イソキサチオンとは
イソキサチオン (C13H16NO4PS) とは、殺虫剤に分類されネキリムシやケムシ類、カイガラムシなど害虫から農作物を守る用途で使用される農薬の成分です。
有機リン系の農薬で、農薬の作用機構による分類ではアセチルコリンエステラーゼ阻害のグループ (1B) に分類されます。イソキサチオンを含む農薬が害虫の体内に取り込まれると、中枢神経系に存在するコリンエステラーゼと結合することによって、その活性が低下します。興奮性神経伝達物質の1種であるアセチルコリンが分解できなくなり、神経細胞間にアセチルコリンが蓄積して、正常な神経伝達機能が阻害されることが殺虫効果となると考えられています。
また、農薬が散布された葉や果実を経口し効果のでる食毒作用と、直接農薬がかかり効果のでる接触毒作用の2つの作用効果が確認されているため、より多くの害虫に効くことが特徴です。安全性については、毒物及び劇物取締法で、劇物に指定されています。
哺乳動物の体内に蓄積しにくいことが確認されています。飲み込んだり吸入すると有害、眼刺激、長期または反復ばく露による神経系障害、ならびに水生生物への強毒性が指摘されています。
アメリカやヨーロッパ同様に日本国内においても、食品に残留する基準値が設定されています。
イソキサチオンの使用用途
イソキサチオンの使用用途は、害虫の防除です。ネキリムシやケムシ類、カイガラムシ、ハエ類、ヨトウムシなど幅広い害虫に登録があり使用ができます。
イソキサチオンを含む農薬の使用方法は大きく分けて2つあります。
1. 農作物に散布する
1つ目は、イソキサチオンを成分とする殺虫剤を、水に希釈して散布する方法です。この方法は害虫の発生初期に使用する場合が多いです。
また、野菜類やミカン、花き類、樹木のカイガラムシやケムシ類、アワノメイガ、ハエ類など多くの農作物と害虫に登録があり、使用できることが特徴になります。
2. 土壌に散布する
2つ目は、イソキサチオンを成分とする殺虫剤を、土壌に散布する方法です。この方法は種の播種時や苗などの定植前に土壌散布または散布した農薬を土壌に混和して使用します。
野菜類のネキリムシやコガネムシ類、タネバエなど地下部を加害する害虫に対して高い効果があります。
イソキサチオンの種類
イソキサチオンは使用する成分量で次のような殺虫剤に分けられ、使用されています。
1. カルホス乳剤
カルホス乳剤は有効成分にイソキサチオンを50.0%含む、液体状の殺虫剤です。水に希釈して使用し、水に希釈すると白色の乳濁色になるのが特徴です。
カルホス乳剤はミカンや花き類、樹木類、シバ、茶などの幅広い農作物のカイガラムシ、コガネムシ類、ケムシ類、ダニ類などに登録があり使用できます。地上部を加害する害虫と地下部を加害する害虫の両方を防除できることと、幅広い農作物と害虫に使用できることが大きな特徴です。
2. カルホス微粒剤
カルホス微粒剤は有効成分にイソキサチオンを3.0%含む、微粒状および粉状の殺虫剤です。粒の大きさは、63~212マイクロメートルとなっています。
カルホス微粒剤は種の播種時または、苗の定植時に土壌に散布して使用します。エダマメやハクサイ、花き類のネキリムシやタネバエに登録があり使用できます。粉剤より粒が大きく、散布時に風による飛散が少ないことが特徴です。
3. カルホス粉剤
カルホス粉剤は有効成分にイソキサチオンを2.0%含む、粉状の殺虫剤です。粒の大きさは45マイクロメートル以下となっています。
カルホス粉剤は微粒剤と同じく、種の播種時または、苗の定植時に土壌に散布して使用します。ダイコンやナバナ類、キュウリ、トマトなどの野菜類や豆類のネキリムシやタネバエに登録があり使用できます。
イソキサチオンその他情報
使用上の注意点
- イソキサチオンを含む農薬には医薬用外劇物の農薬もあるため、取り扱いには十分な注意が必要です。
- 蚕に対して影響があるため、周辺の桑にかからないように注意が必要です。
- 使用時は防護メガネ、手袋、マスクを着用し、目や鼻、肌に直接かからないように注意が必要です。