水酸化マグネシウム

水酸化マグネシウムとは

水酸化マグネシウムとは、マグネシウムの水酸化物で、化学式Mg(OH)₂で表される無機化合物です。

ブルース石、ブルーサイトなどの鉱物の主成分であり、これらの鉱物の色は名前の通り、うっすらと青みがかった色をしています。しかし、工業製品として販売されている水酸化マグネシウムの外観は、白色の粉末状です。

水酸化マグネシウムの使用用途

1. 環境分野

水酸化マグネシウム粒子の懸濁液 (スラリー) は、廃棄物処理施設や排水処理施設で、排煙脱硫剤や酸性排水の中和剤として利用されています。排煙脱硫、排水処理用途での需要が最も多く、全体の約6割を占めています。

2. 難燃剤

水酸化マグネシウムは、プラスチック樹脂や建材などに添加することで難燃剤としての効果を発揮します。ハロゲン系やリン系の難燃剤と比較して、難燃効果は低いですが、環境負荷の低い難燃剤として利用されています。

3. 食品・医薬分野

水酸化マグネシウムは、人体に対する安全性が確認された化合物の1つであり、食品添加物としてはもちろん、pH調整剤や色調安定剤などの用途にも利用されます。また、医療分野でも制酸剤や下剤として使用されています。

制酸剤としては、胃内の酸性環境下で、水酸化マグネシウムが溶解して、水酸化物イオンを放出します。この水酸化物イオンが胃酸 (塩酸) の水素イオンが中和されることにより効果を発揮します。

下剤としては、マグネシウムイオンは腸管からの吸収が悪いので、浸透圧によって周囲の組織から水分を引き出します。この水分の増加によって便が柔らかくなるだけでなく、腸内で便を膨張させ、腸管運動を活発化させる効果があります。

水酸化マグネシウムの性質

水酸化マグネシウムの分子量は58.34で、比重は2.39、白色の粉末粒子で、水にはほとんど溶けません。アルコールにも不溶ですが、弱酸溶液とアンモニウム塩水溶液には溶解します。水溶液はアルカリ性で、固体は水の存在下で二酸化炭素を吸収してヒドロキシ炭酸塩 (MgCo3・Mg(OH)2) を生成します。

水酸化マグネシウムは、330~430℃で吸熱分解し水分子を放出します。物質の着火・燃焼をこの吸熱反応により遅らせる効果があります。この特性を活かして、難燃性の付与が求められる可燃性の素材 (ゴム、プラスチック、コーティング剤) などに、難燃剤として配合されます。

水酸化マグネシウムのその他情報

水酸化マグネシウムの製造方法

水酸化マグネシウムの製造方法には粉砕法、アルカリ沈殿法、水和法があります。

1. 粉砕法
天然鉱石であるブルーサイト (水滑石) を原料として用います。ブルーサイトを粉砕するだけで、水酸化マグネシウムを容易に得られるため、生産コストを抑えられます。

ただし、原料品質によってマグネサイト、ドロマイト、タルクなど他のマグネシウム化合物が混入して、純度が落ちます。また、産地によっては原料鉱石がアスベストを含有していることもあり、安全性の確認が必要です。

2.アルカリ沈殿法
マグネシウムは、ナトリウムに次いで海水中に多く存在する陽イオンです。そのため、製塩工程で排出される苦汁 (にがり) には、塩化マグネシウムが高濃度で含有されています。

水への溶解度が高い塩化マグネシウムの水溶液にアルカリを加えることで、溶解度の低い水酸化マグネシウムが析出し、これを乾燥、粉砕することで製品化します。

工業的には、アルカリとして消石灰 (水酸化カルシウム) が用いられることが多く、副生物である塩化カルシウムも無毒で処理費用も安価であるため、生産コストを低く保てるのがメリットです。また、アルカリとしてアンモニア水も使用可能で、この場合、生産コストは上昇します。しかし、純度の高い水酸化マグネシウムが得られます。

3. 水和法
マグネサイト (炭酸マグネシウム) を焼成して得たマグネシア (酸化マグネシウム) を、熱水と反応させることで製造します。中国などマグネサイトの産地では、低コストでの生産が可能です。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu1944/75/8/75_8_327/_pdf/-char/ja

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