カンフェン

カンフェンとは

カンフェン (Camphene) とは、植物から抽出される揮発性油である精油に含まれる二環性の炭化水素の一つです。

精油には炭化水素、アルコール、アルデヒド、ケトン、フェノール、エステルなどが含まれますが、カンフェンはそのうちの炭化水素であり、モノテルペンというグループに属します。モノテルペンというのは自然界にある炭化水素の分類の一つで、イソプレン1単位からなる分子量の小さい炭化水素のグループです。

分子量が小さいため揮発しやすく、強い香りを有するものが多いです。カンフェンは精油成分の炭化水素の中では、常温で結晶するただ一つのものとして知られています。なお、炭化水素でない精油成分には常温で結晶するものがあり、例えばケトンであるカンファ―もその一つです 。

カンフェンの使用用途

カンフェンは、天然の樟脳 (しょうのう) のような特徴的な匂いがすることから、主に食品香料や化粧品の原料として使用されています。また、非アルコール系消毒・除菌液や虫除け用香料組成物にも使用されています。

その他、化学合成の中間体としての用途も重要です。合成樟脳である化学物質カンファーの中間体としての役割があります。α-ピネンからカンフェンが作られますが、カンフェンからカンファーが作られます。

二環性の特徴的な構造と反応性の高い二重結合を有するため、複雑な構造を持つ化学物質の合成に用いられるケースも多いです。例としては、医薬品や殺虫剤、あるいはエステルに誘導することにより異なる香りの香料を製造する用途が挙げられます。

カンフェンの性質

カンフェンの分子式はC10H16、分子量は136.23、CAS登録番号は79-92-5です。また、融点は52℃で、常温では固体です。ただし、昇華により揮発します。

水にはほとんど溶けませんが、エーテルには溶けます。常温で無色の結晶ですが、室温で揮発 (昇華) し、刺激臭がします。天然の樟脳 (しょうのう) 油、テレピン油、ヒノキ油に含まれ、それらの匂いの一部を構成しています。

カンフェンの選び方

カンフェンで特に注意すべき点は、光学異性体があることです。学異性体の呼び方の一つに、旋光性によるd体/(+)体(右旋性)またはl体/(-)体( 左旋性)の呼称があり、多くの市販品もこの表記がなされています。

使用目的を考慮し、一方の光学異性体を入手すべきか、ラセミ体として入手すべきか判断します。その他の購入にあたっての留意点は有機の化学物質について一般的なものです。

研究用か工業用かの用途により、試薬又は工業用化学物質のいずれかの形態を選びます。試薬についても、合成用か分析用かで試薬のグレードや推奨用途 (~用試薬など) を選びます。一般には分析用のものが高純度です。使用目的により、必要な純度を決定します。

カンフェンのその他情報

1. 由来・製造法

天然には植物の精油に含まれ、ショウガ科ガジュツには光学異性体のd(+)-カンフェン、クスノキ科の植物にはl(-)-カンフェンが含まれています。市販品はほとんどが合成品です。

工業的には、α―ピネンを触媒で異性化するか、α―ピネンを塩化水素で処理して合成された塩化ボルニルを、アルカリで脱塩化水素化することで製造します。

2. 毒性・危険性と適用法令

カンフェンは刺激性があり、特に目に対する刺激に注意が必要です。固体ですが揮発性を有するため、揮発した蒸気による引火性があります。また、可燃性も有しています。

国内法令上カンフェンは、消防法で第2類「可燃性固体」/「引火性固体」、船舶安全法で「可燃性物質類」、航空法で「可燃性固体」にそれぞれ指定されています。また、水生生物に非常に強い毒性があるとされています。そのため、環境中に漏出しないように保管することが必要です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/79-92-5.html

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