リアクトルとは
リアクトルとは、鉄心に銅線を巻き付けた電気部品です。
理学的に電磁誘導の性質が利用されています。流れる電流の時間変化率が高くなると自己インダクタンスが高い素子ほど大きな逆起電力を発生させ、リアクトルは高い自己インダクタンスを有しているため系統の電流変化を遅らせます。
リアクトルの構造は簡単で、パワーエレクトロニクスや強電の分野では多く用いられる工業部品の1つです。キャパシタと逆方向の特性を持っているため、リアクトルとキャパシタを組み合わせて潮流制御に用いる場合も多いです。
リアクトルの使用用途
リアクトルの使用用途は主に電力系統制御用と動力機器駆動用に分かれます。
1. 電力系統制御用
電力系統制御用では無効電力の制御等に用いられます。無効電力は電圧に対して電流の位相が異なる際に発生する電力で、実際には消費されない電力です。無効電力は系統の電流を高くして電気設備の容量を無駄に圧迫するため、少ないほど好ましいです。電力系統の負荷はモーターや変圧器である場合が多く、位相が遅れて無効電力が高くなる傾向にあり、一般的に電力用コンデンサを使用します。
ただし夜間等の軽負荷時に電力用コンデンサを使用していた場合には逆に電力系統の位相が進み、需要設備を高電圧で故障させるリスクがあります。リアクトルはこのような進んだ位相を遅らせて正常化する役割を果たします。
また電力用コンデンサは高調波と呼ばれる電流波形の歪みで故障する可能性があり、電流歪みに強いリアクトルを直列に接続して対策可能です。
2. 動力機器駆動用
動力機器駆動用ではリアクトルを直列に接続して電流を制限できる性質を用います。動力機器の励磁突入電流を一時吸収したり、インバータのノイズ除去や力率改善などに使用されます。
リアクトルの原理
リアクトルの構造は極めて簡単で、主要構造部はコイル、内部鉄心、絶縁充填剤の3つで構成されます。
1. コイル
銅線を何重にも巻き付けたものです。架電を掛ける部分で、他の部分と絶縁されている必要があるため、巻いた後の巻線にニスを塗って絶縁を施します。巻線の巻き数や太さでインダクタンス成分が変化します。
2. 内部鉄心
リアクトルのインダクタンス成分を向上させるために巻線の間に挿入します。材料にはケイ素鋼板や電磁鋼板、フェライト等が用いられます。汎用品の材料には比較的安価なケイ素鋼板が多いです。
3. 絶縁充填剤
コイルと鉄心を絶縁する部分です。湿式リアクトルの場合には巻線と鉄心の間に絶縁油を注入して絶縁し、安価で冷却性能に優れますが、引火の危険性があります。近年では有機材料の進歩により、絶縁材料に樹脂等を使用する乾式リアクトルも販売されています。乾式リアクトルは高価ですが、小型軽量かつ難燃性です。
リアクトルの構造
リアクトルは構造や用途で分類されます。
1. 鉄心リアクトル
コアに鉄を入れます。高いインダクタンスが必要な場合に使用されます。
2. 空芯リアクトル
コアを入れないリアクトルです。直線性が良くて損失が生じにくいです。
3. DCリアクトル
インバータの整流回路に入れます。交流を直流に変えたときに生じる位相のずれと高調波の発生を抑制可能です。
4. ACリアクトル
インバータから出力されたPWM信号で生じる高調波を抑えます。
リアクトルの種類
リアクトルは用途別に名称が分けられています。
1. 限流リアクトル
機器を起動したときに流れる突入電流や短絡電流の抑制に使用します。電力系統と直列に接続して機器を保護します。
2. 消弧リアクトル
雷などによって架空送電線が地絡した場合にアーク電流が流れないように設計されています。
3. 補償リアクトル
地中送電線の地絡時にサージ電流が流れないように打ち消します。
4. 分路リアクトル
変電所で交流電源の位相の調整に用います。電力系統と並列に接続して遅れ無効電力を負荷に供給し、進み力率を有する負荷の力率を改善可能です。