監修:株式会社リンクス
3Dセンサーとは
3Dセンサーとは、3次元形状を捉えるセンサーのことです。
一般的なカメラは、平面 (2次元) 情報を得るためのセンサーですが、3Dセンサーでは、2次元の情報に加えて高さ情報を取得できます。
私たちは、生活のなかで目や耳、手などの五官を通して刺激を受け、情報を取得しています。3Dセンサーは、これらの五感を代替する仕組みであるといえるでしょう。また、この技術は、3Dセンシングと呼ばれています。
3Dセンサーの使用用途
3Dセンサーは自動車、加工食品、半導体、電気電子部品、建材など、様々な業界における製品の製造工程や開発工程で使用されています。製造工程では安定した計測精度と検査タクトタイム内で処理できる速度が要求されるため、2Dカメラに加えて3Dセンサーが使用されます。
製造工程に導入される3Dセンサーの主な用途に「寸法計測」「外観検査」「位置決め」があります。
1. 寸法計測
加工された部品・製品が規定サイズに収まっているか、製造後に寸法計測検査を行います。これまでマイクロゲージやノギス、検査治具などでの寸法測定は、個人差や測定条件による誤差が生じたり、正確性に欠けたりなど課題がありました。また手作業で行う場合はタクトタイムに間に合わず全数検査をあきらめて抜き取り検査でしかできないケースがありました。
3Dセンサーで高速撮影しインライン検査に適用することで全数検査も可能となります。また検査結果を数字で管理できるためトレーサビリティに計測結果を紐づけることもできます。
2. 外観検査
対象物表面に見られるキズや異物などを検出する外観検査は、ワーク表面に照明を当てて得られる画像の濃淡をもとに検出します。2Dセンサーでは、対象物表面に曲がりや歪みがある場合は照明が均一に当たらないという問題が発生します。また、キズなどの凹みと異物などの凸は2次元画像では見分けがつかないケースが多く、過検出が発生して生産ラインを頻繁に停止してしまうという問題がありました。
これらの課題を解決するのが、3Dセンサーによる外観検査です。濃淡だけでなく、高さ値をベースに判定することで2Dより安定した外観検査が可能です。また、画像処理ソフトウェアと組み合わせることで人の感覚に近い官能的な判定で検査することができます。
3. 位置決め
人手で行っている生産工程を自動化するにあたり、ロボットや治具が対象物に対して正確に操作する必要があります。基準位置からどれだけ、どの方向にずれているのか正確に計測することでロボットでの自動操作が可能になります。
3Dセンサーでは2次元的な位置ずれの他、奥行きや3次元的な角度ずれが算出できるためより高精度に位置決めが可能です。これまで、3次元の位置決めシステムの開発は専門的な知識が必要でした。3Dビジョン用ソフトウェアが続々開発され導入も容易になっています。
3Dセンサーの種類
図1. 3Dセンサーの種類
3Dセンサーは、計測手法によってさまざまな種類があります。3次元形状を取得するために使われるセンシング技術には、主に時間遅延法、三角測量法、焦点法の3つに大別されます。以下でそれぞれについて解説します。
1. 遅延時間法
光を照射してセンサーに返ってくるまでの時間から距離を計測する方法です。最長で100mを超えるレンジの奥行計測が可能ですが、計測精度は近距離の場合でも数mm程度です。長距離の計測が可能な時間遅延法では、車の自動運転や自動搬送車(AGV)などに搭載し、人や物を検知する用途が増えています。また、時間遅延法は、下記のような技術として用いられています。
LiDAR
レーザー光を照射し、反射光や散乱光を検出することで、対象物までの距離や形状を測定する手法の総称です。照射したレーザー光が物体に当たって跳ね返ってくるまでの時間を計測し、物体までの距離や方向を測定します。
TOF (英: Time-of-Flight)
LiDAR のうち、パルス波を一定間隔で投光するものがTOFセンサーです。カメラと組み合わせた TOF カメラとしての利用が多く、一度の光照射で広い視野範囲の情報を取得でき、比較的低コストで利用できます。
2. 三角測量法
光切断
ライン状のレーザー光を対象物に照射し、その反射光をカメラで捉え、レーザーラインの変位から対象物の高さを計測する方法です。1回のスキャンにて、1プロファイル (断面) 分のデータを取得するラインスキャンタイプのセンサーで、センサーまたは対象物を移動しながら取得したプロファイルデータを連続的に結合することで、3次元形状を生成できます。
ステレオビジョン
人がものを見るときと同じ原理で、2台以上のカメラで対象物の同じ位置を捉え、その視差から高さの違いを算出します。エリアカメラ1ショットで、3次元形状が撮影でき、速度・コスト的に有利な手法です。撮影画像内の特徴点同士の視差を比較するため、高低差がテクスチャとなって映る必要があります。
縞投影/パターン投影
対象物に複数の縞パターンを投影し、別の方向から撮影したパターン分の画像を解析することで高さを計測する手法です。静止状態で高精度な 3 次元形状を撮影することができます。
3. 焦点法
白色干渉
複数の波長をもつ白色光を2方向から照射し、その光路長が完全に同じ場合に光が強く干渉するという特性を利用した計測手法です。白色光をビームスプリッタによって2分割し、一方を対象物に、もう一方を参照ミラーに反射させて、センサーが受光した光の干渉強度から対象物表面の高さ・深さを測定します。
光の波長のオーダーでフォーカス位置を算出することができるため、ナノマイクロメートルレベルの高さ計測が可能です。また、対象物の材質・色を問わず計測できます。
共焦点
共焦点光学系は、コンフォーカル光学系とも呼ばれ、点光源からの光が対物レンズを通過して対象物の表面に反射し、反射光が再度レンズを通過してセンサーで受光します。センサーに入光する直前にピンホールと呼ばれる小さな穴があり、焦点の合う位置で反射した光のみが通過し、検出されることでフォーカス位置を判別します。
コントラストの高い鮮明なデータが取得できます。1回の計測では、広い面積の計測ができないため、主にレーザー顕微鏡などの限られた視野を計測する用途で使用されます。
合焦点
カメラと対象物の距離を少しずつ変動させながら、光学的にフォーカスの合う位置を探索する計測法です。複数枚の画像を撮像し、焦点ぼけの変化を分析することで、3次元形状を復元します。Z軸方向に取り込める範囲が広く、面で計測できるため、焦点法のなかでは高速計測が可能ですが、精度は粗くなります。
本記事は3Dセンサーを製造・販売する株式会社リンクス様に監修を頂きました。
株式会社リンクスの会社概要はこちら