帯電防止チューブとは
帯電防止チューブとは、帯電防止機能をそれ自体に付与したチューブです。
帯電防止機能のない通常のチューブにおける帯電対策としては、金属線や金属メッシュなど、導電性を持つ材料でチューブを覆う方法が取られてきました。この方法で帯電は防止できるものの、チューブを覆う作業が発生すること、適切に覆えていない部分があるとアースが取れてしまうことといった問題があります。また金属製の素材を用いるため、腐食しやすい環境には向きません。
帯電防止チューブではチューブ自体に導電性を持たせているため、上記の作業は必要なく、これらの課題が解消できます。
帯電防止チューブの使用用途
帯電防止チューブは帯電しにくいように設計されているため、静電気の蓄積や静電気の放電による火花の発生を防ぐことが可能です。そのためアセトンやシンナーなど、着火の危険性がある有機溶剤を扱う際に重宝されています。主な使用例としては、こうした溶剤およびそのガスを移送する必要がある、半導体の製造装置などです。
また静電気はノイズの原因になるため、電子機器に悪影響を及ぼします。これらの機器周辺での液体やガスの移送も、帯電防止チューブの代表的な活用事例です。
帯電防止チューブの原理
帯電とは、物質内の電荷のバランスが崩れ、電荷が生じた状態のことを指します。物質どうしが接触や摩擦、または剥離する際などには、帯電が発生します。チューブの場合は流体の移送に用いられるため、チューブと流体との接触および摩擦が起こることによって、チューブ内の表面が帯電するのです。
金属をはじめとする導電性の物質は、帯電しても物質内で電子が自由に移動できるため、
電荷の均一化や拡散が起こりやすいのが特徴です。一方で絶縁性の物質は、導電性の物質と異なり電荷が拡散しにくいため、部分的に帯電が発生してしまうことがあります。
チューブによく使用される素材としては、PTFEやPFAなどのフッ素樹脂が代表的です。フッ素樹脂は薬品や熱に対して優れた耐性があり広く普及していますが、絶縁性が高い、すなわち帯電しやすいという性質を持っています。
流体との接触や摩擦でチューブが帯電すると、火花の発生だけでなく、場合によっては絶縁破壊とよばれる現象が起きてチューブ自体が破損する危険性もあります。チューブに導電性を持たせて帯電を防ぐことは、流体の移送を安全に行ううえで非常に重要です。
参考文献
https://www.nichias.co.jp/research/technique/pdf/362/03.pdf
https://www.nichias.co.jp/products/product/fluorine/tube/tube03.html