フッ化リチウム

フッ化リチウムとは

フッ化リチウム (英: Lithium Fluoride) とは、Li+とFのイオンから構成されたイオン化合物です。

フッ化リチウムは、リチウムイオンとフッ化物イオンが交互に配置された、結晶系の中では最も対称性が高い立方晶系の結晶構造をとっています。

無臭で苦みのある白色またはほぼ白色の粉末で、水にはほとんど溶けません。融点は1,063℃と非常に高く、優れた硬度を持つため、高温環境下でも安定した性質を示します。

フッ化リチウムの使用用途

1. リチウム電池用原料

ヘキサフルオロリン酸リチウムというリチウム電池の電解液の製造方法として、ガス状の五フッ化リンを溶媒の無水フッ化水素に溶解させたフッ化リチウムに反応させ、生成されたヘキサフルオロリン酸リチウムを結晶化して取り出す方法などがとられています。リチウム電池の高性能化に貢献する重要な材料の一つです。

2. 原子炉の冷却剤

フッ化リチウムは化学的性質が極めて安定した物質です。フッ化リチウムとフッ化ベリリウムを混合したFLiBe (英: Lithium Fluoride-Beryllium Fluoride) は、この特性を生かして主に溶融塩炉 (MSR) の冷却材として使用され、一部の設計では燃料溶媒の成分としても利用されてきました。

FLiBe は、最共晶組成では融点が約459℃であり、フッ化物系溶融塩の中では比較的融点が低いです。また、中性子吸収断面積が小さく、原子炉内で発生する中性子の数と炉内で吸収され核分裂または転換に使用される中性子の数との差が少ないため、溶融塩炉やトリウム燃料サイクルを用いた原子炉に適しています。

3. 光学材料

紫外線の透過率が極めて高いというフッ化リチウム結晶の特性を生かして、紫外スペクトル用の特殊な光学部品として利用されるほか、ガンマ線・ベータ線などの放射線検出機器やX線スペクトロメトリーの回折結晶にも使われています。特にX線回折技術においては、結晶構造の高精度な解析のために欠かせない素材です。

また、フッ化リチウムは紫外線を利用する半導体製造工程のレンズやウィンドウ材としても用いられます。さらに、特殊なレーザー光学系のコンポーネントとして、先端的な光学技術の発展に寄与しています。

4. 導電素材

フッ化リチウムは約9.0の比較的高い誘電率を持ち、有機ELデバイスのカソードと有機層の間の電子注入層として広く用いられている素材です。この目的で使用されるフッ化リチウム層の厚さは、通常約1 nmとされています。

フッ化リチウムの性質

フッ化リチウムは、化学式LiF、分子量25.94で、リチウムとフッ素から構成される無機化合物です。

この物質は水にほとんど溶解しない無色透明の結晶ですが、エタノールやジメチルホルムアミドには比較的溶けやすい性質を持っています。融点は1,063℃、沸点は1,686℃と、高い融点・沸点を有するため、高温の環境下でも安定しています。

フッ化リチウムはイオン結晶の一種で、一定の硬度を持つ物質です。また、優れた熱伝導性と電気伝導性を備えているため、産業用途においても重要な役割を果たしています。

フッ化リチウムの構造

フッ化リチウムはLi+とFのイオンから構成されています。結晶はリチウムイオンとフッ化物イオンが規則正しく配置された塩化ナトリウム型構造を持ちます。単位格子の格子定数は約3.01Åであり、イオン半径が小さく、密度の高い結晶構造を形成しています。このため、フッ化リチウムは比較的高い硬度を持つことが特徴です。

フッ化リチウムのその他情報

1. フッ化リチウムの製造方法

フッ化リチウムの一般的な製造方法は、炭酸リチウム (Li₂CO₃) や水酸化リチウム (LiOH) をフッ化水素酸 (HF) と反応させる方法です。炭酸リチウムを用いる場合、以下の反応式でフッ化リチウムが得られます。

Li₂CO₃ + 2HF → 2LiF↓ + CO₂ + H₂O

反応後、生成物をろ過・洗浄し、乾燥させることで高純度のフッ化リチウムを得ることができます。

2. フッ化リチウムの毒性

フッ化リチウムは、飲み込んだり皮膚に触れたり吸い込んだりすると強い毒性を持ちます。特に、長期間さらされると臓器に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、粉じんや煙を吸い込まないよう注意し、屋外や換気の良い場所で使用することが推奨されています。

参考文献
https://www.stella-chemifa.co.jp/products/files/05140600_J-1_20210401.pdf

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