電磁波吸収シート

電磁波吸収シートとは

電磁波吸収シートとは、電磁波を発生する、あるいは電磁波により誤作動する恐れのある電子機器に用いられる部材です。

電子機器のEMC (電極両立性) 対策には、電磁波ノイズ発生側の対策であるEMI (Electro Magnetic Interference) と、受ける側の対策であるEMS (Electro Magnetic Susceptibility) があります。国際IEC (International Electrotechnical Commission) 規格や電気用品安全法により、その方法が定められています。

電磁波吸収シートは、その対策に用いる代表的な部材です。近年、CPUの高速化に伴って、電磁波の周波数帯が高周波に移行してきており、ノイズ対策が困難になっています。電磁波吸収シートをノイズ発生源付近に貼り付けることで、近傍のノイズを吸収、抑制が可能です。

磁性材料とゴムの複合させた物や薄いプラスチックを積層させたものが電磁波吸収シートとして流通しており、切り貼りが容易、安価で軽量などの利点を有しています。

電磁波吸収シートの使用用途

電磁波吸収シートの使用用途は一般にはあまり知られていませんが、非常に幅広い分野に用いられています。代表的な使用用途は以下の通りです。

1. 電子機器用途

スマートフォンや家電など、半導体基板が内部にある機器に電磁波吸収シートが使われています。筐体の内部や基板に電磁波吸収シートを貼り付けることで、機器の中での輻射ノイズの発生や共振、内部反射を低減させることができます。

2. 通信障害対策用途

航空機や船舶の無線には周波数30MHz以下の電磁波が使われていますが、このノイズの低減に電磁波吸収シートが活用されています。また、日常生活に欠かせない携帯電話やテレビの電話障害を防ぐためにも電磁波吸収シートが使用されています。

3. 自動車用途

近年、自動車には衝突防止レーダーをはじめ、数多くのセンサーが搭載されています。レーダーはミリ波になりますが、その電磁波干渉やノイズ対策として、電磁波吸収シートが用いられています。

電磁波吸収シートの原理

電磁波吸収シートは、シートの中に複合された磁性材料に電磁波を吸収させ、電気エネルギーを熱エネルギーを変換しています。磁性材料は電磁波の吸収帯によって種類が異なり、例えば衛星通信のノイズ防止には、そこで実用する周波数帯域を選択的に吸収できる物質が採用されています。

また、近年は磁性材を使用していないプラスチック製、不織布製の電磁波吸収シートも流通しています。前者は異なる誘電率を持つ樹脂シートを積層させることで分極を発生させ、電磁波を吸収するタイプです。後者は、特殊な表面処理を施した不織布を使うことで、ノイズを抵抗損失により熱に変換しています。

電磁波吸収シートの種類

電磁波吸収シートは、構成される素材によって様々な種類の製品が流通しています。代表的な種類は以下の通りです。

1. 電磁波吸収ゴムシート

磁性材とゴムを混合させたシートです。ゴム特有の柔軟性と絶縁性に優れており、加工も容易です。また耐蝕性が良く、湿度が高い環境など、過酷な使用状況に適しています。厚みは薄いものでは0.25mm、厚いものになると4mmの製品があります。

2. 電磁波吸収プラスチックシート

ポリエステル樹脂を成形したプラスチックシートを積層させた製品です。磁性材を含有していないためコストを低く抑えられ、かつ厚みが薄いため軽量である利点があります。透明な製品も流通しており、窓など光を透過させる必要のある被着体にも使用可能です。

3. 電磁波吸収不織布

プラスチックシートと同様に、磁性材を使用していない環境に良い製品です。厚さは最薄で50µmにすることが可能で、柔軟であるため半導体基板の凹凸にも追従することができます。

参考文献
https://www.techno-kitagawa.com/techinfo/tech/absorbers.html
http://www.rf-world.jp/bn/RFW07/samples/p107-108.pdf

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です