セリウム

セリウムとは

セリウム (英: cerium) とは、元素記号がCe、原子番号が58の希土類元素です。

セリウムは周期表3族のランタノイド元素です。地殻中の濃度は質量パーセント濃度で0.046%で、希土類元素の中では最も多く存在しています。主にモナザイトやバストネザイトなどの鉱物に含まれて産出します。

原子価は+2、+3、+4を取ります。+2は珍しいですが、CeI2、CeH2、CeSなどが存在します。セリウム (IV) 塩は赤橙色または黄色ですが、セリウム  (III) 塩は白色または無色が多いです。いずれも紫外線をよく吸収します。

セリウムの使用用途

セリウムは商業的に多くの用途で使われています。セリウムは紫外線を吸収するため、自動車のフロントガラスやUVカットのサングラスに使用可能です。

セリウムの酸化物は、ガラスの主要成分である二酸化ケイ素と化学反応を起こすため、ガラスの研磨剤として使用されています。鉄との合金は、発火合金としてライター等に使われています。

セリウムは青い蛍光を発する蛍光体としても知られており、LEDやブラウン管に利用可能です。

セリウムの性質

セリウムは銀白色の金属で、空気中で酸化されやすく、徐々に酸化セリウム (IV) (CeO2) に変わります。融点は795°C、沸点は3,443°Cです。160°Cで発火します。

セリウムは水に少しずつ溶けて、熱水との反応によって、水酸化セリウム (III) が生成します。酸やアンモニアに可溶です。ランタノイドの水溶液に過ハロゲン酸とアンモニアを加えると、セリウムが暗褐色になります。そのため、セリウムは容易に希土類の混合物から検出可能です。

セリウムはあらゆるハロゲンと反応します。希硫酸にすぐ溶けて、無色のCe(III)イオンの溶液が生じ、Ce(III)イオンは[Ce(OH2)9]3+などの錯体として存在します。

セリウムの構造

セリウムの常温常圧での安定結晶構造は面心立方格子構造です。730°C以上で体心立方格子構造を取り、低温で六方最密充填構造になり、-150°C以下では再び面心立方格子構造を取っています。

セリウムの室温付近での密度は6.770g/cm3、融点での液体密度は6.55g/cm3です。電子配置は[Xe] 4f1 5d1 6s2です。

セリウムのその他情報

1. セリウムの産出

セリウムの資源は、日本でも少量産出していますが、中国、アメリカ、インドなどの埋蔵量が多いです。鉱物では(Ce,La)(CO3)Fであるバストネサイト(英: Bastnäsite) や(Ce, La, Nd, Th)PO4であるモナザイト (英: Monazite) が主体で、それぞれ酸化セリウムが半数弱含まれています。産出量の約9割が、中国内陸部の磁鉄鉱副産物の複雑鉱石から精製されています。

2. セリウムの製造

汎用研磨剤には、アメリカ産のバストネサイトを酸化・粉砕・粒度分級して使われます。水酸化物を塩酸によって抽出して、酸化セリウムのような化合物が製造されています。

金属カルシウム還元や溶融電解によって、金属セリウムを生成可能です。主にフェロセリウム (英: Ferrocerium) はアメリカで製造されており、鉄鋼添加剤として輸入しています。

3. セリウムの同位体

セリウムには、136Ce、138Ce、140Ce、142Ceの4種類の安定同位体と、質量数119~157の放射性同位体があります。これらの中で天然存在比が最も多いのは、88.48%の140Ceです。142Ceは2回のベータ崩壊を起こすと推測されており、半減期は5×1016年以上ですが、観測されたことはありません。

放射性同位体は27種類同定されていて、半減期が284.893日の144Ceが最も安定しています。139Ceの半減期は137.640日で、141Ceの半減期は32.501日です。それ以外の放射性同位体はすべて半減期が4日以内で、ほとんどは10分以内です。2つの核異性体も存在します。

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