遊星歯車減速機

遊星歯車減速機とは

遊星歯車減速機

遊星歯車減速機とは、遊星歯車機構を使用した減速機です。

遊星歯車機構は中心にある歯車の周りを3個以上の小さな歯車が取り付けられたキャリアで囲み、外周には内歯歯車が組み合わされた歯車機構です。3つの歯車の要素が、倜度太陽とその周りを回る惑星と似た動きをすることから、遊星歯車 (プラネタリギア) と呼ばれています。遊星歯車減速機は、一般的な平行軸歯車による減速では難しい同一軸上で変速できるのが特徴です。

さらに、1つの機構の中に複数の歯車を内蔵できるため、複数の平歯車を組み合せた平行軸式の減速機構に比べて、装置の小型化が実現されます。

遊星歯車減速機の使用用途

遊星歯車減速機が最も多く使われているのは、自動車用のオートマチックトランスミッション (自動変速機) です。近年の日本では、金属製ベルトなどを用いたCVT (無段変速機) が多くなりましたが、主に後輪駆動用の自動変速機として、遊星歯車を用いた変速機が搭載されています。遊星歯車では無段変速ではないので、有段変速機やステップ式変速機とも呼ばれます。

なお、ベルトを用いたCVTでも、前後進を切り替えているのは遊星歯車です。自動車以外では電動ドリルや、医療機器、自立支援ロボットなどに使われています。サーボモータなどと組み合わせて使う場合が多いです。

遊星歯車減速機の原理

遊星歯車機構の原理は、構成する3つの要素、サンギア、プラネタリキャリア、リングギアの回転数の関係が、それぞれの歯数によって決まることです。1つの要素を固定、またはある一定回転に制御すると、残る2つの要素の回転数の関係が決まります。

3つの要素の回転数の関係は、サンギアとリングギアの歯数で決まり、ピニオンの歯数はサンギアとリングギアの歯数、歯車の大きさを表すモジュールで自ずと決まります。歯車の歯数で回転数比が決まるのは、平行軸歯車と変わりません。

一例としてリングギアを固定し、サンギアに入力回転を与えた場合で説明します。ピニオンはサンギアによって自転しながら、サンギアとリングギアの間で公転しますが、公転の回転数はサンギアに比べて遅くなります。遊星歯車機構としては減速している状態です。逆にサンギアを固定してキャリアに入力回転数を与えると、ピニオンは自転しながらリングギアを増速されます。「減速機」という名称が付けられていますが、3つの要素の使い方によっては増速も可能です。

自動車用の変速機では、遊星歯車機構を2つ以上組み合わせて、多くの変速比を作り出しています。一般的な遊星歯車はシンプソン式と呼ばれますが、ラビニヨ式と呼ばれる遊星歯車機構もあります。ピニオンを歯数が異なる2段にすることで、1つのシンプソン式よりも多くの変速比が得られるのが特徴です。

遊星歯車減速機の構造

遊星歯車機構は、中心にある1つの歯車を太陽歯車 (サンギア) と呼び、周りを回転する複数の小さい歯車を遊星歯車 (ピニオン) です。遊星歯車は自転しながら公転し、この公転運動出取り出すために、遊星キャリア (プラネタリキャリア) と呼ばれる部品で結ばれています。

外周の内歯車はリングギアや、インターナルギアなどとも呼ばれます。遊星歯車減速機では、3つの要素とそれぞれに入力軸、出力軸、要素を固定する機構が組み合わされてた減速機です。

遊星歯車減速機の特徴

遊星歯車減速機は1つの機構で大きな減速比が得られ、複数の遊星歯車で負荷を分散させることができるので伝達トルクも大きいのがメリットです。その反面、デメリットとして、機構が複雑化するため歯車の中心距離の調整がシビアで歯車の摺動回数が多くなることやギア比の計算が複雑になることが挙げられます。

また、歯車そのものにも高い精度を要求されるため、加工や組立などの製造面でもコスト高になることがあります。遊星歯車減速機を使用するには、使用条件や製造面などの特徴をよく理解した上で選択することが大切です。

参考文献
https://www.monotaro.com/s/pages/readingseries/kikaikiso_0112/
https://toolremake.com/planet-gears/

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