炭化チタン

炭化チタンとは

炭化チタン (英: titanium carbide) とは、金属原子と炭素原子が隣り合っているNaCl型の6配位の結晶 (面心立方格子) です。

組成式はTiC、モル質量は59.9g/mol、融点は3,170℃、密度派4.9g/cm3、CAS番号:12070-08-5です。常温では黒色の粉末状の見た目をしています。高価だったタングステンの代わりとして、フィラメントに使用するために20世紀に生産が始められました。

炭化チタンは非常にまれに自然界に存在する鉱物であるkhamrabaevite (Ti、V、Fe) Cの形で、自然に発生します。自然界で見られる結晶の大きさは0.1mm-0.3mm程度です。

炭化チタンの性質

炭化チタンは水には溶けませんが、硝酸・王水には可溶といった性質をもちます。温度にほとんど依存しない高い電気伝導度をもち、ビッカース硬さが約3,200と極めて高い点が特徴です。

工業的には真空炭化法、金属浴法 (メンストラム法) 、水素化チタン炭化法、プラズマ法 (超微粒粉末) 、気相析出法や酸化チタンを炭素で還元することによって製造されています。金属の炭化物は一般的に焼結するのが難しく、非常に高い温度にしたり、助燃剤などを使用しなければ高密度の焼結体を得ることは難しいと考えられてきました。

しかし、チタンと炭素の割合を2:1にしたとき、わずか数分間の時間と1500℃程度の温度で非常に高い強度の焼結体が得られたという研究が報告されています。保存は常温の環境で行っても問題ありません。

炭化チタンの使用用途

1. 切削工具

炭化チタンの極めて高い硬度や耐火性を利用して、切削用の工具などに使用されています。主にコバルトやニッケル、モリブデンに炭化チタンの粉末を混ぜることで製造されています。通常の超硬合金はタングステンにコバルト粉末を混ぜたりなど、タングステンベースで作られることが多いです。

しかし、炭化チタンはタングステンを使用せずとも非常に高い硬度を実現することができ、コストの削減だけでなく、切削の精度および速度向上、滑らかさの向上にも役立ちました。また、炭化タングステンに炭化チタンをある程度混ぜることによって、炭化タングステンの摩耗や酸化に対する耐久性を増加させることができます。特に、高い切削速度で鋼を加工するために使用されるサーメットに利用されています。

表面に炭化チタン加工を施すことで耐久性を引き上げることができますが、衝撃と急冷には脆いので注意が必要です。

2. コーティング材

炭化チタンは、金属様表面被覆として用いられることも多いです。機械の部品や時計の部品などの精密機器部品において、炭化チタンで表面加工を行うことによって耐摩耗性を向上させています。また、炭化チタンはアーク電解にも利用されています。

アルミニウム合金に炭化チタンのナノ粒子を混ぜた物質を利用することで、様々な合金を亀裂無しで溶接することが可能です。各種セラミックスコーティングの中でも高い硬度があり、摩擦係数も0.25程度と非常に低く、耐熱性も強いといった特徴もあります。そのため、高温環境や高温になることが想定される部材へも、代表的なコーティング材として広く利用されています。

2. その他の使用用途

また、炭化チタンは鉄鋼材の成型加工に適したコーティングであり、樹脂への離型性も非常に優れているため、主に「プレス成形」「冷間鍛造」「粉末成形」「プラスチック成形などの金型」「ロール」「パイプ成形用の金型や治具」などへのコーティングでも使用されています。

また、金属アレルギーを起こさないことや軽量性から、ネックレスなどのアクセサリーにも使用されています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です