浮上油回収装置とは
浮上油回収装置 (英: floating oil recovery apparatus) とは、切削油や洗浄液に混入した油分を回収する装置です。
オイルスキマーや油水分離装置とも呼ばれます。浮上油は、主に工作機械の作動液や汚染水などに浮かぶ油であり、クーラントの腐敗や、悪臭の原因となります。浮上油回収装置を使用することで、これらの原因となる油を回収し、切削する刃物の寿命を延ばすことが可能です。
油の回収方式には、ベルト式やスクリュー式、フロート式など多くの種類があります。
浮上油回収装置の使用用途
浮上油回収装置は、主に切削加工を行う工作機械のクーラントタンクや、工場内の排水槽などに使用されます。
加工を行う工程で、クーラント内に作動油や潤滑油が混入しやすいため、クーラントを清浄に保つために頻繁に油を取り除く必要があります。工場から排出される水にも油が混入する恐れがあり、環境中への放出は環境汚染の重大な原因です。
浮上油回収装置を使用すれば、排水を清浄化ができ、環境汚染対策に役立つことが可能です。そのほか、洗車場の排水や自動車リサイクル工場の排水などの油水分離、及び側溝雨水に混じる油分回収にも活用できます。
浮上油回収装置の種類
工作機械で使用されるクーラントの貯留槽には、徐々に浮上油が蓄積されます。浮上油は、作業環境の悪化や排水により環境汚染につながる恐れがあり、浮上油を取り除かなければなりません。浮上油回収装置の回収方式として、ベルト式や円盤式、スクリュー式、及びフロート式などが挙げられます。
また、液中に混入している油分を積極的に分離浮上させる装置を使用するケースも多くあります。マイクロバブルを発生させて液中の油粒を浮上させたり、粗粒化フィルタを通して油粒子を大きくした後、傾斜板を使って浮上促進させたりする方法などが使われます。
1. ベルト式
ベルト式浮上油回収装置は、貯留槽の中に回転する樹脂製またはスチール製のベルトを備え付け、ベルトに付着した液体を別の分離タンクに排出します。排出された液体は、分離タンクの中で油と水が分離され、表面の浮上油のみ回収口から排出されます。分離タンクの中にクーラントを残すことが可能です。
2. 円盤式
円盤式浮上油回収装置は、貯留槽の中で回転する円盤に油を付着させ、油を分離して回収する方式です。ベルト式より耐久性に優れていますが、衝撃で円盤が割れることもあります。
3. スクリュー式
スクリュー式浮上油回収装置は、特殊ならせん構造のスクリューを回転させて油を回収します。水溶液と油が持つ粘度の差を利用することで、粘度の大きい油のみがスクリューに付着する方式です。ベルト式と異なり、クーラントと油の分離タンクが不要という特徴があります。回収能力が高いメリットがありますが、切粉やスラッジを巻き込みやすいのが短所です。
4. フロート式
フロート式浮上油回収装置は、貯留槽にフロートを浮かせ、液面に溜まっている浮上油を吸引して分離する方式です。浮上している油の回収能力は優れていますが、浮上していない油や流れが速い貯留槽の場合は、積極的に油を浮上させる装置が使われます。
浮上油回収装置のその他情報
1. 浮上油回収装置の効果
腐敗・悪臭の低減
切削油や洗浄液、工場排水の浮上油による腐敗や悪臭の軽減が可能です。
工具寿命などの向上
切削油の機能低下を防止し、刃物工具の寿命が向上します。切削油の寿命も良化します。
べたつきの改善
加工物、機械、工場床などの油によるべたつきの大幅改善が可能です。
その他改善
工作機械の故障が減少し、加工による発生熱が抑制できます。また、加工面の精度が安定し、研磨工程でも効果が出ます。
2. 回収可能な油の種類
浮上油回収装置は、工作機械のクーラント貯留槽、めっき・表面処理の脱脂洗浄貯留槽、及び食品工場の排水の各浮上油が回収できます。また、コンプレッサー等のドレン水、油圧機器の作動油、設備洗浄後の排水に混ざった切削油・潤滑油、冷却水の混入油、排水施設、及び側溝などの浮上油などが回収可能です。
参考文献
https://www.monotaro.com/g/00534396/
http://www.nikken-net.co.jp/pro_skimmer/