パンチダイとは
パンチダイとは、プレス金型において重要な役割を担うパンチとダイの組み合わせのことです。
パンチとダイは基本的に1つのセットであり、対で使用されます。さまざまな加工形状に合わせたパンチが存在し、刻印パンチや抜きパンチ、曲げパンチ、絞りパンチなど精密に加工されて使用されます。
それらのパンチに対応するダイがセットで制作され、単品では機能しないため、両者が揃って初めて加工することが可能です。ダイはパンチ形状に合わせた受け皿の役割を果たします。例えば、抜きパンチと抜きダイの場合、鋭利な刃物のような形状をしており、絞りパンチや曲げパンチの対になるダイは金属が滑り込むような形状で加工が可能です。
金属が圧力を加えながら滑り込んでいく際には大きな負荷がかかりますが、表面を鏡面加工 (ラッピング) や表面処理することで、寿命を延ばす工夫がされています。パンチダイには非常に強い負荷がかかるため、ダイス鋼やHAP、粉末ハイス、SKD (焼き入れ) など耐久性の高い素材が使用されています。
パンチダイの使用用途
パンチダイは、プレス金型において重要な役割を担う部品で、鋼板への加工を行います。プレス金型は、単発型と順送型に大別され、それぞれの用途に応じたパンチダイが使用されます。
比較的単純な加工を行うもので、人手によって材料が送り込まれ、加工が進められます。一方、順送型プレス金型は、複数の加工工程が1つの金型に設けられており、自動で材料が送り込まれ、複雑で精密な部品の大量生産をすることが可能です。
順送金型では、穴あけ、刻印、抜き加工、絞り加工、せん断加工など、さまざまな工程がパンチダイによって実現されます。パンチダイが複数のセットで組み込まれており、それぞれの工程で効率的に加工が行われます。
パンチダイは金型にとって重要な工具であり、その使用用途は金型の種類や加工内容によってさまざまです。しかし、いずれでも精密な部品加工や大量生産に欠かせない存在となっています。
パンチダイの原理
プレス金型におけるパンチダイの原理は、抜き加工におけるクリアランスの重要性にあります。クリアランスとは、パンチとダイの間にできる隙間のことです。設定や調整が加工品の仕上がりやパンチダイの寿命に大きく影響します。
抜き加工に必要なパンチサイズは、鋼板の抜き寸法に合わせて設定されます。対応するダイの加工寸法は、パンチサイズよりも1回り大きくなり、隙間がクリアランスで、全周にわたって均一でなければなりません。
加工する材質によって、クリアランスの設定値は異なります。例えばステンレス系の材料では、板厚に対して7~11%程度に設定することが一般的です。適切なクリアランスの設定や調整が不十分だと、製品に大きなバリが発生したり、パンチダイが痛む原因となったりする可能性があります。
クリアランスを調節する際には、0.01mm単位で合わせることが一般的であり、非常にシビアな作業が求められます。順送金型のようにすべてのパンチダイの位置関係を合わせる必要がある場合には、加工精度が重要となります。
位置決めプレートの加工は主にマシニングセンタやワイヤーカットで行われ、パンチダイの傾きの原因となる場合があるため注意が必要です。パンチダイをセットする際には、傾きがないかしっかりとチェックします。
パンチダイの種類
用途や加工形状によって異なるパンチダイが使われます。主に刻印パンチ、抜きパンチ、曲げパンチの3種類が存在します。
1. 刻印パンチ
刻印パンチは、金属表面に文字や図形を刻むためのパンチダイです。製品にロゴや識別番号、規格表示などの情報を刻むために使用されます。刻印パンチは、刻印面が鏡像状に彫られ、プレス加工時に正確な文字や図形を金属表面に転写できるように設計されています。
2. 抜きパンチ
抜きパンチは、金属板を切り抜くためのパンチダイです。金属板に穴を開けたり、外形や内形の加工を行ったりするために使用されます。抜きパンチは、鋭い刃が金属板を切断し、対応する抜きダイが切り抜かれた形状を受け止めることで、正確な形状の切り抜きが可能になります。
3. 曲げパンチ
曲げパンチは、金属板を曲げるためのパンチダイです。金属板を特定の角度や曲率に曲げられる点が特徴です。曲げパンチは、曲げる部分に沿った形状を持ち、対応する曲げダイが金属板を押さえつけることで、金属板を滑らかに曲げられます。
参考文献
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/press_mold_design/pr02/c0405.html
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/work-knowledge/concept_basic-design/press-basic_design