カテコールとは
図1. カテコールの基本情報
カテコールとは、二価フェノールの1種で、無色の稜柱状晶です。
別名「1,2-ベンゼンジオール」「1,2-ジヒドロキシベンゼン」「ピロカテコール」「ブレンツカテキン」などとも呼ばれます。毒物及び劇物取締法では「劇物」に、労働安全衛生法では「名称等を表示すべき有害物」「名称等を通知すべき有害物」に、化学物質排出把握管理促進法では「第一種指定化学物質」に、それぞれ指定されており、取り扱いには注意が必要です。
カテコールの使用用途
カテコールは、p-メチルアミノフェノールと組み合わせることで、写真用現像薬として用いられています。また、アルカリ溶液中で金属と錯体を生成する特徴を利用して、チタン・モリブデン・鉄・コバルト等の金属イオンの分析用試薬としても使用可能です。
さらに、酸化防止剤、めっき添加剤、重合防止剤、ゴム加硫剤などとして用いられる他に、医・農薬品の中間体原料としても使用されています。カテコールを酸化重合して得られるカテコールメラニンは、不溶性黒色色素として利用可能です。
カテコールの性質
カテコールは、昇華しやすいです。融点は105°Cで、沸点は245.5°Cです。水・アルコール・エーテルに溶解します。酸化されやすく、特にアルカリ溶液の状態では、空気中で変色しやすいです。
o-キノンとの間に酸化還元系をつくり、生体内電子伝達系の1つとして働きます。カテコールには還元力があり、銀鏡反応 (英: silver mirror reaction) を示し、フェーリング液 (英: Fehling’s solution) を還元するといった作用を有します。
カテコールの構造
カテコールは、ベンゼン環上のオルト位に、ヒドロキシ基を2つ持つ有機化合物です。ポリフェノール (英: polyphenol) に含まれる構造としても知られています。
化学式はC6H6O2で、モル質量は110.1g/molです。示性式はC6H4(OH)2で、密度は1.344g/cm³です。ヒドロキノン (英: hydroquinone) やレゾルシノール (英: resorcinol) の、ヒドロキシ基の場所が違う位置異性体でもあります。
カテコールのその他情報
1. カテコールの合成法
カテコールは、リグニン (英: lignin) やタンニン (英: tannin) をアルカリ融解させることで生成します。o-ベンゾキノンの還元でも合成できます。
それ以外にも、o-クロロフェノールのアルカリ融解やグアイアコール (英: guaiacol) の脱メチル化などによっても合成可能です。
2. カテコールの骨格を含む生体物質
図2. カテコールの骨格を含む生体物質
カテコールは、数多くの生体物質の骨格に使われています。具体的には、ドーパミン (英: dopamine) 、レボドパ (英: L-3,4-dihydroxyphenylalanine) 、アドレナリン (英: adrenaline) 、ノルアドレナリン (英: noradrenaline) のようなカテコールアミン (英: catecholamine) だけでなく、漆の主成分であるウルシオール (英: urushiol) やカテキン (英: catechin) などのポリフェノールにも、カテコールの骨格が含まれています。
3. カテコールの位置異性体
図3. カテコールの位置異性体
カテコールの位置異性体には、ヒドロキノンやレゾルシノールが存在します。ヒドロキノンは1,4-ジヒドロキシベンゼンとも呼ばれ、ベンゼン環のパラ位にヒドロキシ基を2つ持っています。密度は1.3g/cm3、融点は172℃、沸点は287℃です。
レゾルシノールは1,3-ジヒドロキシベンゼンとも呼ばれ、ベンゼン環のメタ位にヒドロキシ基を2つ持っています。密度は1.28g/cm3、融点は110°C、沸点は280°Cです。