キナクリドン

キナクリドンとは

キナクリドンとは、色素として広く使用されている有機化合物で、常温環境下で赤色もしくは紫色をした固体の物質です。

キナクリドンという呼称は、多数のキナクリドン誘導体の化合物群を呼ぶ際に、総称として使われることもあります。キナクリドン類の色相は、置換基の違いだけではなく、結晶構造によっても異なります。

キナクリドンは、2,5-ジアリールアミノテレフタル酸を、ポリリン酸や酸性ポリリン酸メチルエステル等の縮合剤で環化させ、その過程で得られた生成物を含む環化反応液を、多量の水を用いて加水分解することによって生成されます。高い色素密度と透明度、耐久性、色安定性から、塗料やプラスチックの色素として優れた性質を持っているのが特徴です。

キナクリドンの使用用途

1. 有機合成顔料

キナクリドン類は、鮮明さと耐久性を兼ね備えた高性能の赤色合成顔料として、印刷インキやプラスチックの着色などに用いられています。また、キナクリドンには、優れた耐候性も備わっているため、自動車や工業用のコーティングにも、高性能顔料として広く使用されています。

さらに、可溶化界面活性剤で官能化されたキナクリドン顔料のナノ結晶分散液は、最も一般的なマゼンタ印刷インクとして、私たちの生活の中で数多く利用されています。

2. 有機エレクトロニクス分野

キナクリドンは、半導体特性を有しているため、太陽電池や有機EL材料等の有機エレクトロニクス分野においても、活発な応用研究が行われています。今後の利用に大きな関心を集めている物質です。

キナクリドンの性質

キナクリドンは、芳香族炭化水素の1種であり、分子式はC20H12N2、分子内には2つのキノン基があり、分子量は300.33g/molです。多数のアイソマー存在し、キナクリドン顔料ファミリーを構成しています。

顔料としてのキナクリドンは不溶性です。キナクリドンは色と天候の堅牢性に優れているため、自動車用塗料や工業用塗料として主に使われます。可溶化界面活性剤で機能化されたキナクリドン顔料のナノ結晶分散体は、マゼンタ色の印刷インクとして使われるのが一般的です。

キナクリドンは基本的に深紅から紫色を呈します。この色相は分子構造だけでなく、固体の結晶形の影響を受けて変化します。結晶系の違いは色相、溶媒耐性、熱力学的な安定性に影響するため、製造時の結晶形コントロールが重要です。

キナクリドンの構造

キナクリドンは、化学式C20H12N2で表される多環式有機化合物です。キノン類と呼ばれる複素環化合物の一群に属し、2つのカルボニル基を持つ6員芳香環が特徴です。

キナクリドンの構造は、窒素原子を含む2つの縮合芳香環からなり、分子中には2つのカルボニル基があります。また、分子内には共役二重結合が存在し、これが鮮やかな色と耐光性に寄与しています。

顔料としてキナクリドン誘導体を合成する場合、CH3およびCl置換基の付加が一般的です。

キナクリドンのその他情報

1. キナクリドンの製造方法

キナクリドンは、スクシンイミドと2-アミノフェノールからの反応によって製造されます。2-アミノフェノールをトルエン中で処理し、フタル酸と反応させることでジヒドロキシフェニルフタル酸が合成され、続いてジヒドロキシフェニルフタル酸を尿素と反応させることでスクシンイミドを合成します。

最後に、スクシンイミドを空気中で500〜600℃の高温下に加熱することによって、キナクリドンを得ることが可能です。別の製造方法としては、1,2-ジクロロベンゼンをトルエン中で加熱して発生させたアリールジルを2-アミノフェノールと反応させ、キナクリドンを得る方法があります。

また、トルエン中でスクシンイミドとナトリウムメトキシドを反応させ、生成物を酢酸エチルで処理してキナクリドンを合成する方法も報告されています。

2. キナクリドンの半導体特性

キナクリドン誘導体は、分散状態で強い蛍光を示し、高いキャリア移動度を示します。これらは、有機発光ダイオードや太陽電池 (OSC) 、電界効果トランジスタなどの用途に望ましい特性です。

この特性を活かし、有機エレクトロニクス分野での応用が注目を集めています。

参考文献
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/p0200

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