セレン

セレンとは

セレン (英: Selenium) とは、濃赤茶~青黒色の非晶形固体、あるいは赤色透明か金属質の灰~黒結晶です。

セレンの元素記号はSeで、原子番号は34番、CAS登録番号は7782-49-2のカルコゲン元素のひとつです。1817年に発見され、ギリシア語の月 (selene) にちなんで命名されました。多くの同素体が存在し、常温では金属セレンが最も安定です。

セレンは人にとって必須の微量元素です。自然界に広く存在し、土壌中や水、特定の食品に含まれています。生体内では、グルタチオンペルオキシダーゼという強い抗酸化作用を持つ酵素の構成成分となっていたり、硫黄・ヒ素・カドミウム・水銀などと拮抗作用を示し毒性を軽減させています。

セレンの使用用途

セレンの使用用途として、半導体性、光伝導性などの特性を利用して、セレン整流器、乾式複写機の感光ドラム、太陽光電池に使用されています。その他には、着色剤やゴムの添加剤としても使用されています。
現在では、毒性があるため使用が制限され多くの用途で代替品が使用されています。

食品においては、セレンは生体内で必須元素であることからサプリメントとして使用されています。毒性の強い元素であるため、必要量と中毒量の差が小さく、サプリメントとしての摂取には注意が必要です。ただし、食品中のセレン濃度は土壌中のセレン濃度に依存するため、日本では不足することはほとんどないと言われています。

セレンの性質

セレンは、温度変化の速度によって相互変換する同素体が複数存在し、融点が170~217℃、沸点が685℃、密度は4.2~4.8です。化学反応で調製された場合、セレンは通常、アモルファスの赤レンガ色の粉末ですが、急速に溶融すると、黒色のガラス質形態を形成し、通常はビーズとして市販されています。赤色のα、β、およびγ型のセレンは、二硫化炭素などの溶媒の蒸発速度を変えることによって、黒色セレンの溶液から製造されます。

セレンのその他情報

1. セレンの製法

セレンは、銅、ニッケル、鉛など、多くの硫化物鉱石に含まれるセレン化物から製造されます。セレンの工業生産では通常、銅の精製中に得られた残留物を、炭酸ナトリウムで酸化して二酸化セレンを生成し、これを水と混合して酸性化して亜セレン酸を形成させます (酸化工程)。さらに、亜セレン酸を二酸化硫黄でバブリングすると (還元工程)、セレンを得ることができます。

2. セレンの反応

セレンの化合物は、一般に酸化数-2、+2、+4および+6で存在します。セレンは、酸素と反応して二酸化セレンを生成 (Se8+8O2→8SeO2)し、硝酸で酸化することで、亜セレン酸を直接作ることができます (3Se+4HNO3+H2O→3H2SeO3+4NO)。さらに、セレンはフッ素と反応して六フッ化セレンを生成 (Se8+24F2→8SeF6) し、シアン化物と反応するとセレノシアネートを生成します (Se8+8KCN→8KSeCN)。

3. 法規情報

セレンは、毒物及び劇物取締法で「毒物」、労働安全衛生法で「名称等を表示すべき危険物及び有害物」「名称等を通知すべき危険物及び有害物」、化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) で「第1種指定化学物質」に指定されており、使用の際には注意が必要です。さらに、消防法では「消防活動阻害物質」に、労働基準法では「疾病化学物質」に該当します。

4. 取扱いおよび保管上の注意

取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。

  • 容器を密栓し、乾燥した冷暗所に保管する。
  • 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
  • 激しく反応するため、強酸との接触は避ける。
  • 火災や爆発のおそれがあるため、硝酸や強酸化剤との接触は避ける。
  • 使用時は保護手袋、保護衣、保護眼鏡、保護面を着用する。
  • 取扱い後はよく手を洗浄する。
  • 皮膚に付着した場合は、速やかに水で洗い流す。
  • 眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗う。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0037.html

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