スタッドボルト

スタッドボルトとは

スタッドボルト

スタッドボルト(英語:Stud Bolt)は、六角ボルトのような頭部がなく、両端がねじ部(オスねじ)の軸部のみのボルトです。一般的に「植込みボルト」、「寸切りボルト」も同義語として使用されています。
片端のねじ部を機械や部品のメスねじ部にねじ込み(植込み)、被固定物を取り付けナットで締め付け固定します。

スタッドボルト

図1. スタッドボルト

下記にスタッドボルトの特徴を示します。

  •  軸方向の引張強度に優れています
  • 繰り返しの組み込み、取り外しが可能です
  • ボルト頭部がないため長尺の加工が容易です

なお、スタッドボルトの規格は JIS B1173 植込みボルト で規定されています。

スタッドボルトの使用用途

スタッドボルトの使用用途は、機械本体と部品の組み立てや、部品同士の固定など、さまざまな場面で使用されています。

機械本体と部品の組み立て固定の身近な例として、自動車のハブとタイヤホイールの取り付け部に使用されています。また部品同士の固定の例としては、フランジ同士の締結に使用されています。スタッドボルトの特徴である、引張強度に優れていることを利用し、高いトルクで締め付けて強い締結力を発揮します。

スタッドボルトと同じような用途で使用するボルトで、ウェルディングスタッド(またはウェルドボルト)があります。ウェルディングスタッドは、メスねじにねじ込むのではなくボルト溶接をして機械や部品などに植込みます。ウェルディングスタッドは、溶接時にひずみが発生することがあり、多少の溶接ひずみでボルトが曲がって取り付いても締結できるように、被固定物のボルト穴径を大きくするなど、製品設計で考慮する必要があります。

スタッドボルトの原理

スタッドボルトのネジ加工は、一般的に転造加工と呼ばれている加工方法で製作されています。転造加工は、スタッドボルト素材をねじ金型で圧力を加えて挟み込み、素材外表面をねじ形状に加工します。切削加工と比較して、生産性に優れて大量生産に適しています。

JIS B1173ではスタッドボルトの呼び方(使用、寸法、材質の表示方法)は、下記のように規定されています。

例: ① JIS B1173 ➁ 4×20 ➂ 4.8 ➄ 並 ⑥ 2種 ➆ 並 ⑧ MFZn H-C
① 規格番号 または 規格名称: 植込みボルト
➁ 呼び径x長さ:M4x20mm長さ
➂ 強度区分:4T
④ 植込み側のピッチ系列:並
➄ 植込み側のねじ種別:2種
⑥ ナット側のピッチ系列:並
➆ 指定事項:電気亜鉛メッキ

スタッドボルトのその他情報

1. スタッドボルトの材質

スタッドボルトの材質は、一般的に合金鋼オーステナイト系ステンレス鋼など比較的強度の高い材質使用されています。

JIS B1173では、JIS B1051 炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質-強度区分を規定したボルト、小ねじ及び植込みボルト-並目ねじ及び細目ねじ で規定された強度区分を選定することで適した材質が決定されます。

雨水が侵入する場所や屋外で長期間風雨にさらされる場所で使用する場合は、耐腐食性の高いオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304、SUS316、SUS316Lなど)が使用されます。また配管内流体が高温の配管用フランジに使用する場合は、流体温度の熱伝導によりスタッドボルトにも熱が加わるため、熱伸びによる熱応力を考慮して JIS G4107 高温用合金鋼ボルト材が使用されます。

オーステナイト系ステンレス鋼は、合金鋼に比べ熱伸び量が大きいため、熱膨張による緩みや熱応力に対して注意が必要になります。また、ステンレス鋼は熱が加わる条件でステンレス鋼スタッドボルトとナットを使用すると、ねじ部がかじりつく可能性があるため、ナットには炭素鋼や合金鋼を使用することで、かじりつかないようにします。

2. スタッドボルトリムーバーとは

スタットボルトリムーバーは、スタッドボルトを取り付け、取り外しする専用の工具のです。スタッドボルトは、ボルトの片端が機械や部品に植込まれていて、ねじ山がつぶれたりボルト自体が折れてしまったり、さらには経年的な劣化摩耗により使用不可となったりする場合があります。この場合はスタッドボルトの交換が必要となります。スタッドボルトの交換には、このスタッドボルトリムーバーを使用することで、確実な緩めや締め付けが可能になります。植込まれているねじ部が機械メスねじと焼き付いている場合や、長期間経過して固着していることが多くあります。その場合は、植込み部周辺をバーナーなどで加熱し緩み易くしたり、浸透ねじ緩め材などを浸透させたりして作業することが必要になります。

スタッドボルトリムーバーを使用する以外に、ナットを2個使用したダブルナットを用いて取り外すことも一般的な方法です。ダブルナットは、2個のナット同士を締め付け固定することでボルト頭付きと同じような状態となり、ナットを回すことでボルトも併せて回すことが加工になります。

シーム溶接機

シーム溶接機とは

シーム溶接機とは、圧接による溶接技術を行うための機械です。

溶接には大きく分けて融接、圧接 ロウ付けの3種類があります。シーム溶接機は、加熱した状態の金属同士に圧力を加えて溶接する溶接機です。

シーム溶接の作業のほとんどは、シーム溶接機によって行われます。溶接技術者の技術力に大きく左右されず、精度の高い溶接をすることができる点も、特徴の一つです。

シーム溶接機の使用用途

シーム溶接機によって製造される溶接製品の代表例は、缶ジュースや缶詰など、中身の気密性が求められる製品です。同じく気密性を活かした使用用途として、燃料タンクの製造も挙げられます。

また、センサーや電子機器をまとめたケースの製作もシーム溶接機の主な使用例です。電子部品の中には、外気を遮断しなければならないものがあります。

例えば、水晶デバイス、半導体やセンサ、アクチュエータを含む電子回路がひとまとめになったMEMS (メムス) などです。気密性が求められる電子部品を覆うためのケースの製造にも、シーム溶接機を使ったシーム溶接が行われます。

自動車においては燃料タンクをはじめ、剛性を高める方法としてもシーム溶接が用いられます。例えば、前後のドアの間に設けられるセンターピラーや車台のメンバーも、シーム溶接が用いられてる部位です。接合が連続的に行われるため、スポット溶接で多くの接点を作るよりも、車体の剛性を高めることができます。

シーム溶接機の原理

シーム溶接機は、電流が流れる2枚のローラー電極同士で、接合する2つの製品を挟み込んで溶接できる構造になっています。2枚のローラー電極の接点で、接合部品を挟んで加圧したまま、電流を流して加熱することによって、接合部分が溶けて接合されます。

連続的に接合して密閉構造にできるのは、ローラーを回転させることによって、連続的に接合されるからです。シーム溶接を行う部品には、ローラーが挟み込むための取り代も必要です。

また、機械は自動運転するために、あらかじめ溶接の速度や電流の大きさなどの設定を行います。シーム溶接では、異なる母材同士の溶接も可能です。ただしその際には、適した接合条件を設定しなければなりません。

シーム溶接機は、電気抵抗による発熱を利用するという点では、スポット溶接同様に、抵抗溶接という接合方法に分類されます。またシーム溶接ではその他の溶接方法と比べると、かなり薄い板材であっても接合することが可能です。

シーム溶接機のその他情報

1. シーム溶接の長所

シーム溶接の長所は大きく分けて以下の3つがあります。

熟練しなくても作業ができる
前述のとおりシーム溶接では、シーム溶接機に条件を設定して作業を行います。よって適切な接合条件さえ設定できれば、作業者の熟練度によらず安定した接合が行えます。

加工前の精度は低くても問題ない
シーム溶接は接合するためのフランジ部分が必要ですが、フランジ部分に高い精度は不要です。フランジ部分は溶接時にローラーに挟み込まれて加圧されるので、接合前に精度が悪くても、密着した接合として仕上げることができます。

安全性が確保された作業ができる
スポット溶接などで生じる閃光や火花の飛び散り (ヒューム:金属が高温により蒸気のような細かい粒子になったもの) も発生しないので、比較的安全な作業として行えます。

2. シーム溶接の短所

シーム溶接を行うためには、シーム溶接機が必要です。シーム溶接機は比較的大きな機械であり、導入するにはある程度の初期投資が求められます。

接合する部品は電気抵抗の熱によって溶かすため、設備を導入する際には、多くの電力が必要となることも考慮する必要があります。

参考文献
https://sanki-seam.com/about/
https://tokusyuko-kakou.com/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjws/77/8/77_718/_pdf

シートシャッタ

シートシャッタとは

シートシャッタ

シートシャッタとは、建物の出入り口に使用されるシャッターのことです。

一般にシャッターと言えばスチール製の物が多いですが、シートシャッタはビニールやポリエルテルなどの樹脂製のシートで作られています。大半のシートシャッタは、電動式で

開閉出来るよう制御が組まれており、工場や倉庫の搬入口として幅広く使われています。

従来のスチール製のシャッターと比べて軽量で、素早く開閉が出来るので、防虫防塵や空調管理などの用途が多いです。

シートシャッタの使用用途

高度な衛生管理を必要とする食品工場や、搬入が頻繁に行われる倉庫などで使用されます。

電動式で開閉を素早く行える特徴があるため、施設内の空調の冷気や暖気を外に逃がさない、虫やほこりなどを施設内に入れにくい、などのメリットがあります。

スチール製のシャッターと比べると金属部品が少なく、錆などで汚れる心配がないため、衛生管理の面でも優れています。食品製造施設向けに、衛生管理の手法であるHACCPに対応したシートシャッタもあります。

シートシャッタの原理

シャッター上部の巻取り部内部に巻取り用のドラムとモーターがあり、操作スイッチやセンサーが発する信号により、ドラムモーターが正転、逆転することでシャッターの上げ下げが行われます。

操作スイッチやプルスイッチを使って手動でシャッターの上げ下げが出来る他、人感センサー車両センサーを使って、人や車両がシャッターの目の前に立った時に、自動で開閉させることも可能です。

カウントダウンモニターなどの付属部品を使って、シャッターが開いてから指定秒数後にシャッターが閉まるように設定時間を設け、自動で閉止することも出来ます。

シャッター横のガイド部分には光電管センサーが内蔵されており、シャッター下降時に人や荷物などの障害物があればそれを検知し、停止することで、巻き込みや挟まれ事故を防止できます。

防虫効果のあるシートを取り付けることも可能で、虫を寄せ付ける紫外線の光をカットすることもできます。

シートシャッタの種類

1. パイプ式

パイプを水平方向に複数配置した方式です。屋外に面した所で耐風性が必要なシャッタに適しています。

両サイドのレール部に高気密ガスケットを付けたり、巻取り部にエアタイトシールを付けるオプションがあり、隙間をふさいで気密性を上げ、防虫防塵効果が大きい仕様です。また防虫仕様もあり、防虫性能がさらに向上します。

2. パイプレス

屋内設置や人の出入りが多い場所に使用されます。

3. エアカーテン連動型

シートシャッタの巻取りボックスの前にエアカーテンを設置して、シートシャッタに連動してエアカーテンが作動するものです。内部からの空気の移動を最小限にします。

シートシャッタの特長

1. 高速開閉

スチール製シャッターの15倍以上、2~3m/sの速度で開閉することが可能です。通行者の待機時間を最小限にし、作業効率を高めて物流を加速させます。また、空気の流出入を大幅に抑えてエネルギー効率を高めます。

2. 耐風性

耐風性能に優れ、悪天候下でも動作が確実です。特に、パイプ式のシートシャッタは強風や気圧差が大きい開口部に適しています。シャッターの両端のレールから抜けにくい構造により、耐風性の向上を図っています。

3. 防虫効果

食品への異物混入問題の多くは虫が原因です。防虫用のシートは虫を誘引しにくいオレンジ色を使用することで、建物内部への虫の侵入を予防できます。

4. 気密性

高気密設計を備えたものは、気密ガスケットがシャッターの両側のレール部分や巻取り部の隙間を密閉し、大きな防虫防塵効果が得られます。

5. 安全性

光電管センサーにより、人体・物品への危害の防止が可能です。高精度のオプションとして、赤外線センサーもあります。

6. 長寿命・低騒音

信頼性の高い部品を使用し、多くの場合数十万回以上の開閉を想定した耐久設計基準が設けられています。シャッターとレールとの間の接触面を小さくすることで、騒音を下げ、耐久性を上げることが可能です。

参考文献
https://www.ybk.co.jp/pdf/1091-01_monban.pdf
https://www.touhou-curtain.com/maintenance/maintenance_ss_1.html

シンワッシャー

シンワッシャーとは

シンワッシャーとはネジの一種です。パンワッシャーネジと同様、ネジの頭にツバが付いており、鉄板や木材などの母材に打ち込んだ際、ワッシャーを入れなくとも母材を確実に抑えつけ、しっかりとした保持力を発揮することが出来ます。
   
トラスネジ、パンワッシャーネジと比べるとネジの頭がより平たくなっているのが大きな特徴です。
   
建築物のサイディング工事などで断熱パネルを取り付ける際などに使われています。

シンワッシャーの使用用途

主に機械部品のカバーや建築物の外壁など、薄い板状の材料を母材に固定する際に使われます。
     
ネジ部分の先端がドリル状になっているドリリングビスやネジ山が粗いタッピングビスの形状になっているものが多く、母材に雌ネジやタップ加工がされてなくても電動ドライバーなどを使って母材に打ち込むことが出来ます。
     
タッピングビスの場合は電動ドリルなどで下穴を開けた上で母材に打ち込みますが、ドリリングビスの場合は下穴を開けずにそのまま母材に打ち込むことが可能です。

シンワッシャーの原理

シンワッシャーはトラスネジやパンワッシャーネジと比べて、ネジの頭部分がより平たい形状になっており、金属製サイディング工事で断熱サンドイッチパネルを取り付ける際やアルミサッシをC型鋼に打ち込む場合など、ネジの頭部分をなるべくフラットに仕上げたいときに活躍します。
   
ネジの頭をフラットに仕上げるという用途で言うと、皿頭のネジも同じ性質を持っていますが、シンワッシャーネジの場合、ネジ頭にツバが付いているので、皿頭のネジよりも母材をより強力に押さえつけ、保持力を発揮してくれるという特徴があります。
   
ドリリングビスやタッピングビスなど母材に直接打ち込むタイプのネジに共通する性質ですが、ある程度の重さを持つ鉄板などを固定するのには不向きなので、シンワッシャーのネジはあくまで薄い板状の物を固定する際に使用するのがベストです。
   
屋外で使用する際はネジと母材の間で隙間が生じ、雨漏りの原因になる場合もあるので、防止策としてコーキング処理を施されることもあります。

参考文献

https://www.qp-seira.jp/doril/#doril05

http://www.drill-neji.com/tokutyo.htm

シリンジフィルタ

シリンジフィルタとは

シリンジフィルタ

図1. シリンジフィルタ

シリンジフィルタとは、シリンジの先端に取り付けて使用するディスク型のフィルタです。

液体試料から微粒子状の不純物を取り除くために用いられます。シリンジフィルタをシリンジの先端に取り付けると、溶液が押し出される際にフィルタを通過し、不溶物が取り除かれる仕組みです。

フィルタ部分の材質は、PTFE (ポリテトラフルオロエチレン) やPVDF (ポリフッ化ビニリデン) 等です。溶媒や除去対象の特性を考慮して使い分けます。様々な大きさの孔があるため、除去する粒子の大きさによって最適なフィルタを選択する必要があります。シリンジフィルタは、通常使い捨てで使用されます。

シリンジフィルタの使用用途

シリンジフィルタの主な用途は、試料の精製、各種分析試料の前処理等があります。主な分析手法は、HPLC、イオンクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、ICPおよび溶出試験等です。また、水溶液や有機溶媒中の細かな不純物を除去する一般的なろ過の際にも使用されます。

その他、フィルタの孔径より小さい細菌をろ過によって除去する、ろ過滅菌という用途でも用います。この場合は、適応する滅菌フィルタを使用することが必要です。

シリンジフィルタ自体はメンブレンフィルタと同様にそれほど大きくなく、表面でしか粒子を捕獲できません。多量の不溶物がある場合には、予め別の前処理を行い、不溶物の大半を取り除いておく必要があります。

シリンジフィルタの原理

シリンジフィルタの仕組み

図2. シリンジフィルタの仕組み

シリンジフィルタは、ディスク状のフィルタがプラスチックのケースに入った形状です。このプラスチックケースの両端には穴の空いた突起があり、片側にシリンジを取り付けてシリンジのプランジャを押下すると、溶液がフィルタを通ってもう一方の突起から流れ出てきます。溶液がフィルタ内を通過する際、フィルタの孔径よりも大きな粒子は遮られるので、不溶物が取り除かれる仕組みです。

フィルタの孔径は様々な大きさものがあります。製品に記載されている最大孔径以上の粒子をフィルタの表面で捕捉することが可能です。一方で、多量の不溶物によって孔が目詰まりすることもあるので、不溶物の種類、量、粒子径などを確認の上、適切なフィルタを用いる必要があります。

シリンジフィルタの種類

シリンジフィルタの種類は、材質や滅菌性の有無、孔径等の観点から分類することができます。

1. 材質

代表的なシリンジフィルタの材質には、下記のものがあります。

  • PTFE (ポリテトラフルオロエチレン)
  • PVDF (ポリフッ化ビニリデン)
  • PES (ポリエーテルスルホン)

PTFEやPVDFは疎水性素材ですが、中には表面を親水化処理することで極性溶媒、無極性溶媒など幅広く適用適用可能とした製品もあります。

2. 滅菌/非滅菌

シリンジフィルタの種類には、滅菌/非滅菌もあります。非滅菌シリンジフィルターの用途は、一般的なろ過およびサンプルの精製です。

一方、滅菌シリンジフィルタは溶液の滅菌または滅菌溶液の清澄化のために使用します。一般的な細菌は1~5 μm程度の大きさであるため、孔径0.22μmのフィルタでろ過滅菌を行うことが十分可能です。

ただし、マイコプラズマ属の中には大きさが0.2μm程度のものが存在します。マイコプラズマ属の細菌の除去を目的とする場合、フィルター孔径が0.1μmのものを選択することが必要です。マイコプラズマ属の細菌は、真核生物の細胞に寄生し、細胞培養に影響を与えます。そのため、マイコプラズマ陰性が必須となる細胞培養実験では留意しなければなりません。

3. 孔径

粒子除去サイズの違い

図3. 除去粒子サイズの違い

シリンジフィルタの孔径と用途には、主に下記のようなものがあります。

  • 0.1μm: マイコプラズマ除去
    試薬や培地からのマイコプラズマ除去に使用されます。マイコプラズマ属は真核生物に寄生するため、細胞を用いる試験はマイコプラズマ陰性が必要条件です。細胞サイズが0.2〜0.3μm程度で、細胞壁がなく不定形なマイコプラズマは一般的な滅菌用フィルター (孔径0.22μm) を通過するため、この種類を用いる必要があります。
  • 0.22μm: 分析サンプル前処理・ろ過滅菌
    UPLC等の微細充填剤を使用する分析機器用の、サンプルの前処理に使われます。滅菌用途の場合は滅菌フィルタを用います。
  • 0.45 μm: 分析試料前処理
    HPLC 用試料などの一般的な分析前処理に使用します。
  • 0.8 μm: 除粒子
    薬剤中のアンプル片など、比較的大きな夾雑物の除去用途で使用します。

参考文献
https://m-hub.jp/analysis/4230/256
https://www.chem-agilent.com/contents.php?id=1002554

シリコンチューブ

シリコンチューブとは

シリコンチューブ

シリコンチューブとは、シリコーンゴムを主成分とするチューブ状に加工された製品です。

様々な長さ、口径のものが市販されており、目的や用途に合わせて、柔軟に使用することができます。

シリコーンゴムは、ケイ素ゴムともいわれ、有機ケイ素化合物ポリマーの一種です。結合エネルギーの大きなシロキサン結合(-Si-O-Si-)を主骨格としているので、

結合が切れにくく、耐熱性や耐薬品性、電気絶縁性などに優れた性質を示します。これらの性質を利用して、薬品の移送や保護カバーなどに使用されます。

シリコンチューブの使用用途

シリコンチューブは耐薬品性に優れており、プラスチックでは腐食してしまうような薬品、燃料などの移送に使用されます。

また、様々な化学薬品を使用する必要のある研究開発や品質管理、分析、検査の分野では頻繁に使用されています。

シリコンチューブには耐熱性にも優れており、温水器、浴槽用のホースに使用されています。

また、電気絶縁性を有しているので、家電や電線などの絶縁や保護カバー用途として使用されています。

シリコンチューブの特徴

シリコンチューブはシリコーンゴムを主成分とした材料をチューブ状に加工した製品です。

シリコンとはケイ素の英語名(英語: silicon)であり、本元素は原子番号14、元素記号Siの非金属元素で、地殻中に多く含まれる元素の1つです。

一般的にシリコーンゴムは有機ケイ素化合物であるジメチルポリシロキサンの高重合体を原料として製造されます(図2)。

シロキサン結合(-Si-O-Si-)を主骨格とし、側鎖にメチル基などの置換基が結合した構造をしています。

このシロキサン結合は他の結合、例えばC-C結合と比較して大きい結合エネルギーを有しているため、一般的な有機ポリマーよりも化学的に安定であり、それが耐熱性などの物性として現れています。

ジメチルポリシロキサンの構造

図1. ジメチルポリシロキサンの構造

シリコンチューブは耐熱性、耐薬品性、耐油性、耐水性、電気絶縁性、耐候性などに優れています。他の物質と化学反応しにくいので、薬品の送液チューブや分析装置用チューブとして使用されます。

また、無味無臭で安全なため、食品移送用チューブとしても使うことができます。熱にも強いので、高温になる箇所のパッキンや保護カバー用にも使えますが、高温になりすぎると劣化し、破断してしまうので、耐熱温度を考慮して使用する必要があります。

シリコンチューブのその他情報

シリコンとシリコーンの違い

シリコンとシリコーンの違い

図2. シリコンとシリコーンの違い

シリコン(silicon)とは、ケイ素元素そのもの意味します。一方でシリコーン(silicone)とは、有機ケイ素化合物の重合体のうち、シリコーンゴム、シリコーン樹脂、シリコーン油などを総じてこのように呼びます。

つまり、これらの両化合物は全くの別物であり、注意が必要です。ただし、この2つの言葉は混同されて使われるケースも多いのが現状であり、「シリコンチューブ」という用法もこれにあてはまります。

参考文献
https://www.silicone.jp/catalog/pdf/rubber_j.pdf
https://kinokikou.jp/info/knowledge/silicone/

シムプレート

シムプレートとは

シムプレート(英語: Shim plat)とは、部品と部品または部品と設備・設置場所の間に挟み込み、相互間の位置・レベル・間隔を調整するための部品です。

シムプレートの種類

シムプレートの種類

図1. シムプレートの種類

シムプレートは「シム」の一種で、プレート型の「シムプレート(シム板)、リング型シムの「シムリング」、薄いテープ状の金属シートなどがあります。

1. シムプレート

シムプレートは、プレートの形状、取り付け方法、材質や特定使用用途などによって、さまざまな種類があります。代表的なシムプレートは、ベース用シムプレートで穴あけされた矩形状のプレートで、プレートの大きさ、厚み、穴数や材質により分類されます。また穴ではなくスロット(溝)状に切り欠かれたものもあります。

複数回の取り付け・取り外しを容易にした、プレート形状アライメントシムがあり、工具などを引っ掛ける鍔と穴があります。また、ラミネートタイプ(積層剥離式)は、あらかじめ薄い同板厚のプレートが接着剤で複数枚重ね合わされており、1枚ごとに剥離して使用することで、自在に板厚が調整でき、実物の隙間や高さに合わせて容易に使用することができます。

寸法は、あらかじめ一般的に使用される外形・穴径のものと、寸法をオーダーするものがあります。特にシムプレートと用途として重要な板厚は、t0.005~t6.0mmなどさまざまな種類があります。材質は、一般的にオーステナイト系ステンレス鋼 SUS304になり、その他では鉄系のSPCC,SPHC、真鍮のC2680P,C2801P、アルミニウム板材やPET樹脂などがあります。

2. シムリング

リング型のシムリングは、穴あけされたリング形状とC字型スリット形状、材質などによって分類されます。シムリングは特定使用用途があり、ベアリングの内・外輪用やフランジ用などがあります。

寸法はシムプレートと同様に、あらかじめ一般的に使用される外径・穴径のものと、寸法をオーダーするものがあります。板厚もベアリング用は、ベアリング型式に適用した寸法になります。材質は、一般的にオーステナイト系ステンレス鋼 SUS304になります。

3. テープ状

一般的な粘着テープのようにロール状に、薄い金属テープが巻かれたものです。自由な長さにかっとして使用できることが特徴です。「シムテープ」と呼ばれることもあります。寸法は、主にテープ幅と板厚による種類があります。材質は、SUS304、真鍮などがあります。

シムプレートの使用用途

シムプレートの使用用途は、機械部品間の高さや位置の調整に使用されています。

1. シムプレート

シムプレートの一種で、ベース用シムプレートの使用例として、ファン(送風機)のモーターのレベル(高さ方向)調整があります。下図の図2 シムプレート使用例を参照してください。(図は2つ溝のベース用シムプレートになります)

モーターは脚付き型でベースの上に設置され、モーターの出力軸はカップリングを介してファンに接続されています。ベースは、モーターとファンの位置関係が適切になるように設計・製作されていますが、現実的には加工・製作精度などによりずれが生じます。

この場合は、モーターの左右方向はモーターの位置で調整できますが、上下方向に隙間がある場合、このままでは調整はできません。その際にシムプレートを隙間に挟み込み、モーターの高さを調整します。板厚の異なる複数枚を組み合わせて使用することで、精細な調整が可能になります。

シムプレートの使用例

図2. シムプレートの使用例(1)

2. ベアリング用シムリング

シムリングの一種で、ベアリング用シムリングは、名前の通りベアリング用に特化されたシムリングで、ベアリング外輪用と内輪用があります。ベアリングの位置を調整するために使用します。下記の図3 シムリング使用例を参照してください。

シムリング内輪用の板厚や枚数を調整することで、ベベルギア(かさ歯車)の軸方向位置が変化します。これにより相手合側のベベルギアとの噛み合いを精密に調整することができます。

シムプレートの使用例

図3. シムプレートの使用例(2)

3. テープ状

テープ状もシートがロールに巻き付けられていて、引き出して自由長さ切断して使用します。大きさ・形状や板厚などに自由度があるため、汎用性があります。

4. ラミネートタイプ(積層剥離式)

ラミネートタイプ(積層剥離式)は、シムプレートで説明したように積層され1枚になっているため、1枚ずつ剥離して使用することで、必要な板厚に自由度があります。

特長としては、設計時にシムプレートの板厚や枚数を正確に検討する必要がなく、ラミネートタイプを使用することで現物合わせにてシム調整をすることができます。また、複数枚のシムプレートを準備する必要がなく、コスト削減にもなります。ラミネートタイプは、航空宇宙業界で多く使用されています。

シムプレートのその他情報

シムプレートの規格

シムプレート自体には、適用される規格はありませんが、関連規格として下記があります。これらはシムプレート選定の際に参考になります。

  • JIS B 1512-1:2011 転がり軸受−主要寸法−第1部:ラジアル軸受
  • JIS B 1512-2:2011 転がり軸受−主要寸法−第2部:平面座スラスト軸受
  • JIS B 1512-1:2011 転がり軸受−主要寸法−第3部:円すいころ軸受
  • SAE AMS-DTL-22499 Shim Stock, Laminated (米国航空宇宙規格)
  • DIN LN29557 Aerospace; Laminated shim of corrosion resisting steel; dimension, masses (ドイツ航空宇宙規格)

参考文献
https://www.iwata-fa.jp/
https://www.monotaro.com/s/c-83801/

シッケンズ塗料

シッケンズ塗料とは

シッケンズ塗料とは、木材の美しさと耐久性を高めるために開発された塗料です。

1972年にシッケンズ社から開発され、世界中の建築家やデザイナーから高い評価を得ています。シッケンズ塗料の特徴は、木材に浸透しつつ、表面に塗膜を形成する点です。

このため、木材の呼吸を妨げず、耐久性と美観を両立した塗装が可能になります。また、VOC (揮発性有機化合物) を削減した環境に優しい製品もラインナップされています。

表面のデザイン性だけでなく、表面の酸化防止や耐水性能があることから、製品を長持ちさせるために有用です。

シッケンズ塗料の使用用途

シッケンズ塗料は、全体が木材でできているログハウスの劣化を少なくするために使用されます。屋外木部全般に使用できるスタンダードタイプのセトールHLSeをはじめ、ログハウスやウッドデッキなどの特殊な用途に合わせた製品など、バリエーションが豊富です。

建物の外表面は日光や風雨に晒されるため、メンテナンスとして塗装を塗り直す必要がありますが、シッケンズ塗装の場合は短くても3年に1度のメンテナンス塗装で足りると言われています。塗装したものを保護する能力が高いので、プロの業者が信頼して利用する塗料です。

木材の種類や状態に応じて適切な製品を選ぶことで、最適な仕上がりを得ることができます。

シッケンズ塗料の性質

シッケンズ塗料は木材に浸透して、木目や色調を生かす半透明タイプの塗料です。顔料の比率が高いため、重ね塗りの回数が少なくて済みます。また、塗工あたりの塗料の使用量や時間を低減できるため、作業コストの低減が可能です。

その他、シッケンズ塗料は紫外線や水分などの外的要因から木材を保護する効果があります。また、防カビ・防腐剤も配合されているため、木材の劣化防止も可能です。

ホームセンターなどで販売されている木材保護用の塗料は専用の液体で薄めて使用したりしますが、シッケンズ塗料は薄めず原液のまま使用できる点も魅力の1つです。

シッケンズ塗料の種類

1. セトールHLSe

屋外木部全般に使用できるスタンダードタイプです。抜群に浸透性が高く、表面に薄い塗膜を形成し、高い耐候性と、木の触感を両立しています。12色のカラーバリエーションがあります。

2. セトールFilter7プラス

厚めの塗膜で、抜群の耐候性を誇るタイプです。傷んだ木部の改修塗装にも最適です。8色のカラーバリエーションがあります。摩耗には比較的弱いため、デッキ用には向いていません。

3. セトールノバテック

浸透性がよく、柔軟性の高い塗膜がログハウスに最適なタイプです。2回塗り仕上げで耐候性を発揮できます。6色のカラーバリエーションがあります。摩耗には弱いため、デッキ面などへの使用は推奨されません。

4. セトールデッキ

家具調の美しい仕上がりを得られるウッドデッキ用タイプです。硬い塗膜を形成するため耐摩耗性に優れており、デッキやそれ以外の部分にも適しています。

5. セトールデッキプラス

セトールデッキにシリカを配合しザラつき感を出すことで、滑り止め機能が追加されたウッドデッキ用タイプです。

6. セトールBL Xpro

屋外木部用の水性タイプの塗料です。臭いが少なく、速乾、美しい仕上がりが特徴です。水性タイプですが、せとーるHLSeなどの油性タイプへの上塗りも可能となっています。

7. セトールTGL

選べる2種類の光沢で木材の色調を生かす屋外用クリアー塗料です。セトールHLSe着色の上塗りにも使用できます。高光沢タイプと中間光沢の2種類があります。

参考文献
https://www.weblio.jp/content/%E3%82%B7%E3%83%83%E3%82%B1%E3%83%B3%E3%82%BA
http://www.tak-co.com/htmls/syohin/finishing/sikkens/sikkensbase.htm
https://www.sikkens-japan.com/upload/files/img-116125541.pdf
https://www.sikkens-japan.com/paint/
https://yasudabankin.com/?p=3290

ゴム球

ゴム球とは

ゴム球とは、液体や気体を移す際に使用するための器具です。

一口にゴム球といっても、単純に対象物を吸引・吐出する単球タイプのものの他に、吐出のみに使用するもの、排気や吸引の際に押す箇所が異なる複数のバルブを持つもの、血圧計で加圧する際に空気を送り込むものなど用途に合わせて、大きさや形状のバリエーションが豊富です。

また、使用される素材ももっとも一般的なラバー素材 (天然ゴム) のほか、耐薬品性に優れたシリコーン製など用途に合わせて様々な種類があります。

ゴム球の使用用途

気体を対象物とするゴム球の例としては血圧計用ゴム球があり、血圧測定時の加圧のため手動で空気を腕帯へ送気するのに使用されます。一方、液体を対象とする例としてはピペットや駒込ピペットと組み合わせて液体を容器から容器に移す場合などです。

このとき、メスピペットなど標線や目盛のあるピペットをと共に使用することで、一定量の溶媒を計り取ることもできます。また、特殊な三点バルブを持つ安全ピペッターは強酸や強アルカリ、毒性のある物質などを計り取る際に有用です。

ゴム球の原理

基本的にゴム球による物質の移動は、ゴム球を押しつぶすことに伴うゴム球内部の気体の排気と排気による陰圧状態を解放しようとする圧を利用したものです。血圧計用ゴム球は、押しつぶすことでゴム球内にある空気が血圧計側に送気され、手を緩めると外部から吸気して元の状態まで膨らみます。

この動作を繰り返すことで効率よく腕帯内に送気し、血圧測定に必要な加圧を得ることが可能です。ピペットと組み合わせて使用するゴム球(単球タイプ) は、ピペットにセットしたのち溶液中でゴム球を押しつぶすと中の空気が抜けて陰圧となり、そのまま液体中で手を緩めると外部からの圧力に押されて溶液がピペット先端からピペット内部に流れ込みます。

この状態から液体を移したい容器の上で再度ゆっくりゴム球を押しつぶすと、ピペット内部に保持されている溶媒が押し出される仕組みです。安全ピペッターではゴム球内の脱気時、液体吸い上げ時、液体吐出時時それぞれに用いるバルブが異なります。

ゴム球内の陰圧を利用して溶媒を吸引する原理は通常のゴム球と同じですが、吐出の際は吐出用バルブを押し潰して外部の空気をゴム球内へ取り込むことでその体積分の溶媒をピペット内に保持できなくなり、自然落下で吐出されます。

ゴム球の種類

1. シリコンゴム球

シリコンゴム球は、シリコーンポリマーを主成分とするゴムで作られています。このゴムは耐熱性に優れており、極端な温度変化にも対応が可能です。

シリコンゴム球は、高温環境での使用に適しており、耐薬品性や耐久性も高く、医療機器や食品加工装置、自動車部品などの幅広い用途で利用されています。また、シリコンゴム球は柔軟性があり、曲げや伸縮に対しても優れた耐性を持ちます。

2. EPDMゴム球

EPDMゴム球は、エチレンプロピレンジエンゴム (EPDM) を主成分とするゴムです。このゴムは耐候性に優れており、太陽光、雨水、酸素などの外部要因に対して長期間にわたって耐えることができます。

EPDMゴム球は耐薬品性も高く、酸やアルカリ、オゾンなどの化学物質にも強い耐性を持ちます。さらに、耐熱性や耐摩耗性も優れており、屋外環境や自動車のシール材、建築材料、電線の絶縁材料など、耐久性が求められるさまざまな用途に広く使用が可能です。

3. ニトリルゴム球

ニトリルゴム球は、ニトリルブタジエンゴム (NBR) を主成分とするゴムです。このゴムは油や燃料に対する耐性に優れており、耐油性が求められる自動車部品、機械のシール材、配管などの幅広い用途で利用されています。

ニトリルゴム球は耐候性も高く、屋外環境でも劣化しにくいのが特徴です。また、ニトリルゴム球は耐薬品性もあり、多くの化学物質に対して安定した性能を発揮できます。

4. ネオプレンゴム球

ネオプレンゴム球は、クロロプレンゴム (CR) を主成分とするゴムです。ネオプレンゴム球は耐候性に優れており、紫外線や大気汚染物質などの外部環境要因に対しても耐えることができます。耐油性や耐薬品性も高く、多くの油や溶剤に対して安定性を持ちます。

ネオプレンゴム球はまた、耐摩耗性や耐火性にも優れており、耐久性が求められる航空機や自動車部品、建築材料、電線の保護材料などの用途で使用されるゴム球です。

5. フルオロゴム球

フルオロゴム球は、フルオロカーボン重合体を主成分とするゴムです。このゴムは耐熱性に優れており、高温環境での使用に適しています。また、耐薬品性が高く、強酸や強アルカリなどの腐食性物質に対しても優れた耐性を持ちます。

フルオロゴム球はさらに、耐摩耗性や耐候性も高く、厳しい環境下での使用が可能です。そのため、薬品処理装置、半導体製造、航空宇宙産業などの分野で幅広く利用されています。

ゴムシート

ゴムシートとは

ゴムシート

ゴムシート (英: Rubber sheet) とはゴムを薄い板形状若しくはシート形状に加工した製品です。

一般的には、薄いゴムシートはシール材として、厚いゴムシートは振動や衝撃を吸収するために使用されます。また、防音や断熱などの用途にも使用されることがあります。各種用途に合わせたゴム素材、厚みが存在するため、絶縁性や作業性などの用途に応じて最適なものを使い分けます。

ゴムシートの使用用途

ゴムシートは柔軟性や高い防音性などの特性により、様々な用途で使用されます。以下はゴムシートの使用用途の一例です。

1. 部品

ゴムシートを使用して、工業製品の部品として使用されることがあります。自動車産業ではエンジンマウントやドアガラスシール材などに使われます。また、建材部品にも使用され、ブレードの付け根部分やオイルシールとして活用されます。

医療機器においても、性状の安定性からゴムシートを使用して成形する製品が多いです。各種シール材やカテーテルがその一例です。電気絶縁性も高いため、パソコンキーパッドなどの電気製品にも使用されます。

2. 防音材

ゴムシートは防音性脳も高いため、防音材としても使用されます。壁や天井に張られる吸音材、スピーカーボックスに使用されます。貼り付けも容易で後付け可能な点も特徴です。

3. 作業用マット

ゴムシートは安価なため、作業用のマットとして使用される場合もあります。電気絶縁性から、電気耐圧試験における作業者用の絶縁マットとして使用されます。また傷防止のための養生マットとしても使用します。

柔らかい上に滑らないため、床用マットとして優れています。

ゴムシートの原理

ゴムシートの原理は弾性変形という現象に基づいています。ゴムの高い弾性から外力を受けると変形しますが、力が取り除かれると元の形状に戻ります。この弾性変形によって、ゴムシートは柔軟性や耐久性が高くなっています。

ゴムシートが弾性変形する原理は、ゴム分子の長鎖が独特な立体構造を有するためです。この立体構造によってゴム分子は弾性を持ち、伸縮性に優れています。

また、ゴム分子は重合体であり、大きな分子量を持っています。そのため、空間の移動が困難であり、外力を受けると内部の分子間相互作用が働いてゴム全体が変形することで弾性変形を生じます。

このようなゴムの特性を利用して、ゴムシートは様々な用途で使用されています。

ゴムシートの種類

ゴムシートは材質となるゴムの種類に応じて様々な種類があります。以下はゴムシートの一例です。

1. 天然ゴムシート

天然ゴムによって製作されたゴムシートです。JISにより「パラゴムノキから得られるシス-1,4-ポリプレン」として規格化されているゴムを使用します。高い伸縮性や耐久性が特徴です。

天然ゴムの主な産地はパラゴムノキが植生する東南アジアやアフリカ、中南米の熱帯地域です。中でも東南アジアでの生産が生産量の約80%を占めています。主にタイヤやシール材などに使用されます。

2. シリコンゴムシート

高温・低温に強く、耐候性や耐薬品性が高いゴムシートです。医療機器、食品機械、電気製品などに使用されます。熱や冷却に強いため、食品パックなどに使われます。

3.ウレタンゴムシート

ウレタン結合を有する重合体であるウレタンゴムを使用するゴムシートです。特に機械的強度と耐摩耗性に優れることから、長期間使用できる利点があります。スポーツシューズの靴底などに使用されます。

4. フッ素ゴムシート

耐熱性や耐薬品性が非常に高いゴムシートです。半導体製造装置や高純度ガス配管などに使用されます。

5. ニトリルゴムシート

アクリロニトリルブタジエンの共重合体であるニトリルゴムを使用したゴムシートです。アクリロニトリルとブタジエンの組成を変えることで耐油性や耐寒性が変化します。高ニトリルは耐油性が高く、低ニトリルは耐寒性に優れています。

石油化学製品や自動車のパーツなどに使用されます。また、耐オゾン性や耐候性を向上させるため、一部を水素化させた水素化ニトリルゴムシートも製品化されています。

6. エチレンプロピレンゴムシート

エチレンプロピレンのランダム共重合体であるエチレンプロピレンを使用したゴムシートです。主鎖に不飽和結合を持たず、硫黄による加硫ができないものをEPMと呼びます。一方で、硫黄加硫ができるように不飽和結合をもつモノマーを少量共重合させたエチレンプロピレンジエンゴムをEPDMと呼びます。

耐候性や耐老化性が高く、屋外設備や雨水処理設備などに使用されます。

参考文献
https://kurashi-no.jp/I0016139
https://gom-sheet.com/faq/007/