グリオキシル酸

グリオキシル酸とは

グリオキシル酸の基本情報

図1. グリオキシル酸の基本情報

グリオキシル酸 (Glyoxylic acid) とは、カルボン酸の1種であり、分子式 C2H2O3で表される物質です。

分子内にアルデヒド基とカルボキシル基を1つずつ有します。IUPAC命名法による名称は、オキソエタン酸であり、CAS登録番号は298-12-4です。

分子量は74.04、融点-93℃、沸点111℃、常温では無色無臭の固体です。水に溶けやすく、エタノール、エチルエーテル、ベンゼンにやや溶けにくい性質を示します。密度は1.42g/cm3 (20℃/4℃) であり、酸解離定数pKaは3.18です。

グリオキシル酸の使用用途

グリオキシル酸は、医薬・香料原料としての使用用途があります。食品添加物や化粧品においては、pH調整剤として使用されることも多いです。特にフェノールとは芳香族求電子置換反応により、有用な合成前駆体を与えます。

また、生化学の分野ではホプキンズ・コール反応 (Hopkins–Cole reaction) と呼ばれる、トリプトファン検出反応で試薬として用いられる物質です。一部の植物や菌類では、グリオキシル酸回路と呼ばれる代謝経路があり、アセチルCoAと結合してリンゴ酸を合成するのに用いられています。

近年注目されている用途は、グリオキシル酸による髪の毛のトリートメント効果です。髪の毛にグリオキシル酸を主成分としたトリートメント液を付着させ、熱を加えることで、髪のパサつきや歪みが抑えられるといわれています。その他の用途としては、無電解めっきの還元剤が挙げられます。

グリオキシル酸の特徴

グリオキシル酸の水溶液中の構造(右)と単離体の構造(左下)

図2. グリオキシル酸の水溶液中の構造(右)と単離体の構造(左下)

グリオキシル酸のアルデヒド基は、実際には水和したり、水和体がさらに2量体を形成したりしている構造を取っていることが一般的です。なお、単離した場合には、カルボキシル基の水素原子はアルデヒド基の酸素原子と環状の水素結合を形成しています。

グリオキシル酸は、酢酸の約10倍強い酸性度を示す物質です。また、塩基の存在下では不均化してグリコール酸しゅう酸を生じます。不燃性ですが、加熱すると不安定で加熱分解し、ギ酸アルデヒドが生成します。

グリオキシル酸の種類

グリオキシル酸は、主に研究開発用試薬や化学工業用薬品として販売されています。研究開発用試薬では、一水和物もしくは50%水溶液などの種類があります。

一水和物の容量の種類は、10g , 25g , 10 g , 500gなどの種類です。実験室で取り扱いやすいポリボトルなどの包装で提供されています。室温で保管可能ですが、25℃以下での保管が必要な試薬として扱われる場合もあります。

化学工業用薬品としては、主に50%水溶液として販売されています。工場などのニーズに合わせて、容量は25kgなどの大型であり、ポリエチレン缶等の包装で提供されている薬品です。

グリオキシル酸のその他情報

1. グリオキシル酸の合成

グリオキシル酸の合成法

図3. グリオキシル酸の合成法

グリオキシル酸は二酸化鉛を用いたシュウ酸の電解によって合成が可能です。また、マレイン酸のオゾン酸化も有効な方法であるとされています。

2. グリオキシル酸の化学反応

グリオキシル酸はフェノール類と求電子置換反応を起こすことから、種々の有用な化学物質の合成に用いられる化合物です。例えば、フェノールと縮合反応して、4-ヒドロキシマンデル酸を生じます。この化合物は、アテノロール (βブロッカー) などの合成に用いられる前駆体物質です。

また、グアヤコールにグリオキシル酸を付加した後に酸化と脱炭酸反応を行うことにより、バニリンの合成が行われています。バニリンはバニラの香りの主成分となっている物質です。

グリオキシル酸はヒトではエチレングリコールをシュウ酸へと代謝される際の中間体です。すなわち、体内で酸化を受けると有害なシュウ酸が生成されます。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/298-12-4.html

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