ピレン

ピレンとは

ピレンとは、多環芳香族炭化水素 (PAH) の1つで、化学式C16H10、分子量が202.25の有機化合物です。

縮合多環式芳香族化合物に属しており、石炭タール中に存在しています。ピレンの構造は、4つの縮合した六員環芳香族炭化水素からなり、平面的で環状の構造をしています。

見た目は、無色〜淡黄色の結晶または粉末です。融点と沸点は、それぞれ152-153℃、404℃です。ピレンは、水にはほとんど溶けませんが、エタノールアセトンクロロホルムジクロロメタントルエンヘキサンには溶けます。

また、ピレンがベンゼンやエーテルに溶ける際には、淡青色の蛍光を生じます。ピレンの誘導体であるベンゾピレンは、発がん性があることで知られています。

ピレンの使用用途

ピレンは、疎水性蛍光物質です。そのため、ピレンは、生物学実験で細胞の構成要素を観察するための蛍光プローブとして使用されています。

希薄溶液ではモノマー発光を示し、濃溶液では二分子が近接し、励起錯体を作ることでエキシマー発光を示します。この性質を利用して、ピレンを用いてDNA、タンパク質、細胞膜の位置を視覚的に確認することが可能です。

また、ピレンの別の使用用途として、ナフタリンテトラカルボン酸の製造が挙げられます。

ピレンの性質

ピレンは、無色から黄色の結晶であり、光に対して非常に敏感です。室温では固体であり、融点は156.6℃、沸点は404℃です。紫外線や短波長の可視光線によって励起されると、青色の蛍光を発する特性を持っています。

脂溶性が高く、水にはほとんど溶けません。しかし、エタノール、アセトン、ベンゼン、トルエンなどの有機溶媒には非常に溶解です。

ピレンは、酸化剤、還元剤と反応する場合があります。特に、強い酸化剤と接触すると、酸化されてピレンキノン (pyrenequinone) などの誘導体を生成します。また、熱や紫外線により、光分解や酸化的分解を受けることがあります。

石油製品や燃焼プロセスから排出され、疎水性の高さから、土壌や沈殿物に蓄積し生物濃縮される可能性が高いです。腎臓や肝臓に有害な影響を及ぼすことが動物実験により分かっているため、環境汚染の課題となっています。 

ピレンの構造

ピレンは多環芳香族炭化水素の1つで、分子式 C16H10を持つ有機化合物です。4つの六員環芳香族炭化水素が縮合した形状をしており、平面的な分子構造を持っています。

ピレンの4つの六員環は、π電子が広がる共役系を形成しています。この共役系により、π電子が全体に分布し、分子の安定性や光学的性質に影響を与えます。

例えば、共役系によって吸収スペクトルが可視光領域にシフトし、紫外光や短波長の可視光に対して吸収しやすくなります。また、π-π相互作用により、ピレン分子同士は容易にスタッキングすることが可能です。

ピレンのその他情報

ピレンの製造方法

ピレンは、石炭や石油から得られる多環芳香族炭化水素の1種です。一般的には、石炭タールや石油の分留過程で生成されます

1. 石炭タールからの抽出
石炭タールは、石炭を高温で乾留した際に得られる副産物で、多くの多環芳香族炭化水素を含んでいます。この石炭タールを適切な溶媒で抽出し、溶液を分留することで、ピレンを得ることができます。

分留は、沸点や蒸気圧の差を利用して、異なる成分を分離するプロセスです。ピレンの沸点は 393℃であるため、その沸点を利用して他の成分と分離します。

2. 触媒的環状化反応
石油製品から得られる炭化水素を触媒を用いて環状化させ、ピレンを合成する方法もあります。このプロセスでは、適切な原料と触媒を使って、線形の炭化水素を縮合させて多環構造を形成させます。

この方法で得られるさまざまな多環芳香族炭化水素の混合物から、適切な分離・精製手段を用いてピレンを取り出すことが可能です。

ピリドキサール

ピリドキサールとは

ピリドキサール (英: Pyridoxal) とは、ビタミンB群のビタミンB6に分類される物質です。

ピリドキサールは、化学式C8H9NO3で示され、その分子量は167.16です。ピリドキシン過マンガン酸カリウムで酸化し、これを亜硝酸ナトリウムで加水分解することによって、ピリドキサールの塩酸塩が製造可能です。

ピリドキサールは、生体内では腎臓から尿中に含まれ、体外に排出されます。その際に、生体内でピリドキサールデヒドロゲナーゼにより4-ピリドキシン酸に変換され、最終的に尿から排出されます。

ピリドキサールの使用用途

ピリドキサールは、ビタミンB6の1種であり、体内で多くの生化学反応に関与しています。欠乏による皮膚病変、舌炎、貧血、神経症状などの症状を引き起こすことがあるため、ピリドキサールは医薬品として、補酵素型ビタミンB6製剤の形で広く使用されています。投与方法は主にケイク投与です。

適応はビタミンB6欠乏症の予防、そして治療です。また、授乳婦や妊婦などは、ビタミンB6が必要であるにもかかわらず、食事などから十分に摂取ができない場合にもピリドキサールが使用されます。主な副作用として、発疹、食欲不振、肝機能障害、下痢、悪心などが挙げられます。

その他、ピリドキサールは、食品添加物や栄養補助食品として、養強化食品や飲料に添加され、ビタミンB6の供給源として機能します。

ピリドキサールの性質

ピリドキサールは水に溶けやすく、水溶液中ではプロトン化・脱プロトン化の平衡が存在するため、pHによって異なる形態が生じます。熱に対して比較的安定ですが、酸化剤やアルカリ性条件下では容易に変性することがあります。

ピリドキサールは、小腸で吸収され、肝臓でリン酸化されてPLPとなります。過剰なピリドキサールは、腎臓でグルクロン酸抱合され、尿中に排泄されます。これは、ビタミンB6の一形態です。他の形態にはピリドキサミン (英: Pyridoxamine) やピリドキシン (英: Pyridoxine) があります。

これらは水溶性ビタミンで、無機リン酸エステルであるピリドキサール-5′-リン酸 (PLP) として生体内で主に機能しています。PLPは、アミノ酸代謝に関連する酵素の補酵素として働き、脱アミノ反応、縮合反応、脱カルボキシ反応など、多くの生化学反応に関与しています。

不足すると、皮膚炎、舌炎、貧血、末梢神経障害などの症状が現れることがあります。

ピリドキサールの構造

ピリドキサール (英: Pyridoxalz) はビタミンB6の一形態で、ピリジン環を基本骨格としています。ピリジン環には3位にヒドロキシ基が結合しており、ビタミンB6の他の形態 (ピリドキシン、ピリドキサミン) との顕著な違いです。この水酸基は、酸化還元反応や環化反応に関与します。

また、ピリジン環4位にはアルデヒド基が結合しており、ピリドキサールがピリドキサール-5′-リン酸 (PLP) として補酵素の機能を発揮する際に、結合する酵素の活性部位と相互作用します。

ピリドキサールの構造は、生体内でアミノ酸代謝に関与する補酵素として機能するために重要です。この構造が、アミノ酸代謝を制御する酵素との相互作用や、アミノ酸の基質との結合に寄与しています。

ピリドキサールのその他情報

ピリドキサール の製造方法

ピリドキサールは主に化学合成によって製造されます。いくつかの合成法が存在しますが、一般的なものは5-ヒドロキシニコチンアミドとアセトンの縮合反応です。

この方法では、まず5-ヒドロキシニコチンアミドとアセトンを縮合させ、ピリドキサールを合成します。また、そのほかクロロ酢酸とアニリンの縮合反応や2-メチル-5-ヒドロキシニコチンアミドの酸化反応などの合成法も知られています。

これらの合成法の選択は、原料の入手可能性や製造コストに応じて、効率的でスケーラブルな方法が選択されることが一般的です。

ピネン

ピネンとは

ピネンの異性体群

図1. ピネンの異性体群

ピネン (英: Pinene) とは、化学式がC10H16で表される有機化合物で、環状テルペン系炭化水素の一種です。

ピネンは六員環と四員環からなる構造をしており、二重結合の位置が異なるα-ピネンとβ-ピネンの2つの構造異性体が存在します。α-ピネンは1位と6位に、β-ピネンは1位と7位の位置に、二重結合がある化合物です。更に、これらの構造異性体は、それぞれが2種の鏡像異性体をもつため、ピネンには合計4種の異性体が存在することになります。CAS登録番号は、混合物: 1330-16-1、(1R)-(+)-α-ピネン体: 7785-70-8、(1S)-(−)-α-ピネン: 7785-26-4、(1R)-(+)-β-ピネン: 19902-08-0、(1S)-(−)-β-ピネン: 18172-67-3です。

ピネンの名称はマツ (英: pine) に由来し、その名の通り松脂や松精油の主成分です。その他にも多くの針葉樹に含まれ特有の香りのもととなっています。分子量は136.24であり、水に不溶ですが、酢酸エタノールアセトンには任意に混和します。

ピネンの使用用途

α-ピネンは、香料や医薬品の原料として広く使用されている化合物です。合成樟脳・テルピネオール・ペリラルデヒドの原料として用いられています。また、塗料などの溶剤としても利用されています。

また、ピネンの熱分解によって製造されるミルセンは、メントール・シトラール・ゲラニオール・ネロール・リナロール等の原料です。香料工業において広く用いられています。

α-ピネンとβ-ピネンをカチオン重合することによって生成された各種のテルペン樹脂は、接着剤や粘着剤の製造に用いられています。

ピネンの性質

1. ピネンの生合成と精製

ピネンの生合成経路においては、α体、β体ともにゲラニル二リン酸が出発原料です。リナロイル二リン酸の環化を経て骨格が完成し、最終段階で脱離するプロトンの位置によってα体とβ体に分かれます。

ピネンは、多くの精油に含まれており、テレビン油の主成分でもあります。テレビン油を分留することで、α-ピネンおよびβ-ピネンの両方が得られますが、α-ピネンは、β-ピネンと比べて、非常に多く得られることが特徴です。

α-ピネン
αピネン

図2. α-ピネン

α-ピネンは、融点 -55℃、沸点156℃であり、常温では無色透明な液体です。臭いは松の特異臭と形容され、比重は0.8592g/mLです。

α-ピネンの四員環は反応性が高く、特に酸性条件ではワーグナー・メーヤワイン転位が容易に進行することが知られています。また、希硫酸または無水酢酸条件ではテルピネオール誘導体やテルピンが、塩酸条件ではボルネオールまたはリモネンの骨格をもつ塩化物が生成します。

β-ピネン
βピネン

図3. β-ピネン

β-ピネンは、融点 -61.5℃、沸点166℃であり、常温では無色透明な液体です。臭いは特徴のあるテレビン油臭と形容され、比重は0.87g/mLです。β-ピネンは、ローズマリーやパセリ、バジル、イノンド、バラなどに含まれていることが知られています。

ピネンの種類

製品として市販されているピネンには、研究開発用試薬や、溶剤・香料原料などとして販売されている工業用途品などがあります。

研究開発用試薬製品は、鏡像異性体の混合物としてα-ピネン/β-ピネンとして販売されている場合や、それぞれの純物質として販売されている場合があります。容量の種類は、5mL、25mL、500mLなどです。通常、室温保管可能な試薬製品として取り扱われます。

工業用途で販売される場合は、テルペン油溶剤の一種として、販売されます。工場などでの需要に合わせ、15kg缶、170kgドラム缶など、大型の荷姿で共有されることも多い物質です。α-ピネン/β-ピネンなどと表記され、鏡像異性体の混合物として販売されていることが多いです。

ピネンのその他情報

ピネンの安全性情報と法規制

ピネンは、α-ピネン、β-ピネン共に、消防法では第4類引火性液体、第二石油類非水溶性液体に指定され、労働安全衛生法では危険物・引火性の物に指定されています。法令を遵守した適切な取り扱いが求められる物質です。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0116-2124JGHEJP.pdf
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0116-1971JGHEJP.pdf

キナクリドン

キナクリドンとは

キナクリドンとは、色素として広く使用されている有機化合物で、常温環境下で赤色もしくは紫色をした固体の物質です。

キナクリドンという呼称は、多数のキナクリドン誘導体の化合物群を呼ぶ際に、総称として使われることもあります。キナクリドン類の色相は、置換基の違いだけではなく、結晶構造によっても異なります。

キナクリドンは、2,5-ジアリールアミノテレフタル酸を、ポリリン酸や酸性ポリリン酸メチルエステル等の縮合剤で環化させ、その過程で得られた生成物を含む環化反応液を、多量の水を用いて加水分解することによって生成されます。高い色素密度と透明度、耐久性、色安定性から、塗料やプラスチックの色素として優れた性質を持っているのが特徴です。

キナクリドンの使用用途

1. 有機合成顔料

キナクリドン類は、鮮明さと耐久性を兼ね備えた高性能の赤色合成顔料として、印刷インキやプラスチックの着色などに用いられています。また、キナクリドンには、優れた耐候性も備わっているため、自動車や工業用のコーティングにも、高性能顔料として広く使用されています。

さらに、可溶化界面活性剤で官能化されたキナクリドン顔料のナノ結晶分散液は、最も一般的なマゼンタ印刷インクとして、私たちの生活の中で数多く利用されています。

2. 有機エレクトロニクス分野

キナクリドンは、半導体特性を有しているため、太陽電池や有機EL材料等の有機エレクトロニクス分野においても、活発な応用研究が行われています。今後の利用に大きな関心を集めている物質です。

キナクリドンの性質

キナクリドンは、芳香族炭化水素の1種であり、分子式はC20H12N2、分子内には2つのキノン基があり、分子量は300.33g/molです。多数のアイソマー存在し、キナクリドン顔料ファミリーを構成しています。

顔料としてのキナクリドンは不溶性です。キナクリドンは色と天候の堅牢性に優れているため、自動車用塗料や工業用塗料として主に使われます。可溶化界面活性剤で機能化されたキナクリドン顔料のナノ結晶分散体は、マゼンタ色の印刷インクとして使われるのが一般的です。

キナクリドンは基本的に深紅から紫色を呈します。この色相は分子構造だけでなく、固体の結晶形の影響を受けて変化します。結晶系の違いは色相、溶媒耐性、熱力学的な安定性に影響するため、製造時の結晶形コントロールが重要です。

キナクリドンの構造

キナクリドンは、化学式C20H12N2で表される多環式有機化合物です。キノン類と呼ばれる複素環化合物の一群に属し、2つのカルボニル基を持つ6員芳香環が特徴です。

キナクリドンの構造は、窒素原子を含む2つの縮合芳香環からなり、分子中には2つのカルボニル基があります。また、分子内には共役二重結合が存在し、これが鮮やかな色と耐光性に寄与しています。

顔料としてキナクリドン誘導体を合成する場合、CH3およびCl置換基の付加が一般的です。

キナクリドンのその他情報

1. キナクリドンの製造方法

キナクリドンは、スクシンイミドと2-アミノフェノールからの反応によって製造されます。2-アミノフェノールをトルエン中で処理し、フタル酸と反応させることでジヒドロキシフェニルフタル酸が合成され、続いてジヒドロキシフェニルフタル酸を尿素と反応させることでスクシンイミドを合成します。

最後に、スクシンイミドを空気中で500〜600℃の高温下に加熱することによって、キナクリドンを得ることが可能です。別の製造方法としては、1,2-ジクロロベンゼンをトルエン中で加熱して発生させたアリールジルを2-アミノフェノールと反応させ、キナクリドンを得る方法があります。

また、トルエン中でスクシンイミドとナトリウムメトキシドを反応させ、生成物を酢酸エチルで処理してキナクリドンを合成する方法も報告されています。

2. キナクリドンの半導体特性

キナクリドン誘導体は、分散状態で強い蛍光を示し、高いキャリア移動度を示します。これらは、有機発光ダイオードや太陽電池 (OSC) 、電界効果トランジスタなどの用途に望ましい特性です。

この特性を活かし、有機エレクトロニクス分野での応用が注目を集めています。

参考文献
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/p0200

カルミン酸

カルミン酸とは

カルミン酸の基本情報

図1. カルミン酸の基本情報

カルミン酸とは、ザクロのような赤色をした、光沢のある柱状結晶です。

アントラキノン (英: anthraquinone) 骨格をもつ化合物であり、赤色の色素であるコチニール色素 (英: cochineal extract) の主成分でもあります。熱・光・発酵に強いことも特徴です。

中央アメリカや南アメリカの砂漠地帯に生育するサボテン類に寄生するエンジムシ (英: cochineal insect) の乾燥体より、温水や熱水等で抽出することによって得られます。

カルミン酸の使用用途

カルミン酸の主成分であるコチニール色素は、菓子類や飲料、水産・畜肉加工肉等の食品に、着色剤として幅広く利用されています。コチニール色素は、動物性の色素で、耐熱性・耐光性に非常に優れています。そのため、要加熱食品や店頭に並べる際に光があたる食品にも用いやすいことが特徴です。

香料や絵の具、カラー写真、細菌の染色などにも用いられています。また、アルミニウムイオンやカルシウムイオンと錯体を形成することで、深紅色のレーキ顔料となります。

さらに、化粧品分野においても、赤色の着色を目的として、洗浄製品や洗顔料、スキンケア化粧品、ヘアスタイリング剤などにも使用可能です。 

カルミン酸の性質

カルミン酸は、水・エタノール・エーテル・濃硫酸・水酸化アルカリ溶液には易溶です。石油エーテル・ベンゼンクロロホルムには溶けません。

溶液の状態では、酸性で赤橙色、中性で赤色、アルカリ性で赤紫色といったように、pHによって溶液の色が異なることも特徴です。分解点は135℃で、pKaは1.59±0.20です。

カルミン酸の構造

カルミンの構造

図2. カルミンの構造

カルミン酸の化学構造は、グルコースユニットに連結しているアントラキノン構造で構成されています。化学式はC22H20O13、モル質量は492.38g/molです。

コチニール色素であるカルミン中の着色剤です。コチニール色素とは、天然の染料や食品添加物として利用されている赤色の色素であり、アルミニウム塩として生成されています。

具体的には、南ヨーロッパ産のケルメスカイガラムシやメキシコ産のコチニールカイガラムシ以外にも、アジア産のラックカイガラムシ (英: Kerria lacca) などから得られます。そして、これらメスの体を乾かし、体内に蓄積された色素化合物を、水やエタノールで抽出することで、色素として得ることが可能です。

カルミン酸のその他情報

1. 天然におけるカルミン酸

カルミン酸は、天然に存在する赤色グルコシド性のヒドロキシアントラキノン (英: hydroxyanthraquinone) の1つです。コチニールカイガラムシ (英: Cochineal) やポーランドコチニールカイガラムシ (英: Polish cochineal) など、一部のカイガラムシ (英: Scale insect) の中に存在します。このような昆虫がカルミン酸を合成しているのは、捕食者への抑止力のためです。

カルミンの語源は、欧州のケルメスカイガラムシ (英: Kermes ilicis) から、伝統的に抽出されて使用されていた色素に由来しています。

2. カルミン酸の関連化合物

アントラキノンの基本情報

図3. アントラキノンの基本情報

カルミン酸の母核は、アントラキノン構造で構成されています。アントラキノンとは、アントラセンの誘導体の芳香族有機化合物であり、黄色から薄い灰色の結晶性の粉末です。

アントラキノンのIUPAC系統名は、アントラセン-9,10-ジオン (英: anthracene-9,10-dione) です。別名として、アントラジオン (英: anthradione) 、9,10-アントラセンジオン (英: 9,10-anthracenedione) 、アントラセン-9,10-キノン (英: anthracene-9,10-quinone) などとも呼ばれています。

カラメル

カラメルとは

カラメルとは、砂糖を加熱して溶かし、色が変わり風味が出るまで煮詰めたものです。

カラメル色素とも呼ばれ、褐色の液体または粉体であり、水に溶けやすく特有の風味を有しており、食品添加剤や着色剤として使用されています。

カラメルの使用用途

カラメルの主な用途は、食品添加物として食品の着色目的で使用されています。着色料の中では最も使用量が多く、飲料や醤油、ソース、菓子等の食品に幅広く使われています。

また、カラメル特有の香りや苦みがあることから、食品の風味付けやコクを付与する役割もあります。食品関係では以下のようなものに使用されています。

1. カスタードプリン

カラメルは、カスタードプリンの表面にかかっているソースとして使われます。カラメルソースがカスタードプリンに濃厚な甘さとコクを与えます。

2. キャラメルソース

カラメルにバターや生クリームを加えることで、クリーム状のキャラメルソースができます。アイスクリームやパンケーキ、チーズケーキのトッピングに使われます。

3. キャラメルポップコーン

ポップコーンにカラメルを絡めることで、甘くて美味しいキャラメルポップコーンができます。映画館やお祭りでよく売られています。

4. コーヒーのフレーバー

カフェラテやカプチーノにカラメルシロップを加えることで、甘くて風味豊かなコーヒーが楽しめます。

5.化粧品

着色目的で薄い褐色に着色したり、ほかの色素を混ぜて色味を調整したりして使用されています。水に溶けるため、シャンプー、ボディソープ、石鹸等様々な製品に使われています。

カラメルの原理

カラメルは、砂糖が加熱される過程で起こる化学反応により作られます。砂糖は、加熱されると分解され、色が変わり香ばしい風味が生まれます。これが糖化反応です。砂糖が完全に溶けて液体状になり、色が変わった時点でカラメルとなります。

カラメルには、炭水化物の加熱により生じた複数の化合物が含まれますが、組成はまだはっきりと解明されていません。製造時に亜硫酸化合物およびアンモニウム化合物で処理を行う場合があり、その処理の有無によりⅠ類からIV類の4種類に分類されています。

カラメルの種類

カラメル色素は昔から、天然着色料として使用されてきています。1956年の食品衛生法改正に伴って、製法に応じてカラメルⅠ、カラメルⅡ、カラメルⅢ、カラメルⅣの4種類に分類され、用途に応じて使い分けれらています。。

1. カラメルI

でんぷん加水分解物や糖類などの熱処理によって得られ、亜硫酸化合物やアンモニウム化合物を使用していない安全なカラメルです。昔ながらの製法で糖類を加熱して、容易に家庭でも作ることができます。

カラメル色素の中では最も安全ですが、製造コストが高いため、工業的にはほとんど作られていません。日摂取許容量には制限がありません。

2. カラメルII

でんぷん加水分解物、糖類などに、亜硫酸化物を加えて、これに酸やアルカリを加えて熱処理して得られるカラメルです。ただし、亜硫酸は日本国内では危険とされており、その使用は禁止されています。そのため、カラメルⅡは食品添加物としては使用されていません。

3. カラメルIII

でんぷん加水分解物、糖類などに、アンモニウム化合物を加え、酸やアルカリを加えて熱処理して作られます。この過程では亜硫酸化合物は使用されておらず、食品添加物として使用できます。

4. カラメルIV

でんぷん加水分解物、糖類などに、亜硫酸化合物、アンモニウム化合物を加え、酸やアルカリを使って熱処理して作られます。亜硫酸が使用されますが、食品添加物として使用されています。

カラメルのその他情報

カラメルの製造方法

家庭でできる、カラメルの作り方を以下に記載します。

原料
砂糖100g、水 : 大さじ1

作り方

  1. 熱した鍋に砂糖と水を入れ、混ぜます。
  2. 砂糖が溶け始めたら、鍋をゆっくりと回して砂糖を均一に溶かします。焦げ付かないように注意します。
  3. 砂糖が完全に溶け、色が薄い黄色に変わったら火を止めます。薄い色のカラメルが完成です。濃い色のカラメルを作りたい場合は、さらに加熱して深い茶色になるまで煮詰めます。
  4. カラメルが完成したら、すぐに用途に応じて使います。例えば、カスタードプリンの型にカラメルを流し込んだり、バターや生クリームを加えてキャラメルソースを作ったりします。

原価管理システム

原価管理システムとは

原価管理システムとは、原価の計算、分析、シミュレーションなどの管理を実行するシステムです。

そもそも原価とは、一般的に製品の製造や販売、サービスの提供の際に必要となる費用を指します。原価に関わるデータは、形態別の材料費・労務費・製造経費や、直接費と間接費、変動費と固定費に分類することができます。

また、これらのデータは流動的に変化したり、製品全体に按分されたりします。原価管理システムは、このような原価をリアルタイムかつ正確に把握し管理するためシステムです。原価に関わるデータの収集や管理を行いますが、これらのデータは、在庫管理や販売管理、会計など、他の業務のシステムと連携して取り扱う必要があります。

そのため、原価管理システムは、ERP (Enterprise Resource Planning: 統合基幹業務システム) の機能の一部として提供されることが多く、その他の業務システムとのデータ連携によって、よりスムーズかつ正確な原価管理が可能となります。

原価管理システムの使用用途

原価管理システムは、最適な原価管理によってコストを把握・分析し、利益の最大化やリスクへ対応する際に使用されます。原価を適切に管理することは、利益の向上に寄与するとともに、損益分岐点を下げ、経営の安定性にもつながります。

そのためには、どの部分にどれだけの原価を要しているかというデータを把握し、可視化することが重要です。原価管理システムを導入することにより、原価にかかわるデータを一括管理し、リアルタイムに計算することが可能となります。また、これらのデータから各製品の採算性や工程に要するコストを求められ、生産性の向上に寄与します。

原価管理システムの原理

原価管理システムを導入することによって、下記のような項目を管理できます。

1. 原価計算

原価計算とは、原価に関わるデータをもとに原価を自動計算することです。原価計算は用途に応じて、個別原価計算、総合原価計算、全部原価計算、部分原価計算などに分類されます。原価は標準原価、実際原価、予定原価といった種類があり、これらの原価を自動計算することができます。

2. 原価差異分析

原価差異分析とは、標準原価と実際原価を算出することです。有利差異 (予定原価よりも実際原価が低い場合) でも不利差異 (予定原価よりも実際原価が高い場合) でも、その差異が発生した原因を把握し、原価予測精度を高めることが重要です。

3. 損益計算

損益計算とは、収益性を判断するための製品別の損益計算をすることです。原価計算システムでは、通常の原価計算に加え、各段階でのコストをトータルで管理することができるため、限界利益の判断や収益性、機会損失などの分析を行うことが可能になります。

4. 原価シミュレーション

原価シミュレーションとは、様々な原価変動要因を把握し、蓄積した原価データから将来予測を行うことです。原料価格の高騰や人件費の増加など、将来的なリスクに速やかに対応することができます。

5. 配賦

配賦 (はいふ) とは、部門や製品を跨ぐ費用や部門の共通経費といった、厳密に原価計算対象に組み込むことが難しい費用に対して、定義を決めて分配することです。製品管理は、他部門にわたり、複雑な配賦に対応する必要があるため、原価管理システムによる配賦計算が効果的です。

原価管理システムの選び方

原価管理システムは、自社の業界・業種に合わせて選ぶことが大切です。選ぶ際は、事例を見て自社の業界・業種と同じ企業が導入しているかを確認し、大量生産・受注生産・見込み生産などの生産形態を考慮することをおすすめします。

その他、自社で取り扱っているシステムとの連携性はあるか、業務要件を満たすことができるカスタマイズ性はあるのか、導入する前にPoC (概念実証) が必要です。

3Dセンサー

監修:株式会社リンクス

3Dセンサーとは

3Dセンサーとは、3次元形状を捉えるセンサーのことです。

一般的なカメラは、平面 (2次元) 情報を得るためのセンサーですが、3Dセンサーでは、2次元の情報に加えて高さ情報を取得できます。

私たちは、生活のなかで目や耳、手などの五官を通して刺激を受け、情報を取得しています。3Dセンサーは、これらの五感を代替する仕組みであるといえるでしょう。また、この技術は、3Dセンシングと呼ばれています。

3Dセンサーの使用用途

3Dセンサーは自動車、加工食品、半導体、電気電子部品、建材など、様々な業界における製品の製造工程や開発工程で使用されています。製造工程では安定した計測精度と検査タクトタイム内で処理できる速度が要求されるため、2Dカメラに加えて3Dセンサーが使用されます。

製造工程に導入される3Dセンサーの主な用途に「寸法計測」「外観検査」「位置決め」があります。

1. 寸法計測

加工された部品・製品が規定サイズに収まっているか、製造後に寸法計測検査を行います。これまでマイクロゲージやノギス、検査治具などでの寸法測定は、個人差や測定条件による誤差が生じたり、正確性に欠けたりなど課題がありました。また手作業で行う場合はタクトタイムに間に合わず全数検査をあきらめて抜き取り検査でしかできないケースがありました。

3Dセンサーで高速撮影しインライン検査に適用することで全数検査も可能となります。また検査結果を数字で管理できるためトレーサビリティに計測結果を紐づけることもできます。

2. 外観検査

対象物表面に見られるキズや異物などを検出する外観検査は、ワーク表面に照明を当てて得られる画像の濃淡をもとに検出します。2Dセンサーでは、対象物表面に曲がりや歪みがある場合は照明が均一に当たらないという問題が発生します。また、キズなどの凹みと異物などの凸は2次元画像では見分けがつかないケースが多く、過検出が発生して生産ラインを頻繁に停止してしまうという問題がありました。

これらの課題を解決するのが、3Dセンサーによる外観検査です。濃淡だけでなく、高さ値をベースに判定することで2Dより安定した外観検査が可能です。また、画像処理ソフトウェアと組み合わせることで人の感覚に近い官能的な判定で検査することができます。

3. 位置決め

人手で行っている生産工程を自動化するにあたり、ロボットや治具が対象物に対して正確に操作する必要があります。基準位置からどれだけ、どの方向にずれているのか正確に計測することでロボットでの自動操作が可能になります。

3Dセンサーでは2次元的な位置ずれの他、奥行きや3次元的な角度ずれが算出できるためより高精度に位置決めが可能です。これまで、3次元の位置決めシステムの開発は専門的な知識が必要でした。3Dビジョン用ソフトウェアが続々開発され導入も容易になっています。

3Dセンサーの種類

3Dセンサーの種類

図1. 3Dセンサーの種類

3Dセンサーは、計測手法によってさまざまな種類があります。3次元形状を取得するために使われるセンシング技術には、主に時間遅延法、三角測量法、焦点法の3つに大別されます。以下でそれぞれについて解説します。

1. 遅延時間法

光を照射してセンサーに返ってくるまでの時間から距離を計測する方法です。最長で100mを超えるレンジの奥行計測が可能ですが、計測精度は近距離の場合でも数mm程度です。長距離の計測が可能な時間遅延法では、車の自動運転や自動搬送車(AGV)などに搭載し、人や物を検知する用途が増えています。また、時間遅延法は、下記のような技術として用いられています。

LiDAR
レーザー光を照射し、反射光や散乱光を検出することで、対象物までの距離や形状を測定する手法の総称です。照射したレーザー光が物体に当たって跳ね返ってくるまでの時間を計測し、物体までの距離や方向を測定します。    

TOF (英: Time-of-Flight) 
LiDAR のうち、パルス波を一定間隔で投光するものがTOFセンサーです。カメラと組み合わせた TOF カメラとしての利用が多く、一度の光照射で広い視野範囲の情報を取得でき、比較的低コストで利用できます。

2. 三角測量法   

光切断
ライン状のレーザー光を対象物に照射し、その反射光をカメラで捉え、レーザーラインの変位から対象物の高さを計測する方法です。1回のスキャンにて、1プロファイル (断面) 分のデータを取得するラインスキャンタイプのセンサーで、センサーまたは対象物を移動しながら取得したプロファイルデータを連続的に結合することで、3次元形状を生成できます。

ステレオビジョン
人がものを見るときと同じ原理で、2台以上のカメラで対象物の同じ位置を捉え、その視差から高さの違いを算出します。エリアカメラ1ショットで、3次元形状が撮影でき、速度・コスト的に有利な手法です。撮影画像内の特徴点同士の視差を比較するため、高低差がテクスチャとなって映る必要があります。  

縞投影/パターン投影
対象物に複数の縞パターンを投影し、別の方向から撮影したパターン分の画像を解析することで高さを計測する手法です。静止状態で高精度な 3 次元形状を撮影することができます。

3. 焦点法  

白色干渉
複数の波長をもつ白色光を2方向から照射し、その光路長が完全に同じ場合に光が強く干渉するという特性を利用した計測手法です。白色光をビームスプリッタによって2分割し、一方を対象物に、もう一方を参照ミラーに反射させて、センサーが受光した光の干渉強度から対象物表面の高さ・深さを測定します。

光の波長のオーダーでフォーカス位置を算出することができるため、ナノマイクロメートルレベルの高さ計測が可能です。また、対象物の材質・色を問わず計測できます。    

共焦点
共焦点光学系は、コンフォーカル光学系とも呼ばれ、点光源からの光が対物レンズを通過して対象物の表面に反射し、反射光が再度レンズを通過してセンサーで受光します。センサーに入光する直前にピンホールと呼ばれる小さな穴があり、焦点の合う位置で反射した光のみが通過し、検出されることでフォーカス位置を判別します。

コントラストの高い鮮明なデータが取得できます。1回の計測では、広い面積の計測ができないため、主にレーザー顕微鏡などの限られた視野を計測する用途で使用されます。  

合焦点
カメラと対象物の距離を少しずつ変動させながら、光学的にフォーカスの合う位置を探索する計測法です。複数枚の画像を撮像し、焦点ぼけの変化を分析することで、3次元形状を復元します。Z軸方向に取り込める範囲が広く、面で計測できるため、焦点法のなかでは高速計測が可能ですが、精度は粗くなります。 

本記事は3Dセンサーを製造・販売する株式会社リンクス様に監修を頂きました。

株式会社リンクスの会社概要はこちら

スクラッチ試験

監修: 株式会社アントンパール・ジャパン

スクラッチ試験とは

スクラッチ試験はダイヤモンド圧子を試料表面に接着させ、一定速度で負荷荷重を漸次的に増加させながら試料を移動させ、制御されたスクラッチ痕を作成します。

試料表面に作成されたスクラッチ痕を撮影、解析する事により、剥離荷重、摩擦力、傷の深さ、薄膜破壊時の音響効果等の分析をする事が出来ます。

従来実施されていた評価手法では出来なかった定量化を誰でも簡単に実施が可能になる事で、抽象的だった材料評価、品質の保証を飛躍的に向上することに貢献します。

スクラッチ試験機の動作原理

スクラッチ試験機の動作原理

図1. スクラッチ試験機の動作原理

従来の薄膜・コーティングの評価手法例​

従来の薄膜・コーティングの評価手法例​

図2.従来の薄膜・コーティングの評価手法例​

【問題点】

  • 試験結果が作業者や道具の状態に依存する
  • 定量的な評価が出来ない

スクラッチ試験機は上記の課題を解決するだけでなく、傷の深さ・摩擦力、音響効果等の多角的な分析を行うことで品質の保証の向上・製品開発時間の短縮に貢献します。

スクラッチ試験機の特長

パノラマ画像による傷の比較

傷が入った荷重を密着力(臨界荷重)と定義、定量的な比較が可能

TiNコーティングとTiCNコーティング

図3. TiNコーティング(上) / TiCNコーティング(下)

スクラッチ試験の使用用途

  • コーティングの密着性評価
  • 鉛筆硬度・ウール試験に代わる定量的な評価
  • サイカスに代わる膜の密着性の評価
  • 表面の傷つきやすさの評価

スクラッチ試験機には、材料・印可荷重に応じたナノスクラッチ試験機、マイクロコンビ試験機、レべテスト試験機等、数種類あります。各種コーティングの材質、膜厚、測定目的に応じて、最適な製品を選定する必要があります。

Nmレベルの樹脂コーティングの基材への密着性価、耐傷性の評価からDLCコーティング等のハードコーティングの密着性評価や厚い樹脂材料の破壊試験等の評価が可能です。

本記事は高精度のラボ装置及びプロセス測定システムを製造・販売する株式会社アントンパール・ジャパン様に監修を頂きました。

株式会社アントンパール・ジャパンの会社概要はこちら

test

レアメタル 使用用途