チュービングポンプとは
チュービングポンプとは、弾性のあるチューブをローラーで押しつぶして液体を移動させるポンプです。
チュービングポンプは、回転部、ローラー、チューブの3つで構成されます。ローラーが回転し、チューブ内の液を押し出す容積型ポンプの1つです。
チュービングポンプは、チューブポンプだけでなく、原理上の関係からローラーポンプとも呼ばれます。また、ペリスタルティックポンプ (Peristaltic Pump) や蠕動運動ポンプと呼ぶこともあります。
チュービングポンプの使用用途
チュービングポンプは、液体と接触する部品がチューブのみであり、腐食性の液体や粘性のある液体を移送するのに適しています。具体的な事例を次に示します。
- 食品関係:充填機、飲料
- 医療関係:再生医療機器、血液透析装置、製薬、バイオ
- 理化学関係:ディスペンサ
- OA機器:インクジェットプリンタ
- 化粧品
ポンプ自体は液体に接しないため、特に多いのは食品関係や医薬関係での利用です。チューブを廃棄することで配管をリフレッシュすることができます。一方、チューブを押しつぶして送液するので、内壁の削れゴミが出るケースがあります。
チュービングポンプの原理
1. ポンプの構成
チュービングポンプのケーシングの中には1本のチューブが入っており、ケーシングを通り出て行く構造になっています。チューブの周りには複数個のローラーが配置されており、チューブを押しつぶす構成です。
2. ポンプの作動
回転部によりローラーが回転し、チューブを押しつぶすことで真空状態が発生し、液体が引き込まれます。吸引した液体はそのまま吐出側へ送られ、送液されます。この動作を繰り返すことで移送が連続的に可能です。
原理上、空運転を行ってもチューブを押しつぶすのみですので、比較的壊れにくいポンプですが、チューブの内壁が削れる恐れはあります。また圧力がかけられる時にチューブをローラー同士の間に閉じ込めることによって、ポンプに正の圧力作用をかけられます。そのためポンプが稼働していない時にも逆流の防止ができ、チューブ内に逆止弁を設ける必要がありません。
チュービングポンプの特徴
1. 汚染なし
チュービングポンプのメリットは、流体と接触するのはチューブの内面のみであることです。チューブの内面しか流体と接触しないため、ポンプが流体を汚染したり、流体がポンプを汚染したりすることがありません。
したがって、腐食性の液体や粘性のある液体用のポンプに適しています。また、チューブの交換により流路を新規にできるので、使い捨てが安価かつ容易に行えます。
2. 連続送液
ローラーが回転することにより、連続的な送液ができるため、大量の液体を送液するのに適しています。
3. 空運転可能
空運転をしてもポンプ本体への負荷は少ないポンプです。空運転を続けるとポンプ本体の損傷はありませんが、チューブの寿命が短縮します。
4. 自吸いが可能
ローラーが回転すると、吸い込み側のチューブの復元力により、負圧が発生し、自吸が可能です。スタート時の呼び水は必要ありません。
5. 定量送液
基本的にローラーの回転数と流量は比例関係にあり、ローラーの回転数により、一定の流量が得られます。定量送液が簡単にできるポンプです。
6. デメリット
- チューブ交換
チューブを交換する場合、チューブはローラーを押しつぶされているため、かなり力を入れないとチューブの取り付け・取り外しが行えないデメリットがあります。 - チューブからのゴミ発生
ローラーがチューブを押し潰してポンプ作用するため、チューブの内壁がある程度削られてゴミが出ます。
チュービングポンプのその他情報
チューブの材料
チュービングポンプの心臓部であるチューブには、各種素材が使用されます。具体的には次のような材料です。
- シリコンチューブ
添加剤や可塑剤の浸出がないバイオ適合品ゴムであり、食品や医薬品の移送に最適です。 - プロピレン系樹脂チューブ (バージン及びリサイクル)
熱可塑性で長寿命の樹脂であり、耐薬品性に優れています。機械油は使用できません。 - スチレン系樹脂チューブ
熱可塑性で溶接が可能な樹脂であり、コンタミが非常に少なく、耐薬品性が優れています。 - シリコンとPTFEの多層構造チューブ
コンタミが少なく長寿命です。バイオ医薬品用途、医療関係に多く使用されます。