ナフタリン

ナフタリンとは

ナフタリンとは、炭素と水素からなる芳香族炭化水素の一種です。

化学式 はC10H8です。芳香族炭化水素のひとつで、コールタールを精製して製造されます。白色または無色の光沢のある単斜晶系のうろこ状結晶です。

ナフタリンは芳香族炭化水素の代表的なものの1つであり、フタル酸エステルやアニリン、酸化ナフタリンなどの合成原料としても使用されます。色々な合成染料に必要な原料で、合成樹脂の原料としても使用されています。また、化学薬品、合成樹脂製造の原料として大量に使用されています。

ナフタリンの使用用途

ナフタリンは主に防虫剤、染料、医薬品、農薬、潤滑剤などの原料として使用されます。石油や石炭の乾留から得られる副産物であり、これらの産業の発展に貢献してきました。ナフタリンを原料とする染料は、耐久性が高く鮮やかな色合いが得られるため、綿織物や毛織物の染色に広く使用されています。医薬品の原料としても使用され、特に患者の血液中にあるフェノール類の検査に使用される試薬の1つとしても知られています。

ナフタリンを原料とする防虫剤は、農業用途や木材の防腐剤、衣料品の虫よけ剤などに幅広く利用されています。農薬としては、稲のカメムシ、施設野菜のウリハムシ、アザミウマ等の駆除に使用されますが、 登録失効農薬成分です。繊維の防虫剤としては、家庭での使用が一般的ですが、クリーニング業者などでも使用される場合があります。

かつては衣服などの防虫剤として広く使用されていましたが、現在ではパラジクロロベンゼンなどの代替品にとって代わられる傾向にあります。精製ナフタリンは有機顔料、テトラリン、デカリン、ナフチルアミンの材料として用いられます。また、95%ナフタリンは、精製品の原料、無水フタル酸が主な用途です。

ナフタリンの性質

ナフタリンは有機化合物の中でも比較的低分子量の化合物であり、水にはほとんど溶けない無極性分子です。しかし、有機溶媒には溶けやすい性質があります。そのためナフタリンは石油エーテル、アルコール、ベンゼン、トルエンなどの有機溶媒に容易に溶けます。

また、ナフタリンは分子内に二重結合や極性基を持たないため、分子間力 (ファンデルワールス力) で結合しているという特徴があります。従って、分子量が大きくなると分子間力も増大し、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレンなどの高分子多環芳香族炭化水素は、ナフタリンと比べて分子間力が強く、不揮発性・高融点・難溶性などの性質を持ちます。また、ナフタリンは空気中の酸素と反応して酸化され、光や熱によっても容易に酸化されます。

このため、ナフタリンを含む製品は、適切な密閉容器に保管する必要があります。水酸化ナトリウムや硫酸などの強い酸化剤に対して不安定であり、爆発的な反応を起こすことがあるため、これらの物質と混合させないように注意が必要です。

ナフタリンの構造

ナフタリンの構造は、2つのベンゼン環が共有結合している多環芳香族炭化水素です。ベンゼン環と同様に、ナフタリンの構造は平面的であり、二次元的に描写されます。ナフタレンには、1つの置換基を持つ一置換体があります。この一置換体には2種類の構造異性体が存在し、1,4,5,8位に存在する置換基をα位、2,3,6,7位に存在する置換基をβ位と呼びます。

ナフタリンのその他性質

ナフタリンの安全情報

労働安全衛生法で「特定化学物質第2類物質、特定第2類物質」に該当します。船舶安全法、航空法においては可燃性物質類・可燃性物質となっています。皮膚や目に対して刺激性があるため、取り扱いには手袋や保護メガネなどの適切な保護具を着用する必要があります。油性溶剤や有機溶剤と混合すると引火性の高い混合物となるため、火気を避ける必要があります。

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