表面強化剤

表面強化剤とは

表面強化剤とは、表面を強化するために用いられるコーティング剤のことです。

一般にコンクリートの床面に塗布して使います。例えば、大型のトラックやフォークリフトが頻繁に使用される工場や倉庫の床面は、トラックやフォークリフトのタイヤが繰り返し転がることによって、激しく摩耗してしまいます。このような状況において、床面を保護することが役割です。

私たちの日常生活では、大型の商業施設の立体駐車場の床面に使用されていることがあります。車で走行するとタイヤと床面が、キュルキュルと音が鳴るところがありますが、このような床面に表面強化剤が施工されています。

表面強化剤の使用用途

表面強化剤は、主に工場とそれに付随する倉庫や、物流センターなどの倉庫などの床面に施工されています。このような場所ではフォークリフトなど、産業機器の走行に伴って床面が傷ついて荒れることを、表面強化剤が防いでいます。

この他、工場の機械室などの床面にも使用されています。表面強化剤によって床面のコンクリートをコーティングすると、コンクリートの劣化による粉塵などの発生を防ぐ、防塵対応の床面にすることが可能です。

都市においては、大型商業施設の立体駐車場、地下駐車場に施工されています。車で通過する際にキュルキュルと音がなるのは、表面強化剤が施工されているためです。

表面強化剤の原理

通常コンクリートの表層は、多孔性があり、小さな穴や溝が表面にたくさんある状態です。表面強化剤をコンクリートの表面に塗布すると、コンクリートの表層の細孔部分に表面強化剤の強化剤が浸透していき、水分は外側に蒸発していきながら、コンクリートの穴を塞いでいきます。

時間が経過するとともに、水分などの不純物が抜け切った状態になると表面強化剤が硬化し、コンクリートの多孔が塞がれた状態になります。このように、表面強化剤がコンクリート内部のカルシウムとも反応することが、コンクリート表面を保護するメカニズムです。

表面強化剤はコンクリート表面に強く接合されるため、剥離することなく存在し続けるのも特徴の1つです。コンクリートとの反応は2、3年の経年とともに続き、コンクリートと一体化していきます。結果として、より強固に表面が強化され、半永久的な効果を期待できます。

表面強化剤の特徴

表面強化剤の特徴は、主に以下の3つがあります。

1. 耐久性向上

表面強化剤は、コンクリート施工された床面を保護するために施工されます。コンクリートに対して表面強化剤による表面処理を行うことにより、床面の耐摩耗性を向上させ、強化することが可能です。

耐摩耗性はコンクリートに比べて、2倍から3倍程度に向上します。表面強化剤は、コンクリートの表面の層を強化し、摩耗に対する耐性を向上させて劣化や摩耗によって表面が荒れることを防ぎます。

摩耗したコンクリートが粉塵になることを防ぐため、防塵効果も得ることが可能です。

2. 防汚効果

表面強化剤を施工することは、床面の汚れ防止をすることによって、メンテナンスコストの削減などが期待できます。表面強化剤は一度の使用で半永久的に効果が持続し、経年とともに強度が高まっていくことも特徴です。

表面強化剤を塗布することによって表面が均一になるので、凹み部分に汚れが溜まりにくくなります。表面に付着した汚れも、水洗いするだけの清掃で容易に除去しやすくなります。

3. すべり止め効果

表面強化剤は、床面のすべり止め効果を高める役割を果たします。製品によってはすべり抵抗係数が乾燥面で0.7以上、水+砂面においても0.6程度を発揮します。

一般的に床面の場合にははすべり抵抗係数が0.4以上ある場合に、すべりにくい床であるとされています。しかし、表面強化剤を塗布すれば、十分にすべりにくい床面にすることが可能です。

参考文献
https://www.abc-t.co.jp/products/detail/9065.html
http://www.nihonkasei.co.jp/
https://www.sk-kaken.co.jp/product/floor-coating-materials/sk-barriercoat/

血球計算盤

血球計算盤とは

血球計算盤の概要

血球計算盤は、細胞数を数える際に用いる道具です。ヘモサイトメーターとも呼ばれています。細胞融合技術や細胞培養操作などの作業の前には細胞を数えることが必要なので、この際に使用されます。

赤血球や白血球などの血球やリンパ球、その他培養細胞など、計測したい対象によって、細胞の大きさが異なります。このため、血球計算盤の目盛りの刻み幅も対象によって異なったものを用います。

血球計算盤の使用用途

血球計算盤は、細胞に関連する技術の研究や開発などで使用されます。細胞数を算定することにより、細胞密度や、生存率などの各種必要な数値を計算することが可能です。トランスフェクションや細胞融合技術、凍結保存など、細胞培養操作などの際に、事前準備として必ず行われます。

血球計算盤の原理

血球計算盤には、刻み幅が異なる目盛りが等間隔で並んでおり、各幅の目盛りを使うことで数値を計算できるようになっています。一辺1mmの枠内に100個程度の細胞が存在するように懸濁液の濃度を調節し、16個の正方形からなる枠内の生細胞を数えます。

血球計算盤のその他情報

血球計算盤とカバーガラスの使い方

細胞の見え方のイメージ

図2. 細胞の見え方のイメージ

1. 血球計算盤

まず、観察したい細胞を集めて培地に再懸濁し、そこから採取した細胞懸濁液を色素で着色して、生きている細胞と死んでいる細胞を分類します。死んだ細胞は着色されますが、生きている細胞は着色されないので、色の有無で細胞の生死を見分けます。

懸濁液の濃度は濃すぎると計測しづらく、薄すぎると正しく計測することができないため、枠内に100個程度の細胞が存在するよう、適切な濃度に調節することが重要です。最初は、正方形が16個集まった一番大きい1mm四方の枠内に収まっている生細胞の数をカウントしますが、細胞数が多すぎる場合は細胞の大きさに合わせて、使用する目盛りを小さくしていきます。

この操作を通して生細胞・死細胞の数を計測することにより、細胞生存率の計算が可能です。

2. カバーガラス

血球計算盤は、カバーガラスを密着させて使用します。カバーガラスは使用前にエタノールで洗浄し、風乾させておきます。使用直前に軽く水で湿らせ、血球計算盤の目盛面に載せます。ガラスが割れないよう注意しながら、指ですり合わせるように軽く力を入れ、血球計算盤に密着させます。

この時、しっかりと密着できているかを確認するため、ニュートンリングの有無を確認します。ニュートンリングとは、表面が同率曲線のガラスを重ね合わせた時に生じる虹色の干渉縞です。血球計算盤とカバーガラスの間に埃などの汚れが入り込んでしまっている場合には見えません。

ニュートンリングが確認できない場合には、血球計算盤の目盛面とカバーガラスの密着面を、エタノールを適量含ませたガーゼ等で清拭し、再度同様の手順で確認します。汚れが入った状態では計算室の深さが変わってしまい、正確なカウントはできないため注意が必要です。

ディスポーザブル製品の中には、カバーガラス不要の製品もあります。そのような場合にはニュートンリング作成の手間を省くことが可能です。

血球計算盤の種類

様々な種類の目盛り

図3. 様々な種類の目盛り

1. ビルケルチュルク型の血球計算盤

血球計算盤にはいくつか種類があり、目盛りの刻まれ方と計算室の深さがそれぞれ異なります。最も一般的に使用されているのは、ビルケルチュルク(Burker-Turk)型の血球計算盤です。

計算室を2室もった複式の計算盤で、赤血球や白血球だけでなく、精子やバクテリア、酵母、プランクトン、培養細胞など、幅広い細胞のカウントに対応することができます。ビルケルチュルク型の血球計算盤では、各計算室の容積は0.9μL、目盛り線は縦横とも一辺が3mmとなるように設計されています。

この一辺がさらに三等分されていて、1mm×1mmの9つのブロックに分けられています。このうち、真ん中のブロックは主に赤血球系の細胞など、絶対数の多い細胞のカウントに使用され、一方、四隅のブロックは白血球系の細胞や培養細胞など、比較的絶対数の少ない細胞のカウントに使用されます。

2. その他の血球計算盤

血球計算盤には他に、計算室が1室で単式の計算盤であるトーマ型や、ビルケルチュルク型と同様の複式の計算盤で、目盛線がよりシンプルな改良ノイバウエル型などがあります。

参考文献
https://www.abcam.co.jp/protocols/counting-cells-using-a-haemocytometer
https://www.as-1.co.jp/academy/22/22-1.html
http://www.ncgmlipidsp.jp/protocol/4/12.html
http://minatomedical.com/01-ka111_m.html
https://www.abcam.co.jp/protocols/counting-cells-using-a-haemocytometer-2

MEMSマイク

MEMSマイクとは

MEMSマイクとは、音声変換の箇所をMEMSコンポーネントで構成したマイクのことです。

プリント回路の基板上にMEMS素子が設置され、カバーされたマイク構造を有しています。MEMSとは「Micro Electronics Mechanical System」の頭文字を取った略語で、日本語訳は「微小電気機械システム」です。

マイクへの適用の場合には、薄膜微細加工技術により、Si基板上の振動板を作りこむことで、MEMSは音波を電気的信号に変換するトランスデューサー (変換器) の役割を担っています。MEMS素子では、同一基板上にICも集積可能なので、基板上に微小な機械部品と電子回路を集積させている事例が多いです。

MEMSマイクの使用用途

MEMSマイクの代表的な使用用途は、スマートフォン向けのマイクです。スマートフォンに限らず、様々なオーディオやアプリケーションに使用されています。また、バイオ、医療、自動車を含む機械などにも応用されており、近年注目を浴びています。

昨今のスマートフォンなどの電子機器の急速な普及に伴い、マイクロフォンの技術も発展してきました。人が多い場所でノイズを消して、通話するためには電子機器に複数のマイクロフォンを搭載する必要があります。

そこで、従来のECM (エレクトレット・コンデンサ・マイクロフォン) に代わる小型・高性能マイクとして、MEMSマイクが注目されている状況です。

MEMSマイクの原理

MEMSマイクの原理は、音波でMEMS素子である振動板が振動した際に、その容量値の変化を検出し電気信号に変換して出力する動作にあります。MEMS素子は非常に小型であり、ICとの集積も構造面で比較的容易なため、この出力された信号をIC側で増幅しアナログ信号の電圧・電流値として取り扱う場合や、もしくはデジタル信号化 (ADC) 処理の併用により、高効率なパルス幅変調 (PWM) 処理を行う場合が多いです。

MEMSマイク自体は基板にカバーで覆われた構造をしており、そのカバーには、マイクロフォン内部に音声が入り、MEMS素子で音声の検出可能なように、小さな穴が1つ開いています。MEMSマイクには、従来のマイクであるECMに比べ、小型である、耐熱性に優れている、リフローはんだ付けが可能、高音質、信頼性の向上、バッテリーの長寿命、コストダウンなどの数多くの利点があります。

特にMEMSマイクが適する場合は、電気的ノイズが多い環境のアプリケーションです。振動が多い環境下では、MEMSマイクの出力インピーダンスが比較的低く、また集積ICでのデジタル信号処理の併用でノイズ除去性に優れるために、この機械的な振動による有害ノイズレベルを低減することが可能です。

MEMSマイクのその他情報

1. ECMとMEMSマイクの比較

MEMSマイクと比較してECMの場合は、小型化しづらい、リフローが困難など、高密度な電子機器搭載時に使いにくい面がある一方で、従来から用いられてきたマイクであり、種類が豊富で過去の設計財産を活用しやすい、電源電圧範囲などの仕様が非常に多岐にわたる、音の方向性に優れた製品が存在する、といった現行のMEMSマイクにはまだない優れた面もあります。

MEMSマイクよりもECMの方がアプリケーション面で適する場合もあるので、状況に応じて適切な方を選ぶことが大切です。

2. AIスピーカーへの適用事例

2022年度の現在、多くの電子機器、特にスマートフォンではMEMSマイクが多数搭載されている状況です。今まではユーザーがMEMSマイクの性能のよさを体験することは少なかったのが現実であり、ECMからMEMSマイクへの置き換えが、市場において進んでいる実態は多くのユーザーには、あまり認知されていませんでした。

高性能なマイクが求められる近年話題のAIスピーカーはユーザーの体験の質に直接つながるため、MEMSマイクの恩恵を受けるはずです。実際にMEMSマイクの中のICにAIチップを搭載しクラウドフリーで数10種類のキーワードをAIで検出可能なMEMSマイクも、あるメーカーで研究開発されています。

近将来、家庭や自動車内で普通に存在するAIスピーカーがMEMSマイクの高性能な技術によって、その動作や音質が技術的に支えられていることを実感する日がやってくるのもそう遠い未来ではないでしょう。

参考文献
https://jp.cuidevices.com/blog/comparing-mems-and-electret-condenser-microphones
https://www.jp.tdk.com/tech-mag/hatena/069

粉体混合機

粉体混合機とは

粉体混合機

粉体混合機とは、食品や医薬品など多くの産業で欠かせない、粉体を均一に混合するための装置のことです。

形状や原理によって種類が異なります。それぞれの特性を理解し、扱う粉体の種類や比重、重量などを考慮して最適な混合機を選択することが重要です。例えば、粉体の粒度が大きい場合や粘着性が高い場合は、強力な撹拌が可能な混合機が望ましいです。

また、使用目的に応じて、連続式や一括式の混合機の選定が必要です。連続式は生産効率が高く、大量の粉体を扱えますが、一括式は混合精度が高く、小ロットの粉体混合に適しています。

粉体混合機の選択は、製品の品質や効率に大きな影響を与えるため、慎重な検討が必要です。適切な混合機を選択することで、製品の品質向上やコスト削減に繋がります。粉体混合機の活用により、さまざまな産業において効率的な粉体処理が実現されています。

粉体混合機の使用用途

粉体混合機は、食品工場や薬品工場をはじめとする多くの場所で使用されています。

1. 食品分野

粉体混合機は粉末状の食品の製造において、重要な役割を果たしています。粉末かつおぶしやふりかけ、あられ、ダシの素などの製品は、各成分が均一に混ざっていることが品質に直結します。

粉体混合機は、これらの製品の製造過程で、成分の均一性を確保するために有用です。

2. 医薬品分野

投与物の主剤の均一性が極めて重要です。ヒトや動物の体内に投与されるため、安全性や効果が求められます。粉体混合機は、医薬品製造においてこの均一性を実現するために使用され、製品の品質向上に寄与しています。

3. 化学分野

樹脂粉末、火薬、ウラン粉末、農薬、粉末塗料などの製造過程で、粉体混合機が活用されています。これらの製品でも、成分の均一性が品質や安全性に関わるため、粉体混合機の使用が不可欠です。

粉体混合機の原理

粉体混合機は、粉体を効率よく均一に混合するための装置で、その原理は大きく2つに分類されます。それぞれの原理に基づいて機能し、異なる特性や利点を持っています。

適切な混合機を選択することで、製品の品質向上やコスト削減に繋がり、多様な産業において効率的な粉体処理が実現されています。

1. 容器回転型

容器を回転させて、中の粉体を混合します。容器内のスペースを有効に活用できるため、粉全体が均一に混ざります。

また、羽根を使わないので、粉体をできる限り壊さずに混合することが可能です。容器回転型の代表的なものには、W型混合機やV字型混合機、ドラム型混合機などがあります。

2. 撹拌型

容器内に羽根を設置し、羽根を回転させて粉体を混合します。撹拌型の混合機は、広い設置スペースが不要で安全性が高いです。撹拌型の代表的なものとして、リボン混合機や円錐スクリュー型混合機などが挙げられます。

粉体混合機のその他情報

粉体混合機併用する機械

粉体混合機は、粉体の均一な混合を実現するために使用される機械ですが、その効率と効果をさらに向上させるために、粉砕機、シーブ機 (ふるい機) 、充填機などの機械と併用されることがあります。

1. 粉砕機
粉体混合機の前工程として、粉砕機が使用されることがあります。粉砕機は、原料を所定の粒度まで粉砕する機械で、混合に適した粒度の粉体を得ることが可能です。混合機での混合効果が向上し、製品の品質が一定に保たれるようになります。

2. シーブ機 (ふるい機)
粉体混合機の後工程として、シーブ機 (ふるい機) が使用されることがあります。シーブ機は、粉体を振動させることで、粒度の異なる粉体を選別する機械です。

混合後の粉体をシーブ機で選別することで、均一な粒度の製品が得られ、製品品質の向上が期待できます。

3. 充填機
製品化の最終工程として、充填機が使用されます。充填機は、混合された粉体を容器や袋に充填する機械で、一定量の製品を正確に充填することが可能です。充填機を使用することで、製品の量を一定に保ち、品質管理が容易になります。

参考文献
https://www.nitto-kinzoku.jp/archives/technic/powder_mix/
http://www.aichidenki.jp/rm/applications/index.html

研磨機

研磨機とは

研磨機

研磨機とは、主に表面の仕上げ加工などの研磨加工で使用される加工機のことです。

さまざまな研磨方法が存在し、適切な砥石や研磨剤などが必要となります。研磨方法によっては、高速回転する砥石に加工物を近づけて作業することもあるため、作業時の火花によるやけどや、加工機への巻き込みなどに注意しながらの作業が必要です。

研磨機の使用用途

主に部品表面の仕上げに使用することが多いですが、部品のバリ取りを目的とした粗い研磨加工を行うこともあり、各用途に応じて最適な加工方法および加工機が存在します。また、表面の仕上げだけではなく、円筒状の部品の内側を仕上げる際などにも使用されます。研磨により面が滑らかになることで、摺動性の向上効果を得られるからです。

シリンダやレールスライダーなど多くの摺動動作を行う部品にも研磨加工が施されています。最近では、卓上サイズの研磨機も多く存在するため、工場以外でも、自宅でのシルバーアクセサリーの研磨やプラモデルのバリ取りなどに使用される機会が増えてきています。

研磨機の原理

研磨に使用する砥石や研磨剤などに含まれる砥粒が小さな刃物のような効果を発揮することで、少しずつ加工物を削っていきます。最も代表的なものは、高速回転している砥石に加工物を当てて磨く「砥石研磨」です。

非常にシンプルな研磨方式ですが、加工物を押し当てる力や角度の小さな差によっても仕上がりが異なるため、その作業には熟練を要します。また、加工を進めるにつれて、砥石自体も損耗して削れていくため、砥石の損耗量を見ながら適切なタイミングで新しい砥石に交換しながら運用する必要があります。原理的には、紙やすりなどで行うヤスリ作業も同様ですが、より効率的な研磨が可能です。

同様の手順で研磨を行う「バフ研磨」が存在しますが、こちらは砥石の代わりに、綿やフェルトなどの軟らかい素材でできた「バフ」を使用して研磨を行います。砥石研磨よりも表面を滑らかにする効果が高く、鏡面仕上げなどに使用されます。一方で、研磨に時間がかかるため、加工物の厚みを減らすような用途を伴う場合には向いていません。

研磨加工機では高速回転する物体に対して加工物を近づけて作業することから、作業時には怪我をしないように注意が必要です。特に、手袋をしての研磨を行う際には、ほつれた糸が高速回転部に巻き込まれてしまう可能性があります。小型の研磨機でも、巻き込まれた際の力は非常に大きいため、大怪我に繋がる可能性があり危険です。また、加工物の素材によっては、砥石との接触時に火花が発生することもあるため、やけどへの注意も必要です。

研磨機のその他情報

1. 電解研磨機によるステンレス表面処理

ステンレスは表面に大気中の酸素と結合して形成した数ナノメートル厚さの不働態被膜により、防錆・防食性と耐熱性を持つ金属材料です。しかし、機械加工や表面仕上げ、搬送や保管などにより適正な表面状態が保てていないと、不働態被膜が均一に形成されず優れた特性が出ずに不良品などの原因になります。

電解研磨はステンレスの表面の不純物や粗さを綺麗に除去し、高い特性を有する不働態被膜を形成することを目的とした処理です。ステンレスの電解研磨機では、電解研磨溶液中で被研磨物であるステンレスを陽極として直流電流を流すことで、表面をミクロン単位で電気化学的に溶解し綺麗にします。

粗い表面の凸部が優先的に溶解されるので表面の粗さが小さくなり、研磨や機械加工によって生じたバリの覆いかぶさりや、その下の空隙など、通常の研磨では除去しにくい欠陥も滑らかに仕上げることが可能です。また、処理方法がシンプルで、電解液槽のサイズ次第で大量の研磨も可能なため、生産性にも優れています。

不働態被膜は防食性や耐熱性能に優れていますが、厚さは数ナノメートルと薄く弱いため、ステンレス表面が滑らかであるほど均一で密着性の高い被膜になります。電解研磨は、ステンレスの特性を最大限に引き出すための大切な工程です。

2. 電解複合研磨機

電解研磨よりさらに平滑な表面が必要な場合は、研磨材による物理的な研磨を複合した電解複合研磨が有効です。回転研磨ディスクを陰極とし、被研磨物の表面に電解液と電流を流しながら移動研磨します。

凸部の不働態被膜が機械的に除去され、そこから金属が溶出することで、電解研磨と機械研磨をそれぞれ単独で行った場合よりも滑らかに研磨されます。ナノメートルオーダーの粗さにできるのが特徴です。

平面だけでなくパイプのような曲面を研磨できるため、半導体製造関連部品や配管、バルブ類、医薬機器などの精密さと耐久性が要求されるものに広く利用されています。

参考文献
https://www.agency-assist.co.jp/column/717/
https://www.kinzokuh.co.jp/technology/technology_ep/
https://www.nakano-acl.co.jp/fukugo/

プリプレグ

プリプレグとは

プリプレグ

プリプレグとは、繊維をシート状にしたものに樹脂を含浸させて作る複合材料で、繊維強化プラスチックの成形原料の1種です。

含浸させる樹脂はエポキシなど、加熱により硬化する熱硬化性樹脂や、加熱により軟化し、冷却すると固まる熱可塑性樹脂が使用されます。繊維は、炭素繊維やガラス繊維がよく用いられます。

繊維や含浸樹脂の組み合わせにより、目的に合わせた材料を作ることが可能です。

プリプレグの使用用途

プリプレグに使用される繊維としては、炭素繊維やガラス繊維の他にもアラミド繊維なども用いられます。それぞれの用途は以下のとおりです。

1. 炭素繊維プリプレグ

炭素繊維を使ったプリプレグはカーボンプリプレグと呼ばれ、炭素繊維強化プラスチック (CFRP) 用の成形材料として使用されます。CFRPの特徴は軽量性、高強度、高剛性などが挙げられます。

また、導電性の炭素繊維を用いているため電子伝導性があります。主に航空機分野で用いられることが多いですが、他にも自動車やゴルフクラブのシャフト、テニスラケットのフレームなど、用途は幅広いです。

2. ガラス繊維プリプレグ

ガラス繊維プリプレグは、ガラス繊維強化プラスチック (GFRP) の成形材料として使用されます。GFRPの特徴は、金属材料よりも大きな比強度を有し、軽く、絶縁性のガラス繊維を用いているため電子伝導性はありません。

この特徴を生かして、アンテナカバー、プリント基板などで使用されています。

3. アラミド繊維強化プラスチック

アラミド繊維は非常に軽くて切れにくく、耐衝撃性や強度が高いです。一方で、炭素繊維やガラス繊維に比べると折れにくいため、自由な形状の成形が難しく、後加工が困難という欠点があります。耐衝撃性や強度が高いため、航空機、宇宙用各種部品、圧力容器などに使用されています。

プリプレグの原理

プリプレグはCFRPやGFRPなどの成形材料として使用されやすい形状、物性をもっています。予め決まった量比で樹脂と繊維が複合化してシートになっているため、他のCFRP製造方法と比較して、性能のバラつきの小さい成形品を作ることが可能です。

プリプレグは繊維を1方向に並べた状態で樹脂を含浸させています。これはUD材と呼ばれ、繊維方向の強度は強いですが、繊維の垂直方向については非常に弱いため、繊維強化プラスチック (FRP) に成形する際には、繊維の方向を変えながら積層していくことが大切です。

遷移の方向を変えることで、どの方向に対しても高強度のFRPが成形されます。織物に樹脂を含浸させたプリプレグもあり、これはファブリック材と呼ばれています。含浸する樹脂については使用用途やCFRPとGFRPの違いにより異なりますが、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂の他に、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトンなどの熱可塑性樹脂も使用される場合が多いです。

特に熱硬化性樹脂を用いたプリプレグは、FRPに成形加工されるまでは未硬化の状態であるため、表面はタックがあり、保管時に硬化が進んでしまわないように密封して冷凍保存する必要があります。

プリプレグのその他情報

プリプレグの製造方法

プリプレグは、含浸させる樹脂が熱硬化性か熱可塑性かによって製造方法が異なります。

1. 熱硬化性樹脂
熱硬化前の樹脂フィルムを成形し、これを1軸方向にならべた繊維または繊維の織物と合わせてヒートプレスします。フィルムの厚さにより繊維の含有率をコントロールでき、繊維含有率のムラも生じにくいという特徴があります。

2. 熱可塑性樹脂
樹脂自体の粘度が高いため、溶媒に樹脂を溶解させて含侵させ溶媒を乾燥する方法や、樹脂を細かく粉砕して繊維や織物に振り掛けてヒートプレスする方法があります。

参考文献
https://www.torayca.com/lineup/product/pro_003.html
https://www.kurimoto.co.jp/composite/cfrp/
https://tip-composite.com/products/gfrp/
https://www.cybernet.co.jp/ansys/case/analysis/333.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sosei/53/613/53_613_145/_pdf
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00434255?mftokyo2017web=0705

使い捨て防護服

使い捨て防護服とは

使い捨て防護服

使い捨て防護服 (英語: Disposable protective clothing) とは1回限りの使用用途を想定した防護服です。

通常の衣類の上から羽織って使用し、各種用途に応じて最適なものを使い分けます。従来の用途は自衛隊の訓練や演習、作戦実行、病院での感染症治療 (例.新型インフルエンザ、SARS) などです。しかし、最近はコロナ禍における医療分野での使用ニーズが高まっており、入手性が悪くなっています。

防護服の概要

図1. 防護服の概要

使い捨て防護服の使用用途

使い捨て防護服はあらゆる作業現場におけるさまざまな危険有害因子 (ハザード) から作業者を防護するために用いられます。

危険有害因子とは、酸アルカリ成分や化学薬品、および、放射性物質やウイルスなどです。更に、ナイフなどの鋭利な刃物による突き刺し、高速飛散物や高温、火炎、電気火花なども含まれます。

服の特性や危険有害因子の種類によってISO/JIS規格が詳細に規定されています。JIS規格 T8115の定義は、「酸、アルカリ、有機薬品、その他の気体及び液体並びに粒子状の化学物質を取り扱う作業に従事するときに着用し、化学物質の透過及び/又は浸透の防止を目的として使用する防護服」です。また、対象の危険物質や化学防護服の構造に応じて、種類が異なっており、それぞれに要求性能が規定されています。

使い捨て防護服の具体的な使用例には下記のようなものがあります。

  • 化学プラントの工事など、皮膚が酸、アルカリ、有機薬品、粉じん等の有害化学物質に暴露または接触する可能性がある現場
  • 寒冷地での作業時における凍結防止
  • アスベスト作業時
  • ダイオキシンやPCB処理
  • 新型コロナ感染症の治療の際の二次感染対策
  • 放射性物質の取り扱いや除染作業
  • チェーンソーなどの機械的な衝撃への対処が必要な現場

使い捨て防護服の種類

使い捨て防護服は、用途・使用素材に応じて様々な種類のものに区分されます。

1. 用途別分類

特殊な防護服の例

図2. 特殊な防護服の例

化学防護服
有毒ガスや薬品の浸透を防ぐ目的で作られている防護服です。身体に危害を加える液体 (酸、アルカリ、有機溶剤など) 、ガス、エアロゾル、粉じんなどが付着したり経皮吸収するのを防ぎます。JIS T8115では、対象の危険物質や化学防護服の構造に応じて、タイプが分かれており、そのタイプ毎に要求性能が規定されています。

バイオハザード対策用防護服
生物的危険物質 (ヒトに危害を及ぼす病原体及び生物由来物質) への暴露又は接触の危険から防護するための防護服です。

熱と炎に対する防護服
熱や炎から身体を防護するために使用する防護服です。例えば、高い輻射熱や高温溶融金属の飛散に晒される、製鉄業界の製錬所などが例として挙げられいます。 

機械的な衝撃に対処する防護服
刃物などの鋭利な物による切創や突き刺しを防ぐために使用する防護服です。具体的な例としては、チェーンソー使用現場では、下半身の大腿部や膝下を保護することが必要です。

放射性物質による汚染に対する防護服
放射性物質による汚染に対する防護を目的として使用する防護服です。

電気に対する防護服
電気による危険から身体を防護するために使用する服及び静電気帯電を防止するために使用する防護服です。

寒冷に対する防護服
外気温がマイナス温度まで下がる地域や特殊な場所で、寒冷から身体を防護するために使用する防護服です。

高視認性安全服
車両・建機などの移動体による接触・衝突事故を防止するため、着用者の存在について視覚的に認知度を高めるために使用する防護服です。

2. 素材別分類

様々な防護服素材

図3. 様々な防護服素材

不織布一層タイプ
スパンボンド・ポリプロピレンの素材を使用した製品です。スパンボンドの単層構造であるため、繊維間の空隙が多数あります。バリア性は多少劣るものの安価であり、コストを重視する場合に適当です。軽度の汚れには十分対応可能です。

SMS
SMSポリプロピレンを素材に用いた製品です。スパンボンド、メルトブロー、スパンボンドの3層構造となっています。強固な耐摩擦性と、布のような手触り感が特長です。比較的安価でであるものの、擦れや軽度の汚れに強く、粉じんや飛沫などに対して高いバリア効果があります。

FS
フィルムラミネートが使用されている製品です。ポリプロピレン、スパンボンド不織布などの表面に薄いフィルム素材を貼り付けた構造をしています。汚れ、粉じんに対するバリア性が高く、優れた防水性があるため、水場作業に適しています。

タイベック®
タイベックとは、デュポン社独自の特殊素材であり、0.5~10ミクロンの高密度ポリエチレンの連続極細繊維に熱と圧力を加えて結合させたものです。1ミクロン以下の微粒子に対しても優れたバリア性を発揮します。ポリマーコーティングを施した2層構造の防護服もあります。

使い捨て防護服の選び方

上記で紹介したように、防護服は、ハザードの種類により様々な種類の製品があります。作業管理者及び作業担当者は、これらのハザードや防護服に対する正しい知識を身につけ、ハザードに合致する防護服を選ばなければなりません。誤った使い方で使用すると、健康を損なう可能性が高まります。

また、知識が十分でない場合、汚染された防護服をそのまま作業場外へ持ち出してしまい、当事者以外の人員がハザードにばく露する二次災害の危険性も高いです。作業時は周囲環境に潜むハザードを調査し適切な防護服を選定した上で、正しい使用方法や着脱方法をしっかり教育する必要があります。

参考文献
https://www.askul.co.jp/f/special/product_column/protectiveclothing/
https://www.tyvek.co.jp/pap/use/

電源モジュール

電源モジュールとは

電源モジュール

電源モジュールとは、電子デバイスに必要な電力を適切に供給するためのキーとなる部品です。

元の電力供給をデバイスが必要とする特定の電圧や、電流に変換する役割を果たします。その結果、デバイスは安全で効率的な電力を受け取ることができます。電源モジュールは自社で設計するのではなく、専門の電源モジュールメーカーから部品としての購入が一般的です。

このアプローチにはいくつかのメリットがあります。第一に、時間とコストの節約が挙げられます。専門メーカーが提供する電源モジュールは、品質が保証されており、また既に一定の性能が確認されています。したがって、自社で電源回路を設計し、テストするよりも迅速かつ安価に電源ソリューションを実装可能です。

さらに、電源モジュールはサーバーやネットワーク機器、家電製品、産業機器など、幅広い電子機器に適用可能です。その形状や性能は、使用するデバイスやその用途により異なりますが、その主な目的は、電力を適切に調節し、デバイスの正常動作を保証します。

電源モジュールの使用用途

電源モジュールはその汎用性から、幅広い分野で利用されています。以下に具体的な使用事例をいくつか紹介します。

1. コンピューターシステム

パーソナルコンピュータやサーバーでは、電源モジュールが主要な役割を果たします。コンピュータは、マザーボード、CPU、メモリ、ストレージデバイスなど、様々な部品で構成されており、それぞれが特定の電圧と電流で動作します。電源モジュールはこれらの部品に対して適切な電力を供給し、システム全体の安定した動作を確保します。

2. ネットワーク機器

ルーターやスイッチなどのネットワーク機器も、電源モジュールの重要な使用例です。これらの機器はデータを高速に送受信するため、安定した電力供給が必須となります。

3. 産業機器

製造業では、CNCマシンやロボットなどの高度な機器が使用されます。これらの機器もまた、特定の電圧と電流で動作するため、電源モジュールが必要です。

4. 医療機器

医療機器には、人体に影響を与える可能性があるため、安全性や信頼性が高い電源モジュールが必要です。例えば、人工心臓や人工呼吸器などの生命維持装置には、停電時にもバックアップできる電源モジュールが使われています。

5. 家電製品

テレビ、洗濯機、冷蔵庫などの家電製品でも電源モジュールが使用されます。これらの製品は家庭の電源から電力を得ますが、電源モジュールはその電力を製品が必要とする形に変換します。

電源モジュールの原理

電源モジュールには、スイッチング電源とリニア電源の2方式があります。

1. スイッチング電源

スイッチング電源は、電源を高頻度でオンオフして電流を制御します。具体的には、まず交流電源を整流器で直流に変換します。次にこの直流は、MOS FETなどのスイッチング素子を使用して高周波のパルス波に変換されます。この高周波パルス波を高周波トランスに送り、所要の電圧に変換します。

高周波トランスは物理的に小さくできるため、電源自体の小型化を実現可能です。PWM制御では、パルス波の幅を調整して出力電圧を一定に保ちます。スイッチング素子のON/OFFで必要なだけ電圧を生成し、余分な電力を消費しません。これにより、スイッチング電源は高い効率を達成します。そのため、高電力アプリケーション、例えば、コンピュータの電源供給などでよく使用されます。

2. リニア電源

リニア電源は、電流を直接調節して出力電圧を制御します。これにより、出力は入力電圧の変動から分離され、非常に平滑なDC電源が提供されます。しかし、この方法は効率が低く、熱が発生する傾向があります。そのため、リニア電源は音響機器や精密測定機器など、ノイズが許容されない分野で使用されます。

電源モジュールのその他情報

ノイズについて

スイッチング電源の問題は、高速スイッチングによって発生するノイズです。高周波ノイズは周囲の電子機器に干渉を与える可能性があるため、ノイズ対策が重要視されます。ノイズ対策としては、フェライトコアの使用や各種のEMIフィルタを組み込みます。

このように、スイッチング電源は小型で高効率な電源モジュールの実現を可能にしましたが、発生するノイズには注意が必要です。電源設計は、両者のトレードオフを考慮しながら最適な設計を行います。

参考文献
https://www.tamuracorp.com/electronics/jp/pm/
https://ednjapan.com/edn/articles/1603/07/news004.html

帯電防止チューブ

帯電防止チューブとは

帯電防止チューブとは、帯電防止機能をそれ自体に付与したチューブです。

帯電防止機能のない通常のチューブにおける帯電対策としては、金属線や金属メッシュなど、導電性を持つ材料でチューブを覆う方法が取られてきました。この方法で帯電は防止できるものの、チューブを覆う作業が発生すること、適切に覆えていない部分があるとアースが取れてしまうことといった問題があります。また金属製の素材を用いるため、腐食しやすい環境には向きません。

帯電防止チューブではチューブ自体に導電性を持たせているため、上記の作業は必要なく、これらの課題が解消できます。

帯電防止チューブの使用用途

帯電防止チューブは帯電しにくいように設計されているため、静電気の蓄積や静電気の放電による火花の発生を防ぐことが可能です。そのためアセトンやシンナーなど、着火の危険性がある有機溶剤を扱う際に重宝されています。主な使用例としては、こうした溶剤およびそのガスを移送する必要がある、半導体の製造装置などです。

また静電気はノイズの原因になるため、電子機器に悪影響を及ぼします。これらの機器周辺での液体やガスの移送も、帯電防止チューブの代表的な活用事例です。 

帯電防止チューブの原理

帯電とは、物質内の電荷のバランスが崩れ、電荷が生じた状態のことを指します。物質どうしが接触や摩擦、または剥離する際などには、帯電が発生します。チューブの場合は流体の移送に用いられるため、チューブと流体との接触および摩擦が起こることによって、チューブ内の表面が帯電するのです。

金属をはじめとする導電性の物質は、帯電しても物質内で電子が自由に移動できるため、
電荷の均一化や拡散が起こりやすいのが特徴です。一方で絶縁性の物質は、導電性の物質と異なり電荷が拡散しにくいため、部分的に帯電が発生してしまうことがあります。

チューブによく使用される素材としては、PTFEやPFAなどのフッ素樹脂が代表的です。フッ素樹脂は薬品や熱に対して優れた耐性があり広く普及していますが、絶縁性が高い、すなわち帯電しやすいという性質を持っています。

流体との接触や摩擦でチューブが帯電すると、火花の発生だけでなく、場合によっては絶縁破壊とよばれる現象が起きてチューブ自体が破損する危険性もあります。チューブに導電性を持たせて帯電を防ぐことは、流体の移送を安全に行ううえで非常に重要です。 

参考文献
https://www.nichias.co.jp/research/technique/pdf/362/03.pdf
https://www.nichias.co.jp/products/product/fluorine/tube/tube03.html 

サイドカッター

サイドカッターとは

サイドカッターとは、工作機械に取り付けられて使用される切削加工器具の一種です。

外周面と両側面に切れ刃を保有しており、側フライスとも呼ばれます。刃の形状には、普通刃以外にも、荒刃や千鳥刃などがあります。サイドカッターと似ているものとしてメタルソーがありますが、外周面にのみ切れ刃を保有しており、刃の形状は普通刃や荒刃などがあります。

サイドカッターはフラット面やスロットなどの形状を加工する際に使用されます。また、縁取りや角取りなどの加工にも適した切削加工機です。金属加工だけでなく木材やプラスチックなどの切削にも利用されます。また、自動車や航空機、家電製品など様々な製造分野で使用されており、製品の形状を決定するために欠かせません。

サイドカッターの使用用途

サイドカッターは切削加工器具として、溝切りや、段削りや、側面削りや、幅決め、溝加工などに使用されます。両側面に切れ刃を保有しているため、幅 (厚み) 方向の寸法が切れ刃の部分が最も大きく、本体の寸法がメタルソーに比べると小さくなっている点が特徴です。

切れ刃の幅 (厚み) は、本体の幅が薄いことにより、切り込みの深さが大きいケースでも本体の側面と工作物の側面が擦れることなく、溝部の側面を奇麗に仕上げることが可能です。そのため、特に溝加工に適しているといえます。

産業用の機械でも使用されており、高速回転する刃で素材を切削できます。素材を固定するための装置や、自動送り装置が付いている場合があります。金属やプラスチックの加工に広く使用され、製造業や建築業などで重要な役割を担っています。

サイドカッターの原理

サイドカッターは素材を刃に引っかけて、回転する刃で素材を切断します。主に手動ツールとして使用され、ハンドルを握って切断する素材を固定し、刃を素材に引っかけて回転することで切断します。

刃は素材を切るために切削角度が付けられており、素材に対して適切な力をかけることで綺麗な切断が可能です。

サイドカッターの種類

サイドカッターには、ダウンカット、アップカット、フライホイールの3種類の加工方法があります。3つの加工方法で共通する点は、少なくとも1つの刃先が常に切削部に食い付くように、カッターサイズやピッチおよびその位置を選択して加工を行うことです。

1. ダウンカット

治具およびアーバサポートは、フライス加工の抵抗に耐えられるように、強靭さを備えていなくてはなりません。最も推奨される加工方法は、ダウンカットという方法であり、主分力により加工物がテーブルに向かって下側へ押しつけられることがないようにします。下側へ押しつけられることにより、送り方向は切削抵抗と同じ方向になります。

2. アップカット

一方、アップカットは剛性が不十分であるため、トラブルが生じるケースで、もしくは新しい被削材を加工するケースで代替する加工方法のことです。この方法を用いると、セットアップ剛性が不十分なケースや、深溝の切りくず詰まりによって発生するトラブルを解消が可能です。

3. フライホイール

フライホイールは、セットアップ剛性が不十分かつ、機械動力とトルクが低いケースにおいて、優れた補完加工法を言います。このフライホイールは、最大限工具の近くに設置し、加工物をよりしっかりと装着することが最善の対策となります。

参考文献
https://www.monotaro.com/s/pages/readingseries/sessakukiso_0606/
https://jp.misumi-ec.com/vona2/detail/223000581685/
https://www.sandvik.coromant.com/ja-jp/knowledge/milling/pages/groove-or-slot-milling.aspx