エンドリン

エンドリンとは

エンドリンの構造

図1. エンドリンの構造

エンドリン (英: Endrin) とは、化学式C12C8Cl6Oで表される有機化合物です。

別名として、1,2,3,4,10,10-ヘキサクロロ-6,7-エポキシ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロ-エンド-1,4-エンド-5,8-ジメタノナフタレンが挙げられます。エンドリンは、主に農薬として野菜や果樹における害虫 (アブラムシやカメムシ等) の駆除をはじめ、殺鼠剤としても使用されていました。日本だけでなく、世界中の農業分野で活躍した有機化合物の1つです。

しかし、エンドリンは環境中に長期間残存し、毒性を発現しつづける残留性有機汚染物資であることが明らかになったため、現在は農薬としての使用が禁止されています。エンドリンは、毒物及び劇物取締法において毒物に指定されているほか、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律によって、使用・輸入および製造における規制がある第1種特定化学物質です。

また、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約によって製造や使用が原則として禁止されています。アメリカやヨーロッパ同様に日本国内においても、食品に残留する基準値が設定されています。

エンドリンの使用用途

エンドリンは、1970年代まで日本国内および各国で農薬や殺鼠剤として多量に使用されていました。しかし、エンドリンは水に溶けにくく脂溶性である性質を持ち、環境中に残留して長期間に渡って毒性を発現し、さらに水生生物の体内で生物濃縮を起こします。

環境に対する毒性が大きいため、現在は日本国内では原則としてエンドリンの使用は禁止されています。海外においても多くの国でエンドリンを規制対象としていますが、現在は残留試験用試薬に使用されています。

エンドリンの性質

化学式 C12H8Cl6O
日本語名 エンドリン
英語名 Endrin
CAS番号 72-20-8
分子量 380.91g/mol
融点/凝固点 226~230℃
沸点または初留点および沸騰範囲 沸点以下245℃で分解する

1. エンドリンの溶解性

エンドリンは、水に溶けにくい性質を持ちます。しかし、アセトン、ベンゼン、キシレンなどの有機溶剤には可溶です。ヘキサンおよび四塩化炭素にもわずかに溶けます。

2. エンドリンの立体異性体

エンドリンの立体異性体構造

図2. エンドリンの立体異性体構造

エンドリンの立体異性体構造 (同じ構造式を持つが原子の立体配置が異なる化合物) はディルドリンです。ディルドリンもまた、残留性有機汚染の1つとして規制対象となっています。

エンドリンのその他情報

1. エンドリンの有害性

エンドリンは、毒物及び劇物取締法によって毒物に指定されている化合物です。安全データシートによると、健康に対する有害性として、急性毒性 (経口と経皮) と特定標的臓器毒性 (単回ばく露: 神経系、肝臓、腎臓、反復ばく露: 神経系、肝臓) が報告されています。

エンドリンを経口または経皮で摂取すると生命の危険があるため、細心の注意が必要です。また、水生生物に対して非常に強い毒性を有しています。脂溶性であるため、水生生物の体内で濃縮される生物濃縮が起こることも確認されており、環境中に放出することがないよう、十分注意したうえで取り扱います。

2. エンドリンの使用上の注意

エンドリンは経皮および経口による急性毒性を有します。そのため、エンドリンを扱う際には、呼吸用保護具、保護手袋、保護メガネ、保護衣の使用が推奨されています。

通常、室温では安定な白色固体です。しかし、加熱によって分解し、塩化水素やホスゲンなどを含む有害で腐食性のガス (フューム) を発生させます。エンドリンが入った瓶が加熱された場合は、瓶内でガスが発生し爆発する危険があります。

火元を近付けたりしないよう、適切な保管場所で保管してください。また、エンドリンは船舶安全法の毒物類・毒物および航空法の毒物類・毒物に指定されており、安全な輸送のために法令を遵守し適切な輸送措置をとる必要があります。

3. 廃棄処分方法

エンドリンは周辺環境に影響を及ぼす毒物であるため、環境中に放出してはいけない化合物として規制されています。エンドリンやエンドリンの付着した容器を廃棄処分する場合は、都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼し、適切に廃棄してください。

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