パンチダイ

パンチダイとは

パンチダイとは、プレス金型において重要な役割を担うパンチとダイの組み合わせのことです。

パンチとダイは基本的に1つのセットであり、対で使用されます。さまざまな加工形状に合わせたパンチが存在し、刻印パンチや抜きパンチ、曲げパンチ、絞りパンチなど精密に加工されて使用されます。

それらのパンチに対応するダイがセットで制作され、単品では機能しないため、両者が揃って初めて加工することが可能です。ダイはパンチ形状に合わせた受け皿の役割を果たします。例えば、抜きパンチと抜きダイの場合、鋭利な刃物のような形状をしており、絞りパンチや曲げパンチの対になるダイは金属が滑り込むような形状で加工が可能です。

金属が圧力を加えながら滑り込んでいく際には大きな負荷がかかりますが、表面を鏡面加工 (ラッピング) や表面処理することで、寿命を延ばす工夫がされています。パンチダイには非常に強い負荷がかかるため、ダイス鋼やHAP、粉末ハイス、SKD (焼き入れ) など耐久性の高い素材が使用されています。

パンチダイの使用用途

パンチダイは、プレス金型において重要な役割を担う部品で、鋼板への加工を行います。プレス金型は、単発型と順送型に大別され、それぞれの用途に応じたパンチダイが使用されます。

比較的単純な加工を行うもので、人手によって材料が送り込まれ、加工が進められます。一方、順送型プレス金型は、複数の加工工程が1つの金型に設けられており、自動で材料が送り込まれ、複雑で精密な部品の大量生産をすることが可能です。

順送金型では、穴あけ、刻印、抜き加工、絞り加工、せん断加工など、さまざまな工程がパンチダイによって実現されます。パンチダイが複数のセットで組み込まれており、それぞれの工程で効率的に加工が行われます。

パンチダイは金型にとって重要な工具であり、その使用用途は金型の種類や加工内容によってさまざまです。しかし、いずれでも精密な部品加工や大量生産に欠かせない存在となっています。

パンチダイの原理

プレス金型におけるパンチダイの原理は、抜き加工におけるクリアランスの重要性にあります。クリアランスとは、パンチとダイの間にできる隙間のことです。設定や調整が加工品の仕上がりやパンチダイの寿命に大きく影響します。

抜き加工に必要なパンチサイズは、鋼板の抜き寸法に合わせて設定されます。対応するダイの加工寸法は、パンチサイズよりも1回り大きくなり、隙間がクリアランスで、全周にわたって均一でなければなりません。

加工する材質によって、クリアランスの設定値は異なります。例えばステンレス系の材料では、板厚に対して7~11%程度に設定することが一般的です。適切なクリアランスの設定や調整が不十分だと、製品に大きなバリが発生したり、パンチダイが痛む原因となったりする可能性があります。

クリアランスを調節する際には、0.01mm単位で合わせることが一般的であり、非常にシビアな作業が求められます。順送金型のようにすべてのパンチダイの位置関係を合わせる必要がある場合には、加工精度が重要となります。

位置決めプレートの加工は主にマシニングセンタやワイヤーカットで行われ、パンチダイの傾きの原因となる場合があるため注意が必要です。パンチダイをセットする際には、傾きがないかしっかりとチェックします。

パンチダイの種類

用途や加工形状によって異なるパンチダイが使われます。主に刻印パンチ、抜きパンチ、曲げパンチの3種類が存在します。

1. 刻印パンチ

刻印パンチは、金属表面に文字や図形を刻むためのパンチダイです。製品にロゴや識別番号、規格表示などの情報を刻むために使用されます。刻印パンチは、刻印面が鏡像状に彫られ、プレス加工時に正確な文字や図形を金属表面に転写できるように設計されています。

2. 抜きパンチ

抜きパンチは、金属板を切り抜くためのパンチダイです。金属板に穴を開けたり、外形や内形の加工を行ったりするために使用されます。抜きパンチは、鋭い刃が金属板を切断し、対応する抜きダイが切り抜かれた形状を受け止めることで、正確な形状の切り抜きが可能になります。

3. 曲げパンチ

曲げパンチは、金属板を曲げるためのパンチダイです。金属板を特定の角度や曲率に曲げられる点が特徴です。曲げパンチは、曲げる部分に沿った形状を持ち、対応する曲げダイが金属板を押さえつけることで、金属板を滑らかに曲げられます。

パレット洗浄機

パレット洗浄機とは

パレット洗浄機は、パレット(プラスチックパレット)の洗浄(乾燥)を行う機械です。

使用済みのパレットは汚れやカビの発生、または異物の混入などがある場合があり、積載する荷物を不衛生な環境に曝さないためにパレットの洗浄が必要ですが、パレットは非常に大きくまた重量もあるので、人の手で洗浄していたのでは手間がかかります。

パレット洗浄機は、パレットを積んで設置すると段ばらし、洗浄、遠心脱水、乾燥、段積みまでを行う機械です。洗浄対象となるパレットの形状・種類に応じて様々なタイプが存在します。

パレット洗浄機の使用用途

段積みしたパレットを洗浄機に設置すると、まず低圧多水量方式でパレットを丸洗いしながら回転ブラシで全体の汚れを取り除いていきます。洗浄が終わった後は、パレットを高速で回転させ、遠心力で水分を飛ばします。最後に高温のエアブローを行い、残った水の水切りをして乾燥させ、終了です。

洗浄だけを行う簡易的なものから、洗浄から乾燥までトータルに行える大規模なものまで様々なタイプがあります。機器の設置スペースやパレットのサイズなど、ニーズに合わせて機器を選択します。

パレット洗浄機の原理

物流業界で重要なマテリアルハンドリング機器であるパレットは、昔は木製が主流でしたが、木製パレットは洗浄を行う概念がなく、しばしば積載する貨物を不衛生な状況に曝してしまうことがありました。特に衣料品・食料品・電子産業等の生産現場ではこの問題は深刻であり、パレットをクリーンな状態に保つことが重要視され、パレットは洗浄・滅菌が可能なプラスチックパレットやスチールパレットに置き換わってきています。

しかし、プラスチックパレットも使い続ければ汚れが蓄積します。そして人海戦術によるパレット洗浄はとても大変で、手作業では取り切れない汚れもあります。パレット洗浄機は洗浄から脱水乾燥までを自動で行い、パレット洗浄の効率化を行う機械です。

洗浄可能なパレットの大きさや形状、種類、洗浄効率は機械の型によって様々です。設置スペースを取らないコンパクトな洗浄機は一時間に数十枚、大型の洗浄機は一時間に数百枚の処理が可能です。

参考文献
http://www.kinsei-unyu.co.jp/pallet/

パレットステージ

パレットステージとは

パレットステージとは、中二階式の棚(仮設中二階)のことで、倉庫の上部にできてしまいがちなデッドスペースを活用するために設置します。2台のラックの間にスチールパレットを架け、繋げていくものです。アンカーなどを使用せず建物に固定しない仕組みで、組み立ても解体も短期間で行うことができます。

積載ラック、積層ラック、積層棚、メザニン式積層ラック、メザニンラック、立体架台、プレーンラックなど、似た構造物は多くあります。これらのうちパレットステージは最も簡易的な設置方法を用いるもので、アンカーを使わずに逆ネステナー(逆ネスティングラック)を支柱として設置します。 

パレットステージの使用用途

パレットステージは倉庫の上部にできたデッドスペースを活用するために考案されました。平面を上下二層化することができるので、作業スペースと収納量が単純に倍増します。

ボルトを使わないので、フォークリフトで好きな場所に設置し、自由に移動・増設させることができるのが利点です。不要な時は取り外し、ネスティングによる収納が可能です。さらにインテリアを工夫して景観をよくすることもできます。

設置を含めたレンタル貸し出しを請け負っている業者もあります。 

パレットステージの特徴

溶接・アンカーを使用せずに組み立てられるパレットステージは、積層タイプ・中二階タイプなどの他のメザニン(中二階)よりも短期間で作ることができ、解体も容易です。在庫の変動に合わせて広げたり縮小したりすることができ、使わない時は場所を取らずに収納しておけます。

パレットステージはメザニンラックの一つです。これまでメザニンラックはあくまで「ラック」であるとみなされており、建築物ではないという認識でしたが、近年耐震設備などが問題視されるようになり、「メザニンラックも建築物の範疇である」と見解が変わってきました。そのため、設計施工においては防災設備や耐震強度などは消防関係法令の規制を受ける可能性があります。棚下は照度が低下するので、照明設備の追加が必要になることがあります。

また、パレットステージの上階に人が常駐することはできません。事務所スペースにするなどといった使い方は不可能で、あくまで荷物を積載し保管しておく場所となります。 

参考文献
https://www.saneimatehan.com/product/platform/01.php
https://lplanners.jp/products/mezzanine-rack/

透視度計

透視度計とは

透視度計とは、河川・湖沼や下水などを流れる水の透明度を測定するための機器です。

底に印 (標識板) が入っている円筒状のガラスの容器に試料を入れて、標識板が見える時の水の量によって透明度を測定します。水の透明度が高ければ、水の量が多くても底にある標識板は見えますが、濁っているほど試料が少なくないと標識板は見えません。

標識板が見えるまで水の量を容器から排出して、標識板がはっきりと見える時点での水の量を容器の目盛りから読み取ります。

透視度計の使用用途

透視度計は、主に色付きの水の透明度を測定するために使用されます。下水や雨水、プール、河川水、湖沼水、海水などを測定します。また、工場排水が基準を満たしているか判断する際や、水中の懸濁物質量を把握する際にも有用です。

懸濁物質が多い試料の場合、懸濁物質が底に沈澱して、底部の印を覆ってしまうことがあり、測定に支障をきたすため注意が必要です。また、測定時の周囲の明るさによって透視度は変化します。原則として、昼間の光で測定することとされています。

透視度の原理

透視度の原理は、測定する水の厚さを変化させて、標識板に描かれた二重十字が認識できる水の厚さを判定するものです。比色菅に入った水の量を変化させることによって、試験者の目と標識板の間にある水の厚さを変化させます。

標識板の二重十字の確認を正しく行うためには、環境の明るさが重要です。透視度計で水の透明度を評価する際には、環境の照度を1,000±500lxの明るさに保つ必要があります。この明るさは、青天の日中で直射日光の入らない窓際と同じです。

透視度計の構造

透視度計は、比色管、スタンド、流出口、標識板によって構成されます。

1. 比色管

試料を入れる容器を比色管と呼びます。比色管の長さは30cm、50cm、1mのものがそれぞれ販売されていますが、30cmのものが一般的です。

2. スタンド

比色管や標識板などがセッティングされており、さらに取手がついています。またスタンドの底部が重りの役割となるので、倒れにくい上、そのまま採水できます。

もちろん、バケツなどで採取して注ぐこともできますが、泡が立たないように注ぐことが大切です。

3. 流出口

ピンチコック付きゴム管や、サイフォン式によって、少しずつ比色管の水を減らすことができます。

4. 標識板

標識板は二重十字が印刷されたものです。計測する水に濁りがある場合、この標識板の二重十字はぼんやりと見えますが少しずつ水の量を減らしていくと、十字の線が二重線になっているのが見えます。

この標識がはっきりと見える水量で流出口からの水の排出をやめ、水の高さを目盛りを読み取ります。

透視度計のその他情報

1. デジタル式透視度計

透視度を測定する最もベーシックな方法は、標識板を用いて目視で評価するものですが、デジタル式の透視度計も販売されています。浄水場や上下水処理上、農業排水、産業排水処理施設などの施設において活用されています。

濁度やSSと透視度は一定の関係性を持つため、透視度の測定により応用的に濁度やSSを推定することも可能です。また、検出部を試料水に浸すだけで測定できる、プローブ型のハンディタイプもあります。透過光吸光光度法により測定するものが主流です。

不特定多数の試料を目視の透視度計とデジタル式透視度計において結果を比較した場合、測定値が一致しない場合があるため注意しなければなりません。これは試料水によって、濁度や色相などによるが影響することが原因です。一方、デジタル式は、測定者によるばらつきが少ないというメリットもあります。デメリットとしてあげられることは、デジタル透視度計は目視で測定するタイプの透視度計と比べると高価であることです。

2. 透視度の基準

透視度を測定するための目的は、場面によって多岐に渡ります。例としては、河川水の水質評価、畜産農家などから排出される農業排水・工場排水などです。排水の測定を目的として透視度を図る場合の基準は、水質汚濁防止法により定められています。

工場からの排水を試験する場合、日本工業規格 (JIS-K0102) において、高さ30cmの透視度計の使用が標準化されています。なお、透視度は飲料水については、適応範囲外です。

透視度は、標識板の二重十字がはっきり見える水層の高さによって評価されます。10mmを1度とするので、30cmの透視度計を使用した場合の透視度は1〜30度です。透視度が30度以上である場合、現場レベルであれば工場排水として異常はないと判断することができます。

ただし、測定する場面によって基準や、クリアすべき値は異なり、透視度以外の項目も満たさなければなりません。また、河川水については使用される透視度計の高さは場合によって異なります。

参考文献
https://www.miyamotoriken.co.jp/html/products/1B.pdf
https://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/kasen/suishitsu/pdf2/23_sankou%20zuhyou14~16.pdf
https://www.sibata.co.jp/downloads/pdf/manual/M080530-055_05.pdf

丸釘

丸釘とは丸釘

丸釘とは板の接合などに使用される、最も一般的な釘です。

釘は木造住宅の建築現場や日曜大工など、多くの木工現場で使用されています。その中でも丸釘は最も基本的な形状をしています。金槌を打ち付ける頭の部分は円盤状になっており、木に食い込む先端の部分は円錐状になっています。

丸釘の中には、材質や長さと太さ等についてJISで規格されたものがあり、木造建築では建築基準に対応するためには規格に準拠した丸釘を使用します。

その一方で丸釘には材質や形状、防錆性能、外観などにさらに多くの種類があります。

丸釘の使用用途

丸釘は木造建築や家具の製造、DIY (Do It Yourself: 日曜大工) などで広く使われています。

丸釘は金槌を使って木製材料どうしを接合する際に多く使われます。簡単に打ち付けることができ、くぎ抜きを使って釘を抜くことで接合部を切り離せます。このため、接合に失敗した場合でもやり直しがききます。さらに、一時的な用途の接合部材としても使用できます。

反対に、丸釘は、予め接着剤で結合された木材に対して、後から打ち込むことによって、その部分の接合をさらに補強するためにも使用されます。

代表的な丸釘の使用用途としては、木造家屋の建築、家具の製造の他、コンクリートの型枠のように一時的な構造物の構築などに多用されています。さらに、DIYのように趣味の工作においても、棚や犬小屋の製作など、木工の分野では丸釘は主要な材料です。

また、釘打ち機が普及した現代では、丸釘はビニール袋やプラスチックケースに入ったバラ詰めの他に、釘打ち機用に釘どうしがワイヤーで連結された状態でも販売されています。

丸釘の原理

1. 丸釘の特性

釘は細かく見ると様々な種類があります。基本的には、丸釘は鉄線や鋼線を基に切り出した、細長い円柱状の本体の片方に金槌を打ち付ける円盤状の頭部があり、反対側の端部は木材に食い込むために先が尖った円錐形状をしています。

釘の他の種類には、胴体にスクリューが刻まれたスクリュー釘、コンクリートに使用するコンクリート釘、表面が塗装されたケーシング釘、トタン板の取り付けに使うトタン釘、丸釘の頭の部分を潰したつぶし釘、U字型をした又釘などがあります。

丸釘も細かく分けると、太さ、長さ、材質、頭部の形状などに違いがあり、それぞれ違う特性を持っています。

丸釘の太さは太くなるほどに、木材の接合部の横方向に架かる力に対する耐力が大きくなると同時に抜けにくくなります。長さは、長い方がより厚い木材同士の接続に使えます。

2. 丸釘の材質

丸釘の材質には、鉄、ステンレス、銅、メッキ処理した鉄などがあります。鉄の釘は長期間の使用で錆が出てきます。しかし、この錆が木材同士の結合をより強固に保つ特性があるとされ、木造家屋の筐体の接合に使用されています。

一方、ステンレス製の丸釘は錆びを嫌う用途に使用されます。また、銅製の丸釘やめっき処理した丸釘は外観を重視する家具の製造などに使用されます。

丸釘の選び方

1. 丸釘の規格

丸釘にはJIS規格によって定められた基準に準拠したものがあります。木造家屋の建築では、建築基準を満たすためには、JIS規格に準拠した丸釘を、建築基準に沿った間隔で筐体の接合に使用しなければなりません。

JIS規格は釘の10種類について規格化を行っており、それぞれに種類、頭部形状、胴部形状、胴部径、長さについて規定しています。JIS規格では、釘の種類が一目で判る記号を付けていて、釘の種類をアルファベットから始まる表記としています。

丸釘については、鉄丸くぎがN、めっき鉄丸くぎがNZ、太め鉄丸くぎがCN、めっき太め鉄丸くぎがCNZ、溶融亜鉛めっき太め鉄丸くぎがZN、細め鉄丸くぎがBN、ステンレス鋼くぎがSと、それぞれに記号が割り振られています。

2. 丸釘の選択

DYIのような趣味の木工で釘を使う際には、JIS規格にこだわる必要はないかもしれません。その一方で、木造家屋の建築のように、規格に定められた釘を使用することが建築物の基準を満たす必要条件になる場合には、JIS規格を正しく理解した上で、規格に適合した釘を選択しなければなりません。

また、木工製品の製造においても、耐久性を持たせたり、見た目を良くするためには、丸釘の選択は重要です。

参考文献
https://www.tanakanet.jp/contents/product/screw/sc103ct.html

ベンチレーター

ベンチレーターとは

ベンチレーター

ベンチレーターとは、工場や倉庫、大型のビルなどの施設において、屋内と外気との間で空気を入れ替えするための装置のことです。

一般的に、ある閉鎖された空間とその外部との間の換気を果たす装置を指します。例えば、車のエアコンの吹き出し口もベンチレーターと呼ばれます。本記事で指すベンチレーターは、工場や倉庫、大型の商業施設などの建築物で使用するものです。

ベンチレーターを設置することによって、室内の熱や蒸気、悪臭、ガスを排除し、作業者の安全を維持が可能となります。このような役割を果たすために、ベンチレーターには大きく2つのタイプがあります。電源不要で自然の力を利用した自然換気システムと、内部にファンがとりつけられ、モーターを動力源とした強制換気システムの2つです。

ベンチレーターの使用用途

ベンチレーターが設置されるのは、工場や倉庫、公官庁施設、商業施設です。主にこれらの屋根に取り付けられています。官公庁や複合施設などの建物では、中庭や吹き抜けを利用した高度な自然換気システムも積極的に採用されています。

一方で大きな熱源を持つ工場など、場内での発熱が多い施設においては、ベンチレーターは熱を放出することも大切な役割です。多くの熱を放出するために、ベンチレーターには開口部が大きく、より熱負荷の大きなものに対応可能なものが採用されます。

さらに、工場の屋根一帯に取り付けたり、連結型のベンチレーターが設置されたりする場合も多いです。例えば、ゴミ処理場やガラス工場、火力発電所、鋳造工場、アルミ加工工場などが挙げられます。

ベンチレーターの原理

ベンチレーターの原理について、自然換気システムと、強制換気システムに分けて説明します。自然換気システムが導入目的とする理由は、空調使用時間の省エネルギー化と快適性です。

強制換気システムが導入されるのは、自然換気システムよりも多くの空気を移動させ、また多くの熱量を放出させたいからです。なお、自然換気の動力源は、以下の3つが挙げられます。

1. 自然換気システム

局所風力による吸引換気
建物の屋根に設置されたベンチレーターに風が当たると、ベンチレーター周囲との間に局部的な気圧差が生まれます。この圧力差によって、ベンチレーターを介して吸引換気が行われます。

温度差による重力換気
室内と室外の温度差があると、それぞれの空気の重さに差が出ます。温度の高い空気には、温度の低い空気よりも密度が低いために、相対的に軽い空気となるので、浮力が生じて上昇します。

この空気が上昇する現象を利用したものが、煙突です。煙突効果も自然換気システムのベンチレーターとして利用されています。

風による室外と室内の圧力差による通風換気
通気換気は、自然に吹く風で建物の周囲や室内に圧力差が生まれることによって行われる換気です。風が通ることによって行われる換気のため、通風換気と呼ばれます。

ベンチレーターは主に建物の屋根に設置されるので、雨や風が直接ベンチレーターへ吹き込まない構造になっています。さらに、オプションとして防虫網・防鳥網や採光窓などを取り付けられるものもあります。

2. 強制換気システム

強制換気システムでは、モーターでファンを回し、強制的に空気を移動させます。強制換気システムは工場の屋根などに取り付けられており、工場内の空気を強制的に建物の外に排出します。

工場内に熱源があり場内が高温になる環境であれば、熱を逃すのも重要な機能です。強制換気システムは、高い換気能力を得ることができますが、導入の際は部品交換や点検などメンテナンスも考慮する必要があります。

また、音が気になる環境であれば、モーターの騒音にも注意します。

ベンチレーターのその他情報

ベンチレーターの材質

ベンチレーターの材質は、ガルバリウム鋼板やステンレス、アルミ鋼板、塩ビ鋼板などさまざまです。材質を選択する際には、換気する環境によってより高耐食性、高耐候性のものが必要であるか判断することが大切です。

参考文献
https://www.sanyo-industries.co.jp/products/lighting/ventilator.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijsaxx/60.2/0/60.2_KJ00004442676/_pdf/-char/ja
https://core.ac.uk/download/pdf/144468322.pdf
http://www.suzukiventirator.co.jp/product/st_h.html

タングステン研磨機

タングステン研磨機とは

タングステン研磨機とは、タングステン金属の表面を磨くための装置のことです。

特に、TIG溶接に使われる電極棒の先端を磨く用途に重宝されます。タングステンは非常に硬い金属であるため、研磨砥石にはダイアモンドや立方晶窒化ホウ素 (CBN) など、硬度が大きく熱特性に優れた素材が使われています。

研磨する際は、角度も重要なポイントです。適切な角度で研磨を行うことで、溶接時の安定性や効率が向上し、品質の高い溶接が可能となります。タングステン研磨機の操作方法や砥石の選択など、研磨プロセス全体に注意する必要があります。

タングステン研磨機は、TIG溶接の効率化や品質向上に寄与する優れた装置です。正確な研磨角度と素材の選択が重要であり、適切に使用することで、効率的かつ安定した溶接作業が実現できます。

タングステン研磨機の使用用途

タングステン研磨機の使用用途として最も一般的なのは、TIG溶接に用いられる電極棒の研磨です。TIG溶接は放電を利用した溶接方法で、電極棒と金属基材に電圧をかけることでアークと呼ばれる光が発生します。このアークが持つ強い熱により、基材表面が溶けて溶接が行われます。

電極棒にはタングステンが使用されており、タングステン研磨機が電極棒のメンテナンスに欠かせない装置です。電極棒を長期間使い続けると、先端が変形することがあります。変形を放置してしまうと、溶融がきれいにできなくなり、溶接品質に影響が出てしまいます。

そこで、タングステン研磨機を使用して電極棒の先端を研磨し、変形を修正することで、溶接品質の維持と向上が可能です。適切なメンテナンスにより、効率的かつ安定した溶接作業が実現できるため、タングステン研磨機はTIG溶接作業において非常に重要な役割を担っています。

タングステン研磨機の原理

タングステン研磨機は、まず投入口のネジを調節して研磨する角度を設定します。適切な角度で研磨を行うことが、電極棒の性能を最大限に引き出すために重要です。

投入口の位置が決まったら、研磨機のスイッチを入れて研磨ホイールを回転させます。ホイールは回転中に手が触れないよう、カバーが取り付けられていることがあり、機種によって異なります。次に、投入口から研磨棒を挿入し、時々時計回りに回転させながらホイールに押し当てて、ムラなく削り、研磨が終わったら棒を取り出し、スイッチを切るという流れが一般的です。

なお、カバーや位置設定の機能がないタイプの研磨機も存在し、その場合は研磨ホイール単体で利用します。シャープナーと呼ばれる装置を使って研磨をしやすくすることがあります。ただし、ホイールがむき出しの場合は危険性があるため、保護具の着用が望ましいです。

タングステン研磨機は、適切な角度設定と研磨ホイールの回転を利用して、電極棒の先端を効果的に研磨できる装置です。使用時には安全性に配慮しながら、正確な角度で研磨を行います。

タングステン研磨機の種類

タングステン研磨機は、TIG溶接に使用される電極棒を研磨するための機器です。主にベンチタイプ研磨機、ポータブル研磨機、精密研磨機の3種類が存在します。

1. ベンチタイプ研磨機

ベンチタイプ研磨機は、作業台に固定された大型の研磨機で、研磨力が強く、連続して長時間の作業に適しています。また、安定した研磨が可能で、研磨精度も高いため、工場や溶接工場でよく使用されます。

2. ポータブル研磨機

ポータブル研磨機は、持ち運びが容易で、現場での作業に適したタイプです。コンパクトなサイズでありながら、必要な研磨力を発揮できるため、現場での急な研磨作業に対応可能です。電池式やコード式があり、作業状況に応じて選択できます。

3. 精密研磨機

精密研磨機は、高い研磨精度と微細な角度調整が可能な機器で、特に高品質な溶接を求められる分野で使用されます。デジタル表示や自動研磨機能を搭載していることが多く、研磨角度や研磨量を正確に設定可能です。しかし、価格が高めであり、専門的な知識が必要となることがあります。

参考文献
https://www.mwl.co.jp/shop/item.php?item_cd=1
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_processing/mp05/a0274.html
https://www.keyence.co.jp/ss/products/measure/welding/arc/mechanism.jsp
https://item.rakuten.co.jp/kougunomikawaya/nt_sharpener_blue/

ジョイントボックス

ジョイントボックスとは

ジョイントボックス

ジョイントボックスとは、ケーブル接続の際に結線部を保護する箱です。

一般的には、電気工事に使用されています。電気設備技術基準では、通電されるケーブルの充電部が露出しないように施設することが定められています。そこで、低圧電圧で使用するケーブルの接続部は一般的に熱収縮チューブやビニールテープなどで保護します。

この接続部に人が誤って触れないように、また景観を整えるためにジョイントボックスが使用されます。

ジョイントボックスの使用用途

ジョイントボックスは一般的に電気工事で使用する部材です。以下はジョイントボックスの使用箇所一例です。

  • 電線管敷設工事の中継地点
  • 電線の分岐地点
  • 街灯ポールの中継地点

家庭の電気配線は基本的に壁内に収納するため、ジョイントボックスを使用することは少ないです。商業施設や公共施設では、目にすることがあります。

結線部にかぶせるだけで結線部の保護ができるものや、端子付き・蓋つきのジョイントボックスもあります。

ジョイントボックスの原理

ジョイントボックスは本体や蓋、入線口などで構成されます。

1. 本体

本体には、樹脂や金属の製品があります。樹脂の場合は、塩ビが用いられることが多く、金属の場合は主に鉄が使用されます。乳白色またはネズミ色が使用され、外観と似た色のジョイントボックスを選定して目立たなくするのが基本です。金属の場合は耐食を目的に溶融亜鉛でメッキされた製品も販売されています。

2. 蓋

蓋は、本体とねじ留めした構造が一般的です。ねじは樹脂製のジョイントボックスでも鉄製ねじが使用されます。

3. 入線口

本体の側面には、四方のいずれかまたは全部にケーブルを入線するための開口が開けられます。入線口には基本的には直接配線を入れず、キャプコンや電線管を繋げて内部に配線を通します。

ジョイントボックスの種類

ジョイントボックスには、樹脂製、金属製、防爆構造、端子付き中継ボックスなどさまざまな種類があります。

1. VVF用ジョイントボックス

VVF専用のジョイントボックスです。被せるだけの簡単な製品や端子付きのジョイントボックスなどが販売されています。VVFの電線を突き刺して接続するVVF特化型のジョイントボックスで、基本的には樹脂製の製品が多いです。

2. アウトレットボックス・プルボックス

工場や屋外など、さまざまな場所で使用されるジョイントボックスです。薄鋼管やVE管などの電線管を入線口に接続して使用します。電線管を通ったケーブルの中継地点となり、内部で結線及び分岐して再び電線管を通って各所に敷設されます。

屋外で使用できる防滴型の製品や、結線や分岐を手軽に変更できるよう複数の端子が取り付けられている製品も販売されています。

3. 耐圧防爆構造のジョイントボックス

厚鋼電線管などとセットで使用されます。耐圧防爆構造は引火性ガス雰囲気などで使用され、電気による引火を防止するために密閉された構造です。主に引火が懸念される化学プラントや危険物貯蔵設備で使用されます。

頑丈な構造になっており、入線は防爆パッキン有するパッキン式ケーブルグランドで行われます。蓋などの開閉部分にもパッキンを使い密閉します。

4. 丸型露出ボックス

丸型露出ボックスは丸いジョイントボックスです。丸ボックスとも呼ばれます。リフォームや工場配線など、幅広く使用され、蓋と本体は上下2点でネジ留めする構造が一般的です。

丸型露出ボックスはJISなどで規格が定められており、プルボックスなどと比べて体積が小さいです。そのため、比較的小規模な配線接続に使用されます。四方のうち下方を入線せずに開口し、水抜き穴として使用する場合もあります。

ジョイントボックスの選び方

ジョイントボックスは種類、大きさ、色などの観点から選定します。種類は上記のように多数販売されていますが、用途に応じて選定します。一般的に決まりはないため使いやすい種類を選択しますが、防爆エリア箇所には必ず防爆構造のジョイントボックスが必要です。

プルボックスなどを選択した場合は、大小さまざまです。一般的には芯数が多いほど収納する配線接続部も多くなるため、大きいジョイントボックスを選定します。色は周囲の色と溶け込むように選定します。必要な色が販売されていない場合は、別途塗装が必要です。

参考文献
https://jp.c.misumi-ec.com/book/MRI1_E06/pdf/0933.pdf
https://www.takachi-el.co.jp/main_cat/junction_boxes
http://www.shimada-elec.co.jp/pdf/catalog/17/200701a.pdf

ウレアグリース

ウレアグリースとは

ウレアグリースとは、分解しづらいウレア結合を2個以上有し、科学的な安定を確保した増稠材 (ぞうちょうざい) を含むグリースのことです。

なお、増稠剤は、液体に混合することで半固形状にする働きを持ちます。グリースは、一般的に、比較的低速で回転する機械や、高荷重が掛かる軸受け、金属同士がスライドする摺動面に用いられ、摩擦を軽減し、設備に掛かる負担を減らすのが役割です。

用いられる増稠剤や基油により様々な種類に分けられ、特に増稠剤の特性はグリースの特性をほぼ決定します。ウレアの持つ特性を反映するウレアグリースの特徴は、他のグリースと比べて、耐熱性および耐水性にが高いことです。

なお、ウレアグリースには独特の粘り気があります。そのため、グリースの硬さを表すちょう度が同じである他の増増稠剤を用いたグリースと比べると、長期にわたって機械を保護できます。

ウレアグリースの使用用途

ウレアグリースは、耐熱性および耐水性に優れたグリースです。そのため、高温な条件下で駆動する設備軸受けや摺動部によく使用されます。

例えば、金属の圧延工場などでは、高い荷重を掛け、高温の条件下のもと、冷却水を吹きかけながら機械を運転する必要があります。このような特殊な条件下においては、耐熱性および耐水性に優れるウレアグリースが好適です。

ウレアグリースは一般生活用品にも使用されています。例えば、釣竿につけて使うリール内部に使用されています。耐水性の高いウレアグリースを使用する事で内部部品の海水からの保護が可能です。ウレアグリースの持つ独特の粘り気が、リール内部の精密ギアを保護します。

ウレアグリースの原理

ウレアグリースに増稠剤として使用されている、ウレアは科学的に安定し、分解しにくいウレア結合を2個以上有しています。ウレアは、ウレア基の数によってさらに分類され、2個はジウレア、3個はトリウレア、4個はテトラウレアです。この中で、グリースとしての性能が優れているのはジウレアです。このため、ウレア系グリースにはジウレアが多く使用されています。

ウレアグリースの特徴

1. ウレアグリースの化学的特徴

ジウレアは、増稠剤分子の両端の構造によってさらに細分化されます。分類は、芳香族ジウレア、脂肪族ジウレア、脂環族ジウレアです。中でも芳香族ジウレアはグリースの性能として最も高く、耐水性、せん断安定性が優れています。その他、脂肪族ジウレアは、はグリースが流動しており、せん断力が加わるせん断時に軟化します。

そして、流動が止まりせん弾力が無くなると元の硬さに戻ることが特徴です。集中給油 (一つのグリースポンプで複数箇所にグリースを供給する方式) での使用に適しています。また、せん断時の軟化は軸受に使用した場合のトルク減少、騒音の低減という点もメリットです。

この分子レベルでの構造による特徴のほか、グリースとしては基油 (ベースオイル) の性能も影響するため、増稠剤だけでなく総合的な特性から最適なグリースを選定するのが重要です。金属石けん系のグリースの種類が多く、カルシウム石けん、リチウム石けん、二硫化モリブデン、リチウムコンプレックス、などがあります。一方、非石けん系のグリースには、、ウレアなどが存在し、ウレアグリースがその代表格となります。

2. ウレアグリースの物理的特徴

一般的に、グリースの硬さは、増稠剤の配合量や種類によって変化し、「ちょう度」で表示されています。「ちょう度」としては、「混和ちょう度」の値が一般的です。グリースの硬さは、000号、00号、0号、1号、2号、3号、4号、5号、6号と分類されています。

混和ちょう度が445~475の範囲のグリースは、半流動状の柔らかいグリースで、000号に該当します。混和ちょう度が85~115の範囲のグリースは、6号と表示されて、とても硬いグリースです。ウレアグリースには、ちょう度が2号程度の製品が多く、通常の硬さのグリースに分類されます。硬さは普通ですが、ウレア系増稠剤を使用していることで、防錆性や潤滑性、耐摩耗性に加え耐熱性、耐水性が高く、長寿命なグリースです。

ウレアグリースのその他情報

1. グリースの増稠剤の種類

増稠剤は、グリースを構成する基油を半固体状にします。基油に増稠剤を混合することで、基油内に増稠剤が取り込まれ、半固体状態になります。

増稠剤を大きく分けると、金属石けん系と非石けん系の2種類です。金属石けん系のグリースは種類が多く、カルシウム石けん、リチウム石けん、アルミニウムコンプレックス、リチウムコンプレックスなどのグリースがあります。一方、非石けん系のグリースにはベントナイトPTFE、ウレアなどがあり、ウレアグリースが代表的な製品です。

2. ウレアグリースのデメリットと対応策

ウレアグリースは、リチウム系グリースと比べて優れている点が多いですが、デメリットもあります。ウレアグリースの中には高温環境下の使用で硬化してしまうタイプがあります。これは、高温下で増稠剤分子が重合してしまうために発生する現象です。

このため、耐熱温度付近での常用は硬化による性能の低下を引き起こす可能性があり注意が必要です。使用前にはメーカのカタログなどでグリース銘柄を十分に確認してから機械に適用してください。また、せん断時の軟化、硬化の度合いが大きいウレアグリースもあります。

その特性を活かした選定や機械の設計を意図的に行う場合は問題ありませんが、意図しない変化により使用機械に不具合を生じる場合があるため、使用前の十分な確認が必要です。

参考文献
https://www.kyodoyushi.co.jp/knowledge/grease/category/
https://www.cosmo-lube.co.jp/Portals/0/images/product/tech/tech3612130.pdf
https://www.kyodoyushi.co.jp/knowledge/grease/category/
http://www.jalos.jp/jalos/qa/articles/003-S28.htm
https://shell-lubes.co.jp/lubes-grease/lubes-technology/tech-grease/1138/

DAC

DACとは

DAC

DACとは、「デジタル-アナログ変換」の略で、デジタル信号をアナログ信号に変換する役割を持ち、デジタル世界とアナログ世界をつなぐ重要な橋渡しとなる装置です。

音楽を聴く、映像を見る、あらゆるデバイスにおいて、私たちの五感に直接訴えかけるためには、デジタルデータを現実の物理的な出力に変換する必要があります。その際に必要となるのがこのDACです。

信号の品質や変換の精度は、音質や映像の品質を大きく左右します。

DACの使用用途

D/Aコンバーターは、多くのデバイスで重要な役割を果たしています。以下に、その具体的な使用例をいくつか紹介します。

1. オーディオ機器

DACは、オーディオ機器で音質を向上させる重要な要素です。音楽データがデジタル形式で保存・伝送されていますが、人間の耳で聞くためにはこれをアナログの音響信号に変換する必要があります。高品質なD/Aコンバーターを使用して、より豊かな音質と細部まで再現した音場を実現できます。

2. メディアプレーヤー

映像や音声を出力するメディアプレーヤーでもDACは不可欠です。映像データや音声データを、テレビやスピーカーが再現できるアナログ信号に変換する役割を担っています。

3. 医療機器

医療分野でもDACは広く使用されています。例えば、心電図で取り込んだ信号を音に変換したり、超音波診断装置では一部のモデルでは送信波形を作り出したりするために使用されています。

DACの原理

物理的に変換してアナログ出力する「 抵抗ラダー方式 (R-2Rラダー方式)」、1度別の形に変換した後、フィルタを通してアナログ出力する「ΔΣ方式」、電流から電圧に換算してアナログ出力する「温度計コード方式 (電流検出) 」などがあります。

1. 抵抗ラダー方式 (R-2Rラダー方式)

この方式は一般的に、抵抗のみを使用してデジタル信号をアナログ信号に変換します。その名前が示すように、この方式では、2つの抵抗値 (Rと2R) が交互に接続されたラダー状の抵抗ネットワークを使用します。

この抵抗ネットワークは、デジタル入力のビット値によって接続・切断され、その結果として得られる総抵抗がアナログ出力の電圧を決定します。メリットは線形性に優れていますが、分解能が大きいほど回路規模が大きくなるのがデメリットです。

2. ΔΣ (デルタ・シグマ) 方式

デジタル信号をオーバーサンプリングし、デルタ・シグマ・モジュレータを通すことで、ディザ波形を生成します。ディザ波形をローパスフィルタで雑音を除去して出力する方式です。

メリットは18bit以上の高分解能が可能なことですが、デメリットとして電流消費が大きいことやサンプリング・レートが比較的遅いことが挙げられます。

3. 電流出力方式

電流源スイッチ型DACは、一連の電流源とスイッチを使用してデジタル信号をアナログ信号に変換します。この方式では、各デジタル入力ビットに対応する電流源があり、デジタル入力のビット値によってこれらの電流源がオンまたはオフにされます。

これらの電流源からの電流が合計され、結果として得られる合計電流がアナログ出力の電圧を決定します。メリットは非常にきれいな波形が出せることですが、デコード方式同様に分解能が大きいほど回路規模が大きくなるのがデメリットです。

DACの選び方

DACを選ぶ際には、次の点を考慮する必要があります。

1. 解像度

解像度は、DACが処理できるデジタル信号の精度です。解像度が高いほど、デジタル信号をより細かく再現できます。

2. 周波数特性

周波数特性は、DACが処理できるデジタル信号の周波数範囲です。周波数特性が広いほど、幅広い周波数のデジタル信号を再生できます。

3. コスト

DACの価格は、その性能や機能によって大きく異なります。一般的に、高解像度、高サンプリング・レート、高SNRを実現するDACは高価です。しかし、必ずしも最も高価なDACが最適な選択とは限りません。そのため、予算と性能要件をバランス良く考慮したDACの選択が重要です。

参考文献
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/da-converters
https://www.analog.com/media/jp/technical-documentation/application-notes/AN-283_jp.pdf