プロピオンアルデヒドとは
図1. プロピオンアルデヒドの基本情報
プロピオンアルデヒドとは、無色もしくは僅かにうすい黄色の澄明な液体で、刺激臭のある有機化合物です。
IUPAC命名法では、プロパナール (英: propanal) と表されています。プロピオンアルデヒドのCAS登録番号は123-38-6です。
引火性のある液体として、消防法では「危険物第四類 第一石油類 危険等級Ⅱ」、労働安全衛生法でも 「名称等を表示すべき危険物及び有害物」「名称等を通知すべき危険物及び有害物」「危険物・引火性の物」に指定されています。
プロピオンアルデヒドの使用用途
プロピオンアルデヒドは、医薬や樹脂の原料に使用されているほか、香料や香辛料として食品添加物にも利用されています。元々果実といった天然物だけでなく、乳製品や酒類にも存在していることが知られています。香料として加工食品に添加すると、香りや風味をかもし出すことが可能です。それ以外にも、除草剤や農薬といった農業分野に利用されています。
プロピオンアルデヒドの性質
プロピオンアルデヒドはエタノールやアセトンに極めて溶けやすく、水に対しても溶けやすい液体です。プロピオンアルデヒドの融点は-81℃、沸点は47℃で、引火性が高いです。
プロピオンアルデヒドは刺激性が強く、甘酸っぱさの中に焦げたような臭気を持っています。そのため、日本の悪臭防止法では、特定悪臭物質に指定されています。
プロピオンアルデヒドの構造
プロピオンアルデヒドの示性式は、C2H5CHOまたはCH3CH2CHOで、分子量は58.08です。プロピオンアルデヒドはホルミル基を持っているため、還元力によって銀鏡反応を起こします。
また、プロピオンアルデヒドは重合して、過酸化物を生成することもあります。
プロピオンアルデヒドのその他情報
1. オキソ法によるプロピオンアルデヒドの合成
図2. オキソ法によるプロピオンアルデヒドの合成
金属触媒の存在下で一酸化炭素と水素の混合ガスを、エチレンガスに作用させることで、プロピオンアルデヒドが得られます。オキソ法はヒドロホルミル化とも呼ばれていて、工業的にアルデヒドを製造するための重要な方法の一つです。
コバルト錯体やロジウム錯体を用いた場合、反応の活性種はヒドリドカルボニル錯体です。触媒としてコバルトオクタカルボニルを使用した場合のメカニズムは、提唱者の名を取ってヘック・ブレスロウ (英: Heck-Breslow) 機構と呼ばれています。
2. 酸化によるプロピオンアルデヒドの合成
図3. 酸化によるプロピオンアルデヒドの合成
1-プロパノールの脱水素による、プロピオンアルデヒドの合成法が知られています。硫酸酸性条件下で二クロム酸カリウムを用いて、1-プロパノールを酸化すると、プロピオンアルデヒドを得ることが可能です。
その一方で、現在1-プロパノールは、ほとんどプロピオンアルデヒドから作られています。すなわち、エチレンのヒドロホルミル化によって得られたプロピオンアルデヒドをロジウム錯体などの触媒を用いて水素化することで、1-プロパノールを合成しています。
3. プロピオンアルデヒドの応用
メタノールとプロピオンアルデヒドの縮合によって、トリメチロールエタン (英: Trimethylolethane) が製造されています。トリメチロールエタンはH3C(CH2OH)3という構造で、アルキド樹脂の原料です。
tert-ブチルアミンとプロピオンアルデヒドの縮合によって、イミンであるCH3CH2CH=N-t-Buを与えます。この化合物は3炭素の構成要素として、有機合成で用いることが可能です。例えば、リチウムジイソプロピルアミド (英: lithium diisopropylamide, LDA) でリチオ化した後に、アルデヒドとの縮合に使用できます。
参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0116-2363JGHEJP.pdf