シグナルアナライザ

シグナルアナライザとはシグナルアナライザ

 

シグナルアナライザとは、複雑な変調のある信号でも検出できる、シグナル測定・評価・解析機器です。

測定器における周波数レンジ全体に入ってくる信号の振幅対周波数の測定と、既知あるいは未知の信号のスペクトラムの強さを測定できます。また、測定器の中間周波数 (IF) 帯域幅内の単一周波数における入力信号の振幅および位相も測定可能です。

シグナルアナライザは、周波数ドメインのスペクトラム測定に加え、高度な時間ドメイン解析ができます。携帯電話のように複雑なデジタル変調信号の変調品質を、高度化された信号解析処理によって解析することができる測定器です。

シグナルアナライザの使用用途

シグナルアナライザは、周波数のスペクトラム解析、時間ベースでの信号解析、変調信号品質の評価などに使用されます。

1. 周波数のスペクトラム解析

シグナルアナライザは、周波数のスペクトラム解析に使用されます。特にデジタル変調波形の信号歪を表現するACLR (隣接チャンネル漏洩電力) 等の評価に有効です。

用途としては、デジタル無線システムの端末や送信機械など、RF特性の試験が挙げられます。具体的には、搬送波の周波数、チャネル帯域幅、チャネルパワー、占有帯域幅、隣接チャネル漏洩電力比などです。

また、スーパーヘテロダイン方式スペクトラムアナライザの大きな特徴であるRF帯からマイクロ波帯にわたる広帯域な周波数範囲のスプリアス、高調波まで測定可能です。

2. 時間ベースでの信号解析

シグナルアナライザは、時間ベースでの信号解析にも用いられます。入力されたRF信号をデジタルIQデータ形式に変換し、取り込み、高速デジタル処理が可能です。

したがって、変調波などの信号に対し、時間を基とする多面的な解析ができます。5G変調時のSlot毎のPvT (PowerVs Time) 波形等の解析に有効です。

3. デジタル変調信号の変調品質

シグナルアナライザは、移動体通信の世界ではお馴染みの変調精度EVMの評価や、CCDF (Complementary Cumulative Distribution Function) 評価解析等にも使用されます。

通信方式をとるデジタル変調信号は、スペクトラム特性の他に、安定な通信状態を保つ目的で変調品質を測定する必要があります。その点でシグナルアナライザは、各種のベクトル解析アプリケーションと組み合わせることで、デジタル変調信号の変調品質も測定可能です。

シグナルアナライザの原理

シグナルアナライザは、測定信号の周波数を変換しただけの状態で一定時間分のメモリを取り込みます。そして、「デジタル化して記憶」「周波数の変換」「スペクトラム等に変換」のステップを踏んで解析結果を得る仕組みです。

まず、シグナルアナライザの入力部位に入った測定信号を、周波数変換部で中間周波数 (IF) に変換します。次に、IFに変換した測定信号をデジタルデータへと変換します。そして、デジタル化した時系列波形データをすぐに内部のメモリーへと取り込みます。このデータは、別途ハードディスクに保存することも可能です。

シグナルアナライザは、高速で処理できるという利点があるだけでなく、再現性が高いことも特徴です。ミリ波 (1~10mmまでの波長領域) 、サブミリ波 (0.1~1mmまでの波長領域) など高解像度基準での分析や解析に向いています。

シグナルアナライザのその他情報

1. シグナルアナライザとスぺクラムアナライザの違い

シグナルアナライザは、変調信号の解析ができるスペクトラムアナライザです。具体的には、シグナルアナライザは、時間ベースでの信号測定や解析において非常に高度な解析が可能です。

シグナルアナライザには、スペクトラムアナライザにはない独特の信号処理手法があります。スーパーヘテロダイン方式に加えて、高速のA/Dコンバータで一度デジタル信号に変換処理し、データをメモリに取り込んで、高速処理のフーリエ変換を行う手法です。

これにより、従来のスペクトラムアナライザでは時間応答の制限の為に解析不可能であった、複雑な時間応答成分を有するLTEや5Gと言った昨今のデジタル変調波形の解析が可能となっています。

2. シグナルアナライザの価格

シグナルアナライザは、対応機能や周波数レンジによって解析に必要とされる内部のメモリやデジタル処理能力が大きく異なるため、価格帯も広い傾向にあります。 最新の変調対応モデルの場合、数百万円台が標準的な価格帯で、古い機種や限定機能モデルだと数十万円の価格帯です。

参考文献
https://dl.cdn-anritsu.com/
http://www.rf-world.jp/bn/RFW12/samples/p008-009.pdf
https://www.anritsu.com/ja-jp/test-measurement/signal-spectrum-analyzer/signal-analyzers
https://www.techeyesonline.com/

恒温槽

恒温槽とは

恒温槽

恒温槽(こうおんそう)は、主に、科学実験で使用されている装置の一種であり、長時間温度を一定に制御可能な容器です。

主に気温を変化させるタイプと、水温を変化させるタイプ(恒温水槽)があります。卓上で使用できるタイプ、大型冷蔵庫のようなタイプ、一つの部屋を恒温槽として調節が可能なタイプまで用途・目的によってサイズや仕様は異なっています。

恒温槽の使用用途

一般的に実験室などで使用されることが多い恒温槽ですが、水・オイル槽並びに恒温乾燥器が多く使用されています。
恒温水・オイル槽では、主に化学・生物実験で、フラスコ内に試料を入れて、攪拌しながら温度を一定に保つ時などに使用します。

使い方は、シンプルで、機器に設置してある槽に水もしくはオイルを入れて、温度設定を行うというものです。ただし、実験を長時間行うので、水槽の場合は水の蒸発による減りに注意し、オイル槽の場合は、100℃以上での使用が主になるので、火傷に気をつけなければなりません。

また、恒温乾燥器・恒温高湿槽については、半導体の乾燥や微生物の培養、実験以外にも器具の乾燥にも使用されます。

使い方はシンプルで、扉を開け、槽内部に試料を入れて、昇温速度・目的温度・保持時間などを設定し、乾燥や試料の観察を行います。なお、温めるだけでなく、低温実験にも使用可能な冷却機能付属した機器もあります。ただし、冷媒にフロンなどを使用する場合があるので、専門の業者に委託が必要になってきます。

一方で、近年ではペルチェ素子を使用した恒温槽もあります。ペルチェ素子は電流の向きを変えることで冷却と加熱を行うことが可能です。省電力、フロンレス、小型であり細かい温度コントロールが可能なことが特徴です。

恒温槽の放熱・冷却

図1. 恒温槽の放熱・冷却

恒温槽の原理

恒温槽は基本的に温度を保つ容器、加熱(または冷却)器、温度センサーと温度制御装置で構成されています。湿度を調整する場合は加湿器や除湿器、容器内の温度を均一にするためのファンや撹拌機などが用途に応じて設置されます。加温湿気、冷却器、除湿器によって温度を変化させ、温度センサーによって目的の温度に維持します。

恒温槽は主に温度を一定に保つために設計されていますが、用途によっては温度を一定時間ごとに上昇、下降を反復させたり、一定の勾配で上昇、下降させたり、プログラムを設定することも可能です。

任意のプログラムを設定する際には、恒温槽本体のプラグラム装置に依存するため、個々の製品の機能によります。また、通信インターフェースを内蔵している製品であれば、パソコンを利用して遠隔操作も可能です。データ記録に関しても、直接恒温槽の内蔵メモリーに記録できるタイプと、外部の機器に保存できるタイプがありますので、使用用途によって仕様を選ぶ必要があります。

恒温槽の構造

恒温槽の構造

図2. 恒温槽の構造

恒温槽は、おおよそ1辺が30cm〜数mの大きさで、実験室などに設置が可能です。

一般的な構造は、槽の外枠、一部機器では、周囲からの温度変化の影響を防ぐため扉や断熱材がついており、槽内を外界と遮断できる構造となっています。また、長時間、温度を一定に保つための制御が設置されています。

個別機器に着目しますと、恒温水槽の場合は、槽全体は外枠で覆われているものとそうでないものに分かれます。いずれの場合でも水をいれるケースが設置されており、水の蒸発温度以下で温度制御されます。また、100度以上の実験を行う場合、水では温度を保つことができないため、オイルで加熱を行う装置もあります。

他に恒温乾燥器などでは、タイマーや昇温プログラムが導入されており、実験用途に合わせた温度・昇温速度を設定することが可能になっています。

恒温槽の種類

 

主な種類はインキュベーター、恒温乾燥機、恒温水槽、環境試験器(サイクル試験器、恒温恒湿槽など)があります。インキュベーターは科学実験においては微生物や細胞の培養に用いられます。また産業領域においては卵をふ化させるための孵卵器、医療領域においては、低出生体重児の体温を適切に維持するための保育器もインキュベーターに含まれます。恒温乾燥機や恒温水槽、環境試験器は生化学分野、有機化学分野など幅広く用いられ、様々な目的で分析試験に使用されます。

ASIC

ASICとは

ASIC

ASICは「Application Specific Integrated Circuit」の略で、通信や画像などの高速処理など特定の用途に特化して作成された集積回路のことです。

高い性能が得られること、コンパクトに作成できること、製造時のコスト削減につながることがメリットして挙げられます。しかし、FPGAと比較してソフトや回路の書き換えなどができないため、開発期間や開発費がかかることがデメリットです。

ASICの使用用途

ASICの使用用途は、家電や通信機器、画像処理、産業機器、コンピューターなど多岐に渡ります。

  • ルーターにおける、高速なインターネット通信のための高速処理IC
  • デジタルカメラにおける、高画質・高品質な画像の高速処理IC

ASICは特定の機能に特化しているため性能が高く、単価も安いです。しかし開発期間や設計試作に要する開発費の回収が可能かどうかを考慮する必要があります。

ASICの原理

ASICは一般的にセミカスタムのASICが採用されるため、下記ではゲートアレー型とセルベース型の原理を紹介します。

1. ゲートアレー型ASIC

ゲートアレー型ASICは半導体製造過程の内の配線工程までは既存のシリコンウェーハを用いて配線工程での用途に合わせて配線をカスタマイズする方法です。開発時は配線回路レイアウトに関する設計のみであるため、開発にかかるコストや期間を削減できるメリットがあります。

2. セルベース型ASIC

セルベース型ASICは半導体製造過程内のトランジスタ素子や抵抗、容量など全てのマスクの工程でIC内の回路をカスタマイズする方法です。設計最適化が可能なため非常に自由度が高く性能の良いASICを作成できます。しかし、開発にかかるコストや期間がゲートアレー型に比べて多くなります。

ASICのその他情報

1. ASICマイニング

ASICマイニングの概要
ASICマイニングとは、暗号資産 (旧呼称:仮想通貨) のためにASICを使用することを指します。暗号資産の世界では、ひとつひとつの暗号資産の取引を担保するためにマイニング (発掘) と呼ばれる作業が必要になります。

マイニングにはハッシュ関数が使われ、さまざまな値を探索し、特定の値を満たす場合にマイニングが成功します。一連の計算は膨大であり、このマイニングが成功することにより、暗号資産の取引が承認されます。このように膨大な計算に使用されるのがASICマイニングです。

ASICマイナーへの要求事項
ハッシュ関数の実行アルゴリズムを回路やICチップにまとめた専用ASICを搭載した機器はASICマイナーと呼ばれます。膨大な演算処理が必要であり、そのASICマイニング処理はハッシュパワーとも称されます。

このハッシュパワーを支える電力に関する議論は、昨今の環境問題と絡んで世界中で盛んに行われている状況です。よってASICのさらなる高速演算特性の向上と小型、低消費電力化への期待は大きいと言えます。

2. ASICの開発期間と開発費

ASICの開発期間はFPGAやプロセッサに比べて長くなるのが一般的です。理由は専用の用途に応じて集積回路設計が個別に必要になり、マスクを払い出した後は回路やレイアウト修正ができない為です。開発期間や工数に最も影響を与えるものとしては、試作回数と特性の最適化があげられます。

ただし専用設計なので、無駄な機能を削除し小さくできるASICチップの製造コストはFPGAとの比較では抑えられ、優れた特性が得られる利点があります。ASICを使う場合は開発費が回収可能かどうか良く見極める事が重要です。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejjournal1888/113/12/113_12_999/_pdf
http://repository.aitech.ac.jp/dspace/bitstream/11133/2754/1/%E7%B4%80%E8%A6%8149%E5%8F%B7%28p103-p109%29.pdf

非接触温度センサー

非接触温度センサーとは

非接触温度センサー

非接触温度センサーとは、測定対象に直接取り付けずに温度を検出できるセンサーです。

物体が放出する赤外線や中性子を入射したときの散乱などを利用します。市場に出ている非接触温度センサーはほとんどが赤外線を利用したセンサーです。検出素子を用いて赤外線を検出し、放射率を使用して測定対象の温度を算出します。放射率は物体ごとに決まっている表面温度に対する赤外線量のことであり、非接触温度センサーの使用時に必要です。

非接触センサーは測定可能な範囲や距離が決まっており、測定できる範囲はスポット径と呼ばれます。計測する物や人よりスポット径が小さい方が安定して温度を測定することが可能です。また、高温な物体を測定する場合は非接触温度センサー自体が熱せられることによる破損を防ぐため、冷却を行うなどの工夫が必要です。

非接触温度センサーの使用用途

非接触温度センサーは日常生活から産業用途まで幅広く使用されます。以下は非接触温度センサーの使用用途一例です。

  • 食品工場における焼き工程の食品温度測定
  • 工業製品塗装後の乾燥度合いを測定するための温度測定
  • 旋盤中の製品温度分布測定
  • 体温測定

接触式の温度センサでは測定しにくい状況や測定できない測定対象に対して使用されます。具体的には、移動や回転する物体に使用します。

また、体温測定にも活用されます。飲食店やオフィス出勤時など、数多くの場面で利用されています。脇に挟む接触型体温計と比較して、温度計測が早い点や使用後に都度消毒する手間が不要で衛生的な点がメリットです。

一方で、赤外線を利用するため、環境温度や日光などの外的環境の影響を大きく受けます。また、接触型に比べると正確性は劣ります。実際に非接触センサーを活用する場所を考慮しながら、温度算出方法の調整や環境整備などの工夫が必要です。

非接触温度センサーの原理

赤外線を利用した非接触温度センサーは、集光レンズ、サーモパイル、増幅アンプ、演算装置で構成されています。以下の順序で温度を測定します。

1. 赤外線の集光

 赤外線は0.7~1,000μmの不可視光です。この周波数範囲において、0.7μm~20μmの周波数のみが実用的な温度測定に用いられます。

これを赤外線集光レンズを用いて集光します。サーモパイルが検出可能な波長帯の赤外線を集光することで、測定精度を向上させることが可能です。

2. 電気信号への変換

 サーモパイルを用いて赤外線を電気信号に変換して出力します。赤外線によって温められた温度に応じて、電気信号の出力を行う赤外線検出素子がサーモパイルです。

サーモパイル内では複数の熱電対が温接点を中心部に向けた状態で直列接続されており、その温接点が向かう中心部には赤外線吸収膜が設置されます。レンズで集められた光は温接点部分にのみ当たるため、外側にある冷接点側との間に温度差が生じます。これによりゼーベック効果によって電圧差が生まれ、温度測定ができる仕組みです。

3. 電気信号の増幅 

増幅アンプを用いてサーモパイルから発せられた電気信号を増幅します。増幅することにより、より高精度の検出が可能です。

4. 放射率から温度を算出

 測定対象の温度を算出を行うために補正を行います。補正には放射率を用います。放射率は物体ごとに一定値をとる、物体の表面温度に対する放出する赤外線量の割合です。

サーモパイルが変換した電気信号から検出した赤外線の量と、あらかじめ測定しておいた測定対象の放射率を用いて計算することで測定対象の温度を算出します。

非接触温度センサーの種類

非接触温度センサーは携帯型と設置型に大分されます。

1. 携帯型

人が手に持って測定します。電源が不要のため、手軽に持ち運びが可能です。軽量かつ小型で、およそ数千円~数万円の安価な製品が多いです。

2. 設置型

測定対象が機器の前を通ることで人を介さずに自動で温度を測定が可能です。サーモグラフィーカメラなどを組み合わせた製品が多く、およそ数十万から数百万円など高額な製品が多いです。測定のために機器に触れる必要がなく、機器によっては0.5~1.5 mほど離れての測定も可能です。

参考文献
https://www.jp.omega.com/techref/pdf/principles-ir-thermometers.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sicejl1962/32/5/32_5_364/_pdf
https://www.keyence.co.jp/ss/products/recorder/lab/thermometry/radiation.jsp
https://www.arts-crafts.co.jp/post-3657/
https://i-focus.co.jp/2020/07/17/thermoseries/
https://kujira-zaitaku.clinic/blog/797.html

流体解析

流体解析ソフトとは

流体解析

流体解析ソフトとは、空気や水などの流体の流れをシミュレーションによって解析するものです。

流体解析ソフトは、実験と比べてコストや時間がかからないため、設計段階で活用されています。また、一般に、液体や気体などの流体の流れる動きを実験などを通して読み取るのは難しかったりコストが多くかかります。

そこで、計測器が計測できないような高温・高圧の環境での流体の動きや、津波や河川などの大規模で実験ができない環境でも活用できる流体解析ソフトが重宝されています。

流体解析ソフトの使用用途

流体解析ソフトは、様々な製品の研究開発の現場、生産ラインの現場、天気予報などで使用されます。自動車のエンジン内部の流れや圧力の状態、自動車が受ける抵抗を小さくするための解析、CPUなどの冷却機構の開発など幅広くあります

  • 自動車が走行中に空気によってうける力の解析
  • 空調使用時の部屋の気流の解析
  • 熱を発する機械の冷却機構の効率性の向上に向けた気流の解析
  • 天気予報における風向きや気圧の解析
  • スクリュー羽根などの回転の解析

流体解析ソフトの原理

Fig1 流体解析の原理

図1. 流体解析の原理

流体解析ソフトは、以下にあげる2つの基礎方程式をコンピュータによって数値計算することで、流体の流れを分析します。

1. 連続の式(質量保存)

流体が何も無い空間中から勝手に湧き出してきたり,何も無い空間中で突如消えたりするという,いわゆる「無から有を生じる」ことは無いという規則です。急に水が湧いて出てきたりしないということです。

2. 運動量保存則 (ナビエ・ストークス方程式) 

物体の運動の激しさというのはなにか外から力を与えない限り変化しないという法則です。実はニュートンの運動方程式から導かれます。

さらに、温度なども分析する場合にはエネルギー保存測も含めた式を解きます。

流体解析ソフトの構成

Fig2. 流体解析の構成

図2. 流体解析の構成

商用の流体解析ソフトは、モデル作成部分と、シミュレーション実行部分、さらにポスト処理部分がセットになっていることが多いですが、シミュレーション実行部分 (ソルバ) だけのものやモデル作成部分専用のソフトなどもあります。また

1. 前処理・モデル作成部分

モデル作成とは、流体解析を行う形状を作成する工程です。多くの場合、3DCADでつくったSTEPやIGES,Parasolidなどのファイル形式を利用できます。熱流体解析ソフトでは、さらに作成した構造のどこが流体の流入する部分なのか、どこが温度一定の部分なのかといった境界条件を設定する機能が備わっています。

計算を実行するために、モデルの形状をメッシュとよばれる格子で表現します。このメッシュを綺麗に作成することが解析の速度を上げ精度を高める重要な要素です。モデル作成ソフトでは、大きさなどを簡単に選択して、自動的に品質の高いメッシュを生成する機能が備わっています。

2. シミュレーション実行部分

ここでは、通称ソルバと呼ばれる部分を指しています。狭義での流体解析ソフトとはこの部分のみを指します。ソルバは連続の式や運動量保存式、エネルギー保存式などを解く機能が備わっています。

昨今はより複雑なモデルを解く機能が備わっていたり、コンピュータの性能の向上に対応しで計算を高速で行えるようになっています。

3. ポスト処理部分

解析結果を3Dモデルなどで可視化することで、より直感的に解析結果を理解することができます。解析機能は製品によって特長が分かれる部分です。

計算結果から圧力や温度の分布を色の違いで示したコンター図や流れの様子を矢印で示したベクトル図、線で表した流線図などを作成します。

流体解析ソフトの種類

Fig3. 流体解析の種類

図3. 流体解析の種類

まず流体の表現方法として、空間を離散化する方法があります。離散化の手法としては、有限要素法、有限体積法が有名です。一方、流体を粒子の集合体として表現する粒子法という手法も存在します。

このように様々なCAE特有の手法や技術・機能があるため、シミュレーションしようと思う現象に応じて、その都度最適な手法や条件を設定する必要があります。熱流体解析ソフトにもシンプルで扱いやすく設計されたものから、熱流体解析のプロが扱うような多機能なものが存在しています。

各社様々ですが、おおよその目安として以下の点で違いがでることが多いです。

  • 乱流モデルの数
  • 混相流解析機能の有無
  • 非ニュートン流体解析機能の有無
  • 連成解析機能の有無 (構造解析など) 
  • 圧縮性流体の扱い機能の有無 

そのほかライセンス体系にも違いがあります。使用目的と必要な機能を明確にして、最適なソフトを選定しましょう。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kikaib1979/53/491/53_491_1869/_pdf/-char/ja
https://www.yokendo.com/books/9784842505268/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jksna/2003/239/2003_239_239_81/_pdf

機械用CAD

機械用CADとは

機械用CAD

機械用CADは、コンピュータを利用して機械製品の製図や設計をするシステムです。

機械用CADの特徴として、紙を使って手書きで行う製図に比べて「データを他人と共有しやすい」「寸法のミスを無くせる」「変更時の手間がかからない」「解析ソフトにデータを転送できる」点が挙げられます。大手企業を中心に機械用CADが採用されたことで、その取引先の関連企業でも採用されるようになり、現在設計や製図は機械用CADで行うことが一般的です。

機械用CADを使用することで、ものづくり工程での設計製図作業や生産プロセスの効率が向上し、作業効率化がアップします。

機械用CADの使用用途

機械用CADは、家電や電子機器、自動車、ロボット、機械部品など製造業を中心に機械設計が必要な場面で使用されます。

機械用CADを使用することで、開発のスピードが速くなります。また、使用したい製品のCAD図を入手することで、制作している製品にCADデータを取り入れながら設計を行えるようになります。機械用CADは性能により、ハイエンドモデルから、ミドルレンジモデル、ローエンドモデルまであり、使用用途に応じて適切に選定することが大切です。

代表的なタイプは、以下のものがあります。

  • 製品設計向けCAD
    製品設計向けCADは、量産製品設計を専門としたCADです。代表的な製品としては、CATIA、Solid Worksなどがあります。 
  • 設備設計向けCAD
    設備設計向けCADは、一品物の機械装置や治具、自動機や生産設備等の設計を専門としたCADです。代表的な製品としては、IRONCADなどがあります。

機械用CADの原理

機械用CADの基本的な操作は、線を引いて概形を作成し、寸法を確定させて、図面を作成していく流れとなります。機械用CADは、2D CADと3D CADに分類され、それぞれ原理が異なります。

1. 2D CAD

2D CADは、2次元CADとも言われており、正面図・平面図・側面図の3つに分けて線や円弧を使用して、書かれる三角法という方法で製図が行われます。手書きの製図と同じ方法になります。コンピューターで作成することで、データの共有や書き換えが容易になりました。

2次元CADは制限なく無料で使用できるソフトもあり導入が容易です。3次元と違い形状をイメージしながら作図を行うので、作図の基礎を学ぶには2次元CADの方が最適です。

2. 3D CAD

3D CADは、3次元CADとも言われており、3次元の立体モデルをCADソフトの中で作成します。球や直方体などを使用して立体的に表現するCADです。対象を輪郭線のみで表現するワイヤーフレームモデル、対象を表面のみで表現するサーフェスモデル、対象の中身まで表記するソリッドモデルに分けられます。

CADソフトによっては、質量や重心、表面積などを出力することも可能で、設計に生かすことができます。3次元CADは2次元CADに比べて製品の完成イメージがしやすいことから、多くの現場で導入されています。一方で、コストは2次元CADに比べて導入コストが高いです。

機械用CADのその他情報

機械用CADのメリット

1. 作業効率化に繋がる
機械用CADを用いることで、手作業での作図に比べて、大幅に作業を効率化できます。紙図面を手作業で書く場合では、修正や変更作業を手書きで行うため時間がかかります。また、鉛筆跡などの汚れが残り、図面が見えにくくなることも多いです。

一方で、機械用CADの場合は、記入したデータはす簡単に変更できるため、手書きに比べ修正作業を楽に進められます。部品のCADデータを利用できるので、部品の外形を書く必要もありません。

2. 図面データの管理ができる
機械用CADの場合は、図面は紙ではなくデータとして管理されるため、データを使って共有が可能となり生産プロセス全体として品質担保と効率化に繋がります。過去に作成した類似製品のCAD図面を流用して再利用することも可能で、検索の作業性が高まります。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kikaic1979/57/544/57_544_4023/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe1986/58/5/58_5_811/_pdf
https://d-engineer.com/3dcad/cadsyurui.html

構造解析

構造解析とは

構造解析

構造解析とは、解析対象となる構造物に荷重が加わることによって変化する物理量を計算し、得られた計算結果に基づいた評価、分析を行う一連の工程のことです。

計算される物理量には変形量、内力 (応力) 熱や振動数などがあります。構造解析を行う目的は、実際に作成したい構造物などを作成する前に結果を予測することにより、失敗するリスクを低減することです。

また、より良い構造にするためのヒントも得られます。また、簡単には実験ができないような大規模な構造物についても、構造解析によって結果を予測することが可能になります。

構造解析の使用用途

構造解析が多く用いられている分野には、自動車の開発や生産、建築や土木分野、金属加工の生産検討、ゴム製品の開発などがあります。

1. 自動車

現在の自動車開発において、構造解析は欠かすことができない技術です。運動性能の向上、安全性の確保、省エネルギー化、低コスト化のために、多くの部品について構造解析が用いられています。

2. 建築・土木分野

建築や土木分野において構造解析は、様々な建築物の強度、耐震、耐風性能、耐火設計に用いられています。建築においては、機械部品のような試作はほぼできません。構造解析を有効に活用する必要があります。

3. 金属加工

金属加工では、塑性加工やプレス加工が行われます。かつては、ベテランの経験によって難易度の高い製品が作られてきました。現在では、構造解析を有効活用することにより、技能伝承とともにより高度なものづくりが可能になっています。

4. ゴム製品

ゴム製品は荷重を受けた際の変形が大きく、また変形時には他の製品との接触も伴います。構造解析の中でも、非線形解析が多く用いられます。

構造解析の原理

構造解析の作業は、解析対象の作図、メッシュを切る、モデル化、物理量を入力、解析、出力という手順で進みます。

1. 測定対象の作図

CADなどのソフトを用いて解析対象を作図します。主に3D CADを使用します。使用しているCADがある場合は、CADのファイル形式が使用する構造解析ソフトに対応しているかを調べておくことをおすすめします。

2. メッシュを切る

解析対象をメッシュと呼ばれる格子状に分解します。この分解の精度によって、計算の精度やスピードに影響があるので、注意が必要です。

3. モデル化

解析対象をモデル化します。メッシュごとの境界面をばねとみなすことが一般的です。

4. 物理量を入力

解析対象のヤング率や比熱、膨張係数、密度などを入力します。この物理量は、事前に実験などで測定しておきます。

5. 解析

解析には、いくつかの種類があります。f=kxというフックの法則を基本とした静解析、F=maというニュートンの運動方程式を基本とした動解析があります。

動解析には時間の概念が存在し、比較的容易な陰解法と、複雑な連立1次方程式を解く陽解法に分けることができます。

6. 出力

ほとんどの構造解析ソフトは、解析結果を可視化できます。可視化することで、解析対象の変位や集中的に力が加わる場所を発見できます。

構造解析の種類

構造解析にはさまざまな種類があります。代表的なものは、以下のとおりです。

1. 静解析

静解析は、構造物に力が作用した際の変形量や応力を計算します。部品の使われ方に適した形状にするためのヒントが得られます。

2. 固有値解析

固有値解析は物体の固有値を計算します。固有値とは共振が起こる周波数で、固有値が高ければ共振が起こりづらいと判断できます。

精密装置の架台では、振動が機能に影響を与えるため固有値解析を行い、固有値がなるべく高くなるように形状を決めていきます。

3. 伝熱解析

伝熱解析は、物体の熱分布がどのようになるのかを計算します。例えば、ヒータープレートの温度分布を計算することで、温度均一性を予測することができるため、部品製作することなく最適設計が行えます。

構造解析のその他情報

構造解析の注意点

構造解析は専用ソフトウェアを使用しますが、実際の状態に近い解析結果を得るためには、いくつか注意する項目があります。

1. 3Dモデルの作り方
実際の形状と全く同じにすることで、メッシュ処理でエラーが出たり、解析に時間がかかりすぎたりして、うまく解析結果が出ない場合があります。モデルは何を解析するかによって細かく作成する部分と省略する部分を使い分けなければなりません。

2. 解析の条件
条件にはいろいろなものがあり、この設定がうまくできていないと、実際の値とかけ離れた解析結果が出てしまいます。解析ソフトウェアが優れたものでも、モデルや条件設定が悪いと現実に近い結果を得ることができません。

解析ソフトウェア会社のセミナーなどに参加して、ソフトウェアに合わせた手法を用いることが重要です。また実験が可能な場合には、構造解析結果と実験結果とをすり合わせる相関取り (コリレーション分析) も大切な技術になります。

 参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kikaic1979/50/449/50_449_37/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe1933/42/502/42_502_955/_pdf
http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00037/246/246-123131.pdf
https://www.cts-inc.co.jp/lecture/kaiseki/index.html

フォースゲージ

フォースゲージとは

フォースゲージ

フォースゲージとは、測定対象に作用する圧縮力や張力を測定する機器です。

ハンディタイプが主流で、電源の必要がないアナログ式のフォースゲージと、正確に数値を読むことができるデジタル式のフォースゲージがあります。デジタルタイプは、パソコンなどに接続しながら測定し、データの記録や解析に使うことができます。

測定方法は、手にもって測定対象に引掛ける、または押し当てることで測定する方法と、フォースゲージ用のスタンドに取り付けて測定する方法の2通りです。

フォースゲージの使用用途

フォースゲージの使用用途は、産業用機械・混相容器・食品・衣類・医薬品・スポーツ用品など多岐に渡ります。製品の品質の保証や、測定対象の物性を調査する際に使用されます。

フォースゲージの具体的な使用用途は以下の通りです。

  • 衣類のボタンの引張り強度の測定
  • パンやスポンジケーキの弾力の測定
  • 医療用ピンセットのつまみ力の測定
  • 圧縮強度や引張強度を測定する試験

フォースゲージで測定できる数値として、以下が挙げられます。

  • 圧縮力
  • 引張力
  • 剥離力
  • 挿抜力
  • たわみ力
  • 粘着力
  • 摩擦力 (摩擦係数) 等

使用用途に応じて、定格容量・対応する物理量・耐久年数を考慮し、フォースゲージを選定する必要があります。

フォースゲージの原理

フォースゲージは、アナログ式・デジタル式・スタンド使用の3つに分けられます。

1. アナログ式フォースゲージ

アナログ式フォースゲージは、測定用のばねの変位を機械式に指示する方式です。測定対象に引っ掛けるためのラック、または押し当てるための工具が付属します。電源が不要で、手軽に力を測定できることが特徴です。

2. デジタル式フォースゲージ

デジタル式フォースゲージは、測定用のロードセル、及び測定対象に取り付けるための工具などで構成されます。測定対象が力によって変形し、変形によるロードセルの電気抵抗などの変化を計測して、力を検出する方式です。

パソコンにデータを保存し、解析できる機種もあります。測定する対象物によっては、ロードセルが本体と分離したタイプも使われます。

3. スタンド使用フォースゲージ

フォースゲージが取り付け可能なスタンドを使用することにより、正確な弾力や破壊時の応力を測定する方式です。スタンドには、往復試験が可能な機種もあり、疲労強度を測定することもできます。

フォースゲージのその他情報

1. フォースゲージの単位

フォースゲージは、測定値を「力」のSI単位「N」ニュートンで表示します。フォースゲージの容量により、「mN」「kN」が使われる場合もあります。

SI単位施行以前には「kgf」が使われていましたが、計量法の改定により1999年10月以降、日本国内では使用できません。

2. フォースゲージの価格

アナログタイプのフォースゲージは、安価で壊れにくく、電源が不要という特徴があり、おおよそ3万円台からあります。 デジタル出力を有する機種は、ソフトウェアによりPCとの接続が可能です。日本製で約6万円台からで、高機能な製品では10万円を超えるものもあります。

約1kNまでの容量のデジタルフォースゲージでは、機種ごとによる価格差は、主に機能の差で、容量の違いによる差はあまりないと言えます。近年では、安価な外国製品もネット販売等で出回っている状態です。

アタッチメントの価格は、機種形状によってさまざまですが、生産量が少ないためか、見た目の印象よりも高価と感じるものが多いと言えます。スタンドは手動タイプが5万円台から、電動タイプで20万円台からあります。

3. フォースゲージのアタッチメント

フォースゲージには、標準付属品としていくつかの測定用アタッチメントが同梱されています。 同梱されているのは、引張測定用のフックが1種類、押し試験用に形状が違う押し治具が数個、作用点を延長するための延長棒などです。

製品付属のアタッチメントは、測定用途に合わないことが多々あります。特に引張測定では、測定物を掴むことができないため、測定用途に合わせたチャック・バイス・グリップ等の掴み具が、オプションで用意されています。選定には 測定物の形状・表面の滑りやすさ・耐荷重などを考慮します。 

圧縮力測定では、平面や球状など形状の違い・圧縮面の大きさ・金属や樹脂など硬さの違いなどから、アタッチメントを選択します。また、剥離試験・摩擦計測・3点曲げ試験などの専用用途のアタッチメントが用意されています。

参考文献
https://www.monotaro.com/s/pages/productinfo/force_gauge/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmbe/49/1/49_1_245/_pdf
https://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun/techno_infra/11_gaiyou_tani3.html
https://kakaku.com/

力覚センサー

力覚センサーとは

力覚センサー (英: force sensor) とは、力やモーメントの大きさを測定するセンサーです。

物理的な力の量とその方向を検出し、人間の触力覚を再現する目的で使用されます。おもな用途は、ロボットです。

力をX、Y、Zの3方向に分けて検出し、またX、Y、Zの各軸回りのモーメントも検出するため、6軸型の力覚センサーが基本です。

力覚センサーの使用用途

力覚センサーは、産業用ロボットなどに使用され、従来人手に頼らざるを得なかった作業を自動化できるようになります。

1. 外力・反力の検出

力覚センサーは、力とモーメントを同時に測定することが可能です。ロボットの作業端に設置し、外力・反力を測定しながら、適切な力で作業ができます。

2. 精密作業の自動化

力覚センサーで正確な力やモーメントが測定できるので、ロボットが適切な力で作業ができます。精密作業のロボットによる自動化が出来るようになります。

具体的な作業は、端子が柔らかい電子部品やコネクタの挿入、遊びが少ない嵌合、精密なねじ締め、バリ取り、微妙な力加減での研磨、ピッキング作業、2足歩行ロボットの自立制御などです。

3. 触覚診断・遠隔診療

力覚センサーを取り付けた端末を患者側に配置し、力覚センサーで読み取った力やモーメントを医師側が読み取ることで、遠隔触覚診断が可能です。

力覚センサーの原理

力覚センサーは、力によって生じる変形量を検出して、力やモーメントに換算します。

力覚センサーの検出方法の中で、ひずみゲージ式、圧電式、光学式、静電容量式が代表的です。

1. ひずみゲージ式力覚センサー

ひずみゲージ式は、センサー部にかかる引張力・圧縮力により、電気抵抗が変化する金属抵抗材料の性質を利用して、力やトルクに換算する方法です。小型で精度が高く、応答性も高いことから、力覚センサとして、多く使われる方式です。

2. 圧電式力覚センサー

圧電式は、水晶やPZT (ジルコン酸チタン酸鉛) などの圧電効果を有する材料をセンサー部に使用して、力を測定する力覚センサです。小型で応答性が高く、コストも比較的優れています。ただし、精度は、ひずみゲージ式や静電容量式には及びません。

3. 静電容量式力覚センサー

静電容量式の構造は、センサー部を金属材料の電極が向かい合わせに配置されたコンデンサ型としたものです。力により、導体間にひずみが生じて距離が変わることによる静電容量の変化を検知する方式です。

静電容量式は、構成が比較的簡単で低コストなことが特徴です。電極をフィルム状にすると、小型化・薄型化が可能です。精度や応答性も優れています。

4. 光学式力覚センサー

光学式は、計測対象物に一定間隔で模様をマーキングしておき、力が加わった時に生じる模様の変化を、カメラやレーザーなどの光学センサで検出して、力の大きさを計算して求める方式です。

光学式は、非接触で測定できることが最大のメリットです。一方、精度、応答性、小型化、コストは、他の方式より劣ります。非接触測定が必要な特殊な用途に限定されます。

5. HDR力覚センサー

HDR (ハイダイナミックレンジ) 力覚センサーと呼ばれるものがあります。HDR力覚センサーは、ダイナミックレンジが、例えば10gから20kgまでの広範囲であることが特徴です。

AIとロボット技術にHDR力覚センサーを組み合わせることによって、微小な力を調整しながら、細微な組み立て作業ができます。生産現場では、ロボットによる組み立て作業の自動化・高度化が進んでいます。

6. 静電容量型力覚センサー

静電容量型力覚センサーの特徴は、2枚の平行板の距離変化の検出により6軸成分を測定できる点です。シンプルな構造を実現でき、かつ価格を安価に抑えることが可能です。

また、過負荷対策ストッパー機構がセンサー内部に搭載された力覚センサーがあります。最近では産業用ロボット分野で多く利用されます。製造業では自動化が進んでいることから、ますます需要が伸びていくことが予想されます。

力覚センサーのその他情報

力覚センサーの活用

力覚センサーを使用したロボットを、人が操作することによって、人とロボットとの協調作業が実現可能です。微小な力加減を必要とする細かな作業もできます。

特に製造現場では、熟練の職人しかできない作業を力覚センサーを用いることによって、作業の自動化を実現し、生産性を向上させています。医療分野での活用例では、患部の状態を触覚診断により把握する遠隔診療に、力覚センサーの活用が期待されます。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe/84/4/84_303/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jrsj1983/9/6/9_6_759/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jacc/49/0/49_0_361/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe/84/4/84_307/_pdf/-char/ja
https://www.mirai-lab.co.jp/info/4741
https://www.adcom-media.co.jp/news/2020/01/25/33224/
https://robotaward.jp/archive/2014/prize/robot02.pdf
https://wacoh-tech.com/solution/movie.html

洗浄装置

洗浄装置とは

洗浄装置

洗浄装置 (英:cleaning system) とは、化学的・物理的な性質を利用して材料表面に付着している不要なものを取り除く装置です。

精密機器や半導体、ディスプレイなどの製造過程に使用されます。洗浄装置を適切に使用しなければ、不良品や歩留りが多発する可能性があります

洗浄の方法は、超音波洗浄、スプレー洗浄、ブラシ洗浄、ドライ洗浄、溶剤洗浄などさまざまです。半導体の製造の場合、製造工程数は500以上ありますが、その中で洗浄工程が30%~40%を占めると言われています。

洗浄装置の使用用途

具体的な洗浄装置の使用例は、次の通りです

  • 半導体プロセスにおけるシリコンウェーハの洗浄
  • 金属フィルタのメッシュに付着した汚れの洗浄
  • 切削後の金属表面に付着した金属粉の除去

洗浄装置は、汚れの種類、洗浄対象の大きさ、洗浄時間、洗浄精度などを考慮して選択します。また、洗浄方法や使用する洗浄剤、乾燥方法なども重要です。

洗浄装置の原理

半導体プロセスの場合、洗浄の役割はウェーハの汚れを除去することです。汚れはパーティクルと呼ばれる目に見えない小さなごみ、人の垢・フケに含まれる有機物、汗などの油脂、工場内で使っている金属による汚染などがあります。

洗浄装置は、この汚れを溶剤や純水で洗い流します。洗浄後は、乾燥が必須です。ドライイン・ドライアウトと呼ばれ、必ず乾燥させてから、ウェーハを装置から出します。

洗浄装置で代表的な方式は、超音波洗浄、スプレー洗浄、ブラシ洗浄、ドライ洗浄、溶剤洗浄などです。

1. 超音波洗浄装置

超音波洗浄装置は、薬液中に洗浄対象物を入れ、内部を超音波で振動されることで洗浄する装置です。洗浄対象により、振動の大きさや周波数を選定します。

2. スプレー洗浄装置

スプレー洗浄装置は、ノズルから気体や液体を噴出させて対象物を洗浄する方式です。ハンディタイプの洗浄装置もあり、洗浄対象が大きくても対応が可能です。

3. ブラシ洗浄装置

ブラシ洗浄装置は、ブラシを用いて汚れを取り除いた後、溶液やスプレー洗浄を用いて汚れを洗い流す装置です。ブラシという物理的な方法で洗浄するため、取り除きにくい汚れを洗浄することができます。

4. ドライ洗浄装置

ドライ洗浄装置は、UV (紫外線) を洗浄対象物に照射して、オゾンと活性酸素を生成し、活性酸素と汚れを反応させて、汚れを取り除く方式です。半導体やディスプレイの製造現場で主に使用されます。

5. 溶剤洗浄装置

溶剤洗浄装置は、溶剤の溶解力を利用することにより、汚れを溶かして取り除く装置です。非常に危険な溶剤を使用する場合があるので、注意が必要です。

洗浄装置の構造

洗浄装置の基本的構成は、搬送系、処理槽、純水槽、乾燥ステージです。搬送系は対象物を搬入・搬出する装置で、処理槽の中で対象物を洗浄します。純水槽は対象物に付着した薬液を洗い流す槽、乾燥ステージは対象物を乾燥させる装置です。

1種類の処理液で洗浄できる汚れは1つが原則であり、複数の汚れを洗浄する場合は、複数の処理槽と純水槽が必要です。半導体の製造プロセスでは、複数のウェーハをまとめて処理するバッチ式と、ウェーハを1枚ずつ処理する枚葉式の装置が使われます。

バッチ式は、キャリアと呼ばれるケースにウェーハをまとめて入れ、キャリア毎処理層に入れて洗浄します。また、枚葉式は、ウェーハを1枚ずつ回転させながら、スプレー式の洗浄を行います。

洗浄装置のその他情報

洗浄装置に使用する洗浄剤

半導体の洗浄は、複数の処理液を使用します。各処理液で除去可能な汚れが異なります。各処理の後に純水で洗い流しを行います。

  • SPM
    硫酸と過酸化水素の混合物で、有機物の除去用です。
  • APM
    アンモニアと過酸化水素の混合物で、パーティクルと有機物を除去します。さらに、超音波を加え、パーティクルの除去率を高めます。
  • DHF
    フッ酸と純水の混合物で、金属や酸化膜を除去します。フッ酸は、強酸であり、シリコンも溶かしてしまうので、純水で希釈したものを使って、ウェーハの表面のみを処理します。
  • HPM
    塩酸と過酸化水素の混合物で、残った金属や酸化物を除去し、表面に不働態化層を作って、汚れの再付着を防止します。

最後にウェーハを純水で洗い流して、乾燥工程を行います。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/60/2/60_2_103/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/60/2/60_2_95/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejjournal1888/85/924/85_924_1595/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/60/2/60_2_103/_pdf