DACとは
DACとは、「デジタル-アナログ変換」の略で、デジタル信号をアナログ信号に変換する役割を持ち、デジタル世界とアナログ世界をつなぐ重要な橋渡しとなる装置です。
音楽を聴く、映像を見る、あらゆるデバイスにおいて、私たちの五感に直接訴えかけるためには、デジタルデータを現実の物理的な出力に変換する必要があります。その際に必要となるのがこのDACです。
信号の品質や変換の精度は、音質や映像の品質を大きく左右します。
DACの使用用途
D/Aコンバーターは、多くのデバイスで重要な役割を果たしています。以下に、その具体的な使用例をいくつか紹介します。
1. オーディオ機器
DACは、オーディオ機器で音質を向上させる重要な要素です。音楽データがデジタル形式で保存・伝送されていますが、人間の耳で聞くためにはこれをアナログの音響信号に変換する必要があります。高品質なD/Aコンバーターを使用して、より豊かな音質と細部まで再現した音場を実現できます。
2. メディアプレーヤー
映像や音声を出力するメディアプレーヤーでもDACは不可欠です。映像データや音声データを、テレビやスピーカーが再現できるアナログ信号に変換する役割を担っています。
3. 医療機器
医療分野でもDACは広く使用されています。例えば、心電図で取り込んだ信号を音に変換したり、超音波診断装置では一部のモデルでは送信波形を作り出したりするために使用されています。
DACの原理
物理的に変換してアナログ出力する「 抵抗ラダー方式 (R-2Rラダー方式)」、1度別の形に変換した後、フィルタを通してアナログ出力する「ΔΣ方式」、電流から電圧に換算してアナログ出力する「温度計コード方式 (電流検出) 」などがあります。
1. 抵抗ラダー方式 (R-2Rラダー方式)
この方式は一般的に、抵抗のみを使用してデジタル信号をアナログ信号に変換します。その名前が示すように、この方式では、2つの抵抗値 (Rと2R) が交互に接続されたラダー状の抵抗ネットワークを使用します。
この抵抗ネットワークは、デジタル入力のビット値によって接続・切断され、その結果として得られる総抵抗がアナログ出力の電圧を決定します。メリットは線形性に優れていますが、分解能が大きいほど回路規模が大きくなるのがデメリットです。
2. ΔΣ (デルタ・シグマ) 方式
デジタル信号をオーバーサンプリングし、デルタ・シグマ・モジュレータを通すことで、ディザ波形を生成します。ディザ波形をローパスフィルタで雑音を除去して出力する方式です。
メリットは18bit以上の高分解能が可能なことですが、デメリットとして電流消費が大きいことやサンプリング・レートが比較的遅いことが挙げられます。
3. 電流出力方式
電流源スイッチ型DACは、一連の電流源とスイッチを使用してデジタル信号をアナログ信号に変換します。この方式では、各デジタル入力ビットに対応する電流源があり、デジタル入力のビット値によってこれらの電流源がオンまたはオフにされます。
これらの電流源からの電流が合計され、結果として得られる合計電流がアナログ出力の電圧を決定します。メリットは非常にきれいな波形が出せることですが、デコード方式同様に分解能が大きいほど回路規模が大きくなるのがデメリットです。
DACの選び方
DACを選ぶ際には、次の点を考慮する必要があります。
1. 解像度
解像度は、DACが処理できるデジタル信号の精度です。解像度が高いほど、デジタル信号をより細かく再現できます。
2. 周波数特性
周波数特性は、DACが処理できるデジタル信号の周波数範囲です。周波数特性が広いほど、幅広い周波数のデジタル信号を再生できます。
3. コスト
DACの価格は、その性能や機能によって大きく異なります。一般的に、高解像度、高サンプリング・レート、高SNRを実現するDACは高価です。しかし、必ずしも最も高価なDACが最適な選択とは限りません。そのため、予算と性能要件をバランス良く考慮したDACの選択が重要です。
参考文献
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/da-converters
https://www.analog.com/media/jp/technical-documentation/application-notes/AN-283_jp.pdf