スクラッチ試験機とは
スクラッチ試験機は、機械部品、装飾品などの表面を一定の負荷をかけてスクラッチ痕を作成し、密着強度性や耐傷性を測定する機械です。
材料表面にダイヤモンドスタイラスなどの鋭利な圧子を押し当てながら一定速度で移動させ、その際の材料の応力状態や破壊挙動を評価する試験手法です。
荷重を徐々に増加させ、試料表面に作成されたスクラッチ痕を撮影、解析する事により、材料が破壊する際の臨界荷重や、破壊形態 (塑性変形、割れ、剥離など) を観察することで、材料の硬さ、靭性、耐摩耗性、コーティングの密着性などを定量的に評価できます。
従来実施されていた評価手法では出来なかった定量化を誰でも簡単に実施が可能になる事で、抽象的だった材料評価、品質の保証を飛躍的に向上することに貢献します。
スクラッチ試験機の使用用途
- コーティングの密着性評価
- 鉛筆硬度・ウール試験に代わる定量的な評価
- サイカスに代わる膜の密着性の評価
- 表面の傷つきやすさの評価
スクラッチ試験機には、材料・印可荷重に応じたナノスクラッチ試験機、マイクロコンビ試験機、レべテスト試験機等、数種類あります。各種コーティングの材質、膜厚、測定目的に応じて、最適な製品を選定する必要があります。
Nmレベルの樹脂コーティングの基材への密着性価、耐傷性の評価からDLCコーティング等のハードコーティングの密着性評価や厚い樹脂材料の破壊試験等の評価が可能です。
スクラッチ試験機の特徴
1. 非破壊検査
試料に大きなダメージを与えることなく、表面状態を評価できます。
2. 高精度
微小な傷や変形も検出できます。
3. 多様な材料に対応
金属、セラミックス、高分子材料など、幅広い材料の評価が可能です。
4. 局所的な評価
特定の部位の特性を詳細に評価できます。
5. パノラマ画像による傷の比較
下記の図のように傷が入った荷重を密着力 (臨界荷重) と定義、定量的な比較が可能です。
図2. TiNコーティング(上) / TiCNコーティング(下)
スクラッチ試験機のその他情報
スクラッチ試験機は、従来の薄膜・コーティングの評価手法の下記の課題を解決するだけでなく、傷の深さ・摩擦力、音響効果等の多角的な分析を行うことで品質の保証の向上・製品開発時間の短縮に貢献します。
図3.従来の薄膜・コーティングの評価手法例
【問題点】
- 試験結果が作業者や道具の状態に依存する
- 定量的な評価が出来ない