ソルビタン

ソルビタンとは

ソルビタン(Sorbitan)は、分子式C6H12O5で表される有機化合物で、分子量は164.16です。別名、1,4-ソルビタンとも呼ばれます。室温で固体です。

ソルビトール(Sorbitol)が分子内で脱水環化したもので、工業品は1,4-ソルビタン(五員環状エーテル)と1,5-ソルビタン(六員環状エーテル)の混合物です。

水分1.5%以下のソルビタンは淡黄色粘性物(白色固体物の析出あり)で、pH = 4~7です。

ソルビタンの使用用途

ソルビタンは主に、ソルビタン脂肪酸エステルの原料として使用されます。1,4-ソルビタンの五員環に結合しているCH(OH)-CH2OHの末端水酸基、そして1,5-ソルビタンのの六員環に結合しているCH2OHの水酸基は、脂肪酸と反応させると脱水してエステルとなります。ラウリン酸やオレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸が主に使用され、様々なソルビタン脂肪酸エステルが知られています。

ソルビタン脂肪酸エステルはノニオン系界面活性剤の一種です。界面活性剤とは、一つの分子の中に「水になじみやすい親水基」と「油になじみやすい疎水基(親油基)」の両方を有する構造をしています。ソルビタン脂肪酸エステルの場合、ソルビタン部分が親水基、脂肪酸エステル部分が疎水基として働きますが、ソルビタンは水中でイオン化しないことから、界面活性剤の中でもノニオン系に分類されます。

乳化剤や化粧品、展着剤(農薬や緑化資材や除草剤 を散布する際、散布対象への付着を容易にするため、媒介的に用いられる薬剤のこと)や工業用界面活性剤などとして広く使用され、単独または他の界面活性剤と組み合わせて用いられます。その他、殺虫殺菌剤としても知られています。

また、ソルビタン脂肪酸エステルをポリオキシエチレンエーテルと反応させるとポリソルベートが得られます。こちらもノニオン系界面活性剤の一種として知られており、食品用乳化剤や洗口剤などの可溶化剤、化粧水などのスキンケア用乳化剤があります。ポリオキシエチレンエーテルが導入されることにより、ポリソルベートはソルビタン脂肪酸エステルよりも親水性が向上するという特徴があります。

ソルビタンのその他情報

1. ソルビタンの製造法

ソルビタンは、ソルビトール(Sorbitol)を固体の酸触媒(例えばゼオライト)存在下で処理することによって分子内で一分子脱水して生成します。更に、ソルビタンの分子内脱水が進行するとイソソルバイド(Isosorbide)に変換されます。ソルビトールは、グルコース(Glucose)を還元し、末端のアルデヒ基をヒドロキシル基に変換して得られる糖アルコールの一種です。ソルビタンは、ソルビトールを脱水して1,4-ソルビタンと1,5-ソルビタンの混合物として得られますが、1,4-ソルビタンが主です。分子内脱水の反応条件を緻密にコントロールすることでイソソルバイドまで行かず、ソルビタンを選択的に製造することが可能です。

2. ソルビタン界面活性剤の製造法

ソルビタンから誘導されるソルビタン脂肪酸エステルは一般的に、酸またはアルカリ触媒存在下、ソルビタンと脂肪酸を直接エステル化する方法で製造されています。あるいは、リパーゼを用いて、ソルビタンと脂肪酸をエステル化する方法も知られています。

また、ポリソルベートは、ソルビタン脂肪酸エステルに少量のアルカリ触媒を添加し、エチレンオキサイド(EO)を付加重合させることによって得られます。エチレンオキサイドの付加重合モル数によって界面活性剤の諸性質(親/疎水性のバランスなど)が変化します。

3. ソルビタンの取り扱い・保管

密栓し、直射日光を避け通気のよい場所に保管しましょう。火気厳禁です。品質を損う恐れがある為に、高温・局所加熱は避けるよう注意しましょう。皮膚についた場合、多量の水と石鹸でよく洗いましょう。 

参考文献

https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0119-1341JGHEJP.

グリオキシル酸

グリオキシル酸とは

グリオキシル酸の基本情報

図1. グリオキシル酸の基本情報

グリオキシル酸 (Glyoxylic acid) とは、カルボン酸の1種であり、分子式 C2H2O3で表される物質です。

分子内にアルデヒド基とカルボキシル基を1つずつ有します。IUPAC命名法による名称は、オキソエタン酸であり、CAS登録番号は298-12-4です。

分子量は74.04、融点-93℃、沸点111℃、常温では無色無臭の固体です。水に溶けやすく、エタノール、エチルエーテル、ベンゼンにやや溶けにくい性質を示します。密度は1.42g/cm3 (20℃/4℃) であり、酸解離定数pKaは3.18です。

グリオキシル酸の使用用途

グリオキシル酸は、医薬・香料原料としての使用用途があります。食品添加物や化粧品においては、pH調整剤として使用されることも多いです。特にフェノールとは芳香族求電子置換反応により、有用な合成前駆体を与えます。

また、生化学の分野ではホプキンズ・コール反応 (Hopkins–Cole reaction) と呼ばれる、トリプトファン検出反応で試薬として用いられる物質です。一部の植物や菌類では、グリオキシル酸回路と呼ばれる代謝経路があり、アセチルCoAと結合してリンゴ酸を合成するのに用いられています。

近年注目されている用途は、グリオキシル酸による髪の毛のトリートメント効果です。髪の毛にグリオキシル酸を主成分としたトリートメント液を付着させ、熱を加えることで、髪のパサつきや歪みが抑えられるといわれています。その他の用途としては、無電解めっきの還元剤が挙げられます。

グリオキシル酸の特徴

グリオキシル酸の水溶液中の構造(右)と単離体の構造(左下)

図2. グリオキシル酸の水溶液中の構造(右)と単離体の構造(左下)

グリオキシル酸のアルデヒド基は、実際には水和したり、水和体がさらに2量体を形成したりしている構造を取っていることが一般的です。なお、単離した場合には、カルボキシル基の水素原子はアルデヒド基の酸素原子と環状の水素結合を形成しています。

グリオキシル酸は、酢酸の約10倍強い酸性度を示す物質です。また、塩基の存在下では不均化してグリコール酸しゅう酸を生じます。不燃性ですが、加熱すると不安定で加熱分解し、ギ酸アルデヒドが生成します。

グリオキシル酸の種類

グリオキシル酸は、主に研究開発用試薬や化学工業用薬品として販売されています。研究開発用試薬では、一水和物もしくは50%水溶液などの種類があります。

一水和物の容量の種類は、10g , 25g , 10 g , 500gなどの種類です。実験室で取り扱いやすいポリボトルなどの包装で提供されています。室温で保管可能ですが、25℃以下での保管が必要な試薬として扱われる場合もあります。

化学工業用薬品としては、主に50%水溶液として販売されています。工場などのニーズに合わせて、容量は25kgなどの大型であり、ポリエチレン缶等の包装で提供されている薬品です。

グリオキシル酸のその他情報

1. グリオキシル酸の合成

グリオキシル酸の合成法

図3. グリオキシル酸の合成法

グリオキシル酸は二酸化鉛を用いたシュウ酸の電解によって合成が可能です。また、マレイン酸のオゾン酸化も有効な方法であるとされています。

2. グリオキシル酸の化学反応

グリオキシル酸はフェノール類と求電子置換反応を起こすことから、種々の有用な化学物質の合成に用いられる化合物です。例えば、フェノールと縮合反応して、4-ヒドロキシマンデル酸を生じます。この化合物は、アテノロール (βブロッカー) などの合成に用いられる前駆体物質です。

また、グアヤコールにグリオキシル酸を付加した後に酸化と脱炭酸反応を行うことにより、バニリンの合成が行われています。バニリンはバニラの香りの主成分となっている物質です。

グリオキシル酸はヒトではエチレングリコールをシュウ酸へと代謝される際の中間体です。すなわち、体内で酸化を受けると有害なシュウ酸が生成されます。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/298-12-4.html

エチレングリコールジブチルエーテル

エチレングリコールジブチルエーテルとは

エチレングリコールジブチルエーテルとは、エーテル基を2つ持つ化合物です。

「エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル」「1,2-ジブトキシエタン」「5,8-ジオキサドデカン」など、さまざまな別名で呼ばれています。常温では無色~わずかに薄い黄色い液体で、水には難溶です。引火性があるため、熱や高温の体、火気から遠ざける必要があります。

エチレングリコールジブチルエーテルの使用用途

エチレングリコールジブチルエーテルは、「フォトレジスト」という材料の組成に使われています。フォトレジストとは、光によって物性が変化する性質を持ち、半導体のエッチング (薬品の腐食作用を利用した表面加工技術) に使われる素材です。

半導体部品の加工では、回路などを印刷するために微細な溝をエッチングで形成します。エッチングで重要なのは、削りたい部分だけを薬品に触れさせ、削らない部分は耐食性のあるフォトレジストで被覆することです。

そこで、被覆する部分の形状を精密に制御するため、半導体の表面にフォトレジストを塗布してから特定の波長の光や電子線を照射して、被覆する形状のパターンを焼き付けます。その後、現像液処理で不要な部分のフォトレジストを溶解させ除去し、フォトレジストのない部分をエッチングします。

これにより、選択的に半導体の一部を腐食させ、複雑な構造の集積回路を作ることが可能です。

エチレングリコールジブチルエーテルの特徴

エチレングリコールジブチルエーテルは、分子式は  C10H22O2 で表されます。二価アルコールであるエチレングリコール (C2H6O2) 1分子と、ブタノール (C4H10O) 2分子がエーテル結合した構造です。

エチレングリコールジブチルエーテルの基本的な特性 (分子量、比重、溶解性) は以下の通りです。

  • 分子量:174.28
  • 比重:0.725 (0℃の液体のとき)
  • 溶解性:水に難溶

エチレングリコールジブチルエーテルのその他情報

1. 二価アルコールのエーテル

エチレングリコールは分子内に2つのヒドロキシ基を持つ二価アルコールです。これらのヒドロキシ基がそれぞれエーテル結合を形成するため、2分子のブタノールと脱水縮合してエチレングリコールジブチルエーテルが得られます。

酸素原子は電気陰性度が高いため、エーテル結合部分は分極しています。しかし、エチレングリコールジブチルエーテルの分子は点対称な直鎖構造をしているため、分子全体としては低極性です。

2. 可燃性

エチレングリコールジブチルエーテルは可燃性の液体です。消防法では、灯油やキシレンと同じ「危険物第4類・第2石油類 (非水溶性液体) 」に該当します。また、労働安全衛生法においても危険物・引火性のものに指定されています。

消防法における指定数量は1,000Lであり、1,000L以上の貯蔵・取扱いは市町村長等の許可が必要です。引火点は85℃のため、発熱する反応で用いる際や加熱実験を行う際には、可燃性蒸気が発生する恐れがあります。

蒸気密度が空気より高く、室内で漏洩すると床に滞留する可能性があるため、ドラフト内で換気しながら扱うのが好ましいです。火災発生時は粉末消化剤、泡消化剤、二酸化炭素消化剤を使用します。非水溶性のため、棒状注水はかえって延焼を招くおそれがあり、大変危険です。

3. 爆発性酸化物

エーテル類は、酸素との接触や紫外線への曝露によって酸化すると、爆発性のある酸化物 (ペルオキシド) を生じることがあります。爆発性酸化物が蓄積した状態では、加熱や衝撃により爆発する恐れがあります。

酸化物が蓄積しないための対策としては、酸化防止剤 (ハイドロキノン等) の添加、窒素封入や紫外線からの遮蔽等が有効です。また、長期保存していたエチレングリコールジブチルエーテルを使用する際には、酸化物が蓄積していないか試験紙で確認するとより安全と言えます。

4. 刺激性と毒性

エチレングリコールジブチルエーテルは皮膚や眼球への刺激性があります。取扱い時は保護手袋や保護メガネなどの保護具を着用し、蒸気に暴露しないようドラフトや局所排気を稼働させます。皮膚に付着した場合は速やかに洗浄が必要です。

急性毒性もあり、ラットでの半数致死量 (LD50値) は経口投与で 2,650mg/kg です。ラベルに物質名を明記するとともに、必ず換気の良い場所で保存・使用しなければなりません。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/112-36-7.html

配送管理システム

配送管理システムとは

配送管理システム

配送管理システム (TMS:Transport Management System) とは、商品や荷物の配送に関する情報を一元的に管理し、効率的な配送を実現するためのシステムです。

複数の配送先や配送拠点を考慮し、最適な配送計画を作成して管理し、車両の位置情報をリアルタイムで把握することができます。

近年の物流取扱量の増加に伴い、トラックの効率的な配車や業務負荷低減、配送コストの削減など輸配送業務の効率化は、重要な課題となっています。配送管理システムを導入することで、輸配送に関する業務全般をシステム上から管理することが可能であり、これらの課題解決に大きく寄与してくれます。

配送管理システムは、物流管理システムの一部として運用されることが多いです。同じく物流管理システムに含まれる倉庫管理システムは、倉庫内に特化したシステムであり、連携して運用されるケースが一般的です。

配送管理システムの使用用途

配送管理システムを導入する目的は、輸配送に関するさまざまな業務をシステム上で統括して実施、管理することにより、効率的な配送を実現することです。従来、製品の配送手配や配送コストの管理は、個別の案件ごとに管理・運用されてきました。

しかし、近年、物流取扱量の増加やトラックドライバーの不足などが顕著になり、配送業務についても、より効率的な運用が求められています。配送管理システムは、出荷のスケジュールや出荷量から適切な配車計画を作成し、適切な積載量やルートの管理記録を行うことができます。さらに、作業者ごとの作業量・時間といった業務管理を行うことも可能です。

これらの管理により、人件費や燃料費などの物流コストを数値化し、最適化するとともに、作業者の負担軽減にも寄与します。

配送管理システムの原理

配送管理システムには、一般的に以下のような機能があります。

1. 配車管理

納品先、製品料などのデータから、最適な車両、輸配送コースといった条件を作成します。また、複数の配送先や配送拠点を考慮し、最適な配送計画を作成して管理することができます。

2. 輸配送業務管理

GPSを用いてリアルタイムに車両、製品の位置を把握することで、現在の配送状況や到着時刻などを管理することができます。

3. 輸送コスト計算

賃金や料金、支払賃金といった輸送に関するコストを一括で管理することができます。

4. 実績管理

従来は、ドライバーが作成していた運転日報や運転実績を自動的に作成します。運転状況や速度超過の有無などを管理し、運行の改善に寄与します。

5. 車両管理

車両のリース契約などの状況、支払経費など、車両管理に関する業務をシステム上で行うことができます。

 

輸配送業務は、突発的な案件や渋滞などのトラブルに伴う非定常作業も多いことから、配車管理システムを用いて管理することで、そのような際にもより柔軟な対応が可能になります。

配送管理システムの選び方

配送管理システムを選ぶ際には、以下のような点を意識する必要があります。

1. 機能性

配送業務を行う上で必要な機能が備わっているか確認する必要があります。他社の配送業者が導入しているからといって自社に適している訳ではありません。

例えば、配送計画の作成や顧客情報の管理、荷物の管理など、自社が特に力を入れたい管理機能を重点的に確認することが重要です。

2. カスタマイズ性・連携性

自社独自の業務に合わせてカスタマイズができるかが重要となります。標準機能に加え、自社が導入している他システムとの連携性や、特定のフォーマットでの伝票印刷など、要望に合わせてカスタマイズできることが選ぶポイントです。

3. 操作性

配送管理システム自体が扱いやすいか確認する必要があります。直感的に操作できるだけでなく、ベテランから若手まで、どんな作業者がシステムを扱ってもミスなく操作ができるユーザーインターフェースとなっているかが重要です。

物流管理システム

物流管理システムとは

物流管理システム

物流管理とは、物流に関する工程や原料や製品の在庫などの情報を管理するシステムです。

物流管理システムは、通常「倉庫管理システム (WMS) 」と「配送管理システム (TMS) 」の2つに分けられます。倉庫管理システムは、倉庫内での作業に特化した管理システムであり、倉庫への入庫から在庫管理、棚卸、出荷といった業務についてシステム上での管理を可能にします。

また、配送管理システムは、出荷後の輸送や配送などの業務をシステム上で管理することができます。物流に関する業務は、近年、工程の複雑化、取扱量の増加が顕著であり、このような背景から物流業務に特化した管理システムである物流管理システムの需要が高まっています。

物流管理システムの使用用途

物流管理システムを導入する目的は、物流に関連した、さまざまな情報をシステム上で管理することによって業務を効率化し、物流サービスの向上やコストの削減を実施することです。

従来、物流に関連する業務は、企業の基幹システムである「販売管理システム」に含まれることが一般的でした。しかし、取り扱う数量の増加、工程の複雑化が進む中で、一般に全社的な運用に用いられる基幹システムは、各倉庫の在庫数や出荷ごとの対応等の管理には不向きでした。

そのため、より現場での管理に適したシステムとして、WMSやTMSといった物流管理システムの導入が進んでいます。

物流管理システムの原理

物流管理システムは、一般に「倉庫管理システム (WMS) 」と「配送管理システム (TMS) 」に分けられます。

1. 倉庫管理システム

倉庫管理システムは、倉庫内での業務に特化したシステムであり、製品の入庫管理、在庫管理、出荷管理に加え、棚卸や帳簿・ラベル発行といった機能を有しています。一般的にバーコードリーダーやスキャナ等の携帯端末を利用することで、入庫や在庫管理に要する労力を低減し、出荷時の人的ミスを減らす効果が期待されます。

また、倉庫管理システムと他システムと連携することによって、倉庫内の資産管理を行うこともできます。

2. 配送管理システム

配送管理システムは、輸配送業務に特化したシステムであり、配車管理、輸配送業務管理、輸送コスト計算などの機能を有しています。倉庫管理システムから出荷量などの情報を受け取ることで、最適な車両の手配、輸送ルートの作成といった輸配送計画を作成することが可能です。

また、ドライバーごとの運転状況や速度超過などを管理することも可能であり、業務改善に役立てることができます。いずれのシステムも物流業務に特化したシステムであり、実際の倉庫状況を確実に反映したり突発的な案件やトラブルに柔軟に対応する必要があることから、一般的には基幹システムと分離して運用されています。

物流管理システムの選び方

物流管理システムを選ぶ際には下記のポイントを抑える必要があります。

1. 業務の特性に合った機能

物流業務にはさまざまな種類があり、それに合わせた機能を持っているシステムを選ぶ必要があります。例えば、自社で配送を行う場合は、配送管理システムにおけるルート最適化機能が必要です。

2. 利用料金とコスト効果

物流管理システムの利用料金や導入費用、メンテナンス費用などを比較し、コスト効果があるシステムを選ぶ必要があります。また、システムの導入によってどの程度のコスト削減が見込めるのか、費用対効果、投資対効果を検討することも重要です。

3. システムの操作性や使いやすさ

システムの操作性や使いやすさは、従業員のストレスやミスを減らすために重要な要素です。実際にシステムを使ってみたり、デモを受けたりして、使いやすさを確認します。従来使っていたシステムの置き換えの場合は、従来のシステムからどのように変わるのかを明確にすることも必要です。

4. サポート体制

システムの導入前後には、トラブル対応や操作方法の説明などが必要です。システム提供元がしっかりとしたサポート体制を持っているかどうかを確認します。24時間体制で稼働する企業にとっては、サポートも同様に24時間体制で受けられるシステムが望ましいです。

5. システムの拡張性やカスタマイズ性

今後の業務拡大に備えて、システムの拡張性やカスタマイズ性が高いシステムを選ぶと良いです。他システムとの連携性も考慮し、自社の管理機能を底上げするために、必要な機能を洗い出しておくことも必要です。

倉庫管理システム

倉庫管理システムとは

倉庫管理システム

倉庫管理システムとは、入出庫管理や在庫管理、棚卸といった倉庫で行われる業務全般に特化した管理システムです。

WMS (Warehouse Management System) とも呼ばれます。倉庫管理システムと同様に製品の在庫や数量を管理するシステムとして、在庫管理システムが挙げられます。

在庫管理システムが製品の入荷から出荷までの在庫管理全般を管理するシステムであるのに対し、倉庫管理システムは、倉庫内の管理全般に特化したシステムであり、在庫管理のみならず入出庫履歴、棚卸、製品のロケーション、人員の管理といった倉庫内で行われる作業をより詳細に管理することが可能です。

特に倉庫内での業務は、作業の標準化・効率化、ミス防止、コスト削減などの課題を解決するためのシステムとして、有効なツールと言えます。

倉庫管理システムの使用用途

倉庫管理システムは、物流業界や製造業界など、在庫管理を必要とするあらゆる業界で使われます。近年は、事業規模の大小に関係なく小売店や飲食店にも活用されており、倉庫管理の業務効率化やIoT化が求められるようになってきました。

従来、倉庫内の在庫管理は、紙やエクセルなどのシステムを用いて行われてきました。しかし、このようなシステムでは入出庫のたびに手動での入力が必要であり、さらに在庫ロケーションの管理などを実施するためには非常に多くの労力が必要でした。また、作業量や作業者の増加に伴い、データの誤入力や入力忘れなどのミスは、より多くなる傾向にあります。

こういった問題に対して、倉庫管理システムを導入することで、入出庫の情報を倉庫内のロケーションを含めて自動的に反映することが可能になります。バーコードリーダー等の携帯端末を併用することにより、入力業務を省略し、誤入力などのミス防止につながります。

倉庫管理システムの原理

倉庫管理システムには一般的に以下のような機能があります。

1. 入荷管理

入庫スケジュールや入庫する商品のラベル管理を行います。

2. 在庫管理

在庫の数、ロケーション、製造年月日などの情報を管理します。

3. 出荷管理

出庫スケジュールの管理や出庫品の指示機能、ピッキングリスト作成なども行うことができます。

4. 棚卸管理

棚卸表示機能やスキャナを用いた入力補助等が可能です。在庫についてリアルタイムで管理するため、棚卸に必要な手間や時間が削減できます。

5. 帳簿・ラベル発行

納品書やラベルを発行することができます。

 

また、バーコードリーダーやスキャナなどの携帯端末による入力補助や、タブレット等を用いて入力・確認業務をより簡便にすることで、さらにこれらの機能を引き出すことができます。倉庫管理システムは、他の管理システムとの連携も可能ですが、比較的単独での運用例が多く見られます。

これは倉庫管理には、現場でのフレキシブルな対応が必要不可欠であり、システムや管理方法の柔軟性を確保するためです。

倉庫管理システムの選び方

倉庫管理システムを選ぶ際には、自社が求める機能が搭載されているか、扱いやすいか、他システムとの連携性があるのか、といった点がポイントとなります。

業種によって取り扱う物は異なりますが、基本的に倉庫管理システムが行う機能としては扱う物によって変動することはありません。部品、商品、材料、食品など、管理する上では必要な機能は基本的に搭載されていることがほとんどです。一方で、部品に特化した倉庫管理システムもあるため、自社がどの管理機能に重きを置くかは重要となります。

倉庫管理システムを扱う社員にとって使いやすいか、見やすいシステムかどうかも選ぶ際のポイントです。広い敷地での倉庫業務においては、タブレットなどで持ち運びできるタイプもあれば、パソコン上でしか扱うことができないタイプもあります。実際の業務を想定して選定することが大切です。

基本的に倉庫管理システムは、他システムと連携する場合がほとんどです。調達管理システムや財務管理システムなど、ヒト・モノ・カネ・情報を管理するシステムが主な例です。このようなシステムと連携できるかどうかも重要なポイントで、一元管理できるものを選ぶ必要があります。

部品管理システム

部品管理システムとは

部品管理システムとは、別名BOM (Bill of Material) システムとも呼ばれ、部品の管理だけではなく、製品の製造・管理に用いられる部品表を管理し、さまざまな部門に対して部品に関連する適切な情報を提供するシステムのことです。

その管理方法によって、統合型部品管理システムと用途部門別部品管理システムに大別されます。統合型の部品管理システムは、部門を超えて部品票を一元管理するため、部門間での矛盾が生じにくいというメリットがあります。

しかし、部品表の用途は各部門によって異なることが一般的であり、場合によっては特定の部門では活用が困難になるというデメリットがあります。一方、用途別部品管理システムは、特定の部門に特化して部品票を作成・管理するため、各部門においてシステムの活用が容易であることがメリットです。しかし、部門間で統一した部品表を使用しないことから、部門間での矛盾が生じるおそれもあります。

部品管理システムの使用用途

部品管理システムの使用用途は、主に部品表の管理や部品の在庫状況、入出庫履歴、発注状況などをリアルタイムに把握することです。紙や他システムで管理されていた情報を一元管理することで、効率的に部品管理を行えます。

部品表は、設計や生産、購買など、さまざまな部門で利用される重要な書類です。本来であれば、部門間で同一の部品表を用いて業務を実施するべきですが、実際には部門ごとに異なる部品表を用いて管理する場合も多く、ある部署での設計変更が、他部門の部品表に反映されないなどの課題がありました。

特に、近年の製造業では製造工程が複雑になり、多部門にわたって部品表を運用するケースが増加していることから、効率的な部品、および部品表の管理が求められます。エクセルなどの電子データとして管理されるケースも多くありますが、一般的な電子管理では二重入力などの入力ミスや、設計変更が反映されないなどの課題が残されていました。

部品管理システムの導入により、部品表への変更がリアルタイムに実施できることに加え、他部門での共用利用も容易になります。

部品管理システムの機能

部品管理システムの代表的な機能を以下に示します。

1. BOM (部品表) 管理機能

部品表をシステム上で管理することができます。BOMの所在や内容が明確になることから、複数の部品表を使用する際にも部品表間での矛盾が生じにくいという利点があります。また、新規BOMの作成の際に、既存のBOMを容易に参考にすることが可能です。

2. BOM (部品表) 更新機能

設計変更の際に、変更の内容をもとに部品表を自動的に更新することができます。特に複数の部門にわたる変更管理合や、その変更が複数の部品表に影響する場合には、部門間での情報共有や部品表間での内容の統一化が容易になります。

3. 在庫管理機能

実際の部品をシステム上で管理することが可能です。部品を工程に紐づけておくことで、各部品をどの工程で使用するか、部品の余剰・不足状況、完成までの工期などをあらかじめ見積もることができます。

4. 製品管理機能

製品についても管理が可能です。製品をそれぞれの部品表や図面に紐づけておくことで、製品名から部品や図面を確認することもできます。

 

部品表の管理方法によっても必要とする機能は異なります。あらかじめ重要視する機能を明確にした上でシステムを選定すると、よりスムーズに部品管理システムを導入することができます。

部品管理システムの選び方

1. 機能性

部品表の管理方法は会社によって異なるため、部品管理システムに必要な機能が搭載されているかを事前に確認したうえで選定する必要があります。例えば、自動発注機能や在庫管理機能、入出庫管理機能などがあるので、他システムとの連携機能や業務に対してどのシステムを用いるのか業務プロセスから見直すことが重要です。

2. 扱いやすさ

部品管理システムを扱うのは業務に精通した担当者だけでなく、企業によっては派遣社員や若手社員が扱うことも多いです。そのため、スムーズに操作できるユーザーインターフェースのシンプル性や、直感的な操作性が伴っているかを確認します。

工事管理システム

工事管理システムとは

工事管理システムとは、施工管理システムとも呼ばれ、建設現場や施工管理者などが工事や建設の受注や契約、施工の進捗状態、売上金の回収など、工事に関連する種々のデータやプロセスを一元管理できるシステムです。

長期的なスケジュールで施行される場合は非常に重要な役割を担うため、ほとんどの企業で導入されています。従来の紙ベースや複数のシステムを用いた管理方法では、情報の見落とし、データの二重管理などが発生しやすく、情報のやり取りや管理も複雑です。

そのため、更新漏れによる手戻りや工事工程の誤りなど、本来の工事業務とは異なる点でロスが発生してしまいます。工事管理システムを導入することで、情報を一元に集約し、一括で管理することにより、情報の確認を容易とし、迅速な判断に繋げることが可能になります。

同じシステム上で、予算や発注、原価管理など複数の工程を管理することが可能であるため、リアルタイムに作業状況の確認や進捗管理を行うことができます。工事全体に対する工程管理の効率化や、生産性の向上などの課題に対して有効なツールです。

特に昨今はクラウド上で管理し、PCやタブレット、スマートフォンで利用でき、検索や共有が容易に行えるため、効率化に役立っています。

工事管理システムの使用用途

工程管理システムは、工場で発生する業務を効率化するために使用されています。さまざまな情報を容易かつリアルタイムに把握することで、工事管理業務の効率化が可能です。

従来、工事や施工に関するデータは、紙や複数のシステムを用いて管理することが一般的でした。情報を複数の部門で共有する場合や、複数の工事を同時に管理する場合などには、やり取りやデータの管理が煩雑になりやすい傾向があります。また、データを経理業務などで利用する場合には、改めてデータを記入、入力する必要がありました。

このような問題に対して、工事管理システムを導入することにより、工事に関連するデータを一括で管理し、容易に共有することが可能になります。さらに、工事管理システムの中には受発注などの経理作業に対応した製品もあり、発注や見積もりなどの経理業務の負担軽減に寄与することが可能です。

また、図面や写真などのデータもシステム上で管理、共有することができるため、状況把握が容易になるだけでなく、データの管理、チーム内だけでなく、関係各所への共有などに用いていた紙への出力が不要になり、ペーパーレス化を推進し、コスト削減や、効率化に繋がることも大きなメリットです。

工事管理システムの原理

工事管理システムは、製品によって異なりますが、基本的に以下の機能で成り立っています。

1. 受注工事管理

受注した工事の情報について、管理することができます。特に複数の工事案件を取り扱う場合に、工事、項目ごとにデータを管理することが可能です。これらの情報を各部門で共有することにより、データの共有や連携の強化につながります。

2. 実行予算管理

工事ごとの実行予算を作成、管理します。見積りや支払い処理ができる機能もあるため、営業部門との連携も用意に行うことが可能です。工事管理システムを導入することにより、従来は工事ごとに条件設定が必要であった実行予算の作成を容易にし、損益を含めた情報を可視化・共有できます。

3. 発注管理・入金管理

工事や工種、業者といった項目を分類し、管理することができます。請求書の発行などの文書作成支援に関しても、利用可能です。請求金額や入金額、残高といった項目ごとに入金を管理することができます。

4. 工事原価管理

工事の案件ごとに原価管理を行うことができます。将来的な支払予定や総売り上げに対する原価率の管理も実施可能です。

5. 工程管理

工事の案件ごとに、工程や進捗管理を行うことができます。従来は、作業者が手作業で実施していた日報の入力や管理が可能であるため、日報の内容を即反映し、リアルタイムに作業進捗や問題点の確認を容易に行えます。また、工事に関するリスクを特定することで、危険予知や安全な工程管理を行う機能もあります。

 

これらの機能は、それぞれの工事管理システムによって異なります。自社で必要とする機能が充実しているか、効率化すべき業務範囲をカバーできているか、といった項目をあらかじめ確認して選定することで、よりスムーズにシステムを導入することが可能になります。

また、工事管理システムには、管理されたデータをより見やすくするために、ガントチャートやグラフィックを用いたデザインが施されています。どこを見たらいいのか、何が表現されているのか、誰がいつ見ても認識違いがないような工夫があります。

工事管理システムの選び方

工事管理システムを選ぶ際は、以下の点を考慮することが大切です。

1. 機能性

自社で必要な機能がシステムに備わっているかどうかを確認することが大切です。工事の進捗管理や予算管理、資材管理など、自社に必要な機能に加え、工事管理を効果的にできる機能や、新しく取り組みたい機能が搭載されているかを確認します。

2. ユーザビリティ

工事管理システムがユーザーにとって使いやすいかは重要なポイントです。ユーザーがシステムを直感的にスムーズに使えるよう、直感的な操作性や視認性が高いUI (ユーザーインターフェース) があるかどうかを確認します。トライアルなどで導入前に実際に使ってみることが大事です。

3. カスタマイズ性

工事は期間が短いものから長いもの、対象エリアが広く大人数の作業者の管理が必要なものなど、さまざまなケースが考えられます。自社が手掛ける工事の幅に沿ったプロジェクトの管理を適切に行うことができるよう、柔軟なカスタマイズが可能なシステムを選ぶことが必要です。

4. セキュリティ性

工事管理システムは機密情報を扱うため、セキュリティ面に注意が必要です。情報漏洩や不正アクセスが起きないよう、また、万が一のときに備えて、バックアップができる機能があることも大切です。

5.コスト

コストは最も重要な点です。導入時の初期費用だけでなく、システムによってはサーバーの利用料や保守メンテナンス費用などのランニングコストもかかります。システムは日々機能更新をしているため、バージョンアップにも対応できるよう予算の確保が必要です。

6.利用端末

現在では、クラウド上で一括管理し、ほぼ全ての端末(PC、スマートフォン、タブレット)やOSで利用可能なものが主流ですが、念の為導入前には利用できる端末を確認しておくことも重要です。

ピッチチェンジャー

ピッチチェンジャーとは

ピッチチェンジャーとは、部品の搬送時にワーク同士のピッチを任意の間隔に変えられる装置です。最近は、入力軸を使った仕様が多く流通しています。従来のシリンダ機構と比較すると、小型で軽量です。

また、停止時の衝撃が少ないため、高速移動が可能です。0.2秒未満のサイクルタイムで移動する機種もあります。さらに、任意の位置に精度良く停止することができます。これにより、mm単位でピッチを設定することができます。PC機器や、スマートフォンなど精密機器に代表される組立て製造において、正確性と量産性を満たすための必須装置です。

ピッチチェンジャーの使用用途

ピッチチェンジャーの使用用途は、機構が複雑で設計・調整に時間がかかる作業が適しています。例えば「パーツフィーダからインデックス治具への供給」や「パレットからコンベア冶具へのワーク供給」「コンベアからパレットへのワーク収納」などです。具体的には「LEDのチップの台座への配置」「スマートフォン用パーツの搬送」です。

また、スライダーの数は、2つから9つまでセットできる型式もあり、場合によって使い分けます。さらに、小型のため、入り組んだ装置内に設置ができます。

ピッチチェンジャーの原理

ピッチチェンジャーは、部品を掴むワーク、ワークの移動を担うスライダ、スライダの間隔を決める入力軸で構成されています。入力軸の回転を受けて内蔵されたカムが連動し、スライダが等ピッチとなるよう移動します。回転の角度により、ピッチが決まるため、任意のピッチを指定することが可能です。また、入力軸の回転駆動は、パルスモータの他にロータリアクチュエータでも可能です。

ピッチチェンジャーの可動域によりますが、ワーク数が多いとピッチが狭くなるため、適切な設定が必要です。これまで汎用されてきたシリンダによる方式は、2点のピッチしか設定できませんでした。また、シリンダの駆動にはエアーが使われており、エアー供給の確保が必要でした。こういった課題を解決したのがピッチチェンジャーとなります。

ワーク部は、部品の吸着・脱着のための機構が備わっています。一般的にはエアーによる着脱方式が採用されています。よって、ピッチチェンジャーの本体部には、エアー供給用の電圧弁が付帯しています。

オイルカップ

オイルカップとは

オイルカップ_図0

オイルカップ (英: Oil Cups) とは、機械や装置の潤滑が必要な部分にオイル (潤滑油) を供給するための注油器の一種です。

オイルポット (油差し) からオイルを直接手差しする場合に、機械側に取り付けられる給油口を指します。また、オイルカップを機械や装置に取り付けることで、一定量のオイルを容易に給油可能です。

構造がシンプルで信頼性が高く、機械や装置のメンテナンス費や労務費の低減ができるため、汎用的に利用されている注油器です。

オイルカップの使用用途

オイルカップ_図1

図1. オイルカップの使用例

オイルカップは機械や装置の潤滑や摩擦低減、冷却などの目的でオイルを使用する場合に取り付けます。下記はオイルカップの使用例です。

1.  潤滑と冷却

オイルカップは、機械や装置の摩擦部や動作部に、必要量のオイルを供給するために取り付けます。また、熱を発生する部品や機構の周囲にカップ内のオイルを供給して、熱を吸収し冷却します。

2. ギアボックスへの給油

オイルカップは、ギアボックスなどの部品や機構にオイルを供給し、ギアの正確な動作と摩擦の低減するために使用されます。カップに必要量を給油することで、適切なオイルレベルの維持が可能です。

3. 軸受 (ベアリング) の潤滑

オイルカップは、機械や装置の軸受部分に取り付け、必要量のオイルを供給し、軸受の摩擦と摩耗を低減します。カップに必要量を給油することで、適切なオイルレベルの維持が可能です。

オイルカップの原理

オイルカップ_図2

図2. オイルカップの原理

オイルカップの原理と役割は、下記に示すとおりです。

1. 毛細管現象

カップから機械や装置内に伸びる灯心 (ひも状の芯) が挿入されているオイルカップがあり、灯心は毛細管現象によりオイルを吸い込み、機械へ微量のオイルを滴下させます。

この現象は、灯心の太さや本数、材質を変えることで、滴下するオイルの量を調整し、過剰な給油やオイルの浪費防止が目的です。なお、オイルの温度や粘度によっても給油速度が変化します。

2.  オイルのリザーバー

オイルカップは、一定量のオイルを溜めておくリザーバー (容器) としての役割があります。カップ内のオイルは、機械や装置内のオイルレベルを示し、オイルレベルの目視監視が可能です。オイルは、機械内のオイル減量と共にカップから供給されます。

オイルカップの種類

オイルカップ_図3

図3. オイルカップの種類

1. 供給方法 (灯心式) による分類

灯心式は、上記の毛細管作用を利用したオイルカップで、給油されたオイルは灯心に吸い込まれ、パイプ内を通って機械に少しずつ滴下し常時供給する方法です。

2. 形状と構造による分類

オイルカップは、形状と構造により下記の種類があります。

ストレート形とエルボ型
カップ部分と供給管部分の形状が、真っ直ぐな「ストレート形」と、90度に曲がった「エルボ形」があります。カップ上面には開閉するカバーがあり、スプリングで常時閉まっていて、粉塵等がカップ内に入らないように封止します。

ねじ込み形と打ち込み形
機械や装置に取り付ける方法は、相手側のめすねじにねじ込み取り付ける「ねじ込み式」 (管用平行ねじ、管用テーパねじ、メートルねじ) と、相手側の穴に埋め込む「打ち込み形」があります。

玉入れ形
カップ内にボールとスプリングがあり、給油ポットの先端などでボールを押し込み、隙間から給油します。ボールはスプリングでカップふた面に押し付けられて、粉塵等がカップ内に入らないように封止します。

オイルカップのその他情報

オイルカップの取り付け位置

オイルカップを灯心式ではなく直接給油する方法で使用する場合は、取り付け位置の決定は注意が必要です。カップ内のオイルレベルが、機械や装置内の適切なオイルレベルになるように取り付け位置を調整する必要があります。

灯心式でオイルを滴下させ給油する場合は、機械や装置内の必要なオイルレベルとは関係なく、高い位置にオイルカップを取り付けます。