波長板

波長板とは

波長板

波長板とは、入射する光の偏光面を回転させて、異なる偏光の光を出力するための光学素子です。

よく使用される波長板として、1/2波長板と1/4波長板の2種類があります。1/2波長板は光の波長をλ (読み方: ラムダ) としたときに、λ/2だけ光の位相をずらし、偏光面を回転させます。このとき、出射する光は直線偏光のままです。

1/4波長板はλ/4の位相をずらすことで、直線偏光を円偏光へと変換できます。反対に、円偏光を直線偏光に変換することも可能です。 

波長板の使用用途

波長板は学術用途から産業用途まで、光学機器を扱う場面で頻繁に使用されます。特に、レーザー機器を使う場合、レーザーの偏光方向を変えたり、光量を調整したりするために波長板は有効です。

例えば、加工用レーザーでは、1/4波長板で直線偏光を円偏光へと変換し、均一な材料の切断に応用されています。また、学術用途では、レーザーの偏光面を1/2波長板などで調整することで、分子の振動や解離のダイナミクスをより詳しく理解するためにも利用されます。分子の電子励起、振動励起は特定方向の電場によって相互作用するので、偏光方向の制御が重要です。

反対に、特定方向に励起したくない場合は、1/4波長板を使用して円偏光に変換します。波長板はレーザーの分割を任意制御する装置にも利用可能です。1/2波長板で直線偏光の角度を変えられるので、偏光によって光を分割するビームスプリッターと組み合わせることで、分けるビームの強度を任意に制御できる装置も作れます。

この際、2つに分けたビームの偏光は直角となっているため、再度偏光を制御するには、2つのミラーを使って偏光角を戻すか、または再度1/2波長板によって偏光角を変える必要があります。

波長板の原理

波長板は、屈折率に異方性があるため、偏光方向によって進行速度が異なり、位相差が生まれます。そのため、波長板を通過した直線偏光の偏光面を変えたり、円偏光にしたりすることができます。そもそも偏光とは、電場や磁場の振動方向が一定に揃った光のことです。太陽などの自然光では振動方向はランダムで非偏光であるのに対し、レーザーなどの人為的に生み出した光では偏光させることが可能です。

波長板は、水晶のように偏光方向によって屈折率が異なる材料 (複屈折材料) です。一般的に、媒質中を進む光は一般に屈折率が大きいほど、光の速度は小さくなります。そのため、低屈折率の方向 (進相軸) を進む光はより早く材料中を伝搬し、高屈折率の方向(遅相軸) を進むほど光は遅くなります。

これらの性質を利用することで、偏光成分間の位相シフトを生み出すことが可能です。仮に、進相軸に対して一定の角度を持った入射光が波長板に入射すると、光の成分 (ベクトル) が進相軸方向と遅相軸方向に、分解されて光の位相差が生じます。その結果、出射光の偏光面が回転するという仕組みです。

波長板のその他情報

波長板の使い方

波長板は通常、回転角度が分かるホルダーに入れて使用します。波長板の角度とレーザー光の偏光角によって、通過後のレーザーの偏光角が決まります。通過後のレーザー光を任意の偏光角にできるため、回転ホルダーが役に立つわけです。

波長板の角度とレーザーの偏光角から通過後の偏光角計算できますが、実際に確認する場合は、通過後の光を偏光子に通して光の強度を見ます。この際、紙に散乱させて確認することもできますが、高強度のレーザーの場合、紙が燃えたり、散乱光が強く遮光眼鏡を使用していても目にダメージを及ぼしたりする可能性があるため、注意が必要です。

より安全で定量的に行うためには、パワーメーター等で任意の角度で最も強度が強くなっているか確認する方法がおすすめです。

参考文献
https://www.fiberlabs.co.jp/tech-explan/about-wave-plate/
https://www.kogakugiken.co.jp/products/retardation01.html
https://www.chuo.co.jp/core_sys/images/main/pdf/38GC0994.pdf
https://www.edmundoptics.jp/knowledge-center/application-notes/optics/understanding-waveplates/

盤用キャビネット

盤用キャビネットとは

盤用キャビネット

盤用キャビネットとは、産業用制御盤に用いられる収納箱のことを指します。

産業用制御盤は、内部に電磁開閉器遮断器などの機器を収納した制御装置です。産業用制御盤内には電気回路や電子機器を収納するため、一般的に水や粉塵、直射日光に弱く、不要な箇所に人が触れると感電する恐れもあります。盤用キャビネットはこれらの外的環境から制御用機器を保護しつつ、メンテナンス性を向上させるために制御機器を整理して並べる役割を果たします。

盤用キャビネットの使用用途

盤用キャビネットは、産業用の制御機器がある箇所には至る所で使用されます。

商業施設を見渡すと、人通りが少ない場所に金属製の制御盤が設置されています。商業施設の給電と制御を担う盤のキャビネットであり、注意すると見つけることが出来ます。また、電柱の下には信号機制御用盤のキャビネットが設置されていたり、学校や駅舎でもキャビネットを発見することが出来ます。

盤用キャビネットは一般的な生活にも密接していますが、目立たない場所に設置されることが一般的です。

盤用キャビネットの原理

盤用キャビネットは、鉄製のものが主流です。堅牢、安価で加工性に優れるためです。海岸沿いや腐食環境下ではステンレスやプラスチックが使用されることもあります。また、盤用キャビネットには塗装も施されます。周囲の色に合わせて目立たなくする目的です。その為、塗装色は需要に合わせて選定可能な場合がほとんどです。耐塩・耐酸塗装を施してキャビネットの腐食防止を目的とする場合もあります。

盤用キャビネットの取っ手部分は一般的に錠前が付属します。盤用キャビネットの目的の一つは、関係者以外に触れられないようにするためであり、鍵を掛けることで不用意に部外者が触れて怪我をすることを防ぎます。

盤用キャビネットの内部には制御機器を整列させるための鉄板や木板が設置されます。この板は基板と呼ばれ、キャビネットの盤裏に縫い付けられます。

盤用キャビネットは屋外に設置することも多くあります。屋外仕様の盤用キャビネットには水切り用の屋根が付いています。また、粉塵や水滴が内部に侵入しない構造となっており、保護等級としてはIP44またはIP45以上を担保されます。

 

浮上油回収装置

浮上油回収装置とは

浮上油回収装置

浮上油回収装置 (英: floating oil recovery apparatus) とは、切削油や洗浄液に混入した油分を回収する装置です。

オイルスキマーや油水分離装置とも呼ばれます。浮上油は、主に工作機械の作動液や汚染水などに浮かぶ油であり、クーラントの腐敗や、悪臭の原因となります。浮上油回収装置を使用することで、これらの原因となる油を回収し、切削する刃物の寿命を延ばすことが可能です。

油の回収方式には、ベルト式やスクリュー式、フロート式など多くの種類があります。

浮上油回収装置の使用用途

浮上油回収装置は、主に切削加工を行う工作機械のクーラントタンクや、工場内の排水槽などに使用されます。

加工を行う工程で、クーラント内に作動油や潤滑油が混入しやすいため、クーラントを清浄に保つために頻繁に油を取り除く必要があります。工場から排出される水にも油が混入する恐れがあり、環境中への放出は環境汚染の重大な原因です。

浮上油回収装置を使用すれば、排水を清浄化ができ、環境汚染対策に役立つことが可能です。そのほか、洗車場の排水や自動車リサイクル工場の排水などの油水分離、及び側溝雨水に混じる油分回収にも活用できます。

浮上油回収装置の種類

工作機械で使用されるクーラントの貯留槽には、徐々に浮上油が蓄積されます。浮上油は、作業環境の悪化や排水により環境汚染につながる恐れがあり、浮上油を取り除かなければなりません。浮上油回収装置の回収方式として、ベルト式や円盤式、スクリュー式、及びフロート式などが挙げられます。

また、液中に混入している油分を積極的に分離浮上させる装置を使用するケースも多くあります。マイクロバブルを発生させて液中の油粒を浮上させたり、粗粒化フィルタを通して油粒子を大きくした後、傾斜板を使って浮上促進させたりする方法などが使われます。

1. ベルト式

ベルト式浮上油回収装置は、貯留槽の中に回転する樹脂製またはスチール製のベルトを備え付け、ベルトに付着した液体を別の分離タンクに排出します。排出された液体は、分離タンクの中で油と水が分離され、表面の浮上油のみ回収口から排出されます。分離タンクの中にクーラントを残すことが可能です。

2. 円盤式

円盤式浮上油回収装置は、貯留槽の中で回転する円盤に油を付着させ、油を分離して回収する方式です。ベルト式より耐久性に優れていますが、衝撃で円盤が割れることもあります。

3. スクリュー式

スクリュー式浮上油回収装置は、特殊ならせん構造のスクリューを回転させて油を回収します。水溶液と油が持つ粘度の差を利用することで、粘度の大きい油のみがスクリューに付着する方式です。ベルト式と異なり、クーラントと油の分離タンクが不要という特徴があります。回収能力が高いメリットがありますが、切粉やスラッジを巻き込みやすいのが短所です。

4. フロート式

フロート式浮上油回収装置は、貯留槽にフロートを浮かせ、液面に溜まっている浮上油を吸引して分離する方式です。浮上している油の回収能力は優れていますが、浮上していない油や流れが速い貯留槽の場合は、積極的に油を浮上させる装置が使われます。

浮上油回収装置のその他情報

1. 浮上油回収装置の効果

腐敗・悪臭の低減
切削油や洗浄液、工場排水の浮上油による腐敗や悪臭の軽減が可能です。

工具寿命などの向上
切削油の機能低下を防止し、刃物工具の寿命が向上します。切削油の寿命も良化します。

べたつきの改善
加工物、機械、工場床などの油によるべたつきの大幅改善が可能です。

その他改善
工作機械の故障が減少し、加工による発生熱が抑制できます。また、加工面の精度が安定し、研磨工程でも効果が出ます。

2. 回収可能な油の種類

浮上油回収装置は、工作機械のクーラント貯留槽、めっき・表面処理の脱脂洗浄貯留槽、及び食品工場の排水の各浮上油が回収できます。また、コンプレッサー等のドレン水、油圧機器の作動油、設備洗浄後の排水に混ざった切削油・潤滑油、冷却水の混入油、排水施設、及び側溝などの浮上油などが回収可能です。

参考文献
https://www.monotaro.com/g/00534396/
http://www.nikken-net.co.jp/pro_skimmer/

物理電池

物理電池とは

物理電池

物理電池とは、化学反応などを行わずに電気エネルギーを得る電池です。光や熱を用いて電気エネルギーを得ます。太陽電池や熱電池、原子力電池などが物理電池にあたります。

電池には大きく物理電池と化学電池に分かれます。化学電池は化学反応を電気エネルギーに変える電池です。化学電池には一次電池、二次電池のほか燃料電池があります。一次電池はアルカリ乾電池やマンガン乾電池、リチウム乾電池などで、二次電池は充電式の電池で、鉛蓄電池、アルカリ蓄電池などがあります。

物理電池の使用用途

物理電池は、化学プロセスを用いずに半導体のように物理的な電化の移動によって電気エネルギーを出力します。太陽電池がその代表的な物理電池にあたります。

環境問題を解決する一手段として近年太陽光発電が脚光を浴び、政府補助の元産業用や一般住宅用の太陽電池の生産量は急速に増加しています。一般的に太陽電池の設置場所としては、発電の能力を最大限に引き出すため、日射を十分確保できる屋根に置くタイプや陸に置くタイプが大半を占めています。

物理電池の原理

近年物理電池として太陽電池が注目されています。太陽電池は半導体でできており、太陽光を吸収して電気エネルギーに変えます。電池という名前がついていますが、蓄電機能はありません。太陽電池として構成される半導体の原子は太陽光があたると電子と正孔が発生します。

太陽電池はP型半導体とN型半導体を重ね合わせた構造となっており、正孔はP型半導体に、電子はN型半導体にそれぞれ集まります。これにより正孔と電子の間には、乾電池と同じように電圧を発生させます。+の電極となったP型半導体と、ーの電極となったN型半導体に電線をつなげれば、電気を取り出すことができます。

太陽電池にはいくつか種類があり、大きくシリコン系と化合物系の2種類に分けられます。それぞれ性能や特徴が異なり、産業用や住宅用に広く用いられているのは、シリコン系の単結晶か多結晶の2種類です。化合物系の単結晶は発電効率が高いのですが高価なため、人工衛星などの宇宙用途として多く用いられます。

参考文献
https://www.infuse-net.com/articles/articles004.html
https://jp.sharp/sunvista/support/principle/

防犯カメラ

防犯カメラとは

防犯カメラ

防犯カメラ (英: surveillance camera) とは、防犯を目的として、特定の場所の様子を撮影するためのカメラです。

防犯カメラは、犯罪を抑制したり、トラブル発生時の映像を確認したりするために使用されます。敢えて目立ちやすい場所に置くことで、犯罪の予防効果を期待できるため、近年では幅広い場面で導入されています。 

防犯カメラには、ボックス型、ドーム型、バレット型などさまざまなタイプがあり、使用場所や時間帯に応じて選択可能です。

防犯カメラの使用用途

防犯カメラには、タイプに応じて異なる使用用途があります。

1. ボックス型カメラ

高い防犯効果が期待されることから、多く使用されるのは、コンビニやショッピングセンターなどです。万引き防止にも役立ちます。

2. ドーム型カメラ

周囲への圧迫感が少なく、使用する場所の雰囲気を損ねにくいことから、ビルやマンションのエントランスや、オフィス、クリニックの待合室、学校の教室、銀行、電車の車内などでよく用いられます。

3. バレット型カメラ

その目立ちやすさから、多い用途は商店街や自治体などの街頭防犯用です。 

防犯カメラの原理

防犯カメラの使用場所は、屋内か屋外のいずれかが想定されます。屋内の場合は、ボックス型かドーム型のカメラが有効です。

一方、屋外の場合は、バレット型やPTZ型のカメラが用いられます。この分類は形状によるものです。

1. ボックス型カメラ

ボックス型は、箱型の形状で角張っています。存在感があるため、人の目に止まりやすい特徴があります。カメラの向きに応じて自在に撮影対象を変更できるだけでなく、レンズを付け替えることで、望遠や広角などに調整することが可能です。高い防犯効果が期待できます。

2. ドーム型カメラ

ドーム型は、丸みを帯びた照明器具のような形状です。ボックス型よりも圧迫感がなく、使用する環境にその存在を馴染ませることができます。また、内部のカメラがどの方向を向いているかなど、外観からだけでは判断しにくいため、周囲への圧迫感を抑えることができます。

3. バレット型カメラ

バレット型は、主に屋外で壁などから飛び出たように設置されるため、目立ちやすい特徴があります。赤外線カメラを使用すれば、夜間でも撮影を継続できるため、防犯効果をより高められます。

4. PTZ型カメラ

PTZ型は、パンP、チルトT、ズームZができるカメラです。カメラのレンズを上下左右に動かし、またズームができる操作性の高いカメラです。

防犯カメラのその他情報

1.  防犯カメラと監視カメラの違い

防犯カメラと監視カメラは、カメラ自体の差は余りありませんが、目的と設置場所に違いがあります。防犯カメラは、犯罪を防止する目的のために設置します。設置する場所は、自宅の玄関、マンションのエントランス、駐輪場、駐車場、ごみ置き場、スーパーやコンビニの入り口、店内各所、エレベータ内部などです。

不審者の追跡などにも使われます。良く目立つ場所に、設置が良く分かるように取り付けることにより、防犯効果の実現が可能です。一方、監視カメラは、特定の場所や人物を監視し、犯罪の証拠にしたり、地震や風水害などの自然災害や交通量測量、河川やダムの水量計測の監視したりする目的で設置します。

防犯カメラや監視カメラの画像情報は、有用性が高い反面、プライバシーの侵害や記録の目的外使用の恐れが指摘されています。

2. 防犯カメラの特徴

防犯カメラは目立ちます。目立つ方が防犯効果は高く、ダミーのカメラを使うこともあります。また、犯罪防止だけでなく、災害情報やライブカメラとしても有用です。

防犯カメラにより、きれいな画像の取得が可能です。カメラの性能向上に伴い、画素数の多いきれいな画像が得られます。毎秒当たりの画数が増加し、動きが滑らかです。データ量が増加し、機器内のハードディスクやクラウドへの保存が進んでいます。映像データの保存・管理の問題に対し、各種の手法が開発済です。

1つは秘密保持です。データをクラウドに保存する場合、複数のクラウドに分散保存し、暗号処理を行います。また、システムの故障を検出し、メンテナンスを行うことも可能です。

もう1つは、膨大なデータの処理です。例えば店舗では、来客の属性解析ができ、売り上げ増を図ることが可能です。さらに、AI技術を使って、高度な画像解析も可能です。例えば、人の不在検出、不審者や動物の侵入、人数カウント、立入禁止区域の監視、特定の人物の検出、異常の検出などができます。

参考文献
https://article.safie.link/blog/1820/
https://www.trinity4e.com/cameras.html

油砥石

油砥石とは

油砥石

油砥石とは、油を含ませて金属等を砥ぐ石のことを指します。

一般家庭等にある包丁を砥ぐ砥石は、包丁に水を付けて砥石で砥ぎます。水を付けて砥ぐ砥石のことを水砥石と呼びます。油砥石は、水砥石と違って油を付けて刃物等の金属を砥ぐ石です。

日本では現在でも水砥石が主流ですが、アメリカ等の海外では油砥石が主流な国家もあります。

また、近年では油砥石専用の合成油等が販売されていますが、以前は灯油等を用いて砥いでいた歴史があります。

油砥石の使用用途

油砥石は、米国等では近年も一般に使用されています。

日本は降雨量が多く、周囲を海に囲まれているため、水を簡単に得ることが出来ます。中東やアメリカ内陸部等では、油よりも水の方が高価です。その為、水を使わずに刃物を研ぐことが出来る油砥石が主流となりました。

油砥石は水砥石よりも硬度が高く、砥石の減りが少ないために産業用としては一般的に採用されます。産業用としては、エンジンやポンプ、送風機などの清掃、研磨などに用いられます。

油砥石の原理

油は水よりも潤滑性が高いため、油砥石は硬度が固く、荒い材料が用いられます。一般的にはアルミナ等が使用されます。以前は自然に算出される鉱物を使用していましたが、現在は生成された工業製品として購入、使用するのが主流です。

水砥石は硬度が固い鉱物が集合している形状ですが、油砥石も同様に固い鉱物粒が集合した形状です。荒い表面仕上の金属に対しては荒い粒径の砥石を使用し、表面をきれいに仕上げたい場合は細かい粒径の砥石を使用します。ただし、粒径が細かいほど砥石の寿命が短いため、必要な表面粗さに合わせて砥石を選定します。

また、油砥石の粒度にも規格が存在し、平均粒径の違いによって番号が定められています。粒径が荒いほど番号が少なくなり、細かいほど番号が大きくなります。

油砥石は形状も様々です。一般的に用いられる形状は長方形ですが、サンドペーパー同様の紙面状の砥石や、円柱状の砥石も存在します。用途に応じて使い分けます。

参考文献
大和製砥所 油砥石 http://www.yamatoseito.co.jp/02-goods1CHERRY.html

有機高分子

有機高分子とは

有機高分子

有機高分子とは、炭素を主骨格とし、その他の元素として、酸素、水素、窒素などから構成される分子量が1万以上の有機物の総称です。

炭素を含まない高分子を無機高分子と呼びます。有機高分子は、単に高分子やポリマー (英: Polymer) と呼ばれ、合成高分子と生体高分子の2つに大別されます。

有機高分子は1917年にはじめて、その概念が提唱され、約10年の論争を経て、その概念が正しいと判断されました。その後、イギリスやドイツ、アメリカで有機高分子の研究から工業化が活発になり、世界大戦が勃発した影響もあって、さまざまな有機高分子を素材とした製品が生まれました。

有機高分子の使用用途

私たちの身の回りには、有機高分子を素材とした製品や物質が数多くあります。それらは合成高分子と生体高分子に分けられます。

1. 合成高分子

素材としてはプラスチック樹脂、繊維、ゴムなどがあり、これらは主に石油を原料としているため合成高分子と呼ばれます。合成高分子の用途はプラスチック製品一般、衣料品、タイヤ、塗料などです。

合成高分子は重合と呼ばれる反応により人工的に合成されます。合成された有機高分子から作られた製品は、強度、耐熱性、透明性が高い、柔らかいなどの特性を発現します。メリットの多い合成高分子ですが、劣化が金属よりも早いのが欠点です。このようなデメリットは、合成高分子に金属やセラミックス混ぜることで解消する方法もあります。

2. 生体高分子

体内に存在するDNAやRNA、タンパク質などは生体高分子と呼ばれ、私たちが生きていくための機能や構造を日々作り出しています。その他にも植物などから抽出されるものは、天然高分子と呼ばれ生体高分子の1種になります。

生体高分子は人の体内や自然界で、人の手が加えられることなく生成されます。このため合成高分子のように、有機物の結合を様式を自由に組み換えることは生体高分子では基本的に不可能です。

ただし、生体高分子そのものに添加剤や合成高分子を混合し新たな機能を発現し、体内に組み込める医療用素材とする研究開発が行われています。

有機高分子の原理

高分子とは具体的には、小さな分子 (モノマー) が、新たな共有結合を形成して繋がってできた大きな分子のことを指します。分かりやすく表現すると、例えばビーズ1つ1つがモノマーとし、それをつなげて作ったネックレス全体が高分子になります。モノマー同士が結合して、有機高分子ができる反応が重合とです。

モノマーの種類は、モノマーを構成する元素の種類や数の組合せからも非常に多岐に渡り、それを原料に作られる有機高分子もまた非常に多くの種類のものがあります。

モノマーを構成する元素としては、炭素の他に水素、酸素、窒素などがあり、モノマーの分子構造によって、重合する際の反応の種類が変わってきます。具体的な重合形式は、以下の通りです。

1. 連鎖重合

開始剤により発生した活性種が次々にモノマーと反応して分子鎖が伸長していく反応です。さらに活性種の違いにより、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合に分類されます。

2. 逐次重合

2つ以上の官能基をもつモノマーが、異分子間で官能基同士が反応して結合を形成し分子鎖が伸長していく反応です。反応の種類の違いにより、重縮合、重付加、付加縮合に分類されます。

有機高分子の種類

有機高分子には様々な種類のものがあります。また同じモノマーを使った有機高分子でも、その繰り返し数 (分子量) が異なると物性や性能は変わってきます。

以下に重合形式毎に、代表的な有機高分子を例示します。汎用的な高分子には通常、略称があり、それを括弧内に記載します。

1. 連鎖重合

ポリエチレン (PE) 、ポリプロピレン (PP) 、ポリスチレン (PS)、ポリビニルアルコール (PVA)、ポリ塩化ビニル (PVC) 、ポリメタクリル酸メチル (PMMA)

2. 逐次重合

ポリエチレンテレフタレート (PET) 、ポリアミド (PA) 、ポリイミド (PI) 、ポリウレタン (PU) 、ポリカーボネート (PC) 、ベークライト

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kobunshi1952/31/12/31_12_1059/_pdf
https://spsj.or.jp/

遊星歯車減速機

遊星歯車減速機とは

遊星歯車減速機

遊星歯車減速機とは、遊星歯車機構を使用した減速機です。

遊星歯車機構は中心にある歯車の周りを3個以上の小さな歯車が取り付けられたキャリアで囲み、外周には内歯歯車が組み合わされた歯車機構です。3つの歯車の要素が、倜度太陽とその周りを回る惑星と似た動きをすることから、遊星歯車 (プラネタリギア) と呼ばれています。遊星歯車減速機は、一般的な平行軸歯車による減速では難しい同一軸上で変速できるのが特徴です。

さらに、1つの機構の中に複数の歯車を内蔵できるため、複数の平歯車を組み合せた平行軸式の減速機構に比べて、装置の小型化が実現されます。

遊星歯車減速機の使用用途

遊星歯車減速機が最も多く使われているのは、自動車用のオートマチックトランスミッション (自動変速機) です。近年の日本では、金属製ベルトなどを用いたCVT (無段変速機) が多くなりましたが、主に後輪駆動用の自動変速機として、遊星歯車を用いた変速機が搭載されています。遊星歯車では無段変速ではないので、有段変速機やステップ式変速機とも呼ばれます。

なお、ベルトを用いたCVTでも、前後進を切り替えているのは遊星歯車です。自動車以外では電動ドリルや、医療機器、自立支援ロボットなどに使われています。サーボモータなどと組み合わせて使う場合が多いです。

遊星歯車減速機の原理

遊星歯車機構の原理は、構成する3つの要素、サンギア、プラネタリキャリア、リングギアの回転数の関係が、それぞれの歯数によって決まることです。1つの要素を固定、またはある一定回転に制御すると、残る2つの要素の回転数の関係が決まります。

3つの要素の回転数の関係は、サンギアとリングギアの歯数で決まり、ピニオンの歯数はサンギアとリングギアの歯数、歯車の大きさを表すモジュールで自ずと決まります。歯車の歯数で回転数比が決まるのは、平行軸歯車と変わりません。

一例としてリングギアを固定し、サンギアに入力回転を与えた場合で説明します。ピニオンはサンギアによって自転しながら、サンギアとリングギアの間で公転しますが、公転の回転数はサンギアに比べて遅くなります。遊星歯車機構としては減速している状態です。逆にサンギアを固定してキャリアに入力回転数を与えると、ピニオンは自転しながらリングギアを増速されます。「減速機」という名称が付けられていますが、3つの要素の使い方によっては増速も可能です。

自動車用の変速機では、遊星歯車機構を2つ以上組み合わせて、多くの変速比を作り出しています。一般的な遊星歯車はシンプソン式と呼ばれますが、ラビニヨ式と呼ばれる遊星歯車機構もあります。ピニオンを歯数が異なる2段にすることで、1つのシンプソン式よりも多くの変速比が得られるのが特徴です。

遊星歯車減速機の構造

遊星歯車機構は、中心にある1つの歯車を太陽歯車 (サンギア) と呼び、周りを回転する複数の小さい歯車を遊星歯車 (ピニオン) です。遊星歯車は自転しながら公転し、この公転運動出取り出すために、遊星キャリア (プラネタリキャリア) と呼ばれる部品で結ばれています。

外周の内歯車はリングギアや、インターナルギアなどとも呼ばれます。遊星歯車減速機では、3つの要素とそれぞれに入力軸、出力軸、要素を固定する機構が組み合わされてた減速機です。

遊星歯車減速機の特徴

遊星歯車減速機は1つの機構で大きな減速比が得られ、複数の遊星歯車で負荷を分散させることができるので伝達トルクも大きいのがメリットです。その反面、デメリットとして、機構が複雑化するため歯車の中心距離の調整がシビアで歯車の摺動回数が多くなることやギア比の計算が複雑になることが挙げられます。

また、歯車そのものにも高い精度を要求されるため、加工や組立などの製造面でもコスト高になることがあります。遊星歯車減速機を使用するには、使用条件や製造面などの特徴をよく理解した上で選択することが大切です。

参考文献
https://www.monotaro.com/s/pages/readingseries/kikaikiso_0112/
https://toolremake.com/planet-gears/

溶解炉

溶解炉とは

溶解炉

溶解炉 (英: melting furnace) とは、金属を加熱して溶解する炉です。

溶解炉はさまざまな種類があります。一般的に使われるのは、普通鋳鉄にはキュポラ、鋳鋼・特殊鋳鉄・炭素鋼・合金鋼などには電気炉・誘導炉、銅合金やアルミニウム合金にはるつぼ炉・反射炉などです。

炉の横から原料を投入する溶解炉をサイドチャージ式、屋根部分から原料を投入する溶解炉をトップチャージ式と呼びます。また、炉が動かない定置式と、炉を傾けることができる傾動式があり、それぞれメンテナンスや操作性などが異なります。

溶解炉の使用用途

溶解炉は、金属を溶解する際に使用されます。溶解させた金属は、鋳鉄用、鋳鋼用、銅合金用、アルミ合金用など、さまざまな用途の原料となります。各金属によって溶解条件が異なることから、炉の構造や熱源が異なるのが一般的です。

キュポラや電気炉・るつぼ炉のほか、反射炉やルップ炉・アーク炉・高周波誘導炉などさまざまな溶解炉を用いて金属を溶解させます。反射炉の場合、非常に熱効率が高く大量の溶解を行うのに適しています。大量の溶解が可能なため、比較的ローコストで溶解できますが、溶湯品質が悪く別途溶湯処理が必要です。

るつぼ炉の場合、間接加熱により溶解を行います。そのため、溶湯の汚染が少なく良質の溶湯を作ることができます。反面、るつぼ炉の場合は大量の溶解には適しません。

溶解炉の原理

溶解炉では、原料を受け入れて材料を溶解し、材料の成分を測定して成分調整を行い出湯します。成分調整は、さまざまな調整を行い、高品質の素材製造を支えます。例えば、脱ガスの処理や、脱滓処理などです。

原料を溶解させた際に、原料に含まれる水分やそのほか有機物によって水素が発生します。その水素ガスが溶湯中に溶け込み、温度の変化によってできあがった鋳塊に気孔を形成します。これを防ぐための処理が脱ガス処理です。一般的に、不活性ガスや塩素などの揮発性物質を溶湯中へ吹き込み、水素ガスを吸着して除去する方法などが用いられます。

脱滓処理は、溶湯中の不要な介在物を取り除く工程です。介在物をフィルターによって濾過して除去します。なお、溶解炉の加熱には、さまざまな方式が使われます。

1. 電気加熱

電気加熱は、溶解物が導電性物質の場合、対象物に電流を流し、ジュール熱で加熱して溶融させる方式です。

2. 誘導加熱

誘導加熱は、コイルに高周波電流を流して強力な磁場を作り、溶融金属自体に渦電流を発生させます。この渦電流のジュール熱やヒステリシス損により加熱する方式です。

3. アーク放電加熱

アーク放電によって溶解物を加熱する方式です。直流アークの場合は、溶解物が電極に引き寄せられるため、高周波アークを使用します。

4. 光加熱

光加熱は、反射面を回転楕円面とし、一方の焦点に光源を置き、もう一方の焦点に集光させて、溶解物を加熱する方式です。光源は赤外線などを使用します。

5. ガス加熱

ガス加熱は、水素等の燃焼ガス、高温に加熱したガス、加熱蒸気などを溶解物に当てて加熱する方式です。ガスの流れによって保持に影響を与えるデメリットがあります。

溶解炉のその他情報

1. 誘導炉の特徴

種々の加熱方式の内、誘導加熱は、排ガスを出さなく効率が高いなど環境面から、多く使われるようになっています。誘導炉はいくつかの特徴があります。

効率の良い溶解
電磁誘導による溶解金属の直接加熱なので、高効率の溶解が可能です。

良い作業環境
燃焼炉に比べばい煙の発生が少なく、作業環境が改善されます。

迅速溶解
特に中・高周波誘導炉では迅速溶解が可能です。

CO2削減
電気を使用する加熱であるため、CO2の排出量が少ないメリットがあります。

2. アルミ溶解炉

アルミニウム用の溶解炉は、700~800℃前後の温度でインゴット、スクラップなどのアルミ原料を加熱して、溶解します。溶解炉の例を次に示します。

浸漬溶解炉
浸漬用バーナーを使用した間接加熱方式です。酸化物の発生を抑えることができるため、高い溶湯品質の維持、及び温度精度に優れ、省エネルギーです。

小型溶解炉
溶解室と保持室を垂直方向に配置して、設置面積を小さくしています。炉内酸化物を容易に清掃できるので、溶湯品質が向上し、溶解炉の補修頻度の低減・長寿命化が可能です。

大型連続溶解炉
タワー型集中溶解炉で、複数の鋳造機の保持炉に、アルミの溶湯を供給します。

参考文献
https://cast-rev.com/column/column-353/
https://www.kobelco.co.jp/advanced-materials/technical/almi/1174584_17316.html
http://www.j-imono.com/column/daredemo/38.html

冷房装置

冷房装置とは

冷房装置とは、ある空間の温度を冷却する装置のことを指します。

空間の温度を下げる工夫として、古くは団扇による強制空気循環や打ち水による気化熱の利用等が為されていました。電気が一般に普及してからは、構造が簡単な扇風機が流行しました。

近年では、冷房装置と言えば、エアーコンディショナを指すことが主流です。エアーコンディショナは空間と外部空気の熱交換を行う装置で、圧縮機を逆回転させることで冷房と暖房を使い分けることが出来るため、家庭用に広く普及しました。

冷房装置の使用用途

冷房装置は、産業から家庭用まで広く使用されています。

家庭用としては、ルームエアコンが代表例です。近年では一家に一台は備えられる家電製品です。冷蔵庫も家庭用冷房装置と言えます。形状が異なりますが、仕組みはルームエアコンと変わりません。

産業用としては、不凍液による冷凍機等として用いられる例があります。プロセスの冷却用途や、発熱機器の冷却用として用いられます。産業用の冷房装置はフロン等の環境負荷が高い冷媒をルームエアコンの何十倍も使用するため、定期点検や設置届出、設置許可等の法的義務が課されます。

冷房装置の原理

まず、強制風冷の冷房装置として、扇風機や送風機の仕組みを考えます。扇風機は、モーターによって羽根車を回すことで冷風を送り出します。ある物体の周辺空気温度が上昇しなくなるため、冷房装置としての役割を果たします。

次に、エアーコンディショナについて考えます。エアコンディショナは室外に圧縮機と熱交換器、送風機が設置されます。一般に室外機と呼ばれます。室内にも熱交換器と送風機が設置されています。一般に室内機と呼ばれます。エアコンの中には常温常圧付近の圧力変動によって気化と液化を繰り返す冷媒が封入されており、圧縮機で系内の圧力を変動させることで気化熱による冷却を行います。フロンが室外で圧力を上げられて液化し、熱を放出します。放出した熱は室外送風機で大気に放出されます。液化した空気は、室内で膨張して気化しつつ、室内の熱を奪います。室内送風機で室内全体に冷却した空気を循環させる仕組みとなります。

次に、冷凍機は室内の温度を0℃以下とする装置です。仕組みはエアーコンディショナと同様にして室内の温度を下げますが、冷却速度が送風機では間に合わず、室外機の温度が上がりすぎるため、水冷方式がとられる場合があります。大気放出する代わりに、冷媒として熱伝導率が高い水を使用します。水は、クーリングタワーと呼ばれる装置で冷却されます。室内空気も凝固を嫌う場合は不凍液を循環させます。

一般的に冷房装置は圧縮機による熱交換方式を取りますが、ペルチェ効果による冷房装置も存在します。電流を流すと冷たくなる物質を利用する冷房装置です。小型冷房装置として稀に販売されています。