酢酸イソプロピル

酢酸イソプロピルとは

酢酸イソプロピル (英: Isopropyl acetate) とは、無色透明液体の有機化合物です。

IUPAC名はエタン酸イソプロピル (英: propan-2-yl acetate) 、別名として、酢酸1-メチルエチルエステル (英: 1-Methylethyl acetate) 、2-アセトキシプロパン (英: 2-Acetoxypropane) 、酢酸2-プロピル (英: 2-Propyl acetate) とも呼ばれます。

酢酸イソプロピルの使用用途

1. 溶媒

酢酸イソプロピルは、さまざまな有機溶剤に溶けるため、溶媒として広く利用されています。

  • 接着剤溶剤
    樹脂の溶解や粘度調整に有用。
  • 塗料用・印刷インキ用溶剤
    沸点が低く、樹脂への溶解性が高いため、塗布後の乾燥性に優れる。
  • 有機合成化学実験
    ほとんどの有機溶剤と混和するため、反応溶剤や抽出溶剤、精製溶剤として有用。

2. 香料・フレーバー

ベリーや果実、洋酒系の食品香料や香水の成分として使用されています。希釈すると、リンゴのような甘いフレーバーを持つため、フルーツ系の食品フレーバーとしても使われます。

酢酸イソプロピルの性質

化学式はC5H10O2で表され、分子量は102.13です。CAS番号は108-21-4で登録されています。融点は-73 °C、沸点は89 °Cで、常温で液体です。密度は、0.870〜0.876 g/ml (20℃) です。

揮発性と独特な果実のような芳香を持つ液体で、エタノールアセトン、エーテルなど多くの有機溶媒に溶けやすく、水にはあまり溶けません。水へは、27°Cで4.3g/100 mlの溶解性を示します。

酢酸イソプロピルは4°Cに引火点を持つ、引火性の高い液体です。空気中で鉄と接触すると、徐々に分解して酢酸とイソプロパノールを生成します。また、硝酸などの強酸、強アルカリ、強酸化剤と反応して、火災や爆発を引き起こす可能性があります。

酢酸イソプロピルのその他情報

1. 酢酸イソプロピルの製造法

酢酸イソプロピルは、触媒存在下、酢酸とイソプロパノールを縮合することで生成されます。また、酸性イオン交換樹脂触媒の存在下、プロピレンと酢酸から合成する方法も知られています。

2. 法規情報

酢酸イソプロピルは、以下の国内法令に指定されています。

  • 消防法
    危険物第四類 第一石油類 危険等級Ⅱ
  • 労働安全衛生法
    名称等を表示すべき危険物及び有害物 (法57条、施行令第18条)
    名称等を通知すべき危険物及び有害物 (法第57条の2、施行令第18条の2別表第9) No. 182
    第2種有機溶剤等 (施行令別表第6の2・有機溶剤中毒予防規則第1条第1項第4号)
    作業環境評価基準 (法第65条の2第1項)
    危険物・引火性の物 (施行令別表第1第4号)
  • 危険物船舶運送及び貯蔵規則
    引火性液体類 (危規則第3条危険物告示別表第1)
  • 航空法
    引火性液体 (施行規則第194条危険物告示別表第1)
  • 海洋汚染防止法
    施行令別表第1有害液体物質Z類物質
  • 大気汚染防止法
    揮発性有機化合物に該当する主な物質

3. 取り扱い及び保管上の注意

取り扱い時の対策
強酸化剤は、混触禁止物質です。取り扱い時や保管時に、近くに置かないようにしてください。引火性が高いため、熱や高温のもの、火花、裸火、その他の着火源には近づけないようにしてください。

火災の場合
燃焼すると、一酸化炭素 (CO) や二酸化炭素 (CO2) などの有毒なガスと蒸気を生成することがあります。二酸化炭素 (CO2) 、泡、粉末消火剤、砂などを用いて消火してください。

吸入した場合
吸入すると有害で、呼吸器への刺激のおそれ、眠気やめまいが発生するおそれがあります。必ず、局所排気装置内で使用してください。

吸引してしまった場合は、空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させます。気分が悪い時は、医師の診察を受けてください。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/108-21-4.html
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0116-0480JGHEJP.pdf
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Isopropyl-acetate

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