水晶振動子とは
水晶振動子とは一定の周波数で振動する受動素子のことで、ピエゾ素子や圧電素子と呼ばれることもあります。元々は天然の水晶が使用されていましたが、需要の増加とともに人工水晶に置き換えられており、二酸化ケイ素やチタン酸バリウム、ロッシェル塩などが使われています。
圧電素子は発振回路と組み合わせて携帯電話やテレビ、デジタルカメラなどの家庭用電化製品や自動車や医療機器などの電子機器に内蔵されています。使用する周波数の領域によって水晶振動子の厚みや切り出し方は変えられ、例えば「ATカット」と呼ばれる切り出し方では周波数1~300メガヘルツ、広い温度帯で使用可能な水晶振動子を得ることが可能です。
水晶振動子の原理
圧電結晶とは特定の方向に圧力を加えることで圧力に比例した表面電荷が現れる材料で、圧力に比例して表面電荷が生じる現象のことを圧電効果や圧電現象と呼びます。逆に電圧を加えることで結晶が変形する現象のことを逆圧電効果と呼びます。水晶振動子は文字通り、当初は天然の水晶が用いられていましたが現在は需要の増加に対応するために人工水晶が使われており、二酸化ケイ素やチタン酸カリウム、ロッシェル塩などが使われています。
水晶振動子には電極が取り付けられており、外部から電流が流れます。このとき電流の位相に応じて水晶振動子の表面電荷が変化することで水晶振動子の変形も周期的に起こります。この周期的な形状変化による振動現象を利用しているものが水晶振動子です。
水晶振動子の使用用途
水晶振動子は周波数の変動が少なく安定しているため携帯電話やテレビ、デジタルカメラやパソコンなどのさまざまな家庭用電子機器に用いられているほか、自動車や医療機器などにも組み込まれています。水晶振動子を元にした発振回路はppmオーダーの精度で他の発振回路に比べても非常に高いです。
一般的に利用される水晶振動子は厚みが20マイクロメートルから50マイクロメートルと非常に薄く切り出されています。また、水晶振動子の板面には外部端子や電極との接続のために電極が取り付けられています。なお、水晶振動子に求める機能によって水晶の厚さや切り出し面は変えられています。
水晶振動子の周波数
水晶振動子の周波数は水晶の切り出し方や厚みによって変化し、高い周波数で利用したい場合は水晶を薄く、低い周波数で利用する場合は水晶を厚くします。また、切断する方法によっても周波数は変化し、例えば「ATカット」と呼ばれる手法では1~300メガヘルツの周波数に対応した、広い温度帯で使用可能な水晶振動子を得ることができます。
その他、切り出し角度が異なる「BTカット」と呼ばれるものは7~38メガヘルツの周波数範囲に対応しており、温度にたいする周波数変化の量もATカットに比べて変わります。また、音叉型に屈曲した形状に切り出した水晶振動子では32.768キロヘルツに対応しており、時計に対して使われています。
負荷容量
水晶振動子を回路に組み込む際は回路と水晶振動子の負荷容量をマッチングさせることが必要です。負荷容量とは水晶振動子側から発振回路を見たときに、仮想的な直列での等価な静電容量の値のことです。負荷容量の値に応じて、負荷容量変化に対する周波数変化が異なるため回路を安定化させるには適切な負荷容量の水晶振動子を組み込む必要があります。
なお、実際に水晶振動子を用いる場合は水晶振動子の発振周波数や許容偏差、負荷容量の数値を元に回路で合わせ込みを行います。ただし、実際の回路では様々な要因によって発生する浮遊容量があり、水晶振動子の公称の負荷容量とのズレが生じます。そのため、回路に組み込んだときの発振周波数と標準の負荷容量の発振周波数の差を求めた後、回路の静電容量を微調整して差をゼロに近づけることで調整します。