ケルセンとは
ケルセン (英: Kelthane) とは、農薬の主成分として使用されている有機塩素系化合物 (C14H9Cl5O) でしたが、現在は非登録の農薬です。
化学物質名は2.2.2-トリクロロ-1.1-ビス (4-クロロフェニル) エタノール、別名としてジコホール (英: Dicofol) とも呼ばれる物質です。水和剤、乳剤およびその混合剤として加工され、非浸透性の殺ダニ剤として市販されており、ダニの防除に使用されていました。
適用される農作物は、トマトやキュウリなどの野菜類やカンキツやリンゴなどの果樹類、花き類など幅広いです。安全性については、特に指定はありません。
毒性区分は毒物及び劇物に該当しない普通物でしたが、難分解性と高濃縮性があるとされ、環境ホルモン様作用や水生環境への影響についての指摘があります。日本、アメリカ、ヨーロッパ等にて、主要な農作物に対して残留基準が設定されています。
ケルセンの使用用途
ケルセンの主な使用用途は、殺虫剤として害虫の防除です。水で指定倍率に希釈したり、土壌に指定量散布したりして使用します。ただし、使用時期、総使用回数にも制限があるため、確認が必要です。
ケルセンは、ハダニに対して高い防除効果があることが特徴です。ハダニは植物の葉や果実を吸汁する大きさ0.5mmほどの小さな害虫です。小さく目で見つけることが難しいため、発生初期には気づきにくく、被害が大きくなってから発見されることが多くあります。
また、産卵数が多く、非常に繁殖力が強いため防除の対策をしないと爆発的に増殖してしまいます。ハダニの卵期、幼虫期、成虫期に効果があるため、多くの場面で使用可能です。本剤の作用はIRACの作用機構分類ではUN (不明) となっていますが、摂食後に害虫体内でオキソン体に変換されて、中枢神経系におけるコリン作動性シナプスに存在するアセチルコリンエステラーゼの阻害剤として作用します。
すると、興奮性神経伝達物質の1種であるアセチルコリンが分解できなくなり、神経細胞間にアセチルコリンが蓄積して、異常な興奮伝導が生じます。その結果、殺虫効果になると考えられています。
ケルセンの種類
ケルセンは形状によって、次のように分類することができます。
1. ケルセン粉剤
ケルセン粉剤は形状が粉状になっています。粉剤なので水には希釈せず、そのまま土壌に散布して使用します。風の強い日の散布は粉剤がまいあがってしまう可能性があるため、注意が必要です。
2. ケルセン水和剤
ケルセン水和剤はケルセン粉剤と同様、形状が粉状になっています。水和剤なので、水に希釈して農作物に散布して使用します。水に希釈すると、不透明な液体になり、放置すると沈殿ができることが特徴です。
3. ケルセン乳剤
ケルセン乳剤は形状が液体です。水に希釈して農作物に散布して使用します。水に希釈する際に泡立ちが少なく、作業を効率的に行えます。
ケルセンその他情報
使用上の注意点
- ケルセンは平成16年に農薬としての登録失効となり、平成22年以降農薬としての販売中止と使用が禁止されています。現在はメーカーが回収を行なっています。
- 厚生労働省の安全データシートによると、経口による急性毒性や眼に対する重篤な損傷性の可能性があるとしています。そのため、使用時には手袋やマスク、防護メガネを着用し、目や鼻、肌に直接かからないように注意が必要です。
- 可燃性で、引火すると刺激性あるいは有毒なガスを放出します。火が近くにある環境での使用は、厳重な注意が必要です。
- 保管はケルセンの入った容器を、しっかりと密閉し換気の良い場所で保管します。
- ケルセンの製品や容器を廃棄する場合、都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄をしてもらう必要があります。
- 水生環境や周辺環境に影響がでるため、環境中へ流出しないよう注意が必要です。