ポリ乳酸繊維

ポリ乳酸繊維とは

ポリ乳酸繊維

ポリ乳酸繊維とは、プラスチックの1種であるポリ乳酸 (PLA) から作られた特殊な繊維のことです。

ポリ乳酸繊維が有する大きな特徴の1つとして、燃焼時に排出されるCO2量が少ないという点が挙げられます。ポリエステル (PET) を燃やすと1トン当り約2,300 kgのCO2が理論上発生しますが、ポリ乳酸は約1,800 kgと低く抑えられるのも特徴です。

また、ポリ乳酸繊維は原料のポリ乳酸と同じく生分解性を有しており、一定の条件下に置くことで微生物により分解されます。ポリエステルやポリプロピレン  (PP) など既存の繊維と比べ、環境負荷の小さいプラスチック繊維です。 

ポリ乳酸繊維の使用用途

ポリ乳酸は、生分解性プラスチックの中では比較的分解が緩やかに進むのが特徴です。土壌中や水中では一般に3年前後形状を保つとされているため、ポリ乳酸からなるポリ乳酸繊維は自然環境で長期間使う農業・園芸資材に用いられます。

また、ポリ乳酸繊維は生分解性だけでなく、光沢性や抗菌性・防炎性などを兼ね備えています。このようにポリ乳酸繊維は、生地としても優れた性質を持っています。衣服やボディタオルといった衣料品も代表的なポリ乳酸繊維製品の1つです。

その他、ホワイトボード用のクリーナーや水耕栽培に用いる培地など、幅広い製品に活用されています。 

ポリ乳酸繊維の原理

前述の通り、ポリ乳酸繊維はほかの生分解性プラスチックに比べて、一般条件下での安定性が高い点が特徴です。この性質は、ポリ乳酸繊維の特殊な分解機構に起因しています。

ポリ乳酸繊維の分解は、1段階ではなく2段階の反応です。まず一段階目の加水分解により、ポリ乳酸の平均分子量が1万~2万ほどになるまで分解されます。こうして分子量が低下すると、微生物による分解が活発に行われるようになり、反応が一気に進んで完全分解に達するという仕組みです。

ポリ乳酸繊維の分解における1段階目の反応は、高温や高湿・アルカリとの接触など環境的な刺激によって引き起こされます。すなわち、ポリ乳酸繊維は上記のような刺激がなければそもそも分解がはじまりにくいため、土壌中や水中での安定性が高いです。

ただし、コンポスト中などのように高温・高湿・アルカリ性と反応を促進させる環境が整っていれば、2~8日程度の短期間で分解できます。屋外での使用に耐えうる十分な安定性を有しながらも、不要になった場合はすぐに処分が可能です。 

ポリ乳酸繊維の種類

1. ステープルファイバー

ポリ乳酸のステープルファイバーは、短い繊維を束ねた形状をしており、その柔軟性と肌触りの良さから、衣料品に広く利用が可能です。特に、夏季用の軽やかな衣料や内衣、Tシャツ、スポーツウェアなどに適しています。ポリ乳酸ステープルファイバーは、天然繊維に近い快適さと高い通気性を提供します。

2. 繊維フィルム

ポリ乳酸の繊維フィルムは、薄くて透明なフィルム状の材料です。耐熱性に優れており食品包装用途でよく利用され、食品の鮮度保持や品質の保護に貢献し、また環境に優しい素材として注目を集めています。ポリ乳酸フィルムは、廃棄後に自然界で生分解するため、プラスチック廃棄物の削減に寄与します。

3. ノンウーブン繊維

ポリ乳酸のノンウーブン繊維は、フェルト状の材料であり、不織布やフィルター、医療用途などに利用されます。その生分解性と高い耐摩耗性により、廃棄物処理にも適した繊維です。

医療用途では、外科手術時の包帯やステリルな包装材料として使用され、繊維の織り方や厚みを調整することで、さまざまな用途に適した製品が生み出されています。

4. コンパウンド繊維

ポリ乳酸のコンパウンド繊維は、他の材料と複合したものであり、特定の性能を向上させることができます。例えば、ポリ乳酸とポリエステルとのブレンドにより、繊維の強度と耐久性を高めることが可能です。

このようなコンパウンド繊維は、自動車産業やスポーツ用品など、高い性能が求められる分野での利用が増えています。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fiber/59/10/59_10_P_329/_pdf
https://www.jcfa.gr.jp/about_kasen/katsuyaku/23.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/senshoshi1960/47/3/47_3_148/_pdf/-char/ja

マイクロメーター

マイクロメーターとは

マイクロメーターとは、測定物をはさみ込み寸法測定をする測定器です。

0.01mm単位での測定が可能ですが、1μm (0.001mm) まで測定できる測定器も一般的です。単純に「マイクロ」と呼ぶ場合もあります。通常マイクロメーターは外側マイクロ(メーター)を指す場合が多いです。内側マイクロ(メーター)、3点式内側マイクロ(メーター)、棒型マイクロ(メーター)、デプスマイクロ(メーター)など、測定物や測定箇所によって種類があり、用途で使い分ける必要があります。

マイクロメーターは測定可能範囲が (0~25mm) や (25~50mm) のように測定可能な長さの範囲が25mm刻みの場合が多く、事前に測定したい物の大まかなサイズの確認が重要です。

マイクロメーターの使用用途

高精度で測定を求められる場面にはノギスではなくマイクロメーターを使う場合が多いです。マイクロメーターの種類により測定できる物が異なり、タイプ別に測定対象を記載します。

1. 外側マイクロ(メーター)

対象の外径や厚みを測定します。

2. 内側マイクロ(メーター)

測定物の内径や溝や穴の幅寸法を測定します。

3. 3点式内側マイクロ(メーター)

内径の測定に用いられます。内側 (内径) で3か所の点で測定するため精度が高いです。

4. 棒型マイクロ(メーター)

大きな円の内径の測定に適しています。

5. デプスマイクロ(メーター)

溝や穴の深さの測定で使用します。

マイクロメーターの原理

マイクロメーターは精密なネジの原理を使用します。ネジを回すことで測定物をはさみ込み、同時にネジの回転角度をネジの移動量に置き換えて測定物の寸法を測定します。ピッチが0.5mmのネジが使用される場合が多く、一回転で移動量は0.5mmです。円周上に50等分した目盛りをふると一目盛りが0.01mm (=0.5/50) の寸法に該当します。副尺を設けると0.001mmの細かさで読み取りが可能です。

マイクロメーターはネジ機構で測定物をはさみ込むため、回す力の大きさで測定値にばらつきが生じます。この影響を受けないように一定の力でネジを回転させる機構が設けられています。ほとんどの場合はラチェットストッパー式です。測定する物をはさみ込んだ際に「カチッ」とクリック感が出る場所まで力をかけて回します。

マイクロメーターの保管時に測定値をゼロ位置にするとネジの機構部に常に応力がかかった状態となり、次の測定時の値に狂いが生じる可能性があり注意が必要です。

マイクロメーターの種類

外側マイクロメーターは標準マイクロメーター、U字型マイクロメーター、球面マイクロメーターに分類され、内側マイクロメーターは棒型内側マイクロメーターや3点式内側マイクロメーターに分けられます。

1. 標準マイクロ(メーター)

円形の対象物を挟み、外形の寸法を測定します。筒状の製品の製造現場でよく用いられます。

2. U字型マイクロ(メーター)

フレームの奥行きが大きいです。鉄板を深く差し込めるため、板厚の測定で使用されます。

3. 球面マイクロ(メーター)

アンビルとスピンドルの表面がいずれも球状です。ピンポイントで寸法を測定でき、位置によって厚さが違う対象物を測定可能です。

4. 棒型内側マイクロ(メーター)

外側マイクロメーターのようなフレームはなく、一本の棒のような形です。ロッドを継ぎ足せば大きい対象物の内径も測定できますが、小さい対象物には適していません。

5. 3点式内側マイクロ(メーター)

3点で計測するため正確です。計測点が増えると内径の変形にも気が付きやすいです。

マイクロメーターの構造

マイクロメーターはアンビル、フレーム、防熱板、スピンドル、クランプ、スリーブ、基準線、シンブル、ラチェットストップで構成されています。対象物をスピンドルとアンビルの間に置いてシンブルを回転させ、両面を密着させて測定します。

参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/products/measure-sys/measurement-selection/type/micrometer.jsp
https://04510.jp/times/articles/-/10661?page=1
http://ms-laboratory.jp/zai/tensile/micro/micro.htm

マスクROM

マスクROMとは

マスクROM

マスクROMとは、半導体工場でメモリーを製造するときにメモリーの内容が決まるROMです。

半導体メモリーには読み出し専用のROM (英: Read Only Memory) と読み書きが可能なRAM (英: Random Access Memory) があり、ROMはマスクROMとプログラマブルROMに分かれています。マスクROMは製造後にメモリーの内容の消去や書き換えができません。

大量生産したときのコストが最も安く、出荷後のプログラムの不正な書き換えを防げますが、開発や製造の期間が長いため製造後の変更は難しいです。 

マスクROMの使用用途

マスクROMは工場から出荷された後はデータの消去、書き込み、書き換えが一切できません。この特徴を利用して組み込み機器の制御プログラム、CPUのマイクロコード、販売用ゲームソフト、漢字フォント、辞書データなどの固定データメモリーとして使われます。

また、格納されているプログラムにバグが見つかっても簡単に修正できないため、修正が必要になった場合はシステム開発段階ではプログラマブルROMを使い、システム完成後にそのデータをメモリー製造工場に送ってマスクROMを製造する方法が一般的です。

マスクROMの原理

マスクROMの構造にはトランジスタを直列接続したNAND型と並列接続したNOR型があります。NAND型は高集積化に優れていて、NOR型は動作速度が速いです。どちらのタイプもトランジスタのゲートに接続された信号線をワードラインといい、ソースに接続された信号線をビットラインといいます。マスクROMは格子状のワードラインとビットラインに接続されたトランジスタ (メモリーセル) の集合体です。

マスクROMへのデータの書き込みは半導体製造工場のウェハ工程で行われます。各トランジスタの内容を1または0に書き込み、一度書き込んだデータは変更されません。

データ読み出しは読み出したいセルが接続されているワードラインの電位をオン状態に、それ以外のワードラインをオフ状態にします。読み出したいセルが接続されているビットラインの電流を検出し、電流が流れたら1、流れなかったら0を読み出します。 

マスクROMの種類

マスクROMのデータの書き込み方法には、拡散方式、コンタクト方式、イオン注入方式があります。

1. 拡散方式

拡散方式はNOR型に適用できる方式で、ウェハ上にデータが1のトランジスタだけを形成し、データが0のトランジスタを作らない方式です。製造工程にかかる時間が長いため、あまり使われません。

2. コンタクト方式

コンタクト方式はNOR型に適用できる方式で、データが0のトランジスタのソースとビットラインを接続させない方式です。ウエハ工程の後半でトランジスタと配線をつなぐコンタクト孔を作るかどうかで決まるため、製造にかかる時間が短いです。

3. イオン注入方式

イオン注入方式はNAND型とNOR型の両方に使える方式です。トランジスタにイオンを注入して動作する閾電圧を変更し、閾電圧が相対的に高いトランジスタには0、低いトランジスタには1が書き込まれます。

マスクROMの選び方

ROMの種別にはマスクROM以外にもEEPROMやフラッシュメモリーがあり、メリットとデメリットを考慮して選択する必要があります。

1. EEPROM

ユーザーが内容を書き換え可能なROMです。読み込みや書き込みに同じ回路や装置を使用でき、特別な操作をせずに何回でも内容を変更可能です。コンピュータの設定情報を記録する場合に補助メモリーとして使用されます。

2. フラッシュメモリー

ユーザーは容易にデータの書き込みと消去ができ、電源を落としても内容を保持可能です。メモリーカードはカード型のフラッシュメモリーです。携帯電話やデジカメなどの記憶媒体として広く使用されています。USBコネクタとフラッシュメモリーを持つUSBメモリーは持ち運びやすく、簡単にデータを保存できます。

3. マスクROMのメリット

フラッシュメモリーやEPROMよりも量産時のコストが低いです。周辺回路やセルの構造が半導体メモリーの中で最もシンプルで、集積度が高いです。

4. マスクROMのデメリット

マスク開発のための初期費用が必要です。マスクの製造に数日~1ヶ月ほど必要で、量産開始までに時間がかかります。記録内容を変える場合にはマスクを作り直すしかなく、バグの修正のようなプログラムのアップデートができません。

参考文献
https://www.cqpub.co.jp/interface/sample/200703/I0703042.pdf
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/memory/memory_what4
http://www2.kobe-u.ac.jp/~tnishida/course/2010/IS/4.memory.pdf
http://www.ritsumei.ac.jp/se/re/fujinolab/FujinolabHP_old/IntroLSI/IntroLSI-11.pdf
https://www.hitachihyoron.com/jp/pdf/1984/07/1984_07_09.pdf

リアクトル

リアクトルとは

リアクトル

リアクトルとは、鉄心に線を巻き付けた電気部品です。

理学的に電磁誘導の性質が利用されています。流れる電流の時間変化率が高くなると自己インダクタンスが高い素子ほど大きな逆起電力を発生させ、リアクトルは高い自己インダクタンスを有しているため系統の電流変化を遅らせます。

リアクトルの構造は簡単で、パワーエレクトロニクスや強電の分野では多く用いられる工業部品の1つです。キャパシタと逆方向の特性を持っているため、リアクトルとキャパシタを組み合わせて潮流制御に用いる場合も多いです。

リアクトルの使用用途

リアクトルの使用用途は主に電力系統制御用と動力機器駆動用に分かれます。

1. 電力系統制御用

電力系統制御用では無効電力の制御等に用いられます。無効電力は電圧に対して電流の位相が異なる際に発生する電力で、実際には消費されない電力です。無効電力は系統の電流を高くして電気設備の容量を無駄に圧迫するため、少ないほど好ましいです。電力系統の負荷はモーターや変圧器である場合が多く、位相が遅れて無効電力が高くなる傾向にあり、一般的に電力用コンデンサを使用します。

ただし夜間等の軽負荷時に電力用コンデンサを使用していた場合には逆に電力系統の位相が進み、需要設備を高電圧で故障させるリスクがあります。リアクトルはこのような進んだ位相を遅らせて正常化する役割を果たします。

また電力用コンデンサは高調波と呼ばれる電流波形の歪みで故障する可能性があり、電流歪みに強いリアクトルを直列に接続して対策可能です。

2. 動力機器駆動用

動力機器駆動用ではリアクトルを直列に接続して電流を制限できる性質を用います。動力機器の励磁突入電流を一時吸収したり、インバータのノイズ除去や力率改善などに使用されます。

リアクトルの原理

リアクトルの構造は極めて簡単で、主要構造部はコイル、内部鉄心、絶縁充填剤の3つで構成されます。

1. コイル

銅線を何重にも巻き付けたものです。架電を掛ける部分で、他の部分と絶縁されている必要があるため、巻いた後の巻線にニスを塗って絶縁を施します。巻線の巻き数や太さでインダクタンス成分が変化します。

2. 内部鉄心

リアクトルのインダクタンス成分を向上させるために巻線の間に挿入します。材料にはケイ素鋼板や電磁鋼板、フェライト等が用いられます。汎用品の材料には比較的安価なケイ素鋼板が多いです。

3. 絶縁充填剤

コイルと鉄心を絶縁する部分です。湿式リアクトルの場合には巻線と鉄心の間に絶縁油を注入して絶縁し、安価で冷却性能に優れますが、引火の危険性があります。近年では有機材料の進歩により、絶縁材料に樹脂等を使用する乾式リアクトルも販売されています。乾式リアクトルは高価ですが、小型軽量かつ難燃性です。

リアクトルの構造

リアクトルは構造や用途で分類されます。

1. 鉄心リアクトル

コアに鉄を入れます。高いインダクタンスが必要な場合に使用されます。

2. 空芯リアクトル

コアを入れないリアクトルです。直線性が良くて損失が生じにくいです。

3. DCリアクトル

インバータの整流回路に入れます。交流を直流に変えたときに生じる位相のずれと高調波の発生を抑制可能です。

4. ACリアクトル

インバータから出力されたPWM信号で生じる高調波を抑えます。

リアクトルの種類

リアクトルは用途別に名称が分けられています。

1. 限流リアクトル

機器を起動したときに流れる突入電流や短絡電流の抑制に使用します。電力系統と直列に接続して機器を保護します。

2. 消弧リアクトル

雷などによって架空送電線が地絡した場合にアーク電流が流れないように設計されています。

3. 補償リアクトル

地中送電線の地絡時にサージ電流が流れないように打ち消します。

4. 分路リアクトル

変電所で交流電源の位相の調整に用います。電力系統と並列に接続して遅れ無効電力を負荷に供給し、進み力率を有する負荷の力率を改善可能です。

リチウムイオン電池

リチウムイオン電池とは

リチウムイオン電池

リチウムイオン電池とは、リチウムイオンが正極と負極の間を移動することで充電、放電を行う二次電池です。

電気自動車や産業用蓄電池、スマートフォン、ノートパソコンに利用されています。鉛蓄電池などと比べ電圧が高く、エネルギーを貯められる活物質の電池中に占める比率が小さいため、同じエネルギー量の電池で比較した場合、大きさを小型にできるというメリットがあります。

電池は充電・放電を繰り返すうちに劣化が進んでいき、いずれは寿命を迎える製品です。リチウムイオン電池も例外ではありませんが、サイクル試験と呼ばれる耐久テストにおいて、ほかの電池より寿命が長いことが確認されています。

リチウムイオン電池の使用用途

リチウムイオン電池が使用される分野として、IT分野や自動車分野、エネルギー分野などが代表的です。リチウムイオン電池はエネルギー密度が高いという優れた特性を持つため、小型・薄型や大容量の電池を製造できます。

携帯電話やノートパソコンなどの用途では電池の小型化・軽量化が求められるため、これらの需要に応えられるリチウムイオン電池が普及しています。また、これらの製品においてリチウムイオン電池が採用されているケースがほとんどです。小型電池であることから、ウェアラブル端末や医療機器などにも用いられています。

また、電気容量の大きさを活かして、電気自動車 (EV) や蓄電システム、社会インフラ向けの中型・大型電池としても利用されています。 主な使用用途の例は以下の通りです。

  • ノートPC・タブレット
  • 小型家電: コードレスの掃除機やアイロンなど
  • モビリティ: 電気自動車(EV) ・電動アシスト自転車・電動バイク
  • データセンタ用・通信用中継基地局などの蓄電モジュール・無停電電源装置
  • IoTセンサー
  • 各種産業機械: 建機・農機・フォークリフト・電動工具・電動カート・エレベーター
  • 医療機器・ヘルスケア用品: リストバンド端末、補聴器、インスリンペンなど
  • ウェアラブル端末: スマートグラス・ワイヤレスイヤホンなど
  • ロボット・人工衛星・潜水艦

リチウムイオン電池の原理

リチウムイオン電池は、セパレーターで仕切られた正極負極間を、リチウムイオン(Li+) が移動することで放電・充電が行われる二次電池です。

1. 放電時

充電が完了した時点では、負極にリチウムイオンが蓄えられている状態です。正極と負極を繋ぐ放電回路を作ると、負極に蓄えられていたリチウムイオンが電解液内を移動して正極に向かいます。正電荷であるリチウムイオンが負極から減少することで、負極はマイナスの電荷を帯び、放電電流が発生します。

2. 充電

充電では、前述の放電と逆のことが起こります。充電電源に接続して放電とは逆の方向に充電電流を流します。これにより、電池内では電子が負極に蓄積し、電子の蓄積による負電荷を相殺するように正電荷であるリチウムイオンが、正極から電解液へ放出されて負極に蓄積されます。

3. リチウムイオン電池の特性

リチウムイオン電池は、現在実用化されている電池の中で最もエネルギー密度が高いという特徴があります。また、リチウムイオン電池の公称電圧は3.6-3.7Vですが、この値はニッケル水素電池1.2Vの約3倍、鉛蓄電池2.1Vの約1.5倍、乾電池1.5Vの約2.5倍です。

電解質の溶媒が水である二次電池は1.5 V以上の電圧がかかると水素と酸素に電気分解してしまう性質がありますが、リチウムイオン電池は有機溶媒を使用しているため、水の電気分解電圧を超える起電力を得ることが可能です。

リチウムイオン電池の構造

リチウムイオン電池の内部構造

図1. リチウムイオン電池の内部構造

リチウムイオン電池は、一般的な蓄電池と同じで、正極、負極およびそれらを浸す電解液から構成されています。

正極と負極は、電子は通さずリチウムイオンを通すセパレータという膜で仕切られ、それぞれの間の空隙は電解液で満たされています。電解液中に存在するリチウムイオンが充電時に正極から負極へ移動することで、負極と正極間に電位差 (電圧) が発生し、これを目的の回路につなぐことで電流として取り出す (放電) ことが可能です。

充電は外部から電圧をかけることで、正極活物質から負極活物質へリチウムイオンを移動させます。充電後は再度放電方向にリチウムイオンが移動できるようになるため、充放電を繰り返し使用することができます。

リチウムイオン電池の種類

リチウムイオン電池は、正極、負極、電解質の材料の組み合わせによって性能が変化するため、多くの種類があります。また、形状も多様なものが製品化されています。

1. 材料の種類による分類

リチウムイオン電池は、負極側は基本的に黒鉛ですが、正極側には様々な種類があります。主なものは下記の通りです。

  • コバルト系リチウムイオン電池 (正極: コバルト酸リチウムなど)
  • NCA系リチウムイオン電池 (正極: ニッケル・コバルト・アルミニウム)
  • ニッケル形リチウムイオン電池 (正極: ニッケル酸リチウムなど)
  • マンガン系リチウムイオン電池 (正極: マンガン酸リチウムなど)
  • チタン酸系リチウムイオン電池 (正極: マンガンなど、負極: チタン酸リチウムなど)
  • 三元系リチウムイオン電池 (正極: ニッケル・マンガン・コバルト (NMC) )
  • リン酸鉄系リチウムイオン電池 (正極: リン酸鉄リチウムなど) 

2. 形状による分類

リチウムイオン電池は、用途によって形状が異なります。

円筒形は、コストが最も低く、同体積あたりの容量が最も高い形状です。ただし、組み合わせるセルが多くなると、隙間ができることによって密度が小さくなる点は注意が必要です。外装缶には、通常鉄が用いられます。

角形のリチウムイオン電池は、外装缶はアルミニウムを用いることが主流です。充放電サイクルを繰り返すことによって膨らむことを考慮して設計されます。ラミネート缶は、形状は同様に角形ですが、金属缶の代わりにラミネートフィルムを使用しています。ラミネート缶では、内部の電解液に液体の他、ゲルの中に電解液を封じ込めたポリマー風のものが用いられることもあります。

リチウムイオン電池の選び方

リチウムイオン電池を選ぶ上での主な指標は、以下の通りです。

  • 電圧: 出力の強さ
  • エネルギー密度: 単位容量あたりに蓄えられるエネルギーの量
  • 充電速度: 急速充電の可否など
  • 使用可能温度
  • 寿命
  • 安全性: 安全規格への適合性、発煙発火の可能性

製品によって様々な特性があるため、自分の用途に合ったものを選択することが必要です。例えば、大型の装置に用いたい場合には高出力が必要なため、電圧の高い電池が好まれます。小型化を図りたい場合はエネルギー密度の高い電池が適切です。

また、長時間に渡る低メンテナンスでの使用を想定する場合は、寿命の長い電池が選択されます。寒冷地での使用の場合は、使用可能温度の下限が低いものが適しています。このように、使用用途に合わせて適切なものを選択することが必要です。

リチウムイオン電池のその他情報

1. 電極材料

リチウムイオン電池の正極活物質

表1. リチウムイオン電池の正極活物質

正極には活物質として、主にコバルト酸リチウム (LCO) などに代表されるリチウム系の酸化物が使われています。正極活物質の種類により、リチウムイオン電池の性能が大きく変わってきます。

また負極の活物質は、人造黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボンなど炭素系が主な材料です。まだ一般的ではありませんが、シリコン (Si) 、スズ (Sn) の合金系材料や、チタン (Ti) 、ニオブ (Nb) などのリチウム酸化物といった材料も使用されています。

2. リチウムイオン電池における放電の反応式

リチウムイオン電池の仕組み

図2. リチウムイオン電池の仕組み

リチウムイオン電池における放電の反応式は金属酸化物の種類などにより異なりますが、一例は下記の通りです。充電時には放電時と逆向き、すなわち右辺から左辺の方向への反応が生じます。

  • 正極側の反応:Li(1-x)MO2 + xLi^(+) + xe^(-) →LiMO2
    ※Mは金属元素
  • 負極側の反応:LixC → C + xLi^(+) + xe^(-)
  • 系全体の反応:Li(1-x)MO2 + LixC → LiMO2 + C

3. リチウムイオン電池の安全性

リチウムイオン電池の異常発熱の原因

図3. リチウムイオン電池の異常発熱の原因

リチウムイオン電池の異常発熱
リチウムイオン電池の電解液には、引火性の高いカーボネート系の有機溶媒が使用されています。そのため、リチウムイオン電池に異常が生じ過度な温度上昇が起こると、発火、爆発の事故を引き起こす恐れがあります。

異常発熱の要因の多くは電極間の短絡 (ショート) によるものです.電極間の短絡は、外部からの強い衝撃によるものや、リチウム金属が電極中に析出すること (リチウムデンドライト) によるものなど様々な要因で起こります。リチウムイオン電池の発火事故は、誤った取り扱いはもちろんのこと、通常の使用でも起こり得るため十分な注意が必要です。

リチウムイオン電池の発火事故を防ぐ方法
リチウムイオン電池が原因の発火事故の大半は誤った使用によるものです。そのため、発火事故を防ぐために、正しい取り扱いを理解しておく必要があります。具体的な注意事項は以下の通りです。

  • 充電を行う際は必ずメーカーが指定する充電器を使用すること。
  • 充電中に異常に気づいた場合はすぐに使用を止めてメーカーや販売元に相談すること。
  • リチウムイオン電池の膨張や異臭が認められる場合は使用を止めて新しいものに交換すること。製品によってはリチウムイオン電池の交換が困難で、推奨されていない製品もあるので無理な分解や交換はしないということも重要です。

また、安全性の保証された製品を選択することも重要です。国の定める安全基準に合格した製品にはPSEマークが表示されており、安全性の目安になります。

参考文献
https://www.mc.showadenko.com/japanese/products/sds/lbattery/006.html
https://www.jsac.or.jp/bunseki/pdf/bunseki2013/201310tokusyu2.pdf
https://www.global.toshiba/jp/products-solutions/battery/scib/product/module/sip/download/batteryschool/episode1.html

レーザービームプリンター

レーザービームプリンターとは

レーザービームプリンター

レーザービームプリンターとは、印刷工程のうち「露光」と呼ばれる工程にレーザービームを用いたプリンターです。

プリンターの印刷方式には大きく分けて上記のレーザービームを利用するタイプとインクをノズルで吹き付けて印刷を行うタイプの2種類があります。レーザービーム方式を採用した製品は後者の製品と比べて購入時のコストが高い反面、印刷スピードが速く大量印刷が可能です。

家庭用プリンターではレーザービームプリンターではなくインクを用いる方式の製品が主流です。 

レーザービームプリンターの使用用途

レーザービームプリンターは印刷スピードが速いです。そのため企業のオフィスなど、大量に印刷物を用意する場所で使われています。テキストや図表を鮮明に印刷でき印字が劣化しにくいため、配布用のプレゼン資料など、読みにくいと問題になる場合に適しています。 

レーザービームプリンターの原理

レーザービームプリンターでの印刷は、帯電、露光、現像、転写、定着の5つの工程で構成されます。静電気とレーザービームを利用し、ドラムを経由して印刷用紙の任意の位置にトナーを移動させます。

1. 帯電

レーザービームプリンターによる印刷ではトナーと呼ばれる粉がインクの役割を果たします。ドラムに静電気を付与してトナーをドラムに移すために準備をします。

2. 露光

静電気を帯びているドラムにレーザービームを当てます。テキストや図表を形成するトナーを移したい部分だけにレーザービームが当てられます。

3. 現像

ドラムのうち露光工程でレーザービームを当てた部分は電圧が低下します。現像工程で帯電状態のトナーを露光後のドラムに接触させると電圧が低い部分だけにトナーを移動可能です。

4. 転写

転写用のローラーを印刷用紙の裏側に当てます。ローラーを用いて印刷用紙にドラムと逆の電荷を付与するとトナーを印刷用紙に引き寄せます。

5. 定着

転写工程ではトナーを移すだけで、まだ印刷用紙上には固定されていません。最後の仕上げとして圧力や熱による処理を施して印刷用紙からトナーが離れないように定着させます。 

レーザービームプリンターの構造

レーザービームプリンターは作像部と用紙搬送部に分けられます。各部の構成は下記の通りです。

  • 作像部
    現像剤、トナー、キャリア、感光体
  • 用紙搬送部
    給紙部、レジスト部、転写部、分離部、搬送部、定着部、排紙部

1. 作像部

  • 現像剤: 感光体上の潜像を可視化する材料です。一般的にはトナーやキャリアで構成されています。
  • トナー: プラスチック粒子に色粒子を付着させた電気性質を有する微粒子です。
  • キャリア: エポキシ樹脂で磁性体をコーティングした微粒子です。
  • 感光体: 明るい場所では導体、暗い場所では絶縁体の性質を持ちます。

2. 用紙搬送部

  • 給紙部: 転写紙を一枚ずつ内部に用紙トレイから送ります。
  • レジスト部: 画像と用紙の先端を合わせるため、転写紙を一度停止してタイミングを合わせます。
  • 転写部: 感光体上の鏡像を転写紙に移します。
  • 分離部: 吸着した転写紙を引きはがします。
  • 搬送部: 転写後の用紙を定着部に運びます。
  • 定着部: 熱や圧力でトナーの樹脂成分を溶着させて定着させます。
  • 排紙部: 分離爪によって定着後の用紙が定着ローラーに巻き付くのを防ぎ、排紙トレイに導きます。

レーザービームプリンターの種類

レーザービームプリンターはモノクロ機とカラー機に分類可能です。

1. モノクロ機

黒トナーだけで印刷するプリンターです。

2. カラー機

一般的に色料の三原色と黒の4色のトナーを使用し、フルカラー印刷が可能です。ロータリー現像方式とタンデム現像方式があります。

ロータリー現像方式は利用するトナー色の数だけ現像部を用いて一つの感光体で済ませる方法で、少量印刷向けです。タンデム現像方式はモノクロ機の作像部全体を色数分持ち、トナーの数だけ感光体を使うため、大量印刷向けです。

参考文献
https://www.brother.co.jp/product/printer/home/magazine/kiji231/index.aspx
https://support.brother.co.jp/j/s/support/html/hl5340d_50dn_jp/ug/html/ug/11-02.html
https://annex.jsap.or.jp/photonics/kogaku/public/38-02-kougakukoubou.pdf

ローラーチェーン

ローラーチェーンとは

ローラーチェーン

ローラーチェーンとは、動力を伝達する要素部品です。

通常スプロケットと組み合わせて使用され、スプロケットとかみ合う部分がローラーになっており、回転自在に取り付けられます。

ローラーチェーンはスプロケットの1つ1つの歯に連続的にローラー部がかみ合い、ベルトのようなすべりが発生しないため非常に伝達効率が高いです。動力を伝達する2つの軸の軸間距離は比較的自由に設定できるため幅広い分野で使用されています。

ローラーチェーンの使用用途

ローラーチェーンは離れた軸間で動力を伝達する用途やアタッチメントを取り付けて物を動かす用途で用いられます。

離れた軸間で動力を伝達する使用例には、ベルトコンベヤの駆動伝達が挙げられます。動力源であるモーターの出力軸とベルトコンベヤの駆動ローラーをローラーチェーンでつないで動力を伝達可能です。同様の用途として自転車の駆動伝達でも使用できます。

また、アタッチメントを取り付けて物を動作させる使用例には回転寿司のコンベヤが挙げられ、アタッチメントに皿を運ぶプレートが取り付けられています。チェーンソーもアタッチメントに刃を取り付けて使用可能です。

ローラーチェーンの原理

ローラーチェーンは隣り合うローラーを任意の数のひょうたん型のプレートでつなぎ合わせています。ローラーの内径部分にはブッシュが入っており、ピンが挿入されて両端のひょうたん型プレートにカシメて固定されています。前後のローラーとの距離はピッチで表され、規格で数値が定められており、ローラーチェーンの周長はピッチの整数倍です。周長を奇数倍にする際にはオフセットリンクが必要です。

ローラーチェーンは金属でできており、強度が高くてスベリも起こらないため大きな動力の伝達にも耐えられます。より大きな動力を伝達する場合にはローラーチェーンを2列や3列に並べた「多列ローラーチェーン」を使用可能です。

使用する際には適度なたるみ (遊び) と給油が必要です。油を嫌う環境や途中で注油が困難な場合には無給油型のローラーチェーンが使われます。材料が自己潤滑性能を持ち、メンテナンスフリーで使用可能です。

ローラーチェーンの構造

ローラーチェーンは内リンクと外リンクを交互に組み合せて連結しています。内リンクは内プレート2枚とブッシュ2個をピンと圧入して結合し、外リンクは外プレート2枚とピン2本を圧入して結合しています。ブッシュの周囲をローラーが自由に回転可能です。

1. プレート

ローラーチェーンにかかる荷重を受け持つ部品です。引張強度、衝撃強度、疲労強度が高いプレートが必要です。

2. ブッシュ

軸受とピンの作用など、部品によって複雑な力を受けます。

3. ローラー

スプロケットにローラーチェーンが噛み込む際に歯面と衝突して衝撃荷重を受けます。ブッシュ面と歯面に挟まれて移動し、摩擦力や圧縮荷重を受けます。

4. ピン

プレートと同じく荷重を受けてプレートを介して曲げ応力やせん断応力を受けます。スプロケットと噛み合うとブッシュの中ですべり運動をします。

ローラーチェーンの種類

ローラーチェーンは強力チェーンや耐環境チェーンなどに分類可能です。

1. 強力チェーン

引張強度、衝撃強度、疲労強度が高いローラーチェーンです。繰り返し衝撃力が激しく掛かる伝動に向いています。

2. 耐環境チェーン

耐水性、耐摩耗性、耐蝕性、防錆性などに優れたローラーチェーンです。例えば特殊コーティングされたローラーチェーンは洗車場や洗浄機などの水が降りかかる環境やトンネルや地下室のような湿度が高い環境で使用可能です。

ステンレスのローラーチェーンは食品工場や化学工場などの耐熱性や耐蝕性が必要な場所での使用に向いています。特殊ニッケルメッキが施された光沢を持つチェーンなどもあり、繊維機械や食品機械の水を弾いて印刷機械や事務機械の汚れを弾きます。

参考文献
http://kousyoudesignco.dip.jp/mecha7.html
http://www.enuma.co.jp/product/industrial/about/rollerchain.html
http://www.kcm.co.jp/pdf/Group_Catalog_Power%20Transmission%20Chain.pdf
http://kikaikumitate.com/post-5437/

引張りコイルばね

引張りコイルばねとは

引張りコイルばね

ばね用の材料をコイル状(つるまき状)に巻いたものをコイルばねと呼びます。コイルばねは「圧縮コイルばね」「引っ張りコイルばね」「捩じりコイルばね」の3つに大別され、中でも引っ張り方向の荷重を受けて働くコイルばねを引張りコイルばねといいます。「引張りばね」「引きばね」と呼ばれることもあります。

ばねの両端にフックが設けられ、フック部をひっかけて使用します。フックは丸型形状の丸フックが一般的に用いられますが、用途や場所に合わせていろいろな形に設計することができます。

引張りコイルばねの使用用途

機器の扉のロック部分や、はかりの内部など常に力をかけておきたい部分には、どのようなところでも使用されます。自転車やバイクのスタンドにも引張りコイルばねが使用されていますが、この用途では少し工夫が見られます。スタンドを開けた時は、スタンドが開く方向に力が働いており、ストッパーで止まっています。逆に、スタンドを閉じたときには、スタンドが閉じる方向に力が働き、やはりストッパーで止まっています。スタンドの回転する支点の位置と、引張りコイルばねの力の作用する位置をうまく取ることで、このような使い方ができます。

引張りコイルばねの原理

引張りコイルばねは、引っ張り方向の荷重を受けて働くばねであるため、コイル部分は密着した状態で巻かれています。密着巻きにするときには、材料の線径よりも小さいピッチでコイリング(コイルを巻くこと)をおこなうため、隣り合うコイル同志は互いに密着させようとする力が働いています。この力を初張力と呼びます。初張力は巻き方次第で強くしたり弱くしたりすることができ、初張力があることが引張りコイルばねの特徴でもあります。また、コイル同志を密着させずに隙間を開けて巻くようにすることで、初張力を0(ゼロ)にすることも可能です。

引張りコイルばねのトラブル事例では、フック部の破損やへたりが多いようです。フックの形状はある程度自由に設計できますが、複雑な形状だと局所的に応力が増大する可能性も有る為、極力シンプルな形が望ましいです。シンプルな形であっても、例えばフックを板金穴にひっかける構成で、ばねがフックを支点にして揺動するような使用方法の場合、揺動の頻度や働いている力が過酷であればフック部が破損することも考えられます。引張りコイルばねを設計する際には、フック部も十分検討することが大切です。

参考文献
https://www.aoi-spring.co.jp/technology/pull/
https://www.aoi-spring.co.jp/technology/senzai/
https://www.fusehatsu.co.jp/product/product-02.html

鉛蓄電池

鉛蓄電池とは

鉛蓄電池

鉛蓄電池とは、電極に二酸化鉛と金属鉛を用いた電池の一種です。電極間を満たす電解液には硫酸を使用しています。鉛蓄電池は、電極に使う鉛が安く、低コストで製造できるため、価格面で優れた電池です。使用電流によらず性能安定性が良好、メモリー効果の影響が少ないなど使い勝手がよく、一般的に広く流通しています。

欠点としては、ほかの二次電池と比較すると小型化・軽量化が難しい点や、硫酸を用いているため破損に注意する必要がある点などが挙げられます。

鉛蓄電池の使用用途

鉛蓄電池は低コストかつ安定性も高いコストパフォーマンスが抜群の電池のため、さまざまな用途で使用されています。とくに普及が進んでいる分野としては、自動車分野や産業分野が代表的です。

鉛蓄電池は単セルで2Vの起電力を有しており、複数つなげることで6、12、24Vにすることができます。また、鉛蓄電池は極板の形状で2種類あり、ペースト式とクラッド式があります。

ペースト式は格子体に鉛化合物が塗り込まれたものを使用しており、電極面積が大きいため大電流を得ることができることから非常用電源や無停電電源装置などに採用されています。自動車に採用されているのもペースト式です。

クラッド式はチューブ状に編み上げ焼き固めたガラス繊維の中に鉛粉を充填したものであり、寿命が長く耐久性に優れていることからフォークリフトのような建設現場の危機のバックアップなどに使用されています。電解液が凍結し電池が破裂する危険性があるため、極寒の地域での使用にはあまり適していません。

鉛蓄電池の原理

鉛蓄電池の放電現象は、以下の反応式(電池式)で表されます。充電を行うときはこの式と逆向きの反応が起こります。

  • 正極における反応
    PbO2+ 4H^(+) +SO4^(2-) + 2e^(-) → PbSO4 + 2H2O
  • 負極における反応
    Pb + SO4^(2-) → PbSO4 + 2e^(-)
  • 系全体での反応
    PbO2 + 2H2SO4 + Pb → 2PbSO4 + 2H2O

鉛蓄電池の原理

図1. 鉛蓄電池の原理

鉛蓄電池では正極側の電極に二酸化鉛(PbO2)、負極側の電極に鉛(Pb)、そして電解液には希硫酸(H2SO4)がそれぞれ用いられています。

放電では、負極側で鉛が硫酸と反応し、酸化されて硫酸鉛(PbSO4)になります。反応時に鉛の電子(e^(-))が放出されて正極側に移動することで、電気が生じるのです。

正極側では電極の二酸化鉛は負極側から送られてきた電子を受け取り、鉛イオンを放出します。鉛イオンは硫酸と反応し、硫酸鉛が生成されます。二酸化鉛中の酸素は電解液中に存在する水素イオン(H^(+))と結びつき、水(H2O)ができます。

温度計

温度計とは

温度計

温度計とは、測定対象の物体の温度を測定できる機器です。一般的に普及している温度計としては、ガラス温度計やバイメタル式温度計、放射温度計などが挙げられます。

ガラス温度計は、ガラス管内に感温液として水銀やアルコールを注入した温度計です。使われているガラスや感温液によって精度に差がありますが、測定対象に合ったタイプを選べば高い精度で測定を実施できます。

バイメタル式温度計は、金属の膨張を利用した接触式温度計の一種です。精度面ではガラス温度計に劣るものの耐久性が高く、安定して温度が測定できます。

放射温度計は物体に直接触れずに測定を行えるタイプの温度計で、製造現場などへの普及が進んでいます。 

温度計の使用用途

温度計には、測定方式や原理などの仕様が異なる複数の種類が存在します。それぞれの特性を活かして、とくに産業分野においてよく利用されています。

たとえば家電製品や電子部品では、温度計によって発熱の検出が可能です。製品試験や点検において異常の発見に利用できるため、目視点検に比べて作業を効率化できます。

また、工場の生産ラインも温度計の代表的な活躍の場です。食品の製造ラインで発酵工程や焙煎工程などの温度管理に活用すれば、品質の維持・向上が容易に行えます。 

温度計の原理

温度計における温度の測定方式は、製品ごとにさまざまです。測定方式としては接触方式のものと非接触方式のものの2種類に大別され、さらにその中でも何を基準にして物体の温度を検知するかにより方式が異なります。

接触方式は、測定対象の固体・液体・気体(ワークと呼ばれます)に温度計の測定部を直接接触させる測定方式です。固体・液体状のワークに対しては熱伝導、気体状のワークに対しては対流を利用して温度を読み取り、測定を行います。こちらの測定方式を採用した温度計は、構造がシンプルで低コストな製品が多いです。

接触方式では、直接接触に伴いワークの熱のロスが生じる可能性があります。この課題が解消されたのが、直接接触なしで温度を測定できる非接触方式です。

非接触方式では固体・液体状のワークからの放射を利用して表面温度を読み取るため、短時間で測定が行えるという特徴があります。ただしワークによって放射率が変わってくるため、正確な温度を測定するには放射率を適切に設定しなければなりません。

参考文献
https://jp.rs-online.com/web/generalDisplay.html?id=ideas-and-advice/temperature-measurement-guide
https://www.japansensor.co.jp/faq/982/index.html
https://www.horiba.com/jp/process-environmental/products-jp/thermometry/use-of-infrared-thermometers/