の発展に貢献してきました。ナフタリンを原料とする染料は、耐久性が高く鮮やかな色合いが得られるため、綿織物や毛織物の染色に広く使用されています。医薬品の原料としても使用され、特に患者の血液中にあるフェノール類の検査に使用される試薬の1つとしても知られています。

ナフタリンを原料とする防虫剤は、農業用途や木材の防腐剤、衣料品の虫よけ剤などに幅広く利用されています。農薬としては、稲のカメムシ、施設野菜のウリハムシ、アザミウマ等の駆除に使用されますが、 登録失効農薬成分です。繊維の防虫剤としては、家庭での使用が一般的ですが、クリーニング業者などでも使用される場合があります。

かつては衣服などの防虫剤として広く使用されていましたが、現在ではパラジクロロベンゼンなどの代替品にとって代わられる傾向にあります。精製ナフタリンは有機顔料、テトラリン、デカリン、ナフチルアミンの材料として用いられます。また、95%ナフタリンは、精製品の原料、無水フタル酸が主な用途です。

ナフタリンの性質

ナフタリンは有機化合物の中でも比較的低分子量の化合物であり、水にはほとんど溶けない無極性分子です。しかし、有機溶媒には溶けやすい性質があります。そのためナフタリンは石油エーテル、アルコール、ベンゼン、トルエンなどの有機溶媒に容易に溶けます。

また、ナフタリンは分子内に二重結合や極性基を持たないため、分子間力 (ファンデルワールス力) で結合しているという特徴があります。従って、分子量が大きくなると分子間力も増大し、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレンなどの高分子多環芳香族炭化水素は、ナフタリンと比べて分子間力が強く、不揮発性・高融点・難溶性などの性質を持ちます。また、ナフタリンは空気中の酸素と反応して酸化され、光や熱によっても容易に酸化されます。

このため、ナフタリンを含む製品は、適切な密閉容器に保管する必要があります。水酸化ナトリウムや硫酸などの強い酸化剤に対して不安定であり、爆発的な反応を起こすことがあるため、これらの物質と混合させないように注意が必要です。

ナフタリンの構造

ナフタリンの構造は、2つのベンゼン環が共有結合している多環芳香族炭化水素です。ベンゼン環と同様に、ナフタリンの構造は平面的であり、二次元的に描写されます。ナフタレンには、1つの置換基を持つ一置換体があります。この一置換体には2種類の構造異性体が存在し、1,4,5,8位に存在する置換基をα位、2,3,6,7位に存在する置換基をβ位と呼びます。

ナフタリンのその他性質

ナフタリンの安全情報

労働安全衛生法で「特定化学物質第2類物質、特定第2類物質」に該当します。船舶安全法、航空法においては可燃性物質類・可燃性物質となっています。皮膚や目に対して刺激性があるため、取り扱いには手袋や保護メガネなどの適切な保護具を着用する必要があります。油性溶剤や有機溶剤と混合すると引火性の高い混合物となるため、火気を避ける必要があります。

トリエチレンジアミン

トリエチレンジアミンとは

トリエチレンジアミン (英: Triethylenediamine) とは、白色結晶性粉末の3級アミンです。

IUPAC名は1,4-ジアザビシクロ [2,2,2] オクタン (英: 1,4-Diazabicyclo [2.2.2] octane) 、別名として1,4-エチレンピペラジン (英: 1,4-Ethylenepiperazine) やDABCO、TEDAなどが挙げられます。

DABCOは、エアプロダクツ&ケミカルズ社の登録商標 (第551479号) です。なお、トリエチレンジアミンは、主な国内法規には該当しません。

トリエチレンジアミンの使用用途

1. ポリウレタンフォームの発泡触媒

トリエチレンジアミンは、ポリウレタン化反応の触媒として主に利用されています。結晶のままあるいはジプロビレングリコールなどで溶解して、重付加反応と泡化反応をバランスよく進行させます。軟質、硬質、半硬質、ウレタン塗料、ウレタンエラストマーなどが製造可能です。

2. 低分子有機合成反応

トリエチレンジアミンは、嵩高い塩基として低分子有機合成化学反応に用いられます。有名な使用例として、森田・ベイリス・ヒルマン反応が挙げられます。トリエチレンジアミンは、同反応における求核触媒です。

アルデヒドまたはイミンと電子吸引基が置換したアルケンをトリエチレンジアミン存在下反応させると、新たな炭素‐炭素結合が形成できます。反応は、マイケルアルドール様の機構で進行します。

そのほか、金属錯塩の形成や脱ハロゲン化剤、シアノエチル化触媒、エステル交換触媒、エポキシ樹脂の硬化触媒として用いられています。

トリエチレンジアミンの性質

化学式はC6H12N2で表され、分子量は112.17です。CAS登録番号は 280-57-9です。

融点は158 °C、沸点は174 °Cです。吸湿性と昇華性を持ち、常温で固体として存在します。アンモニア様の臭いを持つ化合物で、水やエタノール、アセトン、クロロホルムによく溶けます。

酸性・アルカリ性の程度を表すpHは10.8、酸解離定数 (pKa) は3.0と8.6です。酸解離定数とは、酸の強さを定量的に表すための指標の1つです。pKa が小さいほど強い酸であることを示します。

塩基性は他の3級アミンと同等ですが、固定された構造により非共有電子対がむき出しになっているため、高い求核性を有します。

トリエチレンジアミンのその他情報

1. トリエチレンジアミンの製造法

ゼオライトを触媒としたアミン化合物の環化により合成されています。アミン化合物としては、エチレンジアミンモノエタノールアミンジエタノールアミンジエチレントリアミンなどが使用できます。

2. 取り扱い及び保管上の注意

取り扱う場合の対策
強酸化剤との接触は避けてください。呼吸器への刺激のおそれがあります。局所排気装置であるドラフトチャンバー内で使用してください。使用の際は、個人用保護具を着用します。

火災の場合
熱分解により、腐食性で有毒なガスや蒸気を放出するおそれがあります。消火には水噴霧や泡消火剤、粉末消火剤、炭酸ガス、消化砂などを使用します。

保管する場合
トリエチレンジアミンは、光により変質する可能性があります。保管する際は、ポリプロピレンまたはポリエチレン製容器に入れて密閉します。直射日光を避け、換気がよく、なるべく涼しい場所に施錠して保管してください。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/280-57-9.html
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0104-2571JGHEJP.pdf
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/1_4-Diazabicyclo_2.2.2_octane
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yukigoseikyokaishi1943/49/10/49_10_947/_pdf/-char/ja

トリエチレンテトラミン

トリエチレンテトラミンとは

トリエチレンテトラミンの基本情報

図1. トリエチレンテトラミンの基本情報

トリエチレンテトラミン (英: Triethlenetetramine, TETA) とは、有機化合物の1種で、化学式C6H18N4で表される一級アミンです。

別名には、「3,6-ジアザオクタン-1,8-ジイルジアミン」や「トリエンチン」などの名称があります。CAS登録番号は、 112-24-3です。分子量146.23、融点12℃、沸点266〜267℃であり、常温において無色からわずかにうすい黄色の液体です。

密度は0.982g/mLであり、水に極めて溶けやすく、エタノール及びアセトンに溶けます。

トリエチレンテトラミンの使用用途

トリエチレンテトラミンは、繊維製品において防しわ剤、界面活性剤、染料固着剤として用いられています。また、エポキシ樹脂の硬化剤、紙の湿潤強化剤、殺菌剤、殺虫剤、除草剤、キレート剤、コーティング剤、接着剤、潤滑油や切削油の添加剤、イオン交換樹脂、ゴム薬品 (加硫促進剤) などの用途があり、幅広く使用されている物質です。

このほか、トリエチレンテトラミンの二塩化水素化物は、のキレート剤として銅の尿中排泄を促進する効果があります。銅代謝異常であるウィルソン病の治療薬としても用いられています。

トリエチレンテトラミンの性質

トリエチレンテトラミンの合成の例

図2. トリエチレンテトラミンの合成の例

トリエチレンテトラミンは、エチレンジアミンまたはエタノールアミンとアンモニア混合物を酸化物触媒上で加熱して合成します。この合成方法により、トリエチレンテトラミンの他にさまざまなアミン類が得られます。

トリエチレンテトラミンの不純物の例

図3. トリエチレンテトラミンの不純物の例

無色の油状の液体ですが、古くなると空気酸化による不純物のために黄色をおびます。これは多くのアミン類一般に共通する性質です。商業サンプルには分枝異性体のトリス(2-アミノエチル)アミンおよびピペラジンが混入している可能性があります。

トリエチレンテトラミンの種類

トリエチレンテトラミンは、主に研究開発用試薬製品として販売されています。容量の種類は、10mL、25mL、50mL、500mLであり、実験室で取り扱いやすい低容量での提供です。

通常、室温で取り扱い可能な試薬製品として販売されています。製品の中にはエチレンアミン混合物として販売されているものもあるため、注意が必要です。

トリエチレンテトラミンのその他情報

1. キレート剤としてのトリエチレンテトラミン

トリエチレンテトラミンは、配位化学の四座配位子であり、トリエンと呼ばれます。銅 (II) 選択的キレート剤としての作用が特によく知られている物質です。金属に配位してM (trien) L2 タイプの八面体錯体を形成し、いくつかのジアステレオマー構造をとることができます。

2. トリエチレンテトラミンの医学的利用

ウィルソン病は、先天性銅代謝異常によって無機銅が代謝されずに蓄積する疾患ですが、この疾患の治療にトリエチレンテトラミンの塩酸塩は銅キレート剤として有効です。トリエチレンテトラミン塩酸塩は、特にペニシラミンによる効果が低い人や投与が望ましくない人に向けて投与されることが多い物質です。

具体的な物質としては、トリエチレンテトラミン塩酸塩、トリエンチン二塩酸塩、トリエンチン四塩酸塩の各種塩酸塩が各国で用いられています。

3. トリエチレンテトラミンの法規制情報

トリエチレンテトラミンは、引火点138℃であり、引火性のある物質です。そのため、消防法では第4類危険物、第三石油類 (水溶性液体) に指定されています。

また、海洋汚染防止法では有害液体物質に指定されており、船舶安全法、航空法、港則法では腐食性物質に指定されている物質です。 廃棄の前には、可能な限り無害化や安定化及び中和などの処理を行い、危険有害性のレベルを低い状態にする必要があります。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/cas-62-55-5.html

トリエタノールアミン

トリエタノールアミンとは

トリエタノールアミンとは、脂肪族アミンに属する有機化合物の1種です。

別名として、トリヒドロキシトリエチルアミンが挙げられます。アンモニア臭があり、常温において無色透明の粘稠な液体です。低温になると白色の結晶固体が析出します。

可燃性であり、消防法により「第4類危険物第三石油類 (水溶性液体) 」に指定されています。また、化学兵器禁止法において「第2種指定物質・原料物質」です。

トリエタノールアミンは、エチレンオキシドおよびアンモニア水溶液から合成されます。合成反応時に、モノエタノールアミンおよびジエタノールアミンも同時に生成してしまいますが、反応原料の量を調整することで、得られる生成物の比率を制御可能です。

トリエタノールアミンの使用用途

トリエタノールアミンの使用用途として、有機合成反応における塩基触媒の用途が挙げられます。その他、界面活性剤の補助剤として合成洗剤に配合されます。電子材料の洗浄剤や金属腐食防止剤、セメント添加剤、農薬原料、ポリウレタン発泡剤、不凍液添加剤、防錆剤、切削剤などのも用途の1つです。

トリエタノールアミンの身近な使用例としては、pH調整または乳化補助の目的で、シャンプーやリンス、ボディーソープなどに配合されます。乳液やローションなどの基礎化粧料、口紅やアイシャドーなどのメイクアップ化粧料に使用される場合があります。

さらに、溶解補助剤の目的で静脈内注射に配合されたり、医薬品添加剤として外用剤に配合されたりします。

トリエタノールアミンの性質

トリエタノールアミンの主な性質は、塩基性であることです。0.1N濃度の水溶液のpHが約10.5です。融点 (凝固点) は約20℃であり、沸点は約340℃です。トリエタノールアミンは、上記の通りさまざまな用途で使用できる有用な化合物ですが、その反面で安全性の点では注意を要する化合物です。

トリエタノールアミンを吸入すると、呼吸器に刺激を与えます。 長期的に経口摂取したり肌に接触し続けると、人体に障害を引き起こす可能性があります。特に注意を要するのは、トリエタノールアミンの希釈水溶液が霧状になった場合です。

含有濃度が低くても、霧状となった水溶液を吸い込んだり目に入れたりすると、粘膜が刺激されるため有害です。また、トリエタノールアミンの安全性に関して特に発がん性については日本国内だけでなく、国際的に調査されています。

発がん性に関しては、「IARC 77 (2000) でグループ3」に分類されています。トリエタノールアミンに発がん性があることが明確に証明されたわけではありませんが、発がん性を有さないと断言できる状況でもありません。

トリエタノールアミンの構造

トリエタノールアミンの分子構造は、窒素原子 (N) に3つのエタノールが結合したような構造です。Nに3つの炭素 (C) が結合した第三級アミンですが、ヒドロキシ基が3つあるため水溶性が高いという性質を有します。(HOCH2CH2)3N で表すことができます。

トリエタノールアミンは、分子中に3つのヒドロキシ基 (-OH) を有するため、水中でキレート作用を発揮できます。よって、トリエタノールアミンを水中に微量添加することで、水中に存在する金属イオンを安定化させてキレートの状態へ変えられます。

トリエタノールアミンのその他情報

トリエタノールアミンに関する規制

化学兵器への利用を防ぐ目的で、トリエタノールアミンは化学兵器禁止条約の「Schedule 3, part B」リストに掲載されています。また、化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律に基づいて、「第二種指定物質」として指定されています。

参考文献
https://www.nies.go.jp/kisplus/dtl/chem/JPN00150
https://www.tcichemicals.com/JP/ja/p/S0377

デヒドロコール酸

デヒドロコール酸とは

デヒドロコール酸とは、「デヒコール」とも呼ばれている有機化合物です。

融点237℃で、常温において無臭の白色またはわずかにうすい黄色の固体です。エタノールに可溶なものの、水にはほとんど溶けない特徴があります。

デヒドロコール酸は、ウシ胆汁中のコール酸を酸化して得られる半合成胆汁酸です。胆汁分泌促進薬や検査補助薬として用いられています。なお、胆汁分泌促進薬は、胆汁量を増加する水分催胆薬と胆汁成分を増加させる胆汁催胆薬があり、デヒドロコール酸は水分催胆薬です。

両親倍性を持つ分子で、医薬品としての利用のほか、他の使用性が高い薬剤を水に溶解させるための乳化剤として用いられることもあります。

デヒドロコール酸の使用用途

デヒドロコール酸は胆汁酸の代謝産物であり、消化および脂質の吸収に関連する医療分野で使用されます。希薄な胆汁量を増加させる作用があるため、臨床的には胆汁の分泌を増加させる目的で胆管性肝炎などに有用です。また、強力な洗浄作用により胆管炎、胆嚢炎などの治療にも使用されています。

デヒドロコール酸はリパーゼやコレステリン酸エステラーゼなどの脂肪分解酵素の活性化に関与し、脂質の消化を促進する効果も持ちます。そのため、胆汁酸、コレステロール、リン脂質などを減少させることから、その使用に注意が必要です。下痢、腹部不快感、食欲不振などの副作用も認められています。

そのほか、医療用としては「注射剤」として販売されています。また、市販の胃腸薬にも使用可能です。デヒドロコール酸の両親媒性を活かし、脂溶性の薬剤を水溶液に分散させる乳化剤として使用されることもあります。

デヒドロコール酸の性質

デヒドロコール酸は二次胆汁酸の1種で、胆汁酸の代謝産物です。消化酵素の活性化や脂質の吸収を助ける働きがあります。また、胆汁酸の代謝産物として生成され、胆汁酸の代謝経路や腸内細菌叢に影響を与えることが知られています。

親水性のカルボキシル基と疎水性の炭素骨格を持つため、水と油の両方に相溶性を持角が特徴です。この性質により、デヒドロコール酸は消化管内で脂質の乳化を助ける役割を果たします。

デヒドロコール酸は、アルコールやエーテルなどの有機溶媒にも容易に溶解します。また、乳化作用も有しているため、製剤化や薬効最適化する際の添加剤としても利用可能です。

デヒドロコール酸の構造

デヒドロコール酸の構造は、ステロイド骨格を基本としており、カルボキシル基が結合しています。このカルボキシル基は、デヒドロコール酸の親水性をもたらし、水との相互作用を可能にします。

デヒドロコール酸はカルボキシル基の影響により、水と油の両方に相溶性を持ちます。この両親媒性は、デヒドロコール酸による脂質の乳化作用にに寄与しています。

デヒドロコール酸のその他情報

デヒドロコール酸の製造方法

デヒドロコール酸は胆汁酸の1種であり、自然界ではコール酸が酸化される過程で生成されます。工業的にデヒドロコール酸を製造する方法には、いずれもコール酸を用いた方法があります。

コール酸の酸化方法は、化学合成と微生物を用いた生物学的な方法が一般的です。

1. 化学合成
デヒドロコール酸は、コール酸を過酸化水素やクロム酸などの強力な酸化剤で処理することで得られます。

2. 生物学的な産生:
特定の微生物は、コール酸をデヒドロコール酸に変換する能力を持っています。適切な株の微生物を培養し、コール酸を添加してデヒドロコール酸への変換を促します。産生されたデヒドロコール酸は、培養液から抽出・精製されます。

なお、製造方法によっては、デヒドロコール酸の生成物に他の胆汁酸類が混ざることがあります。したがって、最終製品の品質や純度を確保するために、適切な分離・精製技術が重要です。クロマトグラフィー や結晶化などの分離・精製技術が利用されることが一般的です。