充電式扇風機

充電式扇風機とは

充電式扇風機とは、屋外や作業現場などに持ち運べる扇風機のことです。

コード式とは異なり持ち運び可能で、電源が近くに無くても使えるのが特徴です。小型から大型まであり、室内だけでなくアウトドアや車中泊などの野外でも活躍します。

最近では、充電式扇風機を内蔵した作業着なども売られており、夏でも上着を着用して作業ができるようになりました。

充電式扇風機の使用用途

充電式扇風機は、以下のような目的で使用されます。

1. 人に当てて体温上昇を防ぐ

人に直接当てて、扇風機として使うことが最も多いです。暑くなった作業現場などで、風を当てることによって、体温上昇を防ぎます。

2. 空調の効率を良くする

扇風機は空調から出た空気を部屋の隅々まで循環させ、空調の効率を良くする目的として使われています。サーキュレーターと比べると効果は劣りますが、電気代の節約にもなります。

充電式扇風機の原理

充電式扇風機は、内蔵されたリチウムイオン電池から得た電力でモーターを駆動します。モーターの力で、羽根を回転させることで、羽根が周りの空気を吸い込み、前方へ風を送り出す仕組みです。

これらの働きにより、周囲の空気を移動させたり、部屋全体の風を循環させたりすることができます。また、モーターの出力を調整すると、風の強さを変えることも可能です。

充電式扇風機の種類

充電式扇風機は、大型のものから手持ち用まで様々な種類があり、使う場所や用途によって選ぶ必要があります。

1. 据え置きタイプ

デスク・テーブル・床など、平らな場所に置いて使うタイプです。充電式のため設置スペースが確保できれば、どこにでも置けて便利です。また、熱がこもりがちなキッチンや脱衣所のスペースでは、空気を循環させるサーキュレーターとしても使用できます。

2. 卓上タイプ

デスクやテーブルに置いて使用するタイプです。軽量かつコンパクトにできているため、持ち運ぶことが多い場合に適しています。設置スペースがあまり必要でないため、デスクやキッチン、寝室などの狭い場所に設置できるのがメリットです。

3. クリップタイプ

テーブルや棚などに挟むだけで使用することができます。車内や脱衣所など、設置スペースの確保が難しい場所での使用に向いています。

4. 手持ちタイプ

コンパクトな形状で携帯するのに便利です。風をあてたい箇所へピンポイントであてることができ、風向も自由に調整できます。ただし、使用中は片手が塞がってしまうため、作業性が悪くなるデメリットがあります。

5. 首掛けタイプ

首にかけて使う小型の扇風機です。暑い季節の外出時に、顔まわりに心地よい風を届けられます。手で持たなくても使用できるため、パソコン作業中や掃除の時に便利です。

一方で、ファンと顔の距離が近いため音が気になったり、髪が巻き込まれたりするトラブルがあることがデメリットです。

充電式扇風機の選び方

充電式扇風機は、下記の点に注意して選ぶ必要があります。

1. デザイン

充電式扇風機は、デザイン性に優れた製品がたくさん販売されています。例えば、電車などで使用するときはスタイリッシュなデザイン、リビングなどでは北欧風などと、使用する場所により選ぶデザインが異なります。

使用目的や場所を考慮し、好みの色やデザインの製品を選ぶことが大切です。

2. 給電方式

充電式扇風機は、一般的にUSB充電や専用の充電アダプターを使用して充電します。USB充電は、USBケーブルを使用し充電器やモバイルバッテリーなどに接続し、内蔵バッテリーを充電します。専用の充電アダプターを使用する場合は、コンセントに接続して充電します。

USB端子にはTypeA・TypeB・TypeCなどがありますが、近年は、多くの製品がTypeCに切り替わっているため、購入するときはTypeCがおすすめです。また、専用のバッテリーを本体に取り付けて使用したり、太陽光パネルを通じ充電する製品もあります。

3. 静音性

扇風機を選ぶときは、静音性は重要なポイントです。静音性の優れたものであれば、電車内やオフィス、寝室でも気兼ねなく使えます。充電式扇風機には、ACモーターとDCモーターを搭載したモデルがあります。

大まかな風量設定しかできないAC扇風機に比べ、DCモーターは、細かく風量調節ができるうえ、静音性に優れているのが特徴です。静音性を重視するのであれば、少し値段は高いですが、DCモーター搭載モデルがおすすめです。

4. 掃除のしやすさ

扇風機は、長く使用すると羽根やカバーなどにほこりがたまりやすいのが難点です。放っておくと風と一緒にほこりが舞い散ってしまうので、定期的にお手入れをする必要があります。

簡単にカバーを取り外し、部品を分解できる製品であれば、隅々まで掃除することができます。

マルチツール

マルチツールとは

マルチツール(英語:Multi-tool、 Multitool)は、下記のように数種類があります。

  1. ナイフやフォーク、スプーン、缶切りなどの機能が付いて1つにまとめられたアイテムです。
  2. ドライバーペンチ、六角レンチ、はさみなどが1つにまとめられたコンパクトな工具です。
  3. 1台の電動工具で、先端工具を取り換えることで「切断」「研削」「剥離」などさまざまな作業ができる工具です。

ここでは主に、上記の3)項について説明します。

マルチツールの使用用途

一般的にマルチツールでできることは大きく分けて「切断」「研削」「剥離」の3種類あります。

これらの異なる作業を、1つの電動工具で先端工具を取り換えることで作業できることが特徴で、作業に必要な先端工具を取り揃えておくことで、複数の工具を準備する必要がありません。

先端工具は、金属、木材、タイルなどさまざまな材料の加工に対応したものがあります。

また、バッテリー式は電源用のコードを必要としないので、小型軽量で可搬性と作業性に優れています。

マルチツールの選び方

マルチツール本体の選定には、下記のようなポイントがあります。

  1. コード式かバッテリー式の違い
    コード式は、主にAC100V電源用で長時間の作業や屋内外で電源が確保できる特定場所での作業に適しています。

    バッテリー式は、屋内外や電源の場所、作業場所などに制約されず作業が行え、取り回しがよく作業性に優れています。

    作業内容や環境に適した電源方式を選定する必要があります。

  2. バッテリーの容量(電圧) ※バッテリー式の場合
    バッテリーの容量は、出力電圧別に「DC 18V」「DC 14.4V」「DC 10.8V」などがあり、電圧が高いものは作業可能な時間も長くなります。必要な作業時間に適した電圧を選定する必要があります。
  3. 付属品
    主な付属品として、切断や研削時に出る削りカスを吸い取る集塵アダプタなどがあり、作業環境に合わせて選定します。

また、先端工具は、加工方法や加工する材料により種類や型式が別れているため、作業に必要な先端工具を準備する必要があります。

例として、以下のような先端工具があります。

  • 切断用
    「カットソー」「ラウンドソー」「ナイフ刃」
  • 研削用
    サンディングディスク
  • 剥離用
    スクレーパ

レンチソケットセット

レンチソケットセットとは

レンチソケットセット(英語:Wrench Socket Set)は、大小さまざまなサイズや複数の種類のソケットレンチ用ソケットをひとまとめに組み合わせて収納された工具です。

組み合わされているソケットの種類には「六角ボルトナット用」「六角穴付きボルト用」「プラスマイナスドライバービット用」があります。また、さまざまなサイズが組み合わされています。ソケットホルダーやケースに収納されていて、利便性が高いものがおすすめです。

種類やサイズによってさまざまな組み合わせがあり、使用する目的や用途に合わせて選定する必要があります。

レンチソケットセットの使用用途

レンチソケットは、ソケットレンチでボルトやナットなどのを締め付け作業をする多くの場面で使用されています。

レンチソケットセットは、種類やサイズごとにまとめられているため、複数の種類やサイズの六角ボルトなどで締め付け、組み立てや取り外し作業をする場合に、ソケットの選択が容易で効率よく作業を行えます。

また、ソケットを種類やサイズ順に整列し毎回同じ位置に収納することで、作業効率がさらに向上します。

レンチソケットセットの選び方

レンチソケットセットの選定には、下記のようなポイントがあります。

  1.  差込角のサイズ
    差込角は、レンチハンドルにソケットを差し込む部分の角穴サイズで、サイズは3種類あり「1/2インチ(12.7mm)」「3/8インチ(9.5mm)」「1/4インチ(6.35mm)」になります。レンチハンドルの差込角サイズに合ったソケットの組み合わせを選定します。
  2.  ソケット溝の種類
    ソケット溝の形状は、一般的に6角、12角などがあり、必ずしもどちらが良いということではありません。

    6角は平面の部分が長く、ボルト、ナットを損傷させにくいという特徴があります。12角はナットに差し込みやすいため、作業が効率的にを行えます。用途に適したソケット溝の組み合わせを選定します。

  3.  プラスマイナスおよび六角のサイズ
    一般のプラスマイナスドライバー、六角レンチなどと同様に複数のサイズがあり、用途に適した組み合わせを選定します。
  4.  ソケットの長さ
    ソケットが短くボルト、ナットまでとどかない場合はロングソケットをボルトが長く突き出しているナット用にはディープロングソケットを使用します。用途に適した組み合わせを選定します。
  5.  材質や表面処理
    ソケットの材質は、一般的に JIS G 4105 クロムモリブデン鋼 SCM435 などが使用されており、メッキや化成処理により耐食性と耐摩耗性を向上させています。あまり締め付け力の高くない用途ではメッキ処理を締め付け力の高い用途では化成処理のものを選定します。

ツールボックス

ツールボックスとは

ツールボックスとは、日本語で言うと工具箱です。

その名の通り、いろいろな工具を収納して保管したり、持ち運んだりするために使います。収納ケースには、金属製のタイプや樹脂製のタイプがあり、使用する環境や工具の重量、大きさなどによって使い分けます。また、多段式のキャビネットになっているツールボックスもあります。

基本的には手持ちするため、重量のあるものは収納できませんが、小物であれば数十点の工具は持ち運び可能です。

ツールボックスの使用用途

ツールボックスは、作業に必要な工具や部品などをまとめて保管できるボックスで、さまざまな使用用途があります。具体的な使用例は、以下のとおりです。

  • 自動車整備工場での、ドライバーやスパナ、ソケットなどの収納
  • 電気製品の修理などで、工具や部品を持ち出すとき
  • 家庭DIY作業や農作業などで使用する道具の収容
  • ネイル道具や、ジュエリーの収納

このように、ツールボックスは一般の方からプロの職人まで幅広く使用されています。

ツールボックスの特徴

ツールボックスは、工具や部品を整理・保管し、取り出しやすくすることで、効率よく作業ができるようになります。耐久性のある素材で作られた箱形のボックスに仕切りやインナートレイ、引き出しなどが備わっており、必要な道具をスピーディーに取り出すことが可能です。

ツールボックスには、取っ手がついているタイプも多く持ち運びが容易で、出張先や移動を頻繁に伴う現場などでの作業で重宝します。また、パーツの種類や大きさに応じ、仕切り板などを移動させ、自由にカスタマイズすることができるのも大きな特徴です。

近年、DIYをする人が増えたこともあり、様々な色やデザインの製品が販売されています。部屋やリビングなどでは、インテリア商品として使用されることもあり、収納目的以外にも用途は幅広いです。

ツールボックスの選び方

ツールボックスを選定する際は、下記のポイントを考慮することが大切です。

1. タイプ

ケースタイプ
ケースタイプは深さがあり、厚みのあるものでも収納できます。トランク型やアタッシュケース型、多段型などがあり、多段型は収納部が階段状になっているため、その分の収納力がアップします。トランク型でも、中の仕切り板次第では、段数を増やして収納力を上げることが可能です。

キャビネットタイプ
キャビネットタイプは、はじめから段数が多数あるため、数多くの工具を収納することができます。仕切り板の設置も簡単で、区画の大きさを自由に変えられるタイプがほとんどです。

ただし、引き出しの厚みは、段数によって変わってきます。段数が多ければ、引き出しは薄くなるので、小さいものしか収納できません。反対に、段数が少なければ1段あたりの厚みは増すので、大きいものでも収納できます。

2. 素材

アルミ製
軽量かつ頑丈な特徴を持つ工具箱です。また錆びにくいため、屋外での作業にも適しています。アルミ特有の高級感漂うデザインの製品も多く、丈夫でスタイリッシュな工具箱を探している方におすすめです。

スチール製
アルミ製と比較すると重みがありますが、丈夫で耐久性に優れている工具箱です。シンプルなデザインの製品が多く、工具箱としてはもちろん、DIYやアウトドア用品、生活道具などの収納に適しています。頑丈で熱や溶剤による劣化が少なく、長期間使用できます。

プラスチック製
軽量で耐久性に優れている特徴を持つ工具箱です。また、他の素材と比べリーズナブルなものが多いのも魅力の1つです。デザインも豊富で、工具の他、雑貨品など様々なアイテムの収納におすすめです。

3. サイズ

ツールボックスは、工具や部品の大きさや形状などに合わせて選ぶ必要があります。デザイン性を重視しすぎると、本来の機能である「収納」がうまくいかない場合があるため注意が必要です。購入する際は、何をどう収納をしたいかをイメージし、内寸を確認したうえで選びます。

パーツケース

パーツケースとは

パーツケース (英: Parts Case) とは、部品や小物を収納するケースもしくはボックスです。

一般的に「パーツボックス」も同義語として使用されます。ポータブル型のものは、アタッシュケースのようにヒンジ付きのフタと持ち運び用の取っ手が付いていて、部品を平置きして収納するケースです。

また、据え置き型はキャビネットに引き出しが数段設置されていて、各引き出しに部品を平置きして収納するケースです。キャビネットにキャスターが付けられ移動しやすい製品もあります。

パーツケースの使用用途

パーツケースは、一般的に工場や現場で使用する小物部品や電気部品を、種類やサイズ、型式別に整理して収納するために使用します。仕分けして収納することで、部品の識別がしやすくなり、誤った部品の使用を防止できます。

その他、クリアケースに趣味の小型模型や釣り具、アクセサリーなどを、見栄えよくきれいに収納することも可能です。また、さまざまな大きさの単体ケースを組み合わせて、多くの種類の部品を収納できる据え置き型は、工場などで部品を整理して収納する場合に多く使用されています。

パーツケースの原理

パーツケースは、ケース内部に仕切り板がついているため、各種パーツを仕分けして収納できます。仕分けて整理整頓されていると、部品の識別がしやすくなり、誤った部品の使用を防止できるのが利点です。

中には、仕切り板の位置を好きなように調整できるものもあります。パーツの量や大きさに応じて、収納スペースをカスタマイズすることにより、使い勝手が良くなります。

パーツケースの種類

パーツケースは、主に以下の3タイプがあります。

1. アタッシュケース型

パーツケースを持ち運んで作業する場合は、取っ手付きのアタッシュケース型が便利です。多少の振動でもフタのロックが外れないのが選ぶポイントです。ポリプロピレンなどの樹脂製のものを選ぶと、軽量で持ち運びが楽になります。ただし、樹脂製のパーツケースは耐久性が弱いものもあります。

持ち運びする環境が過酷な場合は、ポリカーボネートで強度を向上させたものを選ぶと、使い勝手が良いです。また、収納するパーツの種類が多い場合は、ケース内部に仕切り板が多く設置されているものや、仕切り板の位置を細かく変えられるものが適しています。

収納しているパーツのなかで、特定のパーツのみを使用することが多い場合は、仕切りごとに、ひとつひとつ別個のフタが付いたパーツケースを選ぶと良いです。使用するパーツのフタだけをあけて作業できるため、万が一、パーツケースを誤ってひっくり返してしまっても、パーツの散らばりを最小限に抑えられます。

2. ツールボックス型

DIYなどで使用するときは、ツールボックス型のパーツケースを使用すれば、作業性が向上します。上段の仕切り板付きのトレーには、使用頻度が高く、紛失しやすい「ボルト」「ナット」「ワッシャ」「釘」などを収納しておくと便利です。また、電気部品である「圧着端子」「圧着スリーブ」「ねじ」などの収納もおすすめです。

下段には「ドライバー」「レンチ」「ハンマー」などの工具を一緒に保管することで、より利便性を高められます。

3. キャビネット型

自宅や工場、ガレージなど、同じ場所で作業する場合は、引き出しがたくさんあるキャビネット型のパーツケースが適しています。据え置き用の製品は、底面に滑り止めがついていると、なにかの拍子にぶつかったり、地震が起きたりしたときでも、作業台からの落下を防止しやすいです。

パーツケースの背面に壁かけ用の穴があいているタイプもあります。作業スペースを有効活用できるのがメリットです。同じ作業場所でも、作業に応じて移動が必要な場合は、キャスター付きのパーツケースもあります。

引き出しは、透明なクリアケースだと中身が確認しやすく、使い勝手が良いです。本体の素材は、小型のものは樹脂製が多いですが、大型のものはスチール製もあり、耐久性が高くなります。

水晶振動子

水晶振動子とは

水晶振動子

水晶振動子とは一定の周波数で振動する受動素子のことで、ピエゾ素子圧電素子と呼ばれることもあります。元々は天然の水晶が使用されていましたが、需要の増加とともに人工水晶に置き換えられており、二酸化ケイ素チタン酸バリウム、ロッシェル塩などが使われています。

圧電素子は発振回路と組み合わせて携帯電話やテレビ、デジタルカメラなどの家庭用電化製品や自動車や医療機器などの電子機器に内蔵されています。使用する周波数の領域によって水晶振動子の厚みや切り出し方は変えられ、例えば「ATカット」と呼ばれる切り出し方では周波数1~300メガヘルツ、広い温度帯で使用可能な水晶振動子を得ることが可能です。

水晶振動子の原理

圧電結晶とは特定の方向に圧力を加えることで圧力に比例した表面電荷が現れる材料で、圧力に比例して表面電荷が生じる現象のことを圧電効果や圧電現象と呼びます。逆に電圧を加えることで結晶が変形する現象のことを逆圧電効果と呼びます。水晶振動子は文字通り、当初は天然の水晶が用いられていましたが現在は需要の増加に対応するために人工水晶が使われており、二酸化ケイ素やチタン酸カリウム、ロッシェル塩などが使われています。

水晶振動子には電極が取り付けられており、外部から電流が流れます。このとき電流の位相に応じて水晶振動子の表面電荷が変化することで水晶振動子の変形も周期的に起こります。この周期的な形状変化による振動現象を利用しているものが水晶振動子です。

水晶振動子の使用用途

水晶振動子は周波数の変動が少なく安定しているため携帯電話やテレビ、デジタルカメラやパソコンなどのさまざまな家庭用電子機器に用いられているほか、自動車や医療機器などにも組み込まれています。水晶振動子を元にした発振回路はppmオーダーの精度で他の発振回路に比べても非常に高いです。

一般的に利用される水晶振動子は厚みが20マイクロメートルから50マイクロメートルと非常に薄く切り出されています。また、水晶振動子の板面には外部端子や電極との接続のために電極が取り付けられています。なお、水晶振動子に求める機能によって水晶の厚さや切り出し面は変えられています。

水晶振動子の周波数

水晶振動子の周波数は水晶の切り出し方や厚みによって変化し、高い周波数で利用したい場合は水晶を薄く、低い周波数で利用する場合は水晶を厚くします。また、切断する方法によっても周波数は変化し、例えば「ATカット」と呼ばれる手法では1~300メガヘルツの周波数に対応した、広い温度帯で使用可能な水晶振動子を得ることができます。

その他、切り出し角度が異なる「BTカット」と呼ばれるものは7~38メガヘルツの周波数範囲に対応しており、温度にたいする周波数変化の量もATカットに比べて変わります。また、音叉型に屈曲した形状に切り出した水晶振動子では32.768キロヘルツに対応しており、時計に対して使われています。

負荷容量

水晶振動子を回路に組み込む際は回路と水晶振動子の負荷容量をマッチングさせることが必要です。負荷容量とは水晶振動子側から発振回路を見たときに、仮想的な直列での等価な静電容量の値のことです。負荷容量の値に応じて、負荷容量変化に対する周波数変化が異なるため回路を安定化させるには適切な負荷容量の水晶振動子を組み込む必要があります。

なお、実際に水晶振動子を用いる場合は水晶振動子の発振周波数や許容偏差、負荷容量の数値を元に回路で合わせ込みを行います。ただし、実際の回路では様々な要因によって発生する浮遊容量があり、水晶振動子の公称の負荷容量とのズレが生じます。そのため、回路に組み込んだときの発振周波数と標準の負荷容量の発振周波数の差を求めた後、回路の静電容量を微調整して差をゼロに近づけることで調整します。

TCXO

TCXOとは

TCXOとは発振器温度センサーと温度補償回路を付加して,周囲温度の変化による周波数の変化が小さくなるようにした発振器です。

TCXOの使用用途

TCXOは、水晶振動子では実現できない周波数精度を必要とする用途や広い温度範囲で安定した周波数安精度を必要とする用途で使用します。

TCXOの原理

発振回路に温度センサーと温度補償に必要な回路を付加して,周囲温度の変化による周波数の変化が小さくなるように補正します。水晶ベースのTCXOではバリキャップなどの電圧可変コンデンサに温度補償に必要な電圧を印加して周波数を補正します。MEMSベースのTCXOでは温度センサーの情報を元に小数点PLLで温度補償された周波数を出力します。

TCXOには周波数安定度以外にもdf/dT, 耐振動・ショック性能、エージングなど重要なスペックがあり、部品選択にはこれらにも注意して選択する必要があります。

工業炉

工業炉とは

工業炉

工業炉とは鉱石などを非常に高い温度で加熱するための設備であり、一般的には400℃以上で運転されます。代表的な工業炉として鉱石から金属を取り出す製錬工程で使用される高炉が挙げられ、この設備は鉱石と燃料、石灰石を高温で加熱、溶解金属を取り出すために用いられます。

工業炉は用途や用いる燃料、燃焼開始方法によって仕様が異なり、各社で製造ラインや生産量に応じて適切な材質、形状、体積の工業炉を導入しています。特に炉の温度については工業炉の断熱材や壁面の劣化等を防ぐために使用温度における耐熱性が十分確保されたものを選定することが重要です。

工業炉の種類

工業炉は業界や製造する製品によって使用用途、工程が異なるため多種多様です。一般的には400℃以上で運転されますが、工程によってカスタマイズすることが可能で、中には100℃程度の温度帯で使用することもあります。

工業炉の種類としては高炉、転炉、燃焼炉、抵抗炉、誘導加熱炉などが多く利用されており、またガス、液体燃料、電気など燃料の種類によっても分類されます。中でも多く使われる「高炉」は鉱石から金属を取り出す製錬工程で用いられる円筒形の炉で、炉の上部に充填された鉱石や燃料、石灰石などが円筒内を移動する際に加熱、反応して溶解金属やスラグを生成します。高炉は10年以上の連続稼働を前提として設計されており、一度休止すると再稼働には大量のコスト、時間が必要です。

工業炉の構造

工業炉は「熱交換器」「送風機」「燃料制御」「バーナー」「パイロット」「点火装置」「制御回路」「サーモスタット」などの各装置から構成されており、必要な用途や機能によって仕様が変更されます。変更に影響を与える主な要素としては燃料の種類、燃焼開始の方法です。

なお、工業炉の使用温度によっても材質や構造が変わります。例えば生産量や用いる燃料の量、加熱温度に合った材質、体積、形状の工業炉を選定しなければ炉の断熱材の損傷や壁面の劣化など炉の損傷を早めたり、加熱効率が落ちることによる稼働コストの増加に繋がる可能性があります。

工業炉のバーナー

ガスや油などの燃料を用いる工業炉ではバーナーが必要不可欠です。工業炉の可動温度や用途、用いる燃料の種類によってバーナーの種類も異なっており、様々なバーナーが販売されています。

バーナーの熱損失を抑えたものとして、省エネ型バーナーと呼ばれるものが販売されています。省エネ型バーナーの例としてレキュペレイティブバーナーと呼ばれる、熱交換器が一体になったバーナーが挙げられます。通常のバーナーは予熱した空気をバーナーに送る際に配管から放熱してしまいますが、レキュペレイティブバーナーでは配管自体が無いため放熱を防ぐことが可能です。

もう一つの省エネ型バーナーとして、リジェネレイティブバーナーと呼ばれるものがあります。こちらはバーナーと蓄熱部が一体になっており、高い排熱回収率となります。このバーナーには、バーナーと蓄熱部が一体になったバーナーが2組あり、交互に燃焼するツインリジェネ型があり、一方が燃焼している間にもう片方の蓄熱部で空気を予熱することで排熱を効率的に使用することができます。

工業炉の燃料

最近では環境対応やコスト削減の要求に対応するために燃焼によって生じる二酸化炭素の削減も進められており、脱酸素の取り組みの一つとして、低炭素工業炉の開発が行われています。低炭素工業炉の例として、燃焼によって二酸化炭素を生じない水素やアンモニアを用いた工業炉が挙げられます。

一方で水素は燃焼速度が早く温度が高いこと、アンモニアは燃焼速度が遅く温度が低いといった課題があり、まだすべての課題が解決しているわけではありません。天然ガスや都市ガスと異なる設備が必要なため、現在も開発が進められています。

低炭素工業炉は大気汚染物質の削減を目的にした脱炭素の取り組みのひとつです。カーボンニュートラルな社会を目指す仕組みとして、環境省からも情報が発信されています。

水酸化マグネシウム

水酸化マグネシウムとは

水酸化マグネシウムとは、マグネシウムの水酸化物で、化学式Mg(OH)₂で表される無機化合物です。

ブルース石、ブルーサイトなどの鉱物の主成分であり、これらの鉱物の色は名前の通り、うっすらと青みがかった色をしています。しかし、工業製品として販売されている水酸化マグネシウムの外観は、白色の粉末状です。

水酸化マグネシウムの使用用途

1. 環境分野

水酸化マグネシウム粒子の懸濁液 (スラリー) は、廃棄物処理施設や排水処理施設で、排煙脱硫剤や酸性排水の中和剤として利用されています。排煙脱硫、排水処理用途での需要が最も多く、全体の約6割を占めています。

2. 難燃剤

水酸化マグネシウムは、プラスチック樹脂や建材などに添加することで難燃剤としての効果を発揮します。ハロゲン系やリン系の難燃剤と比較して、難燃効果は低いですが、環境負荷の低い難燃剤として利用されています。

3. 食品・医薬分野

水酸化マグネシウムは、人体に対する安全性が確認された化合物の1つであり、食品添加物としてはもちろん、pH調整剤や色調安定剤などの用途にも利用されます。また、医療分野でも制酸剤や下剤として使用されています。

制酸剤としては、胃内の酸性環境下で、水酸化マグネシウムが溶解して、水酸化物イオンを放出します。この水酸化物イオンが胃酸 (塩酸) の水素イオンが中和されることにより効果を発揮します。

下剤としては、マグネシウムイオンは腸管からの吸収が悪いので、浸透圧によって周囲の組織から水分を引き出します。この水分の増加によって便が柔らかくなるだけでなく、腸内で便を膨張させ、腸管運動を活発化させる効果があります。

水酸化マグネシウムの性質

水酸化マグネシウムの分子量は58.34で、比重は2.39、白色の粉末粒子で、水にはほとんど溶けません。アルコールにも不溶ですが、弱酸溶液とアンモニウム塩水溶液には溶解します。水溶液はアルカリ性で、固体は水の存在下で二酸化炭素を吸収してヒドロキシ炭酸塩 (MgCo3・Mg(OH)2) を生成します。

水酸化マグネシウムは、330~430℃で吸熱分解し水分子を放出します。物質の着火・燃焼をこの吸熱反応により遅らせる効果があります。この特性を活かして、難燃性の付与が求められる可燃性の素材 (ゴム、プラスチック、コーティング剤) などに、難燃剤として配合されます。

水酸化マグネシウムのその他情報

水酸化マグネシウムの製造方法

水酸化マグネシウムの製造方法には粉砕法、アルカリ沈殿法、水和法があります。

1. 粉砕法
天然鉱石であるブルーサイト (水滑石) を原料として用います。ブルーサイトを粉砕するだけで、水酸化マグネシウムを容易に得られるため、生産コストを抑えられます。

ただし、原料品質によってマグネサイト、ドロマイト、タルクなど他のマグネシウム化合物が混入して、純度が落ちます。また、産地によっては原料鉱石がアスベストを含有していることもあり、安全性の確認が必要です。

2.アルカリ沈殿法
マグネシウムは、ナトリウムに次いで海水中に多く存在する陽イオンです。そのため、製塩工程で排出される苦汁 (にがり) には、塩化マグネシウムが高濃度で含有されています。

水への溶解度が高い塩化マグネシウムの水溶液にアルカリを加えることで、溶解度の低い水酸化マグネシウムが析出し、これを乾燥、粉砕することで製品化します。

工業的には、アルカリとして消石灰 (水酸化カルシウム) が用いられることが多く、副生物である塩化カルシウムも無毒で処理費用も安価であるため、生産コストを低く保てるのがメリットです。また、アルカリとしてアンモニア水も使用可能で、この場合、生産コストは上昇します。しかし、純度の高い水酸化マグネシウムが得られます。

3. 水和法
マグネサイト (炭酸マグネシウム) を焼成して得たマグネシア (酸化マグネシウム) を、熱水と反応させることで製造します。中国などマグネサイトの産地では、低コストでの生産が可能です。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu1944/75/8/75_8_327/_pdf/-char/ja

トルエン

トルエンとは

トルエンとは、芳香族炭化水素に属する有機化合物の一種で、独特の匂いをもつ無色透明の液体です。

水には極めて溶けにくいですが、アルコールなどの各種有機溶媒と混和するほか、有機物や高分子を溶解させることができるため、合成実験の溶媒、塗料や印刷インキの溶剤などに用いられています。しかし、引火性、有害性が高く、消防法や毒劇法などの法令に該当しています。

そのため、取り扱い時には静電気などの着火源が発生しないようにする、使用時の中毒を防ぐために換気を行うなどの安全対策が重要です。

トルエンの使用用途

トルエンは様々な有機物を溶解させることができるため、多くの合成反応の溶媒として用います。幅広い有機物、高分子を溶解させられるうえ、揮発性も高いため塗料や印刷インキ、油性接着剤の溶剤としても用いられる場合が多いです。

また、石油化学においてトルエンはベンゼンなどと同様に、様々な芳香族化合物の原料となり、例えば安息香酸やトリニトロトルエン、ベンズアルデヒドなどが挙げられます。また、トルエンは、ベンゼンやキシレンなどの他の重要な化学原料を製造する際にも用いられています。

トルエンの化学反応

トルエンの化学反応

図1. トルエンの化学反応

トルエンは、比較的安定している化合物ですが、所定の条件では酸化反応などを起こします。例えば、トルエンは濃硝酸と濃硫酸の混合物を用いることでニトロ化するほか、過マンガン酸カリウムなどの酸化剤を用いることで酸化して安息香酸になります。

その他、高圧下で触媒を作用させることでトルエンは水素化してメチルシクロヘキサンに変換されます。一般的に、このようなトルエンを原料とする反応は大規模な石油化学プラントで用いられるため、長期の安定稼働が重要です。

触媒などの反応で用いる化合物についても長寿命であることが求められており、各社ではコスト削減に向けたプロセス改良、新規触媒設計が検討されています。

トルエンのその他情報

トルエンの安全性

トルエンは様々な業界で溶剤や出発原料として用いられていますが、毒性や引火性を有する化合物です。そのため、使用時には様々な観点からの配慮が必要です。

1. トルエンの引火性
トルエンの引火性

図2. トルエンの引火性

トルエンは消防法上の危険物第4類第一石油類に該当する化合物で、引火点が4.4℃であり、室温で容易に引火する可能性があります。通常の取り扱いでは科学的に安定ですが、強い酸化剤やクロロホルムなどと接すると発火する可能性があるため、混合混触危険に十分な注意が必要です。

また、上記の通りトルエンは引火性が高いため、プロセス中に発生した静電気によって引火する可能性もあります。例えば、タンクやドラムに入ったトルエンをホースで勢いよく流すとトルエン中に静電気が蓄積します。特に、トルエンの流速が大きいとき、容器が樹脂などの非導電性であるとき、アースを取っていないときは静電気による引火リスクが大きいです。

過去の災害事例でトルエンに関する静電気引火事故が多数報告されています。上記の静電気対策を行うとともに、窒素ガスを常に流して酸素を断つなどの対策が求められます。また、トルエンを取り扱う従業員への十分な教育やトルエンが勢いよく流れないようなホースを導入するなどの対策も重要です。

2. トルエンの有害性
トルエンの有害性

図3. トルエンの有害性

トルエンは毒劇法の劇物に該当しており、人体にも有害な化合物です。トルエンには生殖毒性や中枢神経系への毒性が高いことが知られており、何度もばく露されることによる有害性も確認されています。シンナー吸引による中毒がかつて社会問題になりましたが、この中毒の要因もトルエンによるものです。

トルエンは揮発性が高いため、意図的に吸引するつもりがなくとも換気性が悪い場所で使用すると中毒になる危険性があります。例えば、締め切った屋内で長時間トルエンを含む塗料などを使用しているとトルエン中毒になる可能性があります。中毒を避けるため、合成実験でトルエンを溶媒として使用する場合はドラフトを使用する、塗料やインクを使用するときは換気するなどの対策を徹底しなければなりません。

参考文献

https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/108-88-3.html