エチレンプロピレンゴム

エチレンプロピレンゴムとはエチレンプロピレンゴム

エチレンプロピレンゴムの構造

図1. EPMの構造

エチレンプロピレンゴムとは、エチレンプロピレンのランダム共重合体です。

主鎖に不飽和結合を持たず、硫黄による加硫ができないものをEPMと呼びます。図1の通り、さまざまな性質に優れています。一方で、硫黄加硫ができるように、不飽和結合をもつモノマーを少量共重合させたエチレンプロピレンジエンゴムをEPDMと呼びます。

EPDMの構造

図2. EPDMの構造

不飽和結合をもつモノマーとして様々なジエン化合物が検討されていますが、現在も世界的に工業生産されているものはエチリデンノルボルネンや1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンの三種です。中でも一番用いられるのはエチリデンノルボルネンです。

これらのモノマーは、重合時の反応性比、重合速度や触媒寿命への影響、重合工程での回収のしやすさ、加硫のしやすさ、生成物の物性への影響などから選定されます。例えば、エチリデンノルボルネンはプロピレンの重合反応性に対する反応性比が非常に大きく、重合時には環内の二重結合が高選択的に反応するため優れています。

EPDMに使われるジエンモノマーの構造

図3. EPDMに使われるジエンモノマーの構造

なお、EPはエチレンプロピレン、EPDはエチレンプロピレンジエンの略称であり、Mはポリメチレンタイプの飽和主鎖を有するゴムに付けられる記号です。

エチレンプロピレンゴムの使用用途

1. EPMの使用用途

EPMは硫黄による架橋ができないため、過酸化物により加硫され、タイヤやホースなど他のゴム製品と同様に用いられています。その他、ポリプロピレンなどのオレフィン系汎用樹脂に添加する耐衝撃性改質材としても用いられます。

また、無水マレイン酸等で変性し、ポリアミドやポリエステル等の改質材としても使用可能です。

2. EPDMの使用用途

他のゴム製品は、直射日光や寒さによって劣化しやすいのに対し、エチレンプロピレンゴムは耐候性と耐寒性が優れているため屋外での利用に適しています。身近なものでは、電線の被覆カバー、窓枠のゴム、自動車用ゴム製品などに使用されています。

エチレンプロピレンゴムの性質

エチレンのみを重合させたポリエチレンは、結晶性が高く扱いにくいのが難点です。そこで、側鎖にメチル基を有するプロピレンを共重合させることで、高分子鎖間の分子間相互作用を弱めて結晶性を低下させ、扱いやすくしたポリマーがエチレンプロピレンゴムです。

エチレンプロピレンゴムは主鎖に二重結合を持たないため、耐候性、耐熱性に優れています。その他、耐オゾン性、耐熱老化性、耐寒性、耐極性、電気特性、耐薬品性、反発弾性にも優れ、スチレンブタジエンゴム (SBR、BR) についで、広く利用されています。

エチレンプロピレンゴムのその他情報

1. EPDMの製造方法

EPDMは、メタロセン触媒またはバナジウム触媒を用いた溶液重合法により製造されることが多いです。触媒や重合条件の選択によって異なる特徴を有するEPDMを合成することが可能です。目的に応じて様々なタイプを作り分けることができることも、EPDMの特徴の一つと言えます。

メタロセン触媒での合成
触媒が反応液に溶けた状態で作用する (均一系触媒) メタロセン触媒を用いると、分子量分布の狭いEPDMを得ることができます。分子量分布が狭いと、引張強度等の物理的な性質には有利ですが、柔軟性に乏しく加工性が劣る点がデメリットです。

バナジウム触媒での合成
一方で、バナジウム触媒はメタロセン触媒よりも触媒活性が低く重合工程が複雑ですが、得られるEPDMは加工性に優れ、低温条件下でも高いゴム弾性を示します。

2. 加硫の手法

加硫の手法としては、硫黄加硫やパーオキシド加硫、オキシム加硫、放射線加硫などがあるが、一般的によく用いられるのは硫黄加硫とパーオキシド加硫の2種類です。

硫黄加硫
EPDMに対して最もよく用いられる加硫方法です。加硫時は150℃以上の高温で反応を進行させ、反応温度が高い方がリバージョン (加硫戻り) を起こしにくく、生産性が高くなりやすいです。

パーオキシド加硫
可撓性が求められる電線やケーブルなどにEPMを用いるときに扱われる加硫方法です。

参考文献
https://www.sumitomo-chem.co.jp/rd/report/files/docs/2018J_3.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu/89/9/89_269/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu1944/56/4/56_4_232/_pdf/-char/ja

SFPモジュール

SFPモジュールとは

SFPモジュール

SFP (Small Form-factor Pluggable) モジュールとは、電気信号を光信号へ変換する光トランシーバーです。

主にデータ通信アプリケーションに使用され、ネットワークデバイスを接続します。伝送距離の限度が100mのUTPケーブルにSFPモジュールを使うと、限度以上の距離に拡張することが可能です。

マルチソース契約 (MSA) によって規定されており、ギガビットイーサネット、SONETやその他の通信規格にも対応しています。

SFPモジュールの使用用途

SFPモジュールは、電気信号を光信号に変えるために使われます。SFPモジュールがあれば、マルチ/シングルモードファイバ、ツイストペアケーブル、同軸ケーブルなどの伝送媒体を、必要な距離長および伝送速度で接続することが可能です。

HBAやファイバチャネルストレージスイッチと呼ばれる「ストレージインターフェースカード」にも使用され、2~8Gといった幅広い速度に対応します。小型なSFPモジュールは、いろいろな種類の光ファイバー接続を提供します。

低コストでありながら、スイッチングハブ、ルータ、ファイアーウォールなどといった機器の柔軟性を高めてくれる便利なモジュールです。また、光ファイバー接続を提供するSFPモジュールは、ノイズに強いという特徴があります。そのため、ノイズ発生源が多い環境下で通信障害を防ぐために用いられています。

SFPモジュールの原理

SFPモジュールを構成するのは、以下のコンポーネントです。

  • CDR (クロックおよびデータリカバリ)
  • TIA/LA (トランスインピーダンスアンプ/リミッティングアンプ)
  • MCU (マイクロコントローラーユニット)
  • LDD (レーザーダイオードドライバー)
  • TOSA (送信機光学サブアセンブリ)
  • ROSA (レシーバーオプティカルサブアセンブリ)

TOSAが電気信号を光信号に変換して送信し、ROSAが光信号を電気信号に変換して受信します。受信側の信号を送信側の信号と一致させているのがCDRです。TIAはROSAが変換した電流信号を特定の振幅の電圧信号に処理します。この出力振幅を等振幅の電圧信号に処理するのがLAです。

LDDはCDRから出力されたクロック信号を対応する変調信号に変換し、レーザーを駆動して光信号を送信します。この光信号を集めて光軸を合わせファイバーへ伝送するのがTOSAです。MCUは、光モジュールの動作状態を監視し、光通信を維持する機能を担います。具体的には、ソフトウェアの操作、温度、電圧、電流、受信電力、送信電力に関するパラメータをリアルタイムで監視し、光モジュールの動作状態を判断しています。

SFPモジュールの種類

SFPには、SFPファイバモジュールとSFP銅モジュールの2種類があります。

1. SFPファイバモジュール

SFPファイバモジュールは、ほとんどがCWDM (粗波長分割多重) SFPかDWDM (高密度波長分割多重) SFPです。CWDMは広いチャンネル間隔を使用し最大伝送距離は120km、DWDMは高密度なチャンネル間隔を使用し最大伝送距離は200kmです。

2. SFP銅モジュール

SFP銅モジュールには、1000BASE-T、10/100BASE-T、10/100/1000BASE-Tの3種類があります。動作距離は1000BASE-Tの場合、ツイストペアケーブルで100mです。10/100BASE-Tや10/100/1000BASE-Tの場合、銅ツイストペアケーブルで100mとなっています。必要な動作距離に応じて、SFPモジュールを選定することが大切です。

SFPモジュールのその他情報

SFPモジュールの注意点

SFPモジュールを使用する際、最も重要なことは互換性です。
デバイスに接続するにあたり、SFPモジュールと互換性があるかどうかを十分確かめる必要があります。

寿命を長くするために使用環境・メンテナンス方法が重要です。端面を傷つけないようにする、軽く差し込む、適切な湿度で使用することなどが挙げられます。

参考文献
https://community.fs.com/jp/blog/sfp-module-what-is-it-and-how-to-choose-it.html
https://panasonic.co.jp/ls/plsnw/product/lan/module.html 

干渉計

干渉計とは

干渉計のイメージ

図1. 干渉計のイメージ

干渉計とは、光を物体に当てた時に生じる干渉現象を測定することにより、物体の表面形状、屈折率、物体のサイズなどを測定する装置です。

干渉現象とは、複数の波の重ね合わせによって強めあったり打ち消し合ったりして新しい波形ができることです。同じ波源から出た波や、同じもしくは近い周波数を持つ波のときに顕著に現れます。

干渉計にはマイケルソン干渉計、マッハツェンダー干渉計、フィゾー干渉計などの種類があります。

干渉計の使用用途

干渉計の主な用途は、ガラス・金属・セラミックなどの平面板をはじめとする物体表面の非接触観測です。例えば、ガラス系では、スマートフォンなどのカバーガラス、液晶用ガラス、色分解光学系に使用されるプリズム、半導体マスク基盤など、金属系では金型やアルミディスクなどが挙げられます。

その他、電子機器用半導体デバイスに用いられるシリコンウェーハや、ハードディスク用基板などの特殊なものも測定することができます。また、電波干渉計は電波望遠鏡による天体観測にも用いられている仕組みです。

干渉計の原理

主要な干渉計は光源から出た光を2つの光に分割し、一方の光をサンプルに透過させ、もう一方の光と干渉させます。このとき、透過させるサンプルの屈折率や距離によって光学的距離が変化し、干渉縞のパターンが現れます。

干渉計ではこの干渉縞のパターンを解析することにより、測定サンプルの表面形状や透過波面形状を測定することが可能です。干渉計で測定できるサイズは大きくても数~十数cm程度になります。測定試料が大きい場合は、切り取るなどの工夫が必要です。

干渉計の種類

干渉計は、ガラス平面、ウェハ、ミラーなどの研磨面平面の測定が行えるもののほか、光学レンズ、鋼球、プラレンズなどの球面測定が可能なものなどがあります。また、2軸や3軸で測定する多軸の干渉計もあり、このような多軸干渉計では、より省スペースで感度の高い測定ができます。

レーザ走査干渉計では、円筒面など平面以外の測定も可能です。ガラス、ファイバ端面、セラミックス、 金属研削面、射出成型品のプラスチックなどの測定に用いられています。様々な種類があるため、用途に合わせて選択することが必要です。

干渉計のその他情報

1. 干渉現象

干渉縞のイメージ

図2. 干渉縞のイメージ

複数の波が重ね合わされるとき、ある点に新たに生じる波の振幅はその点に影響するすべての波の振幅の和と一致します。このとき、それぞれの波の位相が一致した部分では波が強め合い、位相が逆転している部分では弱めあうことを干渉現象と呼びます。干渉計は、このときに生じる干渉縞の様子を観測することで、物体の様子を観測する装置です。

2. フィゾー干渉計

フィゾー干渉計で光路長差が生じる仕組み

図3. フィゾー干渉計で光路長差が生じる仕組み

フィゾー干渉計とは、レーザーを光源とする干渉計です。測定の仕組みは下記のようになります。

  1. 照射されたレーザー光線は発散レンズ、ビームスプリッター、コリメーターレンズを順に透過して、平行光となります。
  2. 基準板である平面ガラス板に光が到達し、一部の光は基準板の下側にある参照面で反射します。一方、残りの光は基準板を透過した後に測定サンプルに到達して反射します。
  3. 参照面からの反射光と被検面からの反射光はそれぞれ元の光路を戻り、その光路長差によって干渉縞が発生します。生じた干渉縞を検出器で観測します。

フィゾー干渉計は、簡単な構成で高精度の平面測定、球面測定が行えることが特徴です。

3. 解析

得られた干渉縞を用いて数値解析が行われます。代表的な方法の1つがフーリエ変換です。

フーリエ変換を行うことで、干渉縞から周波数スペクトルを取り出します。取り出したスペクトルを逆フーリエ変換により、測定材料の位相情報が得られます。

参考文献
https://www.fujifilm.com/jp/ja/business/optical-devices/interferometer/knowledge
https://www.global-optosigma.com/jp/application/guide-int01.html
http://www.seof.co.jp/basic/basic_01.html
https://www.tokaioptical.com/jp/technology01/
https://www.toppan.co.jp/electronics/display/anti_reflection_film/
http://www.seof.co.jp/basic/basic_01.html
http://www.material.tohoku.ac.jp/~denko/lecture/ryoshinyumon/kougi_3.pdf
https://www.japansensor.co.jp/faq/969/index.html
https://photonterrace.net/ja/photon/behavior/
https://japanknowledge.com/contents/nipponica/sample_koumoku.html?entryid=649
http://www.nhao.jp/~tsumu/Research/Intr_interferometry/interferometer.html
https://www.nao.ac.jp/research/telescope/alma.html
https://gwcenter.icrr.u-tokyo.ac.jp/KAGRA_Nobel/data/KAGRA2_panel.pdf

バーコード検証機

バーコード検証機とは

バーコード検証機とは、規格に合うバーコードが適切に印字されているかチェックする装置です。

バーコードは多方面に普及し、商品の識別に使われていますが、どんな性能のバーコードリーダーを使っても同じように読み取れなければなりません。このため規格にしたがったバーコードの検証が行われています。

バーコード検証機の使用用途

バーコード検証機は、使用するバーコードの品質がバーコードの規格にあっているかどうかをチェックする装置です。食品や医薬品などバーコードを付加した商品を製造している業界や、その包装材料を製造している印刷業、コンビニエンスストアでの料金代理収納など多方面で使用されています。

ダイレクトパーツマーキング (DPM) とは、製造された部品に、直接バーコードを印字する技術ですが、バーコード検証機は、金属などに印刷されたバーコードの読み取りも数値化します。このことで工程管理がしやすくなり、DPMの技術の向上にも貢献しています。

どの部品がどのように使われているかという情報追跡も可能になりトレーサビリティも向上しました。部品メーカーでは、リコールの対応やサプリチェーン管理が簡単になり、ブランド力の保証にも役に立っています。

バーコード検証機の原理

バーコードや二次元コードは、バーコードリーダーを用いて読み取ります。読み間違いや読み取り不可などの不具合があると、正常な取引が行えません。

そのため、バーコード検証器によってバーコードが規格化され、適正かどうか判断されています。バーコードの検証には従来レーザーやCCD素子を使って検証を行っていましたが、最近は2次元コードなど、バーコードの種類が増えたため、画像解析技術を利用して各指標を数値化した検証機が使用されています。

多くの装置は、バーコード画像データを解析装置でデータ処理して検証するという仕組みです。

バーコード検証機の種類

バーコード検証機の種類は多数あるため、測定対象によって使い分けます。基本的な選択項目は、形状、コントラスト、反射、精度です。

1. オフライン測定用

オフライン測定用のバーコード検証機は、研究室や印刷原本を作成する場合に使用します。生産の原本や高精度にバーコードを検証するために使用されます。測定精度が高いのが特長で、高解像度のイメージセンサを利用した各部分の長さを測定する検証機もあります。

2. オンライン測定用

オンライン測定用のバーコード検証機は、製品の全数検査に使用されます。データの即応性が必要になり、データ処理能力が高いのが特長です。ライン方式の大量生産工程で使用され、不適合と判断された製品を系外排出する装置とともに使用されます。

3. ハンディ型

物流業務内の物品の確認や、試作サンプル、現場の確認などに使用する持ち運びの可能なタイプです。

4. コンビニエンスストア用

公共料金の代理収納などをコンビニエンスストアで支払う場合、44桁のコードが使われており、ISO/IECで設定されている規格は、30桁までとなっているので、通常のバーコード検証機は使用できないので、コンビニエンスストア用のバーコード検証機が発売されています。

5. 医療用

医療用医薬品は、処方間違いによる医療事故を防ぐため、目視で文字と製品を確認するほかに、バーコード表示が義務化されています。この場合使われるコードはGS1といわれ、専用の製品が販売されています。

6. 規格準拠品

製品によって、アメリカ規格協会 (ANSI) 、欧州標準化協会 (CEN) 、国際電気標準会議 (IEC) 、国際流通標準化機関 (GS1) 、UDI (英: Unique Device Identification) などに準拠しており、目的によって準拠規格を選ぶ必要があります。

バーコード検証機のその他の情報

バーコード検証機の校正

バーコード校正機は定期的に校正し、性能の保証が必要です。校正方法は、テストカードを使用して、その結果が規定通りになるかを検証します。メーカーで校正も可能ですが、テストカードを購入することもできます。

参考文献
https://imagers.co.jp/contents/777/
https://www.cognex.com/ja-jp/what-is/barcode-verification
https://www.cognex.com/ja-jp/what-is/barcode-verification/how-is-verification-used

ハニカムパネル

ハニカムパネルとは

ハニカムパネル

ハニカムとは蜂の巣を意味しています。蜂の巣のように六角形を敷き詰めることによって「最小の材料で最大の丈夫さ」を実現可能で、ハニカム構造は力学的に理想的な構造です。

ハニカムパネルはハニカムコアを面板で挟み、体積の大部分を空気にした超軽量かつ高強度のパネルです。タップ加工、穴開け、切り欠きなど、一般的な金属素材と同様の加工や処理が可能です。

強度を落とすことなく、大幅に軽量化を図りたい場合に使用されます。

ハニカムパネルの使用用途

アルミや紙、プラスチックを原料に作られており、ハニカムコアの目の粗さによって強度や重量が変化するために用途別に選定されます。航空・宇宙分野ではアラミド繊維複合材料やカーボン繊維複合材料を使ったものが使用されており、建材や医療機器、家具などにはアルミが使用されるのが一般的です。

また、ハニカムコアには乱れた空気の流れを整える作用(整流作用)があり、ショーケースなどの整流板として利用できます。消音作用や断熱作用などを生かして様々に応用されています。

ハニカムパネルの原理

  • 高剛性
    ハニカムパネルの構造は六角形に配置されたI型ビームの集合体と考えることができ、パネル全体が変形しにくくなっています。ハニカムによって支持された表面は高い面外剛性を得て、荷重を高くすることが可能になります。
  • 疲労特性
    溶接や機械結合された板の構造と比較すると応力集中がなく、疲労特性に優れています。またハニカムによる音響疲労にも優れています。
  • 表面平滑性
    ボルトやリベット止めの際に発生する歪みがなく、成型、組み立て時には滑らかで平らな表面を得ることができ、外観が美しく仕上がります。
  • 衝撃吸収性
    厚み方向に荷重を受けた場合、ハニカムがほぼ一定の荷重を保ちながら座屈していくことが高い衝撃吸収性の理由です。
  • 断熱性
    体積にして90%以上の空気が一つ一つ独立したセル内に入っており、空気の対流が起こりません。
  • 消音特性
    片側の板に小さな穴を開けると、音響エネルギーが内部の空気で共鳴して消音効果を得ることができます。消音される周波数はハニカムのセルサイズやパネルの厚みに依存します。

参考文献
https://www.morishin.com/about/entrance.html
https://www.snfcore.co.jp/merit/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jrsj1983/13/2/13_2_180/_pdf/-char/ja

ナノチューブ

ナノチューブとはナノチューブ

ナノチューブとは、筒状構造の微細な物質のことです。

筒の大きさがナノメートルスケールなのでナノチューブと呼ばれています。一般的には、炭素で構成されたカーボンナノチューブを指します。

カーボンナノチューブは、1991年に飯島澄男博士 (現名城大学終身教授) により発見され、ベンゼン環を隙間なく敷き詰めたシートを円筒状に丸めた形をしています。この筒の中にはさらに細いチューブを入れ込むことが可能で、1層のものを単層ナノチューブ (SWNT: single-walled carbon nanotube) 、複数層状に重なっているものを多層ナノチューブ (MWNT: multi-walled carbon nanotube) と呼びます。

ナノチューブの使用用途

カーボンナノチューブは、ナノテクノロジーの分野で使用されることが多いです。導電率、アスペクト比が高いため、導電性チューブのネットワークを形成することができます。

また、その強固な化学結合からポリマーと一緒に使用すると、機械的強度を向上させることが可能で、熱伝導材料としても非常に優秀です。電子的、機械的特性を生かし、ナノテクノロジーの基盤となる素材として広い分野での利用が期待されています。製品への応用が始まっているものとして、テニスラケットや自転車のフレーム、スピーカーやヘッドフォンや電線等が挙げられます。

ナノチューブの原理

カーボンナノチューブは化学的に非常に安定した物質であり、密度がアルミニウムの約半分と非常に軽いです。それにも関わらず強度は鋼の20倍、電流密度耐性はの1,000倍以上、銅よりも高い熱伝導性を備えています。

1. 単層カーボンナノチューブ (SWNT: multi-walled carbon nanotube)

SWNTの直径とバンドギャップの関係

単層カーボンナノチューブ (SWNT) は、単層のグラフェンから形成される継ぎ目のない円筒状物質です。SWNTの電気伝導性 は、チューブを形成するグラフェンシートの巻き方や直径によってバンドギャップが変化し、金属性もしくは半導体性の挙動を示します。

SWNTのTEM画像

2. 二層カーボンナノチューブ (DWNT: multi-walled carbon nanotube)

二層カーボンナノチューブ (DWNT) は、電界効果トランジスタとして適しているバンドギャップを有しています。しかし、電気的挙動が非常に複雑なため、用途は薄膜エレクトロニクスなどの分野に限定されています。その他、外層を選択的に官能基化させることによって生体系内での造影剤や治療薬の応用が可能とされています。

3. 多層ナノチューブ (MWNT: multi-walled carbon nanotube)

多層カーボンナノチューブ (MWNT) は、単層 (SWNT) のものよりも量産が容易であり、単位当たりのコストが安く済みます。通常、官能基化を行うと炭素の二重結合が開裂して特性が変化することがありますが、多層カーボンナノチューブでは外層だけが修飾されるために、本来の特性を維持することが可能です。

特定の用途のために新しい性質を導入する目的でカーボンナノチューブの表面を改質し、各種溶媒への可溶化や機能性の強化、分散性、相溶性などを付与する手法が必要です。これは酸、オゾン、プラズマ等を用いて酸化反応を起こすことによって可能となります。例えば、水酸基やカルボキシル基を生成すると極性が生まれ、溶解性が得られたり各種ポリマーとの親和性を増すことができます。

ナノチューブのその他情報

1. ナノチューブの実用化

産業技術総合研究所は、共同研究企業とともに、NEDOプロジェクトの成果を用い、スーパーグロース法で合成されたカーボンナノチューブ (CNT) を用いて、配管や容器のシール部材として使われるOリングの実用化に成功しており、製品化第1号となっています (2018年)。

ナノチューブの合成としては、レーザーアブレーション法、アーク放電法、化学気相成長 (Chemical vapor deposition、以下、CVD) 法があります。これらのアプローチの中で工業的量産が可能なのはCVD法です。

CVD実験装置

スーパーグロース法は、CVD法の合成雰囲気に極微量 (ppmオーダー) の水分を添加することで、通常数秒の触媒寿命が数十分になり、極微量の触媒から従来の3,000倍の時間効率で、大量の単層カーボンナノチューブ (SWCNT) を合成することができる、極めて画期的な合成方法です。

スーパーグロース法で得られるCNTは、従来のCNTと比較して、「高アスペクト比」「高純度」「大表面積」といった特徴があり、新たな機能や特徴を持つ新機能性材料等への応用が期待される材料です。具体的には、高機能ゴム材料、高熱導電材料等の革新的材料などへ応用が期待され、その需要拡大が見込まれています。

今後は、スーパーキャパシタ電極や二次電池電極材料などのエネルギー分野、シリコン代替半導体回路やフレキシブル電気回路などのエレクトロニクス分野、透明導電膜やアクチュエーター等の高機能材料分野、自動車ボディ補強材料や航空機ボディ補強材料などの構造材料分野などへの実用化が見込まれています。

2. ナノチューブの量産

カーボンナノチューブの量産は、NEDOプロジェクトの成果を用い、産業技術総合研究所が開発したスーパーグロース法によりその技術が確立されました。そして、日本ゼオン (株) がスーパーグロース法によるカーボンナノチューブ (CNT) の量産工場を完成させ、2015年に世界で初めて量産工場が稼働しました。

3. ナノチューブの欠点

カーボンナノチューブは、人体に吸引された際に発がん性などのリスクが指摘されています。このため、様々な研究機関等で人体へのリスクについて評価がなされています。

また、カーボンナノチューブは他の素材と比較して高価である点が課題です。今後の量産技術の確立により、低価格化が期待されています。

参考文献
https://www.sigmaaldrich.com/japan/materialscience/nano-materials/single-double-multi-walled-carbon-nanotubes.html
https://newswitch.jp/p/19018
https://honcierge.jp/articles/shelf_story/6213
http://www.zeonnanotech.jp/products.html
https://www.nbci.jp/faq/handling_18.html
https://www.chem-station.com/chemistenews/2009/07/100-1.html#

ナイロンチューブ

ナイロンチューブとはナイロンチューブ

図1. ナイロンチューブの概要

ナイロンチューブは、ナイロン樹脂で製造された、主に配管使用を目的とするチューブです。

様々な産業において、空気・水・潤滑油などの流体に対して使用されます。メリットとして、優れた柔軟性により容易に作業することができる点や、安価である点などが挙げられます。

製品にもよりますが、ナイロンという素材の特性から、耐圧性・耐熱性・耐薬品性・耐油性・耐振動性・耐腐食性に優れています。

ナイロンチューブの使用用途

ナイロンチューブは、従来使用されてきた、製などのパイプに代わるものとして、注油や空圧・油圧などの配管に使用されます。具体的には、油・空圧機器、集中潤滑機器、塗装機器、化学プラントなどにおけるチューブとして使用が可能です。

ナイロンチューブは、ナイロンの優れた柔軟性を最大限に生かすことで、狭いスペースの配管や、複雑な動線をとる必要がある配管にも使用できます。この他に、ナイロンの種類によっては、揺動部分などにも用いることができるより柔軟性に優れたものや、高圧性・耐薬品性に特化した特殊ナイロン製のものなどがあります。

ナイロンチューブの原理

様々なナイロンの構造式

図2. 様々なナイロンの構造式

ナイロンチューブは繊維素材のように、伸縮に対しても強度があり、強い摩耗耐性や靭性を持っています。一方で、熱、衝撃、薬品などに対する耐性が高いという特徴もあります。初めて開発された6,6ナイロンは、世界初の合成繊維として、広く普及しました。現在では、ポリアミドのことをナイロンと総称するのが一般的になっています。

ナイロン製品自体は6ナイロンや6,6ナイロンが一般的ですが、ナイロンチューブの場合は、ナイロン11やナイロン12が用いられることが多いです。これは、ナイロン11やナイロン12が衝撃などや温度変化などの耐性に優れているためです。

これらの名称中の数値はナイロンを作る際に使用されるモノマー原料の炭素原子の数に由来します。軟質ホースでは、柔軟性を持たせるために可塑剤を配合して製造され、可塑剤を配合しない硬質チューブは、硬質無可塑ナイロンと呼ばれます。この他にも、加工を加えて強化したナイロンなどを用いる場合もあります。

ナイロンチューブの選び方

軟質・硬質ナイロンチューブの性質

図3. 軟質・硬質ナイロンチューブの性質

ナイロンチューブは、製品によって、耐圧性・耐熱性・柔軟性が異なります。自分の用途に合わせた製品選びが重要です。

1. 軟質ナイロンチューブ

可塑剤の配合有無により、チューブの柔軟性が変わります。軟質ナイロンチューブは可塑剤を含有しており、柔軟性に優れています。耐圧性・耐熱性の点では、無可塑ナイロンより少し性能が落ちますが、高圧対応の製品もあります。また、主成分がナイロンであることに違いはないので、著しく性能が劣っているわけではありません。

ただし、塑剤を介して、樹脂中に含まれるモノマー、オリゴマーと言われる低分子量物がチューブ表面に析出して白い粉のように付着することがあります。一般的に耐圧、耐薬品性などの性能が低下するものではありませんが、将来的には柔軟性が低下していく傾向が見られます。

2. 無可塑ナイロンチューブ

可塑剤無配合のものは、無可塑ナイロンと呼ばれ、チューブは最も硬質になります。耐圧性・耐熱性も最も高く、高圧・高温での使用が可能です。

製品によっては様々な色の製品展開があり、配管ごとに異なる色のものを選択することで、色分けして区別することができます。ただし、耐候性の観点では黒が優れているため、特に選択の必要がない場合は黒色のチューブを推奨しているメーカーもあります。

また、薬品を流体として用いたい場合は、用いる薬品に対してチューブが耐薬品性を持っているかどうか、確認してから使用することが必要です。

参考文献
https://flobal.jp/694.html
https://www.hagitec.co.jp/arm/ar12.htm
https://i-maker.jp/blog/nylon-polyamide-5418.html
https://www.hagitec.co.jp/v_07nylon1.htm

トランスファーピペット

トランスファーピペットとは

トランスファーピペット

トランスファーピペット (英: Transfer pipette) とは、液体の移し替えに使われる道具です。

主にポリエチレン素材のディスポーザブルな製品でワンピース型 (一体成型) をしており、ポリエチレンスポイトとも呼ばれます。バルブ (膨らんだ部分) を押して空気を追い出し、先端を液につけてからバルブを戻すことで内部が陰圧となり、液体が吸い上げられます。

吸い上げ後にバルブを押し、内部にある液体を押し出すことで、必要な一定の量 (すなわちバルブの容積) を分注することが可能です。

トランスファーピペットの使用用途

トランスファーピペットは簡易に液体の計量または移し替えができるディスポーザブルな道具という特長を活かし、研究開発、医療、介護、衛生、生産・建築現場、農業、飲食品産業など幅広い分野で使われています。

  • 臨床検体 (血液、血清、尿など) の計量、分注
  • 潤滑油や塗料の作業現場での移し替え
  • 農薬や液体肥料の計量
  • 試薬の少量分注
  • 菌数検査、組織細胞培養、臨床研究、微生物実験
  • 組織細胞培養、臨床研究、微生物実験
  • 液体の商品・試供品の小分け、詰替え作業
  • 実験や製造時の充填作業

トランスファーピペットの原理

トランスファーピペットのバルブ部を指で押し、チューブやビンの液体に浸した後、押していた指を離すと液体が吸い上げられます。再び押すことで液体を吐き出すことが可能で、この一連の操作により移し替えと計量を行います。

計量は、バルブ部を押したときに吐き出される容積 (吸い上げられる容積と同じ) に依存しています。自然に押したときにある程度再現性良く吐出・吸引が出来るように設計されており、バルブを一度押したのちに吸い上げられる容量が吸引容量です。

トランスファーピペットの選び方

1. 吸引容量

製品を選ぶ時は作業内容によって吸引容量を考慮して選択する必要があります。指で押す設計であるため、吸引容量は最大でも3mLです。最小は20μL程度です。

2. 寸法、形状

作業内容 (特に差し込む箇所) に合わせて、ステムの長さや太さ、先端のテーパーあるなしを選択します。長さは51mmから239mmまで様々です。

吸い上げたのちに、軽くバルブを押しながらバルブ部分に吸い上げられた試料を微量ずつ滴下できますが、このときに落ちてくる一滴分の滴下量は主に先端形状 (細さ) によって決まります。この点でも作業内容を考慮し、適した製品を選ぶことが好ましいです。

3. 滅菌

ガンマ線滅菌またはガス (EOG) 滅菌後、個別包装した製品は細菌汚染のリスクが排除されているため、無菌操作が必要な実験で使用することができます。

トランスファーピペットのその他情報

1. 材質

原材料として使われる低密度ポリエチレンは、溶出成分が少なく無毒性です。細胞およびタンパク質が吸着して損失することが起こりにくい素材です。表面が低親和性なので、細胞および貴重なタンパク質の結合による損失を防止します。

熱可塑性であり、ピペットの先端をヒートシーリングすると、そのまま冷凍保存することも可能になります。

2. 形状

長くて柔軟なステム部分は柔らかくてよく曲がるので、細い小容量のチューブに差し入れて液体を吸い上げることもできます。

3. 使用上の注意点

ほとんどの製品がポリエチレン製であるため、その観点で注意点を以下に記載します。

耐薬品性が限定的
アルカリには強く、塩酸・亜硫酸・次亜塩素酸にも耐えますが、硝酸・クロム酸などの強酸化性酸には弱いです。おおむね有機溶剤には弱いですが、イソプロピルアルコールは扱うことができます。

耐熱性が低い
70~90℃程度までしか耐えません。オートクレーブ滅菌して使用することはできず、滅菌はガンマ線またはEOGガスで行う必要があります。

超低温に耐えない
低密度ポリエチレンの耐低温性は‐60℃までとされ、吸い上げた試料を封入して冷凍保存する場合でも、超低温 (-80℃など) にすることは避けるべきです。液体窒素凍結も避ける必要があります。

参考文献
https://www.thermofisher.com/search/browse/featured/jp/ja/80013351/Transfer+Pipettes
https://www.watson.co.jp/product/transfer/index.html
http://www.sunyes.co.jp/sehin/transfar.html

チューブポンプ

チューブポンプとは

チューブポンプ

チューブポンプは液体移送ポンプの一種です。チューブポンプの構成は回転部、ローラー、チューブの3つです。モーターによりローラーが回転しチューブ内の液を押し出すことで圧送します。

日本ではチューブポンプだけでなく、原理上の関係からローラーポンプとも呼ばれたりします。海外ではペリスタルティックポンプ(Peristaltic Pump)やチュービングポンプ(Tubing Pump)と呼ばれたりします。

非常メリット多い良いポンプなのですが、チューブの扱いが難しいです。 

チューブポンプの使用用途

チューブポンプのメリットは、連続の送液が可能であること、自吸能力があること、から運転を行っても壊れにくい事、チューブの使い捨てが行えること、定量送液が行えること等が挙げられます。

ポンプ自体は接液していないため特に食品関係や医薬関係での利用が盛んです。チューブを廃棄することで配管をリフレッシュすることができます。一方でチューブを押しつぶしながらの送液となりますので、内壁が削れてゴミが出てしまうケースもあります。

チューブポンプの原理

チューブポンプのケーシングの中には1本のチューブが入ってケーシングを通り出て行っている構造になっています。チューブの周りには複数個のローラーが配置されており、チューブを押しつぶす構造です。回転部が回転することによりローラーが回転し、併せてチューブを押しつぶすことで真空状態が発生します。その真空状態により液体が引き込まれます。吸引した液体はそのまま吐出側へ送られ、送液されます。この動作を繰り返すことで連続的に移送することができます。

原理上、空運転を行ってもチューブを押しつぶすのみですので、比較的壊れにくいです。ただしチューブの内壁が削れる恐れはあります。また圧力がかけられる時にチューブをローラー同士の間に閉じ込めることによって、ポンプに正の変位の作用をかけることができます。そのためポンプが稼働していない時にも逆流を防止することができます。つまりチューブ内に逆止弁を設けることが必要なくなるため、コストダウンが見込めます。 

参考文献
https://www.surpassindustry.jp/%E6%8A%80%E8%A1%93%E6%83%85%E5%A0%B1/%E3%83%81%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%9D%E3%83%B3%E3%83%97%E3%81%AE%E5%9F%BA%E7%A4%8E/

チュービングポンプ

チュービングポンプとは

チュービングポンプ

チュービングポンプとは、弾性のあるチューブをローラーで押しつぶして液体を移動させるポンプです。

チュービングポンプは、回転部、ローラー、チューブの3つで構成されます。ローラーが回転し、チューブ内の液を押し出す容積型ポンプの1つです。

チュービングポンプは、チューブポンプだけでなく、原理上の関係からローラーポンプとも呼ばれます。また、ペリスタルティックポンプ (Peristaltic Pump) や蠕動運動ポンプと呼ぶこともあります。

チュービングポンプの使用用途

チュービングポンプは、液体と接触する部品がチューブのみであり、腐食性の液体や粘性のある液体を移送するのに適しています。具体的な事例を次に示します。

  • 食品関係:充填機、飲料
  • 医療関係:再生医療機器、血液透析装置、製薬、バイオ
  • 理化学関係:ディスペンサ
  • OA機器:インクジェットプリンタ
  • 化粧品

ポンプ自体は液体に接しないため、特に多いのは食品関係や医薬関係での利用です。チューブを廃棄することで配管をリフレッシュすることができます。一方、チューブを押しつぶして送液するので、内壁の削れゴミが出るケースがあります。

チュービングポンプの原理

1. ポンプの構成

チュービングポンプのケーシングの中には1本のチューブが入っており、ケーシングを通り出て行く構造になっています。チューブの周りには複数個のローラーが配置されており、チューブを押しつぶす構成です。

2. ポンプの作動

回転部によりローラーが回転し、チューブを押しつぶすことで真空状態が発生し、液体が引き込まれます。吸引した液体はそのまま吐出側へ送られ、送液されます。この動作を繰り返すことで移送が連続的に可能です。

原理上、空運転を行ってもチューブを押しつぶすのみですので、比較的壊れにくいポンプですが、チューブの内壁が削れる恐れはあります。また圧力がかけられる時にチューブをローラー同士の間に閉じ込めることによって、ポンプに正の圧力作用をかけられます。そのためポンプが稼働していない時にも逆流の防止ができ、チューブ内に逆止弁を設ける必要がありません。

チュービングポンプの特徴

1. 汚染なし

チュービングポンプのメリットは、流体と接触するのはチューブの内面のみであることです。チューブの内面しか流体と接触しないため、ポンプが流体を汚染したり、流体がポンプを汚染したりすることがありません。

したがって、腐食性の液体や粘性のある液体用のポンプに適しています。また、チューブの交換により流路を新規にできるので、使い捨てが安価かつ容易に行えます。

2. 連続送液

ローラーが回転することにより、連続的な送液ができるため、大量の液体を送液するのに適しています。

3. 空運転可能

空運転をしてもポンプ本体への負荷は少ないポンプです。空運転を続けるとポンプ本体の損傷はありませんが、チューブの寿命が短縮します。

4. 自吸いが可能

ローラーが回転すると、吸い込み側のチューブの復元力により、負圧が発生し、自吸が可能です。スタート時の呼び水は必要ありません。

5. 定量送液

基本的にローラーの回転数と流量は比例関係にあり、ローラーの回転数により、一定の流量が得られます。定量送液が簡単にできるポンプです。

6. デメリット

  • チューブ交換
    チューブを交換する場合、チューブはローラーを押しつぶされているため、かなり力を入れないとチューブの取り付け・取り外しが行えないデメリットがあります。
  • チューブからのゴミ発生
    ローラーがチューブを押し潰してポンプ作用するため、チューブの内壁がある程度削られてゴミが出ます。

チュービングポンプのその他情報

チューブの材料

チュービングポンプの心臓部であるチューブには、各種素材が使用されます。具体的には次のような材料です。

  • シリコンチューブ
    添加剤や可塑剤の浸出がないバイオ適合品ゴムであり、食品や医薬品の移送に最適です。
  • プロピレン系樹脂チューブ (バージン及びリサイクル)
    熱可塑性で長寿命の樹脂であり、耐薬品性に優れています。機械油は使用できません。
  • スチレン系樹脂チューブ
    熱可塑性で溶接が可能な樹脂であり、コンタミが非常に少なく、耐薬品性が優れています。
  • シリコンとPTFEの多層構造チューブ
    コンタミが少なく長寿命です。バイオ医薬品用途、医療関係に多く使用されます。

参考文献
https://www.surpassindustry.jp/%E6%8A%80%E8%A1%93%E6%83%85%E5%A0%B1/%E3%83%81%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%9D%E3%83%B3%E3%83%97%E3%81%AE%E5%9F%BA%E7%A4%8E/