過酸化カルシウムとは
図1. 過酸化カルシウムの構造
過酸化カルシウム (英: Calcium peroxide) とは、無機化合物の1種で、化学式CaO2で表されるカルシウムの過酸化物です。
過酸化カルシウムは様々な分野で使用されている物質ですが、消防法において危険物第1類の酸化性固体・無機過酸化物に指定されています。また、過酸化カルシウム自体は不燃性の物質ですが、細かく分解された有機物と混合すると爆発する危険があります。
別名には、カルシウムペルオキシド、ペルオキシカルシウム、二酸化カルシウムなどの名称があり、CAS登録番号は1305-79-9です。
過酸化カルシウムの使用用途
過酸化カルシウムの主な使用用途は、殺虫・殺菌剤、土壌改良、ゴム安定剤、酸化剤、ガラス・セメント、石油精製などです。農業分野でよく利用されています。
1. 農業用途
過酸化カルシウムは、土壌や地下水において炭化水素を分解したり、嫌気性生物を抑えて環境を浄化する働きを持つ物質です。集中的な農業の後や洪水などで栄養分や酸素が枯渇した土壌に対して、過酸化カルシウムを用いることで活性化させられます。これは、過酸化マグネシウムと同様の働きです。
また、土壌だけでなく、汚染などにより生存不能となった湖沼や池などにおいて、過酸化カルシウムによって発生させた酸素が、水中の酸素含有量を回復させる可能性があります。
2. それ以外の分野
過酸化カルシウムは、酸と反応して、過酸化水素を発生させるという性質があるため、漂白剤としても使用されている物質です。多くの製紙業界で使われています。
歯科用薬品としての用途もある他、食品用途では、食品添加物として小麦粉の漂白やパンの水分調整剤として使用される場合がある物質です。養殖業では農業用途と同様に水質浄化に使用されます。
過酸化カルシウムの性質
図2. 過酸化カルシウムの化学反応
過酸化カルシウムは、分子量72.076、融点257℃、沸点285℃であり、常温での外観は白色、又は黄色味を帯びた粉末です。臭いはありません。酸化性のある固体です。
水には溶けにくいですが、酸にはよく溶けます。水に触れると酸素を発生しながら加水分解する一方、酸との反応では、過酸化水素を発生させます。275℃で爆発的に分解して、酸素が発生するという報告もあります。密度は2.92g/mL、酸解離定数pKaは12.5です。
過酸化カルシウムの種類
過酸化カルシウムは、主に研究開発用試薬製品として販売されることの多い物質です。容量の種類には、100g、250g、500g、1kgなどがあり、実験室で取り扱いやすい小容量を中心としつつも試薬製品としては比較的大きめの容量まで提供されています。
通常、純度は50-75%程度であり、不純物として水酸化カルシウムを含みます。常温で取り扱い可能な試薬製品です。
過酸化カルシウムのその他情報
1. 過酸化カルシウムの合成
図3. 過酸化カルシウムの生成
過酸化カルシウムは、水酸化カルシウムと過酸化水素との反応によって得ることが可能です。
2. 過酸化カルシウムの有害性
過酸化カルシウムは物理化学的危険性や健康に対する有害性が指摘されている物質です。GHS分類では下記のように分類されています。
- 酸化性固体: 区分2
- 眼に対する重篤な損傷・眼刺激性: 区分1
取り扱いの際は適切な局所排気装置や全体換気を設置し、保護メガネや保護衣などの適切な個人用保護具を着用することが必要です。また、熱から遠ざけ、有機物との混合を避けるための対策を行うことも重要です。
3. 過酸化カルシウムの法規制情報
過酸化カルシウムは前述の有害性のため、法令によって規制を受ける物質です。労働安全衛生法では、危険物・酸化性の物に指定されており、消防法では 第1類酸化性固体、無機過酸化物に指定されています。
船舶安全法や航空法でも指定を受ける物質です。法令を遵守して適切に取り扱うことが必要といえます。
参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1305-79-9.html