一酸化炭素とは
一酸化炭素とは、炭素の酸化物の1種であり、常温常圧で無色無臭、可燃性の気体です。
酸素が不十分な環境下で、炭素や炭素化合物が燃焼したり、高温環境下で二酸化炭素がコークスによって還元されたりする際に発生します。一酸化炭素は、ボンベ入りで市販されています。また、石炭や石油などを多量に消費する工場地帯の大気中には、多量の一酸化炭素が存在することもあります。
さらに、自動車の排気ガス中にも、一酸化炭素が含まれています。一酸化炭素は、一酸化炭素中毒の原因となる物質で、労働安全衛生法では、「特定化学物質第3類物質」「危険物・可燃性のガス」「名称等を表示・通知すべき危険物及び有害物」に、労働基準法では、「疾病化学物質」に、それぞれ指定されており、取り扱いには注意が必要です。
一酸化炭素の使用用途
一酸化炭素は、発生炉ガスや水性ガス等の主成分として、工業用気体燃料に利用される他に、金属の冶金を行う際に、還元剤としても広く用いられています。メタノール、アンモニア原料などをはじめとする、工業上重要な化合物を製造する際の原料としても、非常に重要な化合物です。
一酸化炭素は、特殊な条件下で触媒を作用させると、多くの遷移金属と反応し、金属カルボニルをつくります。例えば、ニッケルカルボニルやコバルトカルボニルは、レッペ反応やオキソ反応の触媒として、有機合成化学において重要な化合物です。
一酸化炭素の性質
一酸化炭素は、分子式がCO、分子量が28.01の気体です。引火点-191℃、融点-205℃、沸点-191.5℃、発火点605~609℃で、水にはほとんど溶けません。金属と反応して金属カルボニルを作りやすい性質があります。青色の炎を出して燃えて炭酸ガスになります。
一酸化炭素は、血液中のヘモグロビンの作用を阻害するといった毒性を持っています。また、還元性があり、空気と混合すると、きわめて爆発しやすいです。火災の際は、粉末または炭酸ガス消火器を用います。
一酸化炭素のその他情報
1. 一酸化炭素の製造方法
一酸化炭素は、実験室レベルでは、濃硫酸とギ酸を混合し、脱水することによって生成されます。
HCOOH → CO + H2O
工業的には、コークスや石炭などの炭素と水蒸気を800℃以上の高温で反応させることで、一酸化炭素と水素の混合ガス (水性ガス) として得られます。
C + H2O → CO + H2
また、工業的には、炭化水素ガス (天然ガス、プロパン、製油所ガス) から一酸化炭素ガスを作ることができます。炭化水素ガスを活性炭に通して脱硫した後、水蒸気、二酸化炭素と混合します。
この混合ガスを、780℃に加熱されたニッケル触媒を充填した反応管に通すことで、一酸化炭素と二酸化炭素、水素の混合物が得られます。融点の違いからCO2は冷却により除去され、さらにソーダで洗浄、脱水した後、深冷分離法により、一酸化炭素ガスと水素ガスは分離されます。
CH4 + H2O → CO + 3H2 / CH4 + 2H2O → CO2 + 4H2
2. 一酸化炭素中毒
一酸化炭素中毒とは、一酸化炭素が原因となる中毒症状のことです。頭痛、めまい、脱力感、嘔吐、胸痛、錯乱などの症状が現れます。一酸化炭素がヘモグロビンと結合して、酸素を運搬する機能を妨げることで、中毒症状を引き起こします。
1時間の暴露では、症状は500ppmで現れ始め、1,000ppmでは顕著な症状が現れ、1,500ppmで死亡に至ります。症状が風邪に似ているため、火事などが原因でない場合には、気づかず一酸化炭素を吸い続け、急速に昏睡に陥り、気付かずに死亡することも珍しくありません。
対策として、一酸化炭素ガスが発生する危険性のある箇所に、一定以上の濃度になるとアラームが鳴るガス警報器を使用することなどが挙げられます。
参考文献
https://unit.aist.go.jp/qualmanmet/refmate/crm/sds/3406e_J_M.pdf