引張りコイルばねとは
ばね用の材料をコイル状(つるまき状)に巻いたものをコイルばねと呼びます。コイルばねは「圧縮コイルばね」「引っ張りコイルばね」「捩じりコイルばね」の3つに大別され、中でも引っ張り方向の荷重を受けて働くコイルばねを引張りコイルばねといいます。「引張りばね」「引きばね」と呼ばれることもあります。
ばねの両端にフックが設けられ、フック部をひっかけて使用します。フックは丸型形状の丸フックが一般的に用いられますが、用途や場所に合わせていろいろな形に設計することができます。
引張りコイルばねの使用用途
機器の扉のロック部分や、はかりの内部など常に力をかけておきたい部分には、どのようなところでも使用されます。自転車やバイクのスタンドにも引張りコイルばねが使用されていますが、この用途では少し工夫が見られます。スタンドを開けた時は、スタンドが開く方向に力が働いており、ストッパーで止まっています。逆に、スタンドを閉じたときには、スタンドが閉じる方向に力が働き、やはりストッパーで止まっています。スタンドの回転する支点の位置と、引張りコイルばねの力の作用する位置をうまく取ることで、このような使い方ができます。
引張りコイルばねの原理
引張りコイルばねは、引っ張り方向の荷重を受けて働くばねであるため、コイル部分は密着した状態で巻かれています。密着巻きにするときには、材料の線径よりも小さいピッチでコイリング(コイルを巻くこと)をおこなうため、隣り合うコイル同志は互いに密着させようとする力が働いています。この力を初張力と呼びます。初張力は巻き方次第で強くしたり弱くしたりすることができ、初張力があることが引張りコイルばねの特徴でもあります。また、コイル同志を密着させずに隙間を開けて巻くようにすることで、初張力を0(ゼロ)にすることも可能です。
引張りコイルばねのトラブル事例では、フック部の破損やへたりが多いようです。フックの形状はある程度自由に設計できますが、複雑な形状だと局所的に応力が増大する可能性も有る為、極力シンプルな形が望ましいです。シンプルな形であっても、例えばフックを板金穴にひっかける構成で、ばねがフックを支点にして揺動するような使用方法の場合、揺動の頻度や働いている力が過酷であればフック部が破損することも考えられます。引張りコイルばねを設計する際には、フック部も十分検討することが大切です。
参考文献
https://www.aoi-spring.co.jp/technology/pull/
https://www.aoi-spring.co.jp/technology/senzai/
https://www.fusehatsu.co.jp/product/product-02.html