サルコシンとは
サルコシン (英: Sarcosine) とは、天然のアミノ酸の1種です。
IUPAC名は2- (メチルアミノ) 酢酸 (英: 2- (Methylamino) acetic acid) 、別名として、N-メチルグリシン (英: N-Methylglycine) やメチルグリシン (英: Methylglycine) 、サルコシン酸 (英: Sarcosinic acid) とも呼ばれます。略号はSarです。
サルコシンの使用用途
1. 界面活性剤の原料
サルコシンは、練り歯磨き粉や生分解性界面活性剤の原料として、幅広く使用されてきました。例えば、窒素上にラウリン酸が付加したラウロイルサルコシンのナトリウム塩は、皮膚への刺激性が低く、硬水を用いた場合も洗浄力に優れ、泡立ちの良い界面活性剤です。
これらの優れた洗浄効果から、シャンプーを始めとし、ボディーソープや洗顔料、歯磨き粉などによく用いられます。
2. 医療分野
最近の研究では、前立腺がんのバイオマーカーとなる可能性が高いことや、うつ病や統合失調症などの精神疾患に効果があるとの結果も示されています。また、サルコシンの重合体 (ポリマー) であるポリサルコシンは、DDS (ドラッグデリバリーシステム) 製剤として利用する研究も進められています。
サルコシンの性質
化学式はC3H7NO2で表され、分子量は89.09です。CAS番号は107-97-1で登録されています。サルコシンは208°Cで分解し、常温で白色結晶性粉末の固体です。無臭で甘味を持ち、潮解性があります。水に溶け、エタノールにはあまり溶けません。
酸性・アルカリ性の程度を表すpHは7.4 (5.6 μg/mL溶解時) です。中性条件下では、カルボアニオンとアンモニウムイオンが生成し、双性イオンとして存在します。
サルコシンは筋肉やその他の体組織に含まれる天然アミノ酸です。食品では、卵黄、マメ科植物、ハムなどに含まれます。N-メチルグリシン (NMG) とも呼ばれ、コリンが代謝される際に形成され、その後サルコシンデヒドロゲナーゼという酵素によりグリシンに分解されます。
サルコシンのその他情報
1. サルコシンの製造法
サルコシンは、ストレッカーアミノ酸合成 (英: Strecker amino acid synthesis) により工業的に生産できます。ストレッカーアミノ酸合成とは、アルデヒドとアンモニア、シアン化水素からアミノ酸を合成する方法です。
アルデヒドとアンモニアが最初に反応しイミンを形成し、イミンに対するシアン化物イオンの求核攻撃でアミノニトリルが生成します。続く加水分解により、目的のアミノ酸を合成することが可能です。最終段階の加水分解は、通常、塩酸を加える後処理によって進行します。
また、クロロアミノ酢酸とメチルアミンの求核置換反応によっても合成可能です。
2. 取り扱い及び保管上の注意
取り扱い時の対策
強酸化剤は、サルコシンの混触禁止物質です。取り扱いおよび保管の際は、接触を避けてください。取り扱う際は、長袖の保護衣と保護手袋、保護メガネを必ず着用し、ドラフトチャンバ内で使用してください。
火災の場合
燃焼すると分解して、一酸化炭素 (CO) 、二酸化炭素 (CO2) 、窒素酸化物 (NOx) などの有毒なガスを生成することがあります。火災発生時は、二酸化炭素 (CO2) や粉末消火剤、水噴霧、泡、消火砂を用いて消火してください。使用が禁じられた消火剤は特にはありません。
保管する場合
ガラス製の容器に密閉し、直射日光の当たらない、換気がよく涼しい場所に保管してください。
参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0119-0767JGHEJP.pdf
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Sarcosine