吊具

吊具とは

吊具

吊り具とは一般に物資、資材を吊り下げて移動、または固定するのに必要な吊り下げ荷重に相応しい耐性を持つ金具部品の総称です。俗にフックと言われているもの原理的に同義になります。

規模の小さいものでは台所のおたま掛けから、建築土木においてクレーン作業で活躍する玉掛け吊り具に至るまで規模も荷重耐性も様々な吊り具があります。

また病院で天井からカーテンレールを吊り下げられていますが、このようなタイプは固定式吊り具と呼ばれています。天井ボードの負荷を分散するためV字型になっているものが多く、頻雑にカーテンを引く病床で重宝されています。

吊具の使用用途

使用用途としては、厨房で調理器具や布巾を引っ掛けるS字フック、天井からアイボルト等の連結金具を用いて吊り金具でホップを提げる屋内向け吊り具などは身近な吊り具使用例です。

材質はプラスチック、針金やスチールなどが軽量向きです。ビル建築現場での鋼鉄資材搬入や工場の資材移送などは鉄鋼製のU型シャックルのようなロックの掛かる大型吊り具が使用されています。

U字型のシャックルは、ねじ込み式とボルト式があり簡単には外れません。鋼鉄資材吊り上げには欠かせない吊り具です。他に玉掛けに相応する吊り具として、フック型、リング型が代表的です。

吊具の原理

吊り具の大きな特徴はその連結部分の形状にあります。脱着が頻繁なもの、ロープなどを間接的に吊る場合は引っ掛ける形状のものが多く使用され、重量のあるものを吊る場合はロック式をとるのが通常です。

U字型のシャックルは、ねじ込み式とボルト式があり簡単には外れません。鋼鉄資材の吊り上げには欠かせない定番の吊り具です。他に玉掛けに相応する吊り具として、フック型、リング型が代表的です。

鋼鉄板など横吊りになるものにはクラップ型という形状の吊り具が使われます。洗濯挟みのようにクラップで4方をかまして吊り上げます。ハッカーなども板材向きに使用されます。

重量のある資材吊りのワイヤーは先端が輪になっており、それを人手で固定、確認することを「玉掛け作業」と呼びます。そこから一般的俗称で「玉掛け吊り具」と呼ばれる場合は形状的なことと合わせ荷重量の大きい資材向けの吊り部品を指している呼称となっています。

天井、天面に固定ビス等を打ち込み、スチールやワイヤーの金具部品を設置したものは「固定吊り具」と呼称されます。

吊具のその他情報

1. 吊具のスリングとは

吊り具のことを総称してスリングと呼びます。吊り上げる紐という意味では、赤ちゃんをたすき掛けで抱き上げる抱っこ紐のこともスリングと呼ばれます。玉掛け用吊り具としてのスリングの中では、ナイロンなどの合成繊維で作られた帯状の吊り具のことをナイロンスリングと呼びます。玉掛け用吊り具として一般的にはフックやワイヤロープを使用します。しかしながら、吊り上げたい物体にフックをかける吊環がない場合、ナイロンスリングを使用します。

ナイロンスリングは帯状の吊り具です。フックに帯の両端をかけ、帯の中央部で吊り上げる物体を包むように使用します。吊り具としてナイロンスリングを使用するメリットは、吊環がなくても吊り上げられること以外に吊り上げたい物体の表面を傷めないということがあります。また吊り位置を変更することができるため、作業スペースや重心位置にあわせて自由に玉掛けを行うことができます。箱状物体の差し込み作業など、少しずつ吊り位置を変更する必要がある場合にナイロンスリングを吊り具として使用することがあります。デメリットとしては、帯の中心部分に確実に物体を据える必要があります。帯中心部分からズレた位置で吊り上げると、物体が回転する恐れがあるため注意が必要です。

2. 吊具の天秤とは

吊り具の一種として天秤と呼ばれるものがあります。柱やパネル、大きな建設機械など、通常の吊り具では玉掛けが難しい場合や、重心が不安定となる場合に天秤を使用します。

使用方法としては、クレーンのフックに天秤の上部をかけます。そして天秤から吊り下がっている複数のフックを吊り上げたい物体に玉掛けします。天秤からはワイヤだけではなくチェーンブロックを使用することができるタイプもあるため、吊り上げ後の荷物の回転が可能になります。

天秤の吊り具は、言葉の通り1つの柱で天秤上になっているものもありますが、四角形の柱となっているタイプもあるため巨大な物体の玉掛けも可能となります。吊り上げたい物体に合わせて、適切な天秤を選択しましょう。

参考文献
https://www.moetama.biz/knowledge/basic/beginner/entry-131.html
https://www.kondotec.co.jp/techinfo/powersling/
https://r-i.jp/products/

取付板

取付板とは

取付板

取付板とは、工業分野では主に配電盤の取り付けや、積電計、その他メーター類などを固定する際に台座として用いられる工業部品のことを指します。

用途により樹脂プラスチックやステンレスなどの金属材を金型加工したものが販売されています。使用目的別に板の形状や大きさは様々です。

またDIYの界隈などでは、日用品、業務用品をフックする目的でポールや壁に設置するボード類を「取付け板」と呼称する場合があります。要は機器などを設置する為の固定台座のことです。

取付板の使用用途

使用用途は、主に配電盤、電力計算ボックス、スイッチ、他各種メーター機器、計測器、測定器などを固定設置する際に土台として使用されています。

面白い設置部位としては、ゲームセンターのパンチ力を(/kg)測定してデジタル表示する遊具の内部に使われている用例です。ミット部分を強打する瞬発の衝撃から周囲機器を保護、固定する目的で使われています。

主に正確な計測や送力を求められる機器の安定性を保つことや設置強度を高める用途全般に使用されています。

取付板の原理

特徴として、加工される素材はステンレスやスチール材など温度や湿度、衝撃などに左右されにくい金属が多く使われています。又、ボックス型と呼ばれているものは台座と保護箱を兼ねており、箱の中に計器、計測器をインサートする仕様のものがあります。

屋内又は室内において使用されている取付板は樹脂性が多く、通常のプラ板を平面網の目加工したものから、強化プラスチックまであり、価格帯も180円~1000円前後と多種多用な取付板が市販されています。

これらは主に、スイッチやブレーカなどの配電計器、切り替え機器等を固定、保護している他、化粧板としても内装の美観を一助しています。

ポールなどへの設置も可能で、VF、VAケーブルなど隠蔽もできることなどから「取付自在板」という呼称で呼ばれることもあります。

また大昔から走っている京都のレトロな軽車両、列車などでは、木箱型の風情ある計器取付板が牽引車の前方上部壁面でみられました。「神様が入ってる箱」と子供たちの間で謂われており、本当に仏像が安置されていると思い込んでいた外人観光客がいたほどです。交通安全祈願には違い無さそうですが、現在でもどこかのローカル路面電車では見られるかもしれません。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/vona2/mech/M1500000000/M1505000000/

https://mobile.twitter.com/hankyu_ex/status/558212589571022848

丸ボルト

丸ボルトとは

丸ボルトとは、ボルトの頭部分が丸形状をしており、さらにプラスやマイナス、六角穴などがないボルトのことです。

正式名称は角根丸頭ボルト (英: Cup head square neck bolts) で、根角ボルトと呼ばれることもあります。丸ボルトには六角形状やプラスやマイナス、六角穴など、締結時にボルトを回すために工具と噛み合う形状はありません。

ボルトの首下にある4角形状と締結される部品に設けられた溝形状とが噛み合うことによって、丸ボルトが固定されます。丸ボルトが固定された状態で、丸ボルトの相手となるナットを回すことによって締結します。

一般的にボルトとナットで締め付ける際にはスパナレンチが、ボルトを固定する方とナットを固定する方の両方に必要です。しかし、丸ボルトであれば、ボルトとナットを称する際に通常2本必要なスパナやレンチが1本の工具で済みます。

丸ボルトの使用用途

丸ボルトは、建設現場で使用される場合が多いです。ねじの締め付けが多いような場所で、丸ボルトは真価を発揮します。

例えば、足場を組む際には大量の骨組み同士をボルトとナットで締め付けて組み上げていきます。この際に2本のレンチを使用して締め付けていくと、非常に手間と時間が必要です。

このような場合は、丸ボルトの使用が有効です。ただし、丸ボルトを使用する際には締め付け物に丸ボルトを固定するための穴が開いていないと使えません。

丸ボルトの原理

丸ボルトは、首下に設けられた四角形状が特徴です。首下部分は固定する部品と接するため、固定部品に丸ボルトの四角形状と噛み合う四角穴や長穴を空けておきます。丸ボルトを締結したい場所にセットするだけで、締結作業時に丸ボルトを固定することが可能です。

丸ボルトを固定する穴は長穴になっているのが一般的であり、このことによって位置決めができます。適当な位置に丸ボルトを差し込んで長穴にセットした後に反対側からナットを回して手締めで仮止めをしておき、スパナを使ってナットを締め付けます。

丸ボルトの選び方

丸ボルトがJISで規定されているのは、M6〜M20までのサイズのボルトです。ねじの公差域クラスは6g、強度区分は4.8 、8.8、10.9まで規格化されています。

一般的なねじに関する寸法に加えて、根角の寸法も対角長さと向き合う2辺の幅、四角形状の高さが規定されています。丸ボルトは、必要な強度に見合う呼びサイズと強度区分の丸ボルトを選定し、選んだ丸ボルトにあった長穴を締結する部品に空けておくことが重要です。

また、四角形状の付け根には隅Rがあり、JISでも最大値が規定されています。隅Rが締結部品に乗り上げないよう、長穴の寸法を決定します。

丸ボルトのその他情報

丸ボルトの締め方と緩め方 (外し方)

丸ボルトと六角穴付ボタンボルトは、使用方法が異なります。建設向けの丸ボルトと、産業向けの六角穴付ボタンボルトの違いです。丸ボルトの特徴として、以下の2つが挙げられます。

  • 相手の部品にあらかじめ四角穴を開けておき、四角穴の角に引っかかることにより回り止めにすることが可能
  • 頭部分のエッジがなく緩める穴などが無いため、いたずら防止の目的で使用される

丸ボルトは特殊な方法での締結に対して、六角穴付ボタンボルトは頭部分に六角穴があいており六角棒レンチで締結します。六角穴付ボタンボルトは、丸ボタン同様エッジ部分がないことから家電製品のパネル部分の締結や、産業製品のパネル部分の人間が操作する可能性がある部分によく使用されるボルトです。

参考文献
https://www.tankan-diy-land.com/34498
https://jp.misumi-ec.com/vona2/detail/221000550869/
https://jp.misumi-ec.com/vona2/detail/110302280450/

ロータリーダンパー

ロータリーダンパーとは

ロータリーダンパーは例えばピアノのカバーなど突然倒れると危険な箇所に設置することで、ゆっくりと倒れるようする器具です。

ドアや蓋など何も処置をしていない場合は力のかかり具合により開閉の速度は異なり、力いっぱい閉めると閉める速度も速くなります。しかし、ロータリーダンパーを使用すると、この閉まる速度は力の賭け具合に係わらずほぼ一定になりますので、安全性が高まると共に閉まる際に出る騒音も軽減する効果が得られます。

ロータリーダンパーの使用用途

ロータリーダンパーは家具の扉や自動販売機の取り出し口のドア、各種機器類や測定器など急に閉まったり開いたりすると怪我や事故を起こして危険な箇所などに使用されています。

ロータリーダンパーを使用するとゆっくりと動作するために衝撃が抑えられますので、ガラスなど衝撃に弱く破損しやすい素材を使用している場合には非常に有効な器具になります。また、ゆっくりと閉まると高級感が得られますので、より高級感を演出するためにも使用されています。

ロータリーダンパーの原理

ロータリーダンパーはシリコンオイルなどの粘性が高い液体が使用されていますが、この粘性の高い液体内でローターを回転させますと液体からローターが抵抗を受けて制動トルクが得られます。液体内では高速で回転すればするほど抵抗が増しますので、この原理を応用するとローターが速く回転すればするほど強い制動トルクが得られますので、扉を閉める力によらずほぼ一定の速度で扉は閉まることになります。

もちろん、液体を使用した単純な機構ですので力によらず完全に速度が一定となるわけではありません。また、温度により液体の粘度も変わりますので、気温の高い夏には粘度が低下しますので閉まる速度は速くなりますし、逆に気温の低い冬には粘度が上昇しますので閉まる速度は遅くなります。

トルクはロータリーダンパーを右回り、左回りのどちらに回しても発生しますが、クラッチを内蔵させたタイプでは一方向のみに制動トルクを発生させることも可能になります。

参考文献
https://www.takachiho-kk.co.jp/prod/mechanical/damper/rotary_sp/

レールクランプ

レールクランプとは

レールクランプ

レールクランプは文字通り電車の線路などに使用されるレールを挟む装置です。

レールは中腹がくぼんだ形になっています。これは、レール同士を固定するためのボルト用の穴を開けやすいことと、原料の鉄の節約にもなりますのでこの形状なのですが、このくぼみをレールクランプで挟み込んでレール上を通る機器を固定したりする用途に使用されます。

レールクランプはこのレールを強い力で挟み込む用途に特化した機器となります。

レールクランプの使用用途

レールクランプはレール挟む際に使用されますので、レールを扱う各工場に設置されて使用されます。

レールは基本的に電車用として作られますが、JRや私鉄各社で使用しているレールの使用期限が来て使用済みになった場合は中古品として売り払われて造船所のドックのや工場内のトロッコやクレーンなどのレールとして再利用されていますが、例えばレールで移動する門型のクレーンを固定させる際にはレールクランプが使用されます。

レールクランプの原理

レールクランプはクリップのようにレールのくぼみ部分を油圧で挟み込み固定します。油圧ですから非常に強い力が得られますので、レールクランプを使用するとしっかりと固定することができます。

レールクランプはそれ単独では意味はなく、クレーンや電車などレール上で強く固定しておきたい機器や装置に取り付けて使用されます。門型のクレーンの場合は2本のレール上を動いていますので、固定する際には最低でも2つのレールクランプが必要になります。

また、レールクランプはそれ自体がレール上を動くことが可能ですので、基本的にタイヤのように4つのレールクランプを取り付けることでレール上を移動できると共に固定したいときにしっかりと固定することができます。

通常よく見かける鉄道用のレール以外にもトロッコ用など細身のレールもあり、軽レールと呼ばれています。また、レールにはいくつかの形状がありますので、形状に合わせてレールクランプを交換する必要があります。

リングギア

リングギアとは

リングギヤ

リングギアは名前の通りリング状(環状)になったギアで、リング内部または外部に歯が加工された歯車です。一般的にプラネタリ・ギア(遊星ギア)の外周のギアに使用されています。リング内部に歯があるリングギアは内歯車とも呼ばれています。

リングギアはまず真円に近いかどうかが重要な点であり、その他、歯の形状や歯の面取りなども各メーカが独自の開発を行っています。これら歯の形状や面取りは、歯の噛み合わせ時の滑らかさや異音にも直結するため非常時重要な検討項目です。

リングギアの使用用途

製品としては、自動車のオートマミッションのドライブプレートやマニュアルミッションのフライホイールクラッチ等の減速率の高い製品に使用されており、リングギアはこれらの製品にとって無くてはならない歯車です。

一方、リングギアの一部を切断してセグメントギアとして使用することも可能です。セグメントギアとはリングギアの円弧の一部のみを使用する形状をしており、他のギアと組み合わせて往復運動を伝えるギアになり、機械式時計などで使用されています。

リングギアの原理

リングギア単体では特に機能を持たないため、ここでリングギアの主な使用用途であるプラネタリ・ギアの原理に付いて説明します。

プラネタリ・ギアは遊星ギアや遊星歯車とも呼ばれており、このプラネタリ・ギアはサンギア、プラネタリギア、リングギアの3種類のギアによって構成されます。これらの名前は、各歯車が太陽のまわりを回る惑星に似ていることから名付けられています。プラネタリギアは実際にはプラネタリギアキャリアという部品で保持されています。

プラネタリ・ギアの特色は、サンギア、プラネタリギア(キャリア)、リングギアの各ギアを入力、出力とする事が可能だということです。1つのギアを入力、1つのギアを出力、1つのギアを固定と考えると、6組の組み合わせが考えられ、これから2種類の増速の組み合わせ、2種類の原則の組み合わせ、二種類の逆転(増速/原則)が取り出せます。

また、どれか2つのギアを固定すれば入力と出力は直結となり、1つのギアを入力、他のギアをフリーとすれば出力は行われない状態となります。

参考文献
https://www.goo-net.com/pit/magazine/109689.html

プラチェーンコンベヤ

プラチェーンコンベヤとは

プラチェーンコンベヤ

プラチェーンコンベヤ (英: Plastic Chain Conveyor) とは、搬送部分にプラスチック製チェーンを用いたコンベヤです。

特に軽量な製品や食品、電子機器などを効率的に移動させるのに適しています。プラチェーンコンベヤ自体も軽量かつ取り扱いが容易で、設置や保守作業が比較的簡単です。一般的には、金属製よりも環境に対する影響が比較的少ないため、持続可能な運搬ソリューションとしての利点もあります。

また、プラスチックの材料は金属と比較して静かで、作業環境の騒音を軽減します。曲線や傾斜に沿った運搬が可能で、複雑なレイアウトや配置に対して有利です。これにより、スペース効率を最大限に活用できます。

プラチェーンコンベヤの使用用途

プラチェーンコンベヤはさまざまな産業で使用されており、その柔軟性と軽量性から多くの用途に適しています。以下は、プラチェーンコンベヤの一般的な使用用途です。

1. 物流

物流におけるプラチェーンコンベヤの主要な用途は、商品の運搬と仕分けです。大規模な倉庫や配送センターでは、商品をピッキングするためにプラチェーンコンベヤを使用します。商品はコンベヤ上に配置して効率的に指定された場所に運ばれ、正確で効率的な注文処理が可能です。

2. 食品産業

食品産業では、プラチェーンコンベヤは食品の運搬に広く使用されます。食品の衛生基準が非常に厳格であるため、プラスチック製のコンベヤが最適です。

食品の包装ラインなどで使用され、食品を適切に運搬してパッケージに詰め込みます。また、焼き物や熱した食品のクーリングラインでも使用され、食品を冷ますのに用いる場合も多いです。

3. 医療機器

医療機器産業では、プラチェーンコンベヤが医療機器の製造プロセスに使用されます。手術室で使用される医療機器の組み立てラインや検査ラインで、部品や製品を清潔な環境で運搬するのに有利です。衛生基準を守るために、プラスチック製のコンベヤが好まれます。

4. 電子機器

電子機器製造業界では、プラチェーンコンベヤが部品や製品の運搬に使用されます。電子機器の基板を組み立てるラインでは、部品を運ぶのにプラチェーンコンベヤが適しています。また、電子機器のテストラインでも使用され、製品を自動的にテストステーションに移動させる役割を果たすことも可能です。

プラチェーンコンベヤの原理

プラチェーンコンベヤは、プラスチック製チェーンを使用して物品や製品を運搬する装置です。その原理は、チェーンがループ状に回転して物品が運ばれる仕組みに基づいています。プラチェーンコンベヤの中心的な要素は、プラスチック製チェーンです。

このチェーンはリンクと呼ばれる部分から構成されており、これらのリンクが連結されて長いループを形成します。チェーンは一般に、横方向と縦方向の移動を可能にするために、特定のパターンでリンクが配置されていることが多いです。

プラチェーンコンベヤのチェーンを駆動するためには、一般的に電動モーターとプーリーが使用されます。モーターはチェーンを回転させ、プーリーはチェーンを引っ張って運動を発生させる仕組みです。これにより、チェーンがコンベヤの上を動いて物品を運びます。

ただし、プラスチック製のため、高温に弱いというデメリットがあります。揚げ物などの高温食品を搬送する場合には不向きです。60℃程度が上限の製品が多く、これ以上の温度を搬送する場合にはステンレス製コンベヤなどを使用する必要があります。

プラチェーンコンベヤの選び方

プラチェーンコンベヤを選ぶ際には、いくつかの重要な要因を考慮する必要があります。以下はプラチェーンコンベヤの選定要素一例です。

1. コンベヤの寸法

コンベヤの長さは、運搬する物品や製品のサイズ、および運搬ルートに合わせて決定されます。必要なコンベヤ長を正確に計算し、製品を運搬するのに十分なスペースが確保されるようにします。また、将来的な拡張や変更にも対応できるように、余裕を持たせることが重要です。

コンベヤの幅は、運搬する物品や製品のサイズに合わせて選択されます。物品がコンベヤ上にしっかりと収まるようにするために、適切なコンベヤ幅を選ぶことが大切です。

2. 速度

コンベヤの速度は、運搬物の種類やプロセスに応じて選択されます。高速での運搬が必要な場合や、品質管理のために一定の速度が必要な場合など、要件に合わせて速度を調整します。また、インバータなどを使用した製品は可変速も可能です。

3. フレームの材質

コンベヤのフレーム材質は、使用環境や運搬物の特性に合わせて選ばれます。一般的なフレーム材質には、ステンレス鋼やアルミニウムなどがあります。食品産業では、衛生基準を満たすためにステンレス鋼やプラスチック製のコンベヤが選ばれることも多いです。

ブラスター

ブラスターとは

ブラスター

ブラスターとは、砂や鋼球などの微粒子を表面に吹き付けることによって、洗浄や加工製品の仕上げ、表面加工などを行う作業のこと、またはブラスター作業を行うための機械のことです。

サンドブラスターやショットブラスターなどの用語が用いられますが、吹き付けるものによって使い分けられています。サンドブラスターでは珪砂などの砂を吹き付けるのに対し、ショットブラスターでは細かな鋼球を吹き付ける処理です。

さらに、特殊な例としてはアクアブラスターやジェットブラスターは、激しい水流で水配管を洗浄したり、強力な圧力でエアーを吹き付ける装置もあります。ここでは主に砂や鋼球など、個体を吹き付けるブラスターについて解説します。

ブラスターの使用用途

ブラスターは、ブラスト処理として製品の表面処理に使われる装置です。例えば、金属加工品のバリ取りや錆落とし、クリーニング、下地処理などに使われます。鏡面仕上げや研磨加工といった平面を平滑にすることによって光沢を出したり、逆に梨地に仕上げることによって光沢を抑えたりすることも可能です。

3Dプリンタによる造形品の仕上げにも、ブラスターが使われます。ブラストによって粉末や積層の跡を目立たなくする効果があります。特殊な使い方としては、金属製品の表面強化です。ショットピーニングなどは金属製品の表面強化の一例であり、例えばα (アルファ) 処理はナノ結晶化強化によって、鉄鋼材料の製品の強度と靱性を両立させる方法です。

さらに、マイクロステクチャによって摺動性の向上も期待され、工具や刃物、精密プレスの金型や歯車などに使用されています。なお、α処理は株式会社不二製作所の登録商標です。また、ガラス工芸や石材彫刻などにおいてもブラスターを用いることで、様々な芸術的な加工を行うことができます。

ブラスターの原理

ブラスターは、主に圧縮空気によって微粒子を噴射します。コンプレッサにより圧縮空気を送り出し、その流れに乗って粒子が飛ばされて微粒子が対象物に当たり、バリや表面についた付着物を除去します。

ぶつける粒子の種類やその強さに応じて、吹き付けられた表面の形状は大きく変化させることが可能です。例えば、金属表面を平滑にしたり逆に梨地にすることによって、製品の外観を整えます。3Dプリンタで作られた製品の積層の痕が目立たなくなるのも、製品の表面が整えられるからです。

なお、ブラスターの中でもショットピーニングの場合、鋼球などを圧縮空気以外に、モーターによる遠心力を用いて対象の表面に吹き付けます。金属の粒子は重いため、吹き付けられるときの運動量が大きく、表面を粗くしたり、より強力に削ることができます。

ブラスターの種類

ブラスターは持ち運びできるマシンから、工場に設置する大型の設備までさまざまな規模の機械があります。持ち運びできる大きさのブラスターマシンは、1MPa以下の圧縮空気で研磨材を吹き付ける機械です。

一方で、工場に設置される大規模設備では、回転テーブルやコンベア、自動台車テーブルなどで、連続して大量の製品を処理できるものがあります。

ブラスターのその他情報

研磨材の種類

ブラスターでは目的に応じた研磨材を選ばなければなりません。代表的な研磨材を紹介します。

1. セラミックス・ガラス研磨材
セラミックス・ガラス研磨材にはアルミナ・炭化ケイ素系、ガラス系、ジルコン・ジルコニア系、その他セラミックス系の研磨材があります。

2. 樹脂・植物研磨材
樹脂・植物研磨材は硬さが低いため、加工対象にダメージを与えにくいのが特徴です。樹脂成形品のバリ取りや金型のクリーニング、塗装の剥離作業で使われます。

3. 金属研磨材
金属の研磨剤は比重が大きく硬度もあるため、強力な洗浄やショットピー二ングなどの表面強化ができます。研磨剤は鉄系、ステンレス系などです。

4. 特殊研磨材
特殊研磨材には二流化モリブデン、ドライアイス、重曹などがあります。二流化モリブデンは対象物の表面に付着することによって、固体潤滑の効果が得られるのが特徴です。

ドライアイスは、衝突で昇華し体積が750倍に膨張します。この膨張する際のエネルギーによって汚れやバリを除去します。重曹は安全性が高く水溶性であることから、食品工場で使われる研磨材です。

参考文献
http://www.atsuchi-ascon.co.jp/vacuum_blaster/

非常発電機

非常発電機とは

非常発電機

非常発電機とは、災害などによる突発停電を想定して、防災や保安の目的で設置される非常用発電装置です。

電力の供給が停止してしまうと、ビルや病院などで通信回線が止まって二次災害が発生するリスクがあります。このような事態に備えて非常用発電機の設置が重要視されています。

非常用発電機には、主にエンジン発電装置とガスタービン発電装置があります。用途や使用する建物に合わせて選定することが大切です。どちらも信頼性が高く、高品質な電力供給装置として使用することができます。

非常発電機の使用用途

非常発電機は、突発停電時に二次災害が発生するリスクが想定される場所で使用されます。以下に使用例を列挙します。

  • 病院などの医療施設
  • エレベーターなどを有している大型ビルやホテル
  • コンピューターセンターや巨大サーバー
  • 高速道路のインターチェンジ
  • 照明が必要なトンネル
  • 空港や港の夜間照明
  • 防災用の消火スプリンクラー

上記の中には、法律で非常電源設置が義務付けられているケースもあります。

非常発電機の原理

発電の仕組みは、電磁誘導の原理を利用して導体が磁界を横切ることで起電力を発生させます。

非常用発電機は緊急時に確実に使用できる必要があるため、停電を感知して発電電源に素早く切り替えるシステムを備えています。さらに地震などがあっても稼働できるように耐振構造です。

非常用発電機の種類

非常用発電機は主にエンジン発電機とガスタービン発電機があります。

1. ディーゼル発電機

ディーゼル発電機ではディーゼル機関を機動力に用いて、交流発電機をディーゼル機関に直結させて発電させています。始動するまでにかかる時間が短い上に熱効率は高く、35%〜40%程度です。起動における信頼性も高い発電装置です。

2. ガスター発電機

ガスタービン発電機は、非常用には空冷式を採用します。冷却水を必要としないので、凍結や断水でタービンが故障する心配がありません。また、設置面積がディーゼルエンジンと比べて小さい点も特徴の一つです。

非常発電機のその他情報

1. 非常発電機の負荷試験

非常発電機は、有事の際に確実に稼働させるために定期的に3つの点検を行う必要があります。

電気事業法に基づく定期点検
この点検では、電気系統を立ち上げた状態で5分程度の無負荷運転 (空ふかし) を実施します。

消防法に基づく定期点検
半年に一度の機能目視点検と一年に一度の無負荷運転を実施します。

消防法に基づく負荷試験運転
この試験は一年に一度行う必要があり、非常発電機に負荷試験装置を接続し、30%以上の負荷をかけた状態で30分間連続運転させます。負荷試験運転では、非常発電機に異常振動や発熱などの異常がなく運転が正常であることを確認します。これに加えて、無負荷運転時に生成されたカーボンを燃焼排出させるという役割があります。

前述の通り、負荷試験運転では非常発電機に負荷試験装置を接続する必要があります。ただし、非常発電機の設置場所によってはそれが困難な場合もありました。しかしながら、令和元年に消防法が改正され、ガスタービン非常発電機は負荷試験運転の実施が不要となりました。負荷試験が必要な機器でも、実施が困難なときは定められた内部観察を行うことで、現在は負荷試験同等の点検を行ったとみなされています。

2. 非常発電機の価格

非常発電機の価格は、発電方法や容量などによって大幅に異なります。家庭用小型機であれば、45000mAh/3.7V/167Wh/定格150Wのソーラー充電・リチウムイオン電池蓄電タイプの発電機を1万円代で購入することができます。

一方、店舗やサーバー室で用いる非常発電機は、ガスタービン発電型で数百万円〜の価格帯になります。エンジン非常発電機も大型施設向けの製品が多く、ガスタービン発電型と同じく数百万円〜の価格帯です。

参考文献
https://www.yanmar.com/jp/energy/emergency_generator/
https://www.denyo.co.jp/products/generator/emergency/
https://www.meidensha.co.jp/products/energy/prod_04/prod_04_04/index.html
https://www.fujielectric.co.jp/products/power_supply/eeg/

パワーユニット

パワーユニットとは

パワーユニット

パワーユニット (英: power unit) とは、自動車などのエンジンやモーターなどの動力を発生させる装置のことです。

様々な産業機器など、大型機器の動力源として利用されます。内燃機関に加え、複数のモーターや発電機から成るため、一体の動力源としてパワーユニットと呼ばれています。

内燃機関としては、ディーゼルエンジンを用いる場合が多いです。ここで発生した動力を油圧ポンプなどによって伝達し、機械を動作させます。

パワーユニットの使用用途

パワーユニットは、様々な大型機械を動作させるために使用されます。例えば、排水用ポンプ、オイルポンプ、農業機械、建設機械、通信機器などです。この場合、油圧式パワーユニットがよく使用されています。

また、モータースポーツの一つであるF1では、F1カーの動力源としてパワーユニットが使用されます。従来のエンジンだけでなく、ハイブリッド式のターボエンジンへと改良したため、二酸化炭素排気量の減少が実現されています。

パワーユニットの原理

パワーユニットを使用すれば、ディーゼルエンジンなどのエンジンから発生した動力を複数のモーターなどを通じて、様々な産業機械の動作が可能です。産業用において以前から利用されてきた一方、近年ではF1におけるパワーユニットの開発が進んでいます。

F1のパワーユニットでは、内燃エンジン、ターボチャージャーやバッテリー、エネルギー回収システムなどのハイブリッド装置から成ります。これらの装置がコンピュータ制御されることで、燃費の向上やエンジン性能の向上、排気ガスの清浄化が実現可能です。このように、自動車産業においては、パワーユニットの高度化が進んでいます。

一方、自動車においてエンジンや変速機、クラッチを含めた装置の呼び方は、パワープラントです。なお、発電所という意味でもパワープラントが用いられます。

パワーユニットのその他情報

1. F1パワーユニットの歴史

F1がはじまったのち50年以上、F1マシンは燃料を用いて走っていました。一般車でいうと、ガソリン車にあたります。F1は、モータースポーツであるとともに、次世代技術の開発という面も持ち合わせています。

石油や化石燃料の枯渇、環境問題への取組みを鑑み、2014年にハイブリッド式パワーユニットの導入を行いました。このパワーユニットは小排気量でハイパワーを生み出す技術が詰まっています。

2. F1パワーユニットの構造 

F1のパワーユニットは、以下の部品構成になっています。

ICE
ICEは、内燃機関であり、エンジンに相当する部品です。従来は想像を絶するようなハイパワーエンジンが使用されていましたが、現在は、排気量1.6l、6気筒のエンジンに定められています

TC
TCは、ターボチャージャーと呼ばれ、エンジンより排出される排気ガスを利用し、エンジンへ送られる空気を圧縮して送りこむ機能を持っています。圧縮された大量の空気を送ることで、エンジンのパワーを飛躍的に高めます。

また、ターボチャージャーと連動しているMGU-Hは、熱エネルギー回生システムです。ターボチャージャーの回転を補助します。これにより、熱回収とともに、ターボチャージャー最大の泣き所であるターボラグの緩和が可能です。

MGU-K
MGU-Kは、運動エネルギー回生システムであり、一般的なハイブリッド車でおける発電機に該当し、役割は、減速時に発生する運動エネルギーを電気エネルギーに変換することです。

電気エネルギーはバッテリーに送られ備蓄されます。また、MGU-Kは、モーター駆動の機能も備わっており、バッテリー内の電気エネルギーを使い、モーターとして駆動力を発揮します。

MGU-H
MGU-Hは、熱エネルギー回生システムであり、排気ガスによる熱エネルギーを電気エネルギーに変換するものです。MGU-Hは、ターボチャージャーに連結されており、ターボチャージャーが使い切れない排気ガスの熱エネルギーを利用します。

変換された電気エネルギーはバッテリーに備蓄され、ターボチャージャーを補助する際は、バッテリーの電気エネルギーを利用します。

その他

  • ES
    変換された電気エネルギーを備蓄するバッテリーです。
  • CE
    パワーユニットの制御を行う電子デバイスです。

参考文献
https://formula1-data.com/glossary/car/body/power-unit
https://www.goo-net.com/knowledge/10568/
https://formula1-data.com/glossary/car/body/power-unit