クロルデンとは
クロルデン (英: Chlordane) とは、有機塩素系化合物です。
単一の化合物ではなく、十数種類の多くの異性体の総称です。クロルデンは農薬、シロアリ駆除用の殺虫剤、木材の防虫剤などに広くもちいられてきましたが、生物に蓄積されやすい難分解性の毒性化合物であることが明らかになったため、現在は農薬としての使用が禁止されています。
クロルデンは、食品に残留する基準値が設定されており、農産物の場合はシス-クロルデンおよびトランス-クロルデン、蓄水産物の場合はシス-クロルデンおよびトランス-クロルデン並びに代謝物であるオキシクロルデンをあわせたクロルデン含量に対して制限があります。
クロルデンの使用用途
クロルデンは、日本では1950年から1986年までイネや野菜の農薬およびシロアリ駆除用の殺虫剤、木材の防虫剤として広く用いられていました。しかし、クロルデンは難分解性の化合物であり、生物内で濃縮され毒性を保ち続けます。そのため、現在はクロルデンの製造・販売・使用は禁止されています。
IRACの作用機構分類において、グループ2Aに分類される農薬成分です。害虫の体内に取り込まれると、抑制性の神経伝達物質であるGABAの受容体に作用して、神経が興奮した状態を作り出すことで痙攣等を生じさせることが、殺虫効果につながると考えられています。
現在、試薬メーカーから販売されているクロルデンは、残留農薬検査のための標準試薬であり、試験研究用途以外での使用は認められていません。化審法に基づき、クロルデンの購入時には試験研究用に使用する確約書の提出が必要です。
クロルデンの性質
化学式 | C10H6Cl8 |
日本語名 | クロルデン |
英語名 | Chlordane |
CAS番号 | 57-74-9 |
分子量 | 409.78 g/mol |
クロルデンは水に不溶で、有機溶剤に混和する性質を有します。クロルデンの別名は工業用クロルデンです。クロルデンは、様々な構造異性体の総称として用いられます。
「クロルデン」と呼ばれる場合は、トランス-クロルデン,シス-クロルデンを含み、さらに「工業用クロルデン」と呼ばれる場合はオキシクロルデン、トランス-ノナクロル、シス-ノナクロルなどの関連物質も含んだ総称として用いられます。
厚生労働省による職場の安全データシートや日本国内の大手試薬メーカーのウェブサイトでは、クロルデンまたは工業用クロルデンの名称が使用されています。製品によって含有する化合物の割合が異なる場合があるので、よく確認してから使用してください。
クロルデンのその他情報
1. クロルデンの有害性および法規制情報
クロルデンは、毒物及び劇物取締法において劇物に指定されています。人体に対する有害性は、経口・経皮摂取での急性毒性、発がん性および生殖毒性のおそれ、中枢神経系への障害です。また、特定標的臓器毒性として、中枢神経系 (単回ばく露) 、肝臓と腎臓 (反復ばく露) が確認されています。
日本だけでなくアメリカやヨーロッパなど世界各国において、クロルデンの食品に残留する基準値が設定されています。農産物の場合はシス-クロルデンおよびトランス-クロルデン、蓄水産物の場合はシス-クロルデンおよびトランス-クロルデン並びに代謝物であるオキシクロルデンをあわせたクロルデン含量に対して制限が設けられました。
2. クロルデンの使用上の注意
クロルデンは、毒物及び劇物取締法において劇物に指定されている化合物です。クロルデンの使用は研究分析用途のみが例外的に認められています。クロルデンを誤って経口または経皮摂取しないように、保護手袋、保護メガネ、保護衣、呼吸用保護具を着用したうえで、よく換気された環境下で取り扱うことが推奨されています。
安全な容器に入れて密閉し、施錠して保管する必要があります。また、クロルデンを購入する際は、試験研究用途に使用する確約書の提出が必要です。
有機溶剤との混和状態での引火や強酸化剤・強塩基剤との接触により分解し、塩素やホスゲン等を含む有毒なフュームを発生させる危険があります。そのため、クロルデンは火元や他の試薬から遠ざけた安全な場所で使用および保管してください。
3. 廃棄処分方法
クロルデンは、生物に対して高い蓄積性を有する難分解性の化合物です。日本ではこれまでに、クロルデンによる魚等の水生生物の汚染が問題になっています。そのため、厚生労働省の公開している安全データシートでは、クロルデンの環境中への流出を避けるよう推奨されています。
クロルデンを廃棄処分する場合は、処理業者等に危険性、有害性を十分告知したうえで、都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者などに委託して適切に処理してください。
参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/12789-03-6.html
https://www.env.go.jp/chemi/anzen/lcms_method/2-5-2.pdf