フルフリルアルコールとは
図1. フルフリルアルコールの基本情報
フルフリルアルコール (英: Furfuryl alcohol) とは、分子式C5H6O2で表されるフランにヒドロキシメチル基が置換した構造の有機化合物です。
複素環式芳香族化合物に分類されます。IUPAC命名法による名称は、2-フラノメタノールであり、別名には2-フリルメタノール、2-フリルカルビノールなどの名称があります。CAS登録番号は、98-00-0です。
分子量98.10、融点-20.2℃、沸点170℃であり、常温では無色もしくは黄褐色の澄明な液体です。光、空気に曝露すると赤色又は茶色になる性質があります。焦げたような臭いの特徴的な臭気を持ちます。密度は1.13g/mLであり、エーテルに容易に溶解します。また、アルコール、ベンゼン、クロロホルムにも可溶です。水に混和する性質があり、 水への溶解度は1000g/L (25℃) です。
フルフリルアルコールの使用用途
フルフリルアルコールの主な用途は、合成樹脂原料、樹脂変性剤、溶剤、化学原料、香料などです。溶剤としては接着剤など多くの分野で利用されています。化学原料としては、含酸素五員環のビルディングブロックとして合成的に有用な化合物です。
また、低分子量のアルコールとして、エッチング後の残渣除去などで半導体デバイス分野でも用いられています。界面活性剤としては湿潤剤に使用される他、黒色顔料の界面活性剤にも用いられている物質です。近年では、油性インクのVCO (揮発性有機化合物) による劣化を嫌い、水性インクへ移行されることが多くなっており、需要が増えています。
合成樹脂としては、主にフラン樹脂としての利用が中心です。鋳造樹脂として酸硬化性鋳型のフラン樹脂にも使用されています。硝酸または赤煙硝酸を酸化剤とする自己着火性のロケット燃料としての用途もあります。
フルフリルアルコールの性質
1. フルフリルアルコールの合成
図2. フルフリルアルコールの合成
フルフリルアルコールは、工業的にはフルフラールを原料とする触媒的水素添加反応にて合成されます。フルフラールは、トウモロコシの穂軸やサトウキビのバガスに含まれるアルデヒドです。
2. フルフリルアルコールの化学反応
図3. フルフリルアルコールの化学反応
フルフリルアルコールは、求電子的アルケンおよびアルキンとDiels-Alder反応を起こす物質です。ヒドロキシメチル化反応によって2,5-ビス (ヒドロキシメチル) フランを与えます。また、フルフリルアルコールの加水分解物はレブリン酸です。水酸基-OHはアリールハライドもしくはアルキルハライドと反応してエーテル結合を形成します。
また、フルフリルアルコールは、酸性条件において、加熱もしくは触媒添加によって脱水重合する性質がある物質です。フラン樹脂は、この性質により製造されています。
フルフリルアルコールの有名な人名反応には、アフマトヴィッチ反応があります。この反応は、臭素などの酸化的条件を用いて、フルフリルアルコールからジヒドロピラン環を合成する手法です。
フルフリルアルコールの種類
フルフリルアルコールは、主に研究開発用試薬製品として販売されています。市販されている試薬製品の容量の種類は、50g、250g、1kg、500mL、1Lなどです。
また、香料及び食品添加物として承認されていることから、これらの原料としての用途でも販売されています。
フルフリルアルコールのその他情報
フルフリルアルコールの法規制情報
フルフリルアルコールは、引火点が65℃と低いことから、消防法で「危険物第四類 第三石油類 危険等級Ⅲ 水溶性」に指定されています。労働安全衛生法 では、「名称等を表示すべき危険物及び有害物」・「名称等を通知すべき危険物及び有害物No. 491」です。化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律、危険物船舶運送及び貯蔵規則、航空法、海洋汚染防止法でもなどでも規制を受けています。
一方で、食品衛生法では、食品添加物・香料として承認されており、通常の使用の範囲であれば食品に使用することが認められている物質でもあります。
参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0106-0069JGHEJP.pdf