デヒドロコール酸とは
デヒドロコール酸とは、「デヒコール」とも呼ばれている有機化合物です。
融点237℃で、常温において無臭の白色またはわずかにうすい黄色の固体です。エタノールに可溶なものの、水にはほとんど溶けない特徴があります。
デヒドロコール酸は、ウシ胆汁中のコール酸を酸化して得られる半合成胆汁酸です。胆汁分泌促進薬や検査補助薬として用いられています。なお、胆汁分泌促進薬は、胆汁量を増加する水分催胆薬と胆汁成分を増加させる胆汁催胆薬があり、デヒドロコール酸は水分催胆薬です。
両親倍性を持つ分子で、医薬品としての利用のほか、他の使用性が高い薬剤を水に溶解させるための乳化剤として用いられることもあります。
デヒドロコール酸の使用用途
デヒドロコール酸は胆汁酸の代謝産物であり、消化および脂質の吸収に関連する医療分野で使用されます。希薄な胆汁量を増加させる作用があるため、臨床的には胆汁の分泌を増加させる目的で胆管性肝炎などに有用です。また、強力な洗浄作用により胆管炎、胆嚢炎などの治療にも使用されています。
デヒドロコール酸はリパーゼやコレステリン酸エステラーゼなどの脂肪分解酵素の活性化に関与し、脂質の消化を促進する効果も持ちます。そのため、胆汁酸、コレステロール、リン脂質などを減少させることから、その使用に注意が必要です。下痢、腹部不快感、食欲不振などの副作用も認められています。
そのほか、医療用としては「注射剤」として販売されています。また、市販の胃腸薬にも使用可能です。デヒドロコール酸の両親媒性を活かし、脂溶性の薬剤を水溶液に分散させる乳化剤として使用されることもあります。
デヒドロコール酸の性質
デヒドロコール酸は二次胆汁酸の1種で、胆汁酸の代謝産物です。消化酵素の活性化や脂質の吸収を助ける働きがあります。また、胆汁酸の代謝産物として生成され、胆汁酸の代謝経路や腸内細菌叢に影響を与えることが知られています。
親水性のカルボキシル基と疎水性の炭素骨格を持つため、水と油の両方に相溶性を持角が特徴です。この性質により、デヒドロコール酸は消化管内で脂質の乳化を助ける役割を果たします。
デヒドロコール酸は、アルコールやエーテルなどの有機溶媒にも容易に溶解します。また、乳化作用も有しているため、製剤化や薬効最適化する際の添加剤としても利用可能です。
デヒドロコール酸の構造
デヒドロコール酸の構造は、ステロイド骨格を基本としており、カルボキシル基が結合しています。このカルボキシル基は、デヒドロコール酸の親水性をもたらし、水との相互作用を可能にします。
デヒドロコール酸はカルボキシル基の影響により、水と油の両方に相溶性を持ちます。この両親媒性は、デヒドロコール酸による脂質の乳化作用にに寄与しています。
デヒドロコール酸のその他情報
デヒドロコール酸の製造方法
デヒドロコール酸は胆汁酸の1種であり、自然界ではコール酸が酸化される過程で生成されます。工業的にデヒドロコール酸を製造する方法には、いずれもコール酸を用いた方法があります。
コール酸の酸化方法は、化学合成と微生物を用いた生物学的な方法が一般的です。
1. 化学合成
デヒドロコール酸は、コール酸を過酸化水素やクロム酸などの強力な酸化剤で処理することで得られます。
2. 生物学的な産生:
特定の微生物は、コール酸をデヒドロコール酸に変換する能力を持っています。適切な株の微生物を培養し、コール酸を添加してデヒドロコール酸への変換を促します。産生されたデヒドロコール酸は、培養液から抽出・精製されます。
なお、製造方法によっては、デヒドロコール酸の生成物に他の胆汁酸類が混ざることがあります。したがって、最終製品の品質や純度を確保するために、適切な分離・精製技術が重要です。クロマトグラフィー や結晶化などの分離・精製技術が利用されることが一般的です。