トリエタノールアミンとは
トリエタノールアミンとは、脂肪族アミンに属する有機化合物の1種です。
別名として、トリヒドロキシトリエチルアミンが挙げられます。アンモニア臭があり、常温において無色透明の粘稠な液体です。低温になると白色の結晶固体が析出します。
可燃性であり、消防法により「第4類危険物第三石油類 (水溶性液体) 」に指定されています。また、化学兵器禁止法において「第2種指定物質・原料物質」です。
トリエタノールアミンは、エチレンオキシドおよびアンモニア水溶液から合成されます。合成反応時に、モノエタノールアミンおよびジエタノールアミンも同時に生成してしまいますが、反応原料の量を調整することで、得られる生成物の比率を制御可能です。
トリエタノールアミンの使用用途
トリエタノールアミンの使用用途として、有機合成反応における塩基触媒の用途が挙げられます。その他、界面活性剤の補助剤として合成洗剤に配合されます。電子材料の洗浄剤や金属腐食防止剤、セメント添加剤、農薬原料、ポリウレタン発泡剤、不凍液添加剤、防錆剤、切削剤などのも用途の1つです。
トリエタノールアミンの身近な使用例としては、pH調整または乳化補助の目的で、シャンプーやリンス、ボディーソープなどに配合されます。乳液やローションなどの基礎化粧料、口紅やアイシャドーなどのメイクアップ化粧料に使用される場合があります。
さらに、溶解補助剤の目的で静脈内注射に配合されたり、医薬品添加剤として外用剤に配合されたりします。
トリエタノールアミンの性質
トリエタノールアミンの主な性質は、塩基性であることです。0.1N濃度の水溶液のpHが約10.5です。融点 (凝固点) は約20℃であり、沸点は約340℃です。トリエタノールアミンは、上記の通りさまざまな用途で使用できる有用な化合物ですが、その反面で安全性の点では注意を要する化合物です。
トリエタノールアミンを吸入すると、呼吸器に刺激を与えます。 長期的に経口摂取したり肌に接触し続けると、人体に障害を引き起こす可能性があります。特に注意を要するのは、トリエタノールアミンの希釈水溶液が霧状になった場合です。
含有濃度が低くても、霧状となった水溶液を吸い込んだり目に入れたりすると、粘膜が刺激されるため有害です。また、トリエタノールアミンの安全性に関して特に発がん性については日本国内だけでなく、国際的に調査されています。
発がん性に関しては、「IARC 77 (2000) でグループ3」に分類されています。トリエタノールアミンに発がん性があることが明確に証明されたわけではありませんが、発がん性を有さないと断言できる状況でもありません。
トリエタノールアミンの構造
トリエタノールアミンの分子構造は、窒素原子 (N) に3つのエタノールが結合したような構造です。Nに3つの炭素 (C) が結合した第三級アミンですが、ヒドロキシ基が3つあるため水溶性が高いという性質を有します。(HOCH2CH2)3N で表すことができます。
トリエタノールアミンは、分子中に3つのヒドロキシ基 (-OH) を有するため、水中でキレート作用を発揮できます。よって、トリエタノールアミンを水中に微量添加することで、水中に存在する金属イオンを安定化させてキレートの状態へ変えられます。
トリエタノールアミンのその他情報
トリエタノールアミンに関する規制
化学兵器への利用を防ぐ目的で、トリエタノールアミンは化学兵器禁止条約の「Schedule 3, part B」リストに掲載されています。また、化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律に基づいて、「第二種指定物質」として指定されています。
参考文献
https://www.nies.go.jp/kisplus/dtl/chem/JPN00150
https://www.tcichemicals.com/JP/ja/p/S0377