酸素モニタ

酸素モニタとは

酸素モニタ

酸素モニタとは、空気中の酸素濃度を測定するための計測器のことです。

酸素センサー酸素計と呼ばれることもあります。酸素モニタが必要である理由として、酸素が人間の生命活動に必須の物質であることが挙げられます。

特に酸欠になりやすい閉塞環境の作業弁場において、酸素濃度をモニタリングすることは極めて重要です。また、多くの科学・産業分野において、プロセス管理や機器保守の観点で正確な酸素濃度管理が必要です。科学・産業分野の要請に応じて、様々な測定条件における測定システムが提供されています。

代表的にはジルコニアセンサーがあり、半導体製造における製品管理や、自動車等における省エネ、排ガス浄化にも利用されています。酸素モニタの詳細は、下記の図を参照してください。

酸素モニタの使用用途

酸素モニタの使用用途は、「酸欠防止用」と「酸素濃度管理用」の2つに大別されます。

1. 酸欠防止を目的とする酸素濃度のモニタリング (検知・監視)

密閉空間で生命活動を維持する上で極めて重要な役割を担います。これは、酸素濃度が15%以下になると人間は呼吸困難になり、7%以下になると脳機能への障害が起こり、さらに4%以下になると死に至ると言われているためです。機器の形状には、携行型・壁掛け型があります。

2. 工業プロセスなどにおける酸素濃度管理

化学工業、セラミックス、金属、などの工業熱処理プロセスの中には、酸素濃度を低く保たなければならないケースもあります。工業炉の燃焼工程でも、燃焼効率と酸化還元プロセスの最適化のため、酸素濃度の監視制御が必要です。

このような工業用途の酸素モニタは、高温環境下で激しい化学反応にさらされる可能性があります。過酷環境に対して耐性を持った製品が必要です。

酸素モニタの原理

酸素モニタの主な動作原理は、「ガルバニ電池式」と「ジルコニア固体電解質方式」の2つです。その他にも、「磁気式」「波長可変半導体レーザ分光式」等が挙げられます。

1. ガルバニ電池式

外界からの酸素を通過させる樹脂隔膜、金 (Au) 電極と鉛 (Pb) 電極、および電解液 (水酸化カリウム水溶液) から構成されます。各電極では下記の反応が起こります。

  • 陽極: Pb + 2OH → Pb2+ +H2O + 2e
  • 陰極: O2 + 2H2O + 4e → 4H2O

陽極で放出された電子が陰極に達し、陰極では空気中から取り込まれた酸素が、陽極で放出された電子を取り込みます。この電子の流れ (電流) が酸素濃度に比例するため、電流を測定することで酸素濃度が測定できるという仕組みです。この反応は、自発的に起るため、センサ駆動用の電源は必要ありません。

2. ジルコニア固体電解質方式

ジルコニアが500℃以上の高温状態において固体電解質の性質を示すことを利用し、ジルコニアセルを用いた手法です。ジルコニアは固体の中で酸素負イオン (O2) を伝導できる性質があり、酸素濃度の高いガス (大気中) から酸素濃度の低い雰囲気 (工業炉内など) へとイオンが伝導します。

このイオンの伝導によって電位差が発生しますが、O2高濃度側とO2低濃度側にはそれぞれ電極が設置されており、起電力が生じます。ちょうど電池の正極と負極のような関係です。

  • O2高濃度側: O2 + 4e → 2O2
  • O2低濃度側: 2O2 → O2 + 4e

電極間に発生した起電力はネルンストの式 (下記参照) に従うため、それぞれの電極における酸素分圧を求めることができます。

  • E= (RT/4F) ·ln (PA/PB)
  • (R: 気体定数、T: 温度、F: ファラデー定数、PA: 高濃度側 (大気中) 酸素分圧、PB: 低濃度側酸素分圧)

温度はジルコニアに備え付けた熱電対により計測されます。なお、概ね400℃以下の雰囲気下では、対象ガスをサンプリングチューブで装置内に導入し、白金ヒータなどでジルコニアセルを所定の温度まで加熱します (サンプリング方式) 。ジルコニアが固体電解質として機能するためには、500℃以上の温度が必要になるからです。

酸素モニタの種類

酸欠防止を目的とした酸素計と、工業プロセスにおける低酸素濃度維持を目的とした酸素計では、異なった製品を使用する必要があります。

1. 酸欠防止を目的とした酸素モニタ

酸欠防止を目的とした携行・定置タイプの酸素系では、ガルバニ電池式が採用されます。このタイプではセンサ駆動用の電源も必要がありません。

センサの寿命は、凡そ2~3年です。ただし、使用可能な環境は一般環境に近い雰囲気下に限定され、精度は±0.5%O2程度です。機器の形状には、携行型・壁掛け型があり、防爆仕様になっている製品もあります。

2. 工業用途の酸素モニタ

工業炉などをはじめとする、高温の工業プロセスにおける酸素濃度の計測では、ジルコニア式の製品が適切です。700℃以上の雰囲気下では、直接その雰囲気にセンサー部分を挿入する直挿式が利用されます。

一方、400℃以下ではサンプリングチューブなどで炉内雰囲気ガスを引き込み、別途ジルコニアセルを加熱するサンプリング方式の製品が適切です。用途に応じて正しく選択する必要があります。

参考文献
https://www.motoyama.co.jp/engineer/engO201.htm
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/56/9/56_9_507/_pdf/-char/ja

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